| 1999年8月読了 | |||
| 8/29 | 妻と私 江藤淳(文藝春秋) | ||
| 8/23 | 風紋 乃南アサ(双葉文庫)★ | ||
| 8/17 | びりっかすの神さま 岡田淳(偕成社) | ||
| 8/12 | グランド・ミステリー 奥泉光(角川書店) | ||
| 8/9 | バッテリー あさのあつこ(教育画劇) | ||
| 8/8 | スキップ 北村薫(新潮文庫)★ | ||
| 8/7 | 魔術はささやく 宮部みゆき(新潮文庫)★ | ||
| 8/5 | なたぎり三人女 群ようこ(幻冬舎) | ||
| 8月29日(日) 「妻と私」 江藤淳(文藝春秋) 7月、ご自分で命を絶たれてしまった江藤淳さん。文芸評論家という肩書きと、お 名前だけは知っていたけれど、きっとこのようなことがなければ、著書を手にとる ことはなかったかも知れないな…と、ふと思いました。 発見された時には、すでに末期癌で治療不可能。妻の慶子さんの余命は、3ヶ月と 告げられる。子どもはなく、二人だけの家族。夫の江藤さんは「告知しない」、そう 決断し、自分ができることは何か…そして、「ただ一緒にいる」道を選ぶ…・。 その瞬間までは家内を孤独にしたくない。 私という者だけはそばにいて、どんなときでも一人ぼっちではないと信じていて もらいたい。 しかしは妻は亡くなる。その頃、自分の体にも異変が。仮通夜から4日間、点滴を 受けながら、なんとか乗り切り、告別式が終わった直後に病院に運ばれてしまう。 死の淵に立ちながら、妻の幻想に「もう少しお仕事をなさい」と言われ、自ら手術を 申し入れ回復、この「妻と私」を書き上げる…。 奥様への愛情あふれた著書。こんなに愛されて送ってもらうことができたら、本望 だったでしょう。こういう時期だったからできたことではなく、41年間という二人 の時間の積み重ねが、最後の時間を作っていったのではないかと思われました。 必要以上に感情移入されることもなく、表面上は淡々と綴られていますが、どんな に苦悩し、どんなに絶望していったか…。読み取ることができて、つらいものがあ りました。 この著書を書き上げた後、ふっと“死の時間”にいる奥様の元へ旅立って行きたく なったのではないのか…。そんな気さえしました。 |
| 8月23日(月) 「風紋(上・下)」 乃南アサ(双葉文庫) 〔上巻〕 〔下巻〕 マジおもしろかったです! はじまりは、ひとつの殺人事件。 それに翻弄される被害者の家族、犯罪者の家族、警察、マスコミ、それぞれの立場 や視点からのドラマです。 ひとつの犯罪が起こったことによって、変化せざるをえなかったのは、被害者の遺 族ばかりではない。犯罪者の身内も同じなのだ…。どれだけ多くの人間を巻き込む ことになるのか。だれもが傷つき、みんなが同様に運命を狂わされた。余波は、予 測もつかない人のところまで広がってくる。 なぜなの?どうしてなの?と、どんなに悩み苦しんでも、結局は当事者にしか、わ からないというジレンマ。そして、それゆえに大きくなる苦しみ。特に、普通の女 子高生だった真裕子の衝撃の大きさ、その後のつらい日々には、涙ぐんでしまう場 面もありました。 ミステリーと、一口でよんでいいものか。心理小説のような趣があります。かなり ボリュームのある本ですが、臨場感があり、グイグイと引き込まれていきます。 (続きが、気になって気になって、やめられなくなります〜)読み応えたっぷりの 力作です。ぜひ一読を! |
| 8月17日(火) 「びりっかすの神さま」 岡田淳(偕成社) 日本の現代児童文学を支える作家の1人である岡田淳さん。 始は、転校してきた4年1組の教室で、突然背中に翼がある小さな透き通った男の人 を見る。しかも、他の誰にも見えていない様子。このクラスの座席は、テストでい い点をとるものの順。テストを含めて、何でも競争させて、頑張らせることが好き な担任の先生なのだ。 その小さな男の人は、最低点をとったもののところにやってくる…と気がついた始 は、彼に会いたいがために、最低点を取るようになります。最下位になった子は、 その男の人(びりっかすの神さま)を見ることができて、神さまとも、見えている 子同士でも心の中で話が出来る。