| 〜1999年 4月読了 |
なお、感想は、メモ程度でしかありません |
| ねぎぼうずのあさたろう シリーズ 飯野和好(福音館書店) |
| あらしのよるに シリーズ 木村裕一(講談社) |
| ネコとクラリネットふき 岡田淳(クレヨンハウス) |
| 三ぴきのコブタのほんとうの話 ジョン・シェスカ(岩波書店) |
| ごきげんなすてご シリーズ いとうひろし(徳間書店) |
| はじめてのキャンプ 林明子(福音館書店) |
| どうぶつえんガイド あべ弘士(福音館書店) |
| アラスカ 極北・生命の地図 星野道夫(朝日新聞社) |
| ナルニア国物語 C.S.ルイス(岩波書店) |
| カラフル 森絵都(理論社) |
| 鬼の橋 伊藤遊(福音館書店) |
| はてしない物語 ミヒャエル・エンデ(岩波書店) |
| しゃべれども しゃべれども 佐藤多佳子(新潮社) |
| ヤマダ一家の辛抱 群ようこ(幻冬舎) |
| 女たちのジハード 篠田節子(集英社) |
| ぼくは勉強ができない 山田詠美(新潮社) |
| 春にして君を離れ アガザ・クリスティ(ハヤカワ文庫) |
| ボクの町 乃南アサ(毎日新聞社) |
| 火車 宮部みゆき(新潮文庫) |
| 理由 宮部みゆき(朝日新聞社) |
| レディ・ジョーカー 高村薫(毎日新聞社) |
| マークスの山 高村薫(早川書房) |
| 夏の災厄 篠田節子(文春文庫) |
| アンダーグラウンド 村上春樹(講談社文庫) |
| 辺境・近境 村上春樹(新潮社) |
| ハイジ紀行 新井満・紀子(白泉社) |
| まわれ、かざぐるま 水野スウ(若草書房) |
| 出逢いのタペストリィ 水野スウ(若草書房) |
| 本は楽しい 赤川次郎(岩波書店) |
| 1945年のクリスマス ベアテ・シロタ・ゴードン(柏書房) |
「ねぎぼうずのあさたろう その1」 「ねぎぼうずのあさたろう その2」 「ねぎぼうずのあさたろう その3」 色白でまんまる顔のあさたろうは、畑育ちの元気なねぎぼうず。いじめられて いたしいの実のおようちゃんを、ねぎじるで助けたあさたろうは、まわし合羽 に三度笠、西へ西への旅に出る…(その1)。 痛快時代劇絵本〜!いきなりとぼけた顔で登場するあさたろうは、何度見ても 笑えます。口調もいいし、調子もいい。豪快な飯野和好さんの絵と手書きの字 が雰囲気を盛り上げます。“二代広沢虎造風浪曲節で”と書かれているセリフ が、上手に読めるようになりたいよ〜。 そして、ねぎぼうずのあさたろう第ニ弾“しゅくばはずれのけっとう”も快調 です!ひょんなことから、にんにくのにきちというお供ができたあさたろう。 しかし、宿敵・やつがしらのごんべいが、大勢の子分を引きつれてどこまでも 追ってくる! 大きな頭にきりりとした眉!敵をするりとかわす色男あさたろうの活躍は続き ます。今日も行く行く旅ガラス〜。 |
1.「あらしのよるに」 2.「あるはれたひに」 3.「くものきれまに」 4.「きりのなかで」 5.「どしゃぶりのひに」 6.「ふぶきのあした」 荒れ狂った嵐の夜、真っ暗な小屋で雨宿りをした、ヤギのメイとオオカミのガ ブ。お互い風邪をひいて鼻もきかない。相手が誰だかわからないまま語り合い 意気投合。翌日、一緒に食事をする約束の場で、互いの姿を見てびっくり!? そのあと友達になった二匹だけど、なにせヤギとオオカミ。大好きなごちそう とお友達になってしまったオオカミの、仲良しなのにおいしそうに見えちゃう つらーい葛藤と、あったかい友情物語〜。 ユーモラスな語り口と(ガブの「そうでやんすね」という口調はうつってしま いそ〜)、読んでいくうちにどんどん盛り上がってくる食べられちゃうかも? のスリリングな緊迫感。(そう思わせる、構成も巧いのよッ!) 「どしゃぶりのひに」では、二匹の秘密の仲が、仲間にバレてしまったガブと メイ。“俺たちと友達とどっちが大事なんだ”“だまされてるのよ、目をさま せ”と、みんなに攻め立てられた二匹の運命はいかに!?ガブとメイの友情を 充分味わってみて。続編は、この順番で読んでね〜。 そして、最新作・ 6冊目にあたる「ふぶきのあした」で、このシリーズもいよ いよ完結(涙)! ガブとメイが友達であるという秘密が、森じゅうに知れ渡ってしまうことに。 仲間を裏切ったガブのことを絶対に許さないという声を聞いた二匹は、森を抜 け山の向こうにいこうとする。しかし、山を越えようとする二匹に襲い掛かる 激しい吹雪と、どこまでも追いかけてくるおおかみの群れ…。 緊張と緩和のバランスが絶妙!命をかけてもいいと思える友達に出会えた二匹 の気持ちが泣かせるねぇ〜。そっ、それでガブは??最後はちょっと悲しい結 末です…。 |
