19999月読了
★印は、おすすめ
9/26 ウエズレーの国 ポール・フライシュマン(あすなろ書房)
9/25  乃南アサ(講談社文庫)
9/25  乃南アサ(講談社文庫)
9/20 ねこと友だち いとうひろし(徳間書店)
9/16 ななつのこ 加納朋子(東京創元社)
9/14 月曜日の水玉模様 加納朋子(集英社)
9/10 800 川島誠(マガジンハウス)
9/6 イントゥルーダー 高嶋哲夫(文藝春秋)
9/3 イグアナくんのおじゃまな毎日 佐藤多佳子(偕成社)

 9月26日(日) 「ウエズレーの国」 ポール・フライシュマン作
             
ケビン・ホークス・絵 千葉茂樹・訳(あすなろ書房)

amazon1999.6月発行・33P・1400円                    

絵本。夏におすすめしたい一冊だなぁ。

ウエズレーは町の他の子とは違っていた。みんなと違うことで、いじめっ子に
追いかけられるような毎日を送っても、彼は別に悩んでいるわけじゃない。
みんなと同じもの−ピザもコーラもサッカーも髪型も−それがいいと思わない
から、迎合しないだけ。自分のやりたいこと、好きなことをしてる。ただそれだ
けなんだよね。

そんな彼が夏休みの自由研究に選んだのは、自分だけの作物を育てて、自分
だけの文明をつくること!自分の家の庭に見事に「ウエズランディア」という国を
つくりあげていきます。

だけど話はそこで終わらない。
周りの子たちは、ウエズレーのやっていることをおもしろそうだと気づきはじめる
し、ウエズレーも自分で考え出したゲームを仲間でやる楽しさに目覚めていく。
お互いに変化していくんだよね。
そして夏休みが終わると、ウエズレーはひとりぼっちではなくなっていた…って
わけなのね。

全て自分で考え、自分で発明した「きかい」で、何もかも作り上げていくのは、
読んでいて痛快でさえあります。
そんなウエズレーが、どんどんカッコよく見えてきたりして(笑)

夏の青空に咲き誇る真っ赤な作物。満天の星の下、ハンモックで揺れるの気持
ち良さ。伸びやかな絵も、この本の大事な要素となっていますよ。


 9月25日(土)

 「鍵」 乃南アサ(講談社文庫)
amazon1996.12月発行・318P・552円

 「窓」 
乃南アサ(講談社文庫)

amazon1999.7月発行・318P・552円

「鍵」では、うるうる泣き〜、続編「窓」では、ハラハラドキドキ…。
(「窓」の見事に騙された?展開には、作者の巧さを感じました〜)
どちらも読み終わった後、あったかい気持ちが広がりましたよ。

相次いで父母を亡くし、三人で暮らしていくことになったきょうだい。
しっかりものの長女・秀子、一流商社を辞め、隠居生活のような暮らしをして
いる長男・俊太郎、そして女子高生の次女・麻里子。

どちらも、謎解きのミステリーとしてではなく、家族の物語の中に事件が絡み、
それに関わることよって兄妹が成長していく…成長物語、青春物語として読んだ方
が、おもしろいかな。

また麻里子を通して投げかけてられている、障害を持っていく生活していくつらさ
孤独を丁寧に描いているところに好感を持ちました。

麻里子になって一緒に喜び、一緒に悲しみ悩みを追いかけていく。
また一方では、長女の秀子になってそんな麻里子を見守る。
両方の気持ちになって読みました。

麻里子がどのような大人になっていくのか、次回作が読みたいなー。


 9月20日(月) 「ねこと友だち」 いとうひろし (徳間書店)

amazon1995.1月発行・109P・1300円

え〜毎度、いとうひろしさんで、すいません。だって、いいものはいいんだもん!
低学年からでも読めるこの本ですが、深いんだヨォ〜。

ひとり暮らしのおばさんの家で、暮らすことになった元ノラねこは、おばさんちで
飼っていたおさかなと友達になる。ところがある日、おさかなを助けようとして、
その匂いをかいでしまったねこは、妙な気持ちに襲われた。だって、そのおさかな
を食べたくて食べたくて、しょうがなくなってしまったんだから…。

このまま一緒に暮らしていたら、いつか友達のおさかなを食べてしまう…そう思っ
たねこは、さかなのいない国に行こうと旅にでたんだけど…というお話。

友達になっていく過程、そして、友達とは?生きるとは?食べるとは?
ねことおさかなをモデルに、そこんところをユーモラスに、ちょっぴり感動的に、
描いています。


 9月16日(木) 「ななつのこ」 加納朋子(東京創元社)

amazon1992.9月発行・254P・1400円

週末借りてきた、加納朋子さんの3冊の本のうちの2冊目。
先日読んだ「月曜日の水玉模様」より、こちらの方がおもしろかったな。

 一体、いつから疑問に思うことをやめてしまったのでしょうか?
 いつから、与えられたものに納得し、状況に納得し、色々なこと全てに納得してしまう
 ようになってしまったのでしょうか?
 いつだって、どこだって、謎はすぐ近くにあったのです。