それが、だんだんとクラスの中で広まっていきま す…。 最下位になりたいがために、わざわざわかってる答えを書かないなんて、わざとリ レーで負けるなんて、偽善じゃない?と、話し合っていく姿がいいです。誰に言わ れたわけでもなく、自分たちで、何が大事で、どうすることが最良なのか、一生懸 命考えていくんですね。それが一人一人の力となり、今までギスギスした雰囲気の クラスの力となっていきます。 かわいらしい天使じゃなくて、ヨレヨレの背広姿の神さまなんて、味があるなぁな んて思っていたら、ラスト秘密が開かされます!?授業中教室の中に、こんな神さ まがいてくれたら(しかも先生には見えないし)テレパシーが使えるなんて、楽し いよね〜。ワクワクしちゃう!読んだ後、あったかい気持ちになりますよ。 お子さんなら、3・4年生くらいから、大丈夫でしょう。 |
| 8月12日(木) 「グランド・ミステリー」 奥泉光(角川書店) 昭和16年真珠湾攻撃の最中に起きた、整備士の不可解な自殺、特攻隊員の遺書の消 失、そして海軍榊原大尉の怪死。親友だった加多瀬大尉は、未亡人となった志津子 の依頼を受けて、榊原の死の真相を追いはじめた…。 上下二段570ページ以上にも及ぶ壮大な物語。さすがに読み終わった時、うぉ〜と 叫びたくなりました…。 ミステリー、戦争小説、SF?などが、混ざったような作品。ストーリーも錯綜し 何が現実で何が幻想なのか、どんどん分からなくなっていく…。まぁ、それが物語 に引き込んでいく力になっているのですが、混乱したのも事実。第一章が、一番良 かったな。潜水艦乗務の実態の過酷さ、軍隊の内情などが、見えてきて興味深かっ たです。 もう一人の主人公加多瀬の妹・範子の、“流されない”強さが好きでした。 全部ではないのですが、一部、こんなのあり??と思うほど、ひとつの文章・セン テンスが、長ーい文章がでてくるのね。あれって、好き嫌いがあると思いますが、 私は苦手だったなぁ…。 |
| 8月9日(月) 「バッテリー」 あさのあつこ(教育画劇) 児童文学です。 四月から中学生になるという春休み、巧の家族は、父の転勤で引越し、じいちゃん の家で、一緒に暮らすことになります。巧は少年野球チームのエース。言うだけの 実力も持っているけれど、野球に対しては、かなりの自信家。鼻っぱしが強い…。 それは自分を認めて欲しい(それも母親に)の裏返しなのではと感じられました。 巧の歪んだ自信、それが、以前高校野球の有名な監督だったじいちゃん、同じ年で こいつこそバッテリーを組めると認める豪、そして体の弱い弟の青波によって、次 第に揺らいでいきます。そのイライラが痛いほど、こちらにも伝わってきます。そ の反面、彼らから野球は自分1人でやっているものではない、誰よりも早いボール を投げるためだけにやっているものじゃない…と、少しずつわかり始めるのです。 巧のほかにも、将来家の病院を継ぐために勉強が大事、野球をやめろと言われる 豪、体が弱い弱いと決め付けられ、好きなことをやらせてもらえない青波など、 みんな息苦しく生きています。それも親の「私はあなたのためを思って」。そのくせ 真っ直ぐ子どもに向き合おうとしない親のエゴ…。それを自分では全くわかってい ない、気がつかない…。自分の息子に対して言いたいことを、自分で言わず、他の 子どもを通して言ってもらおうとする、ホントいや〜な母親が登場してきます。 私も人のことは言えませんが、親って自分や子どもに対して、少し客観視する目が 大事なんじゃないかなと思いました。子どもの幸せってなんだろう。この頃、子ど もが何考えているか、わからなくなってきたという方にも、読んで欲しいなぁと思 いました。 少年たちの方が、よっぽど大人です。そんな大事なものをなくして欲しくない。 どこでなくしちゃって、おじさんおばさんになっちゃったかな…。人間バランスが 大事かなぁと。しみじみ思いました。いろいろ考えさせられる作品です。 続編もあります。やっぱり一緒に買ってくればよかったと、ちょっと後悔〜。 野間児童文芸賞受賞作品です。 |