| 「ねことクラリネットふき」 岡田淳(クレヨンハウス) ある夜、ぼくが仕事から戻ると、ドアの前に1匹のネコが座っていました。ド アを開けると、自分の家みたいに、ぼくの部屋に入っていきます。ミルクを あげてみたけれど、飲みません。あじの干物も出してみたけれど食べません。 ぼくは、クラリネット吹き。クラリネットを吹き始めると、何もかも忘れてし まいます。練習が終わって見てみると、ネコがさっきより大きくなって、クラ リネットの音のするゲップをします。 それから、ぼくがクラリネットを吹く たびにネコはどんどんどんどん大きくなって、ある朝とうとう家が壊れてしま いました。だから、ぼくは“ネコのせなか”に引越しすることにしました…。 誰かに出会って道が開けていく…。 ぼくの場合、それがネコだったのです。 ぼくは、この不思議なネコに出会い、大きなネコの背中に乗って、クラリネッ トを演奏しながら、世界中を巡るという夢を実現していきます。そして、それ は同時に、ネコも望んだことだったのです。 読み終わって娘と、「ネコの背中って気持ちいいだろうねー」「ふわふわして るよね」「あったかいだろうねー」「ネコの背中の上でクラリネット聞くのも いいよね」と、うっとり。ほわーっと幸せな気分になれる1冊です。岡田淳さ んの児童文学もいいけれど、ご自分で絵を描いての、この絵本も素敵です。 ふんわりとやわらかい線の絵も、不思議な世界の扉を広げてくれますよ。 |
| 「三びきのコブタのほんとうの話」 ジョン・シェスカ文 レイン・スミス絵 いくしまさちこ訳(岩波書店) だれだって、「三びきのコブタ」のはなしは しってる。 いや、しってるつもりに なっている。 ここで、みんなに ちょっとした ひみつをおしえてやろう。 じつをいうと、だれも ほんとうのはなしを しらないんだ。 なぜって、おれのいいぶんをきいたやつは、まだひとりもいないからさ。 そういってオオカミが語り始めるこの話…おもしろいんだよ〜! 言い分によると、悪いのはオオカミなんじゃなくて、くしゃみとさとうのせい なんだって。 オオカミは、大好きなおばあちゃんのために、バースデイ・ケーキを作ってい た。途中で砂糖が切れたので、お隣さんにわけてもらおうと出かけたんだ。 それが、ちょうどコブタの家だったというわけ。そして、その時オオカミは、 ひどい鼻かぜをひいていた…。 とぼけた顔したオオカミと、悪党顔のブタ。レイン・スミスの絵が、この語り に、妙〜に信憑性をもたらしてるの。確かに、わらで家をつくるなんて、どう かしてるよ…と納得しちゃうもん!いろんな昔話の悪いヤツ!?の言い分、聞 いてみたくなります。このおもしさがわかる、小学生以上に。大人の方にもぜ ひ! |
1.「ごぎけんなすてご」 2.「やっかいなおくりもの」 3.「にぎやかなおけいこ」 4.「ふたりでまいご」 最近やたら気に入ってる、いとうひろしさん。いとうさんの絵は、表紙を見た だけでパッと目につきます。低学年ぐらいから読めますが、大人でもおもしろ いですよ〜。 子どもは天使…ばかりではなく、ちょっと毒っけのある、このシリーズが大好 き。気持ちの微妙な変化が上手に描かれていて、そうそう!わかる!っていう のがあるんだよね。(そういう私は姉だった…) いくら小さくても、姉の立場は大変。今まで天下だった自分の立場はなくなる し、弟のめんどうは見なくちゃならない。そんな気持ちも知らずに、みんなが 弟を見ると、かわいい、かわいいっていうんだよね〜。だから、やきもちを焼 いて、すてごにになろうとしたり、弟を誰かにあげようとしたり、はたまた犬 の芸をみせびらかした友達に対抗して、弟に芸を教えようとしたり…。 ホントは自分も弟がかわいい…でも、弟にお母さんをとられた寂しさと意地を 張っちゃう気持ちが、子どもも大人も共感できますよ。本の中でも、ちゃんと 弟が成長していってます。 |
