| 1999年12月読了 | |||
| 12/25 | 木曜組曲 恩田陸(徳間書店)★ | ||
| 12/25 | 主役 田中章義(サンクチュアリ出版) | ||
| 12/13 | 日曜日の夕刊 重松清(毎日新聞社)★ | ||
| 12/6 | 赤毛のアンを探して 中井貴恵(角川書店) | ||
| 12/3 | エイジ 重松清(朝日新聞社)★ | ||
| 12月25日(土) 「木曜組曲」 恩田陸(徳間書店) 恩田陸さんの作品を読むのは、今回が始めて。よって、今まで、どのような作品が 書かれていたのか、この作品がどんな位置付けなのか、全くわかりません…。 でもね、すごくおもしろかった!「木曜組曲」場面展開の巧さに、読み始めると、 やめられなくなりました。 耽美派女流作家の巨匠、重松時子が薬物死を遂げてから、4年。彼女と縁の深い女 性たちが、今年も、彼女が住んでいたうぐいす館に集まり、時子を偲ぶ会が催され ます。差出人不明の花束と共に届いた謎のメッセージをきっかけに、小さな波紋が いつしか告発と告白の嵐に飲み込まれていきます…。そして、やがて明らかになる 時子の死の真相とは?? 「書くこと」を生業にしている女性・5人の、うぐいす館での3日間。女性同士の心 理戦が、ちょっともイヤな感じを受けなかったのは、それぞれの心理状態を、丹念 に細やかに描く作家の力量かな。そして、登場してくるおいしそうな料理も物語の ひとつのエッセンスになっています。どんでん返しに継ぐどんでん返しに、最後ま で目が離せません! 恩田陸さんの他の作品も是非に…と、読んでみたくなりました。 |
| 12月25日(土) 「主役」 田中章義(サンクチュアリ出版) キーワードは「二十一世紀の主役」。 といっても、メジャーかどうかを基準にしたような「主役度」ではなくて、 実際に会い、取材してみて、「このジャンルは彼に任せた!」と断言したくなる人物− もっと言えば、その人を題材にワクワクしながら短歌を作りたくなった人物…それが 今回この本で取上げた人たちだ。 著者の田中章義氏は、1970年生まれ。短歌会の芥川賞と呼ばれる角川短歌賞を受賞 している著者が、様々なジャンルで仕事をしている新しい職人さんたち(その世界 を自分自身で切り拓いていこうとしている若者たち)を取材し、短歌とともに、彼 らのイキザマを紹介したもの。 まぶしいくらいに、前を向いて進んでいる21人。 ミュージシャン/東野純直、Jリーガー/路木龍次・深澤仁博、 イラスト&キャラクターデザイナー/エサカマサミ、 セパタクロープレイヤー/寺本進、天折作家/高際美佐、 ファッションデザイナー/小林亜希子…。 自分の好きなものにまい進すること、その道にかけることは、ある意味、どこかで 何かを捨てなければ、いけない時もある。その潔さが、また彼らを輝かせる。 誰もが、栄光を手に入れたわけではなくって、まだ夢の途中。でも、彼ら「主役た ち」の生き方のスタイル、そこにたどりつくまでの軌跡、そして思いがビシバシ伝 わってきます。元気をもらえることうけあいです。 写真もふんだんで、読みやすい形に編集されているので、ふだんあまり活字に馴染 みがない方にも、ぜひ読んで欲しい1冊。 この21人にエールを送るとともに、自分自身にも喝を入れたくなりました。 サンクチュアリ出版のサイトは、こちらから |
| 12月13日(月) 「日曜日の夕刊」 重松清(毎日新聞社) 4月からはじまり、3月まで。春夏秋冬、12の短編小説が並びます。 どのストーリーも読み終わった後、心の中がポッとあったかくなる、そんな短編集 です。幸せの種は、イベントや大げさなことではなく、日常の中にあるのよね。 几帳面きれい好きが高じて彼女となかなかうまくいかないチマ男くんと、不器用で ガサツなガサ子の恋物語「チマ男とガサ子」。電車の網棚に置きっぱなしにされ ていたカーネーションをさまざまな思いで眺める3人の乗客「カーネーション」。 テレビ番組の依頼で、銀座の超高級すし屋のカウンターに座らされ、冷や汗をかく 親子「すし、食いねェ」…。 登場してくるのは、見渡せばどこにでもいそうな人たち。それがよりリアリティを 感じさせます。 個人的には、「さかあがりの神様」「すし、食いねエ」「サンタにお願い」が好き でした。文体が、“今”なのね。今読むと、まさにぴったりくる感じ。それが、軽 快さに結びついているんですが、何年か後に読まれた場合、古っぽさを感じさせた りしないのでしょうか!?と、気になりました。 クリスマスプレゼントの1冊としても、喜ばれそうです。 |