| 8月8日(日) 「スキップ」 北村薫 (新潮文庫) 時は、昭和40年代。一ノ瀬真理子17歳。体育祭が雨で中止になった夕方、帰宅後レ コードを回し、疲れたからと、ひと眠り。そして目覚めてみたら、そこは見慣れぬ 場所、服も変わっている。混乱して「ここ、どなたのお宅なんですか」と聞く真理子 に、帰ってきた女子高生は言った…。 「ふざけてるの?お母さん」そう彼女は25年後、夫と、自分と同い年の娘がいる42歳 の高校教師・桜木真理子に、タイムスリップしていたのです…。 ミステリーと思って読むと、あれ!?っと、違和感があるかもしれません。なぜこ うなったのか、元に戻れるのか、その時間を超えてしまったことに重きを置かず、 真理子が、自分ではどうしようもない状況を受け入れ、どんな今を生きていくのか を凛とした姿勢で描いた作品です。 単純に比べることは出来ないけれど、「秘密」(東野圭吾)の直子は、目覚めると娘 の体に乗り移ってしまい、娘として生きなければならなかった。自分がなくなり、 人の人生を生きなければならなかった彼女も、もちろんつらい。でも、若くなると いうのは、自分の経験を生かして、もう一度人生をやり直せることでもある。 でも、「スキップ」の真理子は、心は17歳なのに、目覚めると42歳になっている。 25年間、自分がどのように生きてきたのかもわからない。しかも教師という立場。 しかし、彼女は現状を受け入れた後、 “今、ここにいる以上、やること、やれることはきちんとやりたい” という意志のもと、最初は同じ学校に通う娘や同業者の夫の協力を得ながら、次第 に真理子自身の力で、その状況を打破していく。そしてそんな姿が、家族の中にも 生徒にも、新しい風を運んでいく。 自らも、国語の教師だったという北村薫さん。学校生活の描写がリアルです。それ がタイムスリップという非現実の中に、現実感をもたらしています。起きてしまっ たことはどうしようもない。そこから自分は何をしなければならないのかを即座に 考えようとする。それってやっぱり職業意識もあるのかなぁなんて、夫のことを思 いながら、へんなところに感心したりしました。 読み終わって真理子の、潔い強さに拍手喝采を送りたい気持ちになりました。 |
| 8月7日(土) 「魔術はささやく」 宮部みゆき(新潮文庫) 小さな新聞記事からは、何のつながりも感じられない、若い女性二人の自殺。一人 目はマンションから飛び降り、二人目は、その一ヶ月後、電車に飛び込む。そして 三人目。深夜、タクシーの前に飛び出す…。 父は公金横領後、失踪。母が病死の後、叔母の家で暮らすようになった日下守、16 歳。「進行方向の信号は青だった。いきなり自分で飛び込んできた」と主張する運転 手。目撃者がいないため逮捕されたタクシーの運転手は、彼の叔父だった。「菅野 洋子を殺してくれてありがとう。あいつは死んで当然だったんだ」という自宅に、 かかってきた不可解な電話をとった守は、密かに調べはじめる。しかし既に魔の手 は、人知れずおびえる四人目の女性にも伸びていた…。 謎解きのゾクゾク感もさることながら、人物の描き方のうまさ。小さい時起きた父 の事件で、母が、守がどんな思いをして過ごしてきたか。丁寧に描かれていくそれ が、ラストに結びついていきます。 一粒で二度おいしい…じゃないけれど、謎が解けた後もそれだけでは終わらない! もうひとつの秘密が、明らかに! 飽きさせない展開の、さすがの宮部ワールド。 日本推理サスペンス大賞作です。 |
| 8月5日(木) 「なたぎり三人女」 群ようこ (幻冬舎) ヒロコ[物書き]41歳、ミユキ[ヘアメイクアーティスト]44歳、マキコ[イラス トレーター]39歳。 朝までファミコンで盛りあがったり…と仲良し3人組!?の、なんてことない日常を 描いたもの。ほとんどが会話で成り立っています。 私ごときが言うのは大変おこがましいのですが、読み終わって何にも残らなかった 本。流して書いた?って感じ。軽くて読みやすいんですけどね。日々生活してるっ ていうのは、そんなに大きなことも起きるわけでもなく、こんな感じの積み重ねだ よね…というのはわかるんですが、何かもうひとつパンチが欲しかった…。(パン チってなんだ!?しかも古いぞ!) |