| 「はじめてのキャンプ」 林明子(福音館書店) 「小さい子は連れていかない!」 そう言われたなおちゃんが、約束を果たし、 大きな子と一緒に、キャンプをやり遂げたお話。 “自分でやれた”喜びと、そばで、大きな子がさりげなくフォローしている やさしさ。言葉にはしていませんが、林さんの絵が語る部分も大きい。 |
| 「どうぶつえんガイド」 あべ弘士(福音館書店) こちらも、あべ弘士さんの動物園モノ。 正統なお堅い動物図鑑とは違って、めちゃんこおもしろい!笑える図鑑って、 そうそうないよ〜!とぼけた感じのあべさんの絵が、またいい味出しているん ですね。 レッサーパンダのうんちは食べたものが順番に出てくる。フラミンゴは餌(赤 いものばかり食べる)に気をつけてあげないと、体のピンクがだんだん薄くな る。やぎは実は後ろも見えている。大人でも、へぇ〜初めて知ったよ〜なんて ことが、てんこ盛りです! |
| 「アラスカ 極北・生命の地図」 星野道夫(朝日新聞社) 96年カムチャッカ撮影旅行中、クマに襲われて亡くなってしまった星野さん。 たくさんの写真集を残されていますが、個人的には、これが一番好き。ただ 綺麗なだけでなく、動物にも鳥にも、花にさえ、宿っている力がみえてくるの ね。生きているという迫力が! 写真を見ている自分がその場に入り込んで…じっと潜んでカリブーの群れの 足音を聞いているような、そんな感覚に陥ります。人の手がまだ及んでいな い、こんな世界が、まだ地球に残っているんだなぁ。 |
1.「ライオンと魔女」 2.「カスピアン王子のつのぶえ」 3.「朝びらき丸東の海へ」 4.「銀のいす」 5.「馬と少年」 6.「魔術師のおい」 7.「さいごの戦い」 順番に、そしてラストの「さいごのたたかい」まで読んで、はじめて、ルイス が作り上げた壮大な物語が完結します。このシリーズは、ぜひぜひ最後まで読 んでね。ルイスのキリスト教的世界観が、大きく反映されているところがある ので、時には、絶対的な力に頼らず、自分たちで解決せ〜よぉなんて思っちゃ うところもありますが、おもしろいですよ〜。 別世界に繋がる衣装ダンス、麻薬のようなプリン、白い世界の街頭ランプ…。 わくわくする要素が、いっぱいちりばめられています。私は、「銀のいす」と 「朝びらき丸東の海へ」が特に好きです。 |
| 「カラフル」 森 絵都(理論社) 「あなたは前世で大きな過ちを起こした魂です。本来なら二度と生まれ変わる ことができないけれど、幸運にも抽選に当たり、下界でもう一度修行を積んで くることができます」そう言われて、死んだはずの僕の魂は、自殺を図った真 くんの体にホームスティすることに…。 コミカルな語り口の中で、テンポよく読めます。でも、そんな中に家族・友達 異性の問題が、しっかりと描かれています。あなたってこういう人よね〜と周 りに決めつけられて、身動きができなくなってしまった真くん。ありがちな言 葉ですけど、ありのままの自分を受けとめる、受けとめてもらうってことは難 しい。森絵都さん!注目したい作家です。 |
| 「鬼の橋」 伊藤遊(福音館書店) 冥界と往来していたとも伝えられる、小野篁。(平安期実在していた彼は、「百 人一首」の歌人の一人で、「今昔物語」にも登場する人物なんだそうです)これ は、篁の少年時代の創作物語。古い時代を背景にしていますが、少年少女の気 持ちは今も昔も、変わらないものだと思います。 何度かほろほろと涙ぐんでしまいました。みなしごの少女阿那古に勇気づけら れ、人間にはなれない鬼の非天丸の悲しみに涙し、篁成長をうれしく思う…。 読み終えたら、ポッと暖かくなりました。あとがきを先に読んでから読み始め ると、ふっとに入っていきやすいかも! |