| 12月6日(月) 「赤毛のアンを探して」 中井貴恵(角川書店) アメリカ・ニューハンプシャー州、ハノーバーでの新婚生活を描いた、第一作目 「ニューイングランド物語−信号三つの町に暮らして」(角川文庫)が大好きで、それ以 後、本が出るたびに読み続けている中井貴恵さんのエッセイの新刊。 ハノーバー、札幌を経て、東京に戻られた中井さんの行動力は、衰えることを知り ません。ますます精力的に、そして、好奇心いっぱいなところが好きなんだなぁ。 この本の大きな軸は、中井さんがボランティアで、5人の仲間たちと一緒に活動さ れている「大人と子どものための読み聞かせの会」。 中井さんが、森山京さんの「つりばしゆらゆら」(あかね書房)と出逢ったのを、 きっかけに、大人も子供も絵本の世界にゆったりとつかる時間が、少しでも持てた ら…という思いがきっかけで、始めたことなんだそうです。 朗読に、様々なアイディアを盛り込んだ大型絵本、オリジナルも交えた音楽。全て 手作りと言う、絵と音楽と語りが一体となった公演。一度見てみたいなぁ。病院訪 問なども、されているようです。自らも楽しんで活動されている様子が、とっても いいのね。 また表題にもなっている、小4の娘さんが夢中になった「赤毛のアン」の故郷に 行ってみようと、夏休み、家族で訪れたカナダのプリントエドワード島。(アンに 夢中になったことがある私としては、とってもうらやましいお話〜)札幌での生活 や、大学時代のテニス同好会の同窓会の思い出も併載。 ダンナさんも含めて、一本筋の通った中井さん夫妻の子育ては見習うとこありで す。 読み終えて、今の自分にできることはなんだろう…そう、自分に問いかけてみたく なりました。 《関連サイト》 大人と子供のための読み聞かせの会 のサイトはこちらから |
| 12月3日(金) 「エイジ」 重松清 (朝日新聞社) ぼく、エイジ(栄司)は、14歳、中学2年生。 膝を痛めて、パスケ部を休部中。 ちょっと気になるクラスメートの相沢志穂と一緒の、福祉委員。 クラスメートの秀才・タモツくんは、ぼくのことを精神優良児と言う。 エイジが住んでいる東京郊外のニュータウン。 ここ一帯で起きていた、通り魔事件の犯人が、捕まってみると、 それは、同じ学校のクラスメイトだった…。 前から気になっていて、今回初めて読んだ重松清さん。好きかもしれない重松清♪ はまりそうだよ重松清♪ そんな予感がした一冊でした。どこがって、う〜ん、ま だうまく言えないけど、作品の底に流れているものが、好きな気がします。 去年起きた、大きな少年事件を視野に入れて…のことは、間違いないけれど、読ん でいて、イヤな気分にはなりません。 犯人だったクラスメートと、ぼくとは、どう違うのだろうか。何も違わないのじゃ ないだろうか。ぼくと彼が、いつ入れ替わっても、おかしくないのかもしれない。 それは、どんな気持ちで、やってたことなんだろう…。 犯罪を犯したクラスメート自身の気持ちは、一切描かれることなく、主人公エイジ 側から、語られていきます。 一時期、はやり言葉のように使われた「キレる」。ここで描かれる「キレる」の描 写。これが全てじゃないかもしれないけど、ああ、そういうことならわからないこ とではないかもしれないとも思いました。 「その気」は、いまは静かに眠っている。どこにいるのかは知らない。消えてなく なったわけじゃない。「好き」がたくさんあればあるほど、「その気」は奥にひっこんで くれるような気もするけど、勝手にそう思い込んでいるだけかもしれない。 ただ、「好き」で結ばれたつながりは気持ちいいな、と思う。人間はつながりを 切れないんだったら、チューブはすべて「好き」がいい。 私は、娘には多くのことを望まないけれど、「好き」をたくさん見つけて欲しいな と常々思っているので、ちょっと嬉しかったな。「好き」って、全てにつながるで しょー。一歩前に進むパワーにもなるし、そこから広がっていく世界もあるし。 好きで結ばれていくつながりもいいでしょー。 エイジをはじめ、つかちゃん、タモツくん…。出てくるキャラクターが皆、きちん と持ち味を出していて、生き生きと描かれています。重いテーマを扱ってるんだけ ど暗くない。かえって元気もらえるかもしれません。 山本周五郎賞受賞作品です。 |