| 「はてしない物語」 ミヒャエル・エンデ(岩波書店) ご存知、コンプレックスだらけだったバスチアンが、読んでいた本の中の国、 ファンタジエンに飛び出して、失敗の連続の末、真の正しい道をつかむストー リー。 600ページ近くの分量は読むのも果てしない〜と思ったけれど、読み出すと、 ぐいぐいと引き込まれていきました。一緒になって、ファンタジエンに潜り込 んだ気分で、ハラハラドキドキ!映画にもなったけれど、原作の方がずっと いいよ〜。 |
| 「しゃべれどもしゃべれども」 佐藤多佳子(新潮社) 二ツ目の落語家今昔亭三つ葉は、テニス教室でどもってしまうという悩みを持 つ従兄弟から話し方の伝授を頼まれる。そのうちなんの因果か、美女だがなん でも反発する女性、マイクの前に座ると口が重くなる野球解説者、転校してき てから関西弁を理由にいじめられてる少年らに、落語を教えることになるので すが…。 言葉に敏感な彼らは、それゆえに最初はギクシャクするのですが、だんだんと 連帯感が生まれて行く様子が軽やかに語られていきます。ちょっと切なくって ラストはほんわかな気持ちになりました。 |
| 「ヤマダ一家の辛抱(上・下)」 群ようこ(幻冬舎) 〔上巻〕 〔下巻〕 群ようこの明るい家族小説。 軽いタッチで読みやすく、登場してくる人達が、みんながいるいる〜!どっか にいそうだよ〜って、感じで笑えます。 お人好しの父カズオ、女性誌の副編集長・しっかりものの母サチコ、優等生の 長女、今時のの女子高生次女ユカリ。みんなそれぞれ自分の生活、自分の世界 をもちながら、また家に帰ると家族なりの生活がある…。それは誰もが同じだ よね。ここでもカズオの社長の急死、サチコの異動、ナオコの恋、ユカリの進 級問題と次々いろんなことが起こるけれど、そこを割り切りと明るさで乗り越 えていく。その積み重ねが人生なんだね〜。しみじみ…。 |
| 「女たちのジハード」 篠田節子(集英社) あちこちぶつかりながらも、自分自身の道を探していく4人のOLたちの姿に 感動!!厚い本ですが、おじけずかずにぜひぜひ読んでみて〜。おもしろいで すよ〜。 このままでいいのだろうか??と思う気持ちは、OLでも主婦でも一度は感じ たことがあるのでは??そこからどう一歩踏み出すか…ってことですよね。 この本から一歩前に出る元気がもらえるかも。 |
| 「ぼくは勉強ができない」 山田詠美(新潮社) 「僕は確かに成績が悪いよ。でも勉強よりも素敵で大切なことがいっぱいある と思うんだ」 “主人公の時田秀美は高校生だが、私はむしろこの本を、大人の人に読んでい ただきたいと思う”…と著者は、あと書きで書いています。 秀美(男の子だよ)も母親も社会的には、ほめられた親でも高校生でもない。 異質な目で見られることも多いだろう。でも本当は彼らの方が人間として真っ 当なんだと思う。そして決して不幸ではない。秀美には、常に支えてくれる母 親と祖父、わかってくれる桜井先生がいる。彼はきっといい男になるんだろう な〜と思わせてくれます。 |
| 「春にして君を離れ」 アガサ・クリステイ(ハヤカワ文庫) アガサクリスティの本ですが、犯人も探偵も登場してきません。でも、ミステ リーの謎解きをしていくようなゾクゾク感を味わうことが出来ます。 妻として母として幸せな日々を送っていると、自負しているショーン。彼女は 旅先で、大雨に遭い、何もない砂漠の町に足止めを食ってしまいます。そこで 出会った同級生との会話をきっかけに、過去の出来事を違った目で見つめ直し ていくと、家族の隠された真実が次々と浮かんでくるのでした…。 自己満足のおぞましさから引き起こす不幸。決してひとごととは思えず、わが 身を振り返って怖くなりますよ〜。 |
| 「ボクの町」 乃南アサ(毎日新聞社) 「凍えた牙」で、直木賞を受賞した著者ですが、これはミステリーじゃありませ ん。 警察官見習で配置されたのが、めちゃめちゃ忙しい駅前交番。元々、彼女に、 もうちょっと人生マジメに考えたら!とフラれた腹いせになった警官なのでた いして目標もなくピアスの穴を開け、警察手帳にプリクラを貼っちゃうような 今どきの新人。 短気でケンカっぱやく、怒られてばっかりなんだけど、そんな彼がだんだんと ボクの町で成長していく、笑えてさわやかな作品です。 |
| 「火車」 宮部みゆき(新潮社文庫) 何年前になるでしょう…。今までミステリーになじみがなかった私が、目覚め る?ことになった作品。ミステリーって、こんなにドキドキして興奮するもの なのね〜なんて思いましたね。まぁ、この作品がとってもおもしろかったから ということもあるのですが。 悲しい物語。最後の最後に姿を現わす彼女。運命に流されて、そうしなければ 生きられなかった彼女は、見つかって欲しくなかったような…そんな気持ちに なってしまいました |
| 「理由」 宮部みゆき(朝日新聞社) 東京の超高層マンションで、大雨の夜、一家四人が殺されていた。しかしその 四人はその部屋の住人ではなかった…。殺されたのは誰?ここに住んでいた人 は?事件の前に何があったの??関係者へのインタビューという形式で、話は 進んでいきます。 インタビューという形をとっているので、淡々と話は進んでいきますが、そこ にいろんな家族の姿が、浮き彫りにされていきます。読み始めると、続きが気 になって気になってやめられなくなりました。直木賞受賞作品です。 |
| 「レディ・ジョーカー(上・下)」 高村薫 毎日新聞社 〔上巻〕 〔下巻〕 グリコ・森永事件をモデルにしたと言われる長編大作です。 なぜ彼は、従わなければならなかったのか?なぜ彼らは、そんなことを引き起 こし、加担することになったのか?? 誘拐されたビール会社の城山社長、犯人側、合田刑事…。それぞれの立場から 語られる展開、そして緻密な構成に、グイグイとひきつけられていきました。 弱者に冷たい社会。OLをしていた私には、そうそう、そういうところ絶対ある と思える日本企業の体質。キャリア・ノンキャリの警察内の対立、検察との縄 張り争いなど、体制の一端から、答えが見えてくるかもしれません…。 入れこんで読んで夢まで見ちゃったほど。導入部分の読みづらさ?を乗り越え ると、ページをめくる手は、もう止まらない!ふだんミステリーを読まない方 も、ぜひどうぞ。 |
| 「マークスの山」 高村薫(早川書房) 被害者は、元暴力団組合員と法務省の高官。相次いで起きた、一見つながりの なさそうな殺人事件。しかし、それを追っているうちに、引き金となった過去 の存在が、次第に明らかになっていく。一方で、内なる「暗い山」を抱える 「マークス」は、犯罪を重ねようとしていた…。 現場にかかる捜査妨害、圧力など、警察内部の実態も明らかに。それが、やた らリアリティがあって、怖いくらいなんだよね。 ノンキャリア刑事・合田雄一郎シリーズ第一作目。私は、これで合田刑事に惚 れました〜。高村作品の中でも、特に好き。映画では中井貴一さんが演じてい ましたが、私の中の合田さんのイメージは、もっと体格のいい感じかなぁ。原 作の方が、だんぜん迫力ありよ! 読んでいて、犯人が捕まって欲しいような欲しくないような複雑な心境になり ました。 |
| 「夏の災厄」 篠田節子(文春文庫) 東京郊外のニュータウンに、突如発生した日本脳炎。撲滅されたはずの伝染病 が今なぜ?感染防止と原因究明に走りまわる、市の保健センターの職員たち。 しかし、その間にもウイルスは町を蝕み、死者が増え続ける…。 実際、市役所に勤務されていたことがある作者によって書かれたお役所、行政 システムの融通のきかなさ。その中で、奔走する保健センターの青年と看護婦 さん。かっこいいヒーローやヒロインではないところが、感情移入しやすかっ たかな。 全体的に、現実にありそう、将来いつ起きてもおかしくないというリアルさが 読んでいて、怖さを倍増させられました。 |
| 「アンダーグラウンド」 村上春樹(講談社) 95年3月20日の朝に起きた、地下鉄サリン事件。 これは村上春樹氏が、その事件の被害者・62名の方々に対して、インタビュー を重ねたものを、まとめた本です。 当たり前のことなんですけど、被害者には顔がある。そして事件の前にも後に も、それぞれの生活がある。改めて、そのことを強く感じました。 印象に残ったのは、その後の後遺症・PTSD(心的外傷後ストレス障害)の大き さ。そして、人が何人も倒れているのに、助けを呼んでくれない。救急車を呼 んでくれるわけでもないという通勤途中の人々や官庁の人たちに、驚きに似た 感情を持ちました。それと1時間、2時間とかかる都会の通勤時間の長さには、 やはりびっくりかな。 妊娠中にご主人を亡くされた同年代の女性の話と、一時は植物状態になるほど 重体で、後に重度の障害が残ってしまった妹さんのリハビリを支えるお兄さん の姿に涙してしまいました。厚い本ですが(文庫になっても上下2段組み)読ん で欲しいな。 その後、続編…あちら側の立場の人たちのインタビュー編「約束された場所で」 も読みましたが、どうしても相入れない平行線のままな気がして、やりきれな さが残りました。 |
| 「辺境・近境」 村上春樹(新潮社) 村上春樹氏の旅行記。 瀬戸内海の無人島に泊ってはみたものの、大量の虫の襲撃に音を上げ、メキシ コのバスの中で、ずっとかかり続けるメキシコ歌謡曲にうんざりし、香川で三 日間うどんを食べ続ける…。 彼の持ち味は、ドンチャン・バタバタした感じではなく、淡々とした中でくふ ふっと笑える。そして、あちこちをよーく見ている鋭い観察力だと思います。 |
| 「ハイジ紀行」 新井 満・紀子(白泉社) 著者の新井紀子さんは、子どもも大きくなり、もう一度自分に向き直って、私 の夢は?私は何をしたかったの?と思った時、8歳の頃に読んで感動した「ハイ ジ」を思い出したそうです。そしてハイジの故郷・スイスに行きたいと、夫を 伴い、作者ヨハンナ・シュピーリの生涯を訪ねる旅に出ます。 長年の想いを確かめるように、丁寧に時間をかけてまわられた旅。ハイジのよ うに大自然の中で生きる夢はかなわなかったけれど、物語の中のハイジの言葉 は子育て中の彼女に力を与えてくれていたそうです。最後の章の夫婦の対話は 必読ですよ〜。これを読んだら、ぜひ原作「ハイジ」の方も読んでみて下さい ませ〜。 |
| 「まわれ、かざぐるま」 水野スウ(若草書房) 「出逢いのタペストリィ」 水野スウ(若草書房) マンションの一室で、ひとりぽっちで子育てしたくないと、週一回紅茶の時間 と称して、自宅をオープンハウスとして開放したスウさん。そこでいろんな人 たちと出会い、いろんなことが育ち、つながって、広がっていく…。 記録映画「さくら坊や」。星野富弘さんの詩画展。絵本作家まついのりこさん の娘さん・松井朝子さんのパントマイム。性教育やH.I.Vについて。広島「こ の子たちの夏」の語り。そして、食べ物のこと、原発のこと…。 そんな暮らしぶりが、うらやましいほど、とっても素敵です。 |
| 「本は楽しい−ボクの自伝的読書ノート」 赤川次郎(岩波書店) いい言葉がいっぱい詰まった本でした。高校を出て就職した赤川さんは、 「このまま終わりにしたくないという思いを捨て切れずにいました。それは別 に何かになりたいという夢ではなく、何かをしたいという希望でした。一生勤 め人でも別に構わない。ただ、仕事を取ったら何も残らない人間になりたくな かったのです」 これって、“一生主婦でも…。ただ子どもを取ったら…。”とも言い換えられ るでしょ。 赤川氏の作家としての基本方針は、 ・小説の中では、たとえ会話であっても、ちゃんとした言葉の使い方をさせた い。 ・わかりやすい言葉で書く。同じことをわかりやすく言えるんだったら、わか りやすく言おうと思う。 ・物語性を、メッセージを伝えるということと、主人公が最初と最後で何らか の形で成長していることを基本にしている。 確かに、赤川次郎の本には、「むかつく〜」なんてことを言う女の子は出てこな いもんねー。 |
| 「1945年のクリスマス」 ベアテ・シロタ・ゴードン(柏書房) 日本国憲法に「男女平等」を書いた女性の自伝なんです。 22歳のベアテ・シロタがGHQ民政局のスタッフとして、日本国憲法の人権条 項設定に大きく関わっていたこと。さらに、日本の女性・子どもの権利につい て必死に考えていたことに、驚きと感動を覚えました。女性の権利が認められ るのは、今も昔も変わらず、大変なことなんだなと、つくづく感じられました ね。 |