七話の連作短編集。
主人公の短大生・駒子の日常に起きる謎が、愛読書「ななつのこ」の作者との文通に
よって、ひとつひとつ解けていきます。さらに、一話ごとに、その作中物語「なな
つのこ」の中の謎を織り込んでいく…。そんな構成になっています。

その「ななつのこ」の物語が、現実の七つの話の中にうまく融合されて、ちょっと懐
かしく、ノスタルジーな気持ちにさせられました。ミステリーとしてジャンル分け
しちゃっていいのかな…と思うほど、ファンタジックな内容です。

“さわやか”というと、安っぽく聞えてしまいますが、読後は、まさにその言葉に
つきました。正直言って、中だるみや物足りなさを感じたところもありましたが、
ラストあざやかでしたよ。

私は、一話目「スイカジュースの涙」の中の作中話「すいかお化け」と、六話目の「白
いたんぽぽ」が心に残りました。 

鮎川哲也賞受賞作です。


 9月14日(火) 「月曜日の水玉模様」 加納朋子(集英社)

amazon1998.9月発行・269P・1600円

中小企業のOL・しっかりものの片桐陶子と、通勤電車で知り合ったのんびり青年
の萩君。このコンビが、なにげない毎日の生活の中で起きる、小さな謎や出来事に
関わっていく…という短編集。

読み進んでいくうちに、あれれ??こ、これって、北村薫さんの「空飛ぶ馬」以下の
女子大生の“私”(最新作では就職してますけど)と、落語家の円紫師匠シリーズ
に、似てる気がするよぉ〜。(個人的には、北村薫さんの作品の方に、軍配をあげ
ちゃいますが)最初にそう思ったら、なんだか気持ちを挽回できないまま読み終え
てしまいました。

それでも併用して、“殺し、騙し、ドロドロ系〜”のミステリーを読んでいたとこ
ろでしたので、まるでオアシスのような、フワフワ柔らかい感覚が残りました。
企業の中におけるOLの立場や状況が、よく描かれていましたね。


 9月10日(金) 「800 TWO LAP RUNNERS 川島誠(マガジンハウス)

amazon1992.3月発行・254P・1262円

スポーツものは、とかく根性、努力ものになってしまう傾向がありますが、これは
“今の時代を生きている”青春もの。(…って書かれたのは1992年なんですけど)

テキ屋の息子、本能で生きてる?男の子・中沢と、山の手に住み、陸上以外に興味
を持たなかった広瀬。学校も、過ごしている環境も全く違うけれど、共に高校1年
生。そして、陸上競技800メートルの魅力に獲りつかれている…。

彼ら二人の陸上と恋・ひと夏の物語を、交互にそれぞれが語っていくという構成が
とってもいい〜。(語りのテンポもね!)

別々に生きてきた二人が、接点をもって、だんだんと二つの話が、融合されていき
ます。

800メートルを走る理由も意味も、生きてきた環境も、タイプも全く違う二人だけ
ど、誰よりも速く走りたいと思っていること。そして、当たり前だけど、陸上や恋
愛などさまざまなことで、葛藤し悩み、喜んじゃうというのは、同じなんだよね。
 
恋愛については、こんなのあり?何でもありかぁ?と、思うところもありますが、
この作品全体に流れている爽快感、躍動感で、ねちっこくない、サラサラした感覚
で読めました。その恋愛をする時の心理描写に、現実感があるせいもあるかなぁ。

 800は、早いスピードで走りながら、駆け引きしたり、走路妨害したり、
 時には相手を突きとばしたりするんで、「走る格闘技」と呼ばれ愛されている。
 「走る」っていうのは、まぁ、どっちかっていうと単純な運動。ところが、800
 メートルを できるだけ早く走ろうとすると、それは質的に違ってくるのです。

 書いているうちに、すべてのひとはTWO LAP RUNNERなのだ、なんてセンチメン
 タルなことに気づいてしまったのですよ。800を走るのが、生きることメタファー
 に思える。 自分の人生を見つめるとき、ひとはTWO LAP RUNNERになる。   
                                  (あとがきより)

  
(*TWO LAP RUNNER…トラックを二周する800メートル・ランナーのこと。
   *メタファー…隠喩)

今までトラックニ周の競技…としか思ったことがなかったのに、そんな駆け引き、
ドラマがある競技だったなんて、ちょっと感激。特別な距離に感じてしまった
800メートル。これから、この競技を違った目でみることになるかな。


 9月6日(月) 「イントゥルーダー」 高嶋哲夫(文藝春秋)

amazon1999.4月発行・322P・1429円

 「イントゥルーダー?」
 「侵入者。私たちは、コンピューターに入り込んできたものをそう呼んでいる。
  クラッカーやハッカーも含めて」

深夜かかってきた、一本の電話。昔、一緒に暮らした女性は「あなたの息子が重体
です」と告げた。彼、羽嶋浩司は、社長と二人、学生のベンチャー企業から大手コ
ンビューター会社に築き上げた副社長。妻と娘と暮らす。現在、彼の会社では、社
運を左右する新製品、スーパーコンピューターの開発が大詰めを迎えていた。

自分に息子がいたとは、全く知らなかった…。ひき逃げ事故で、集中治療室にいる
23歳の息子と初めて出会う。息子は父の存在を知り、父を尊敬していた。そして息
子も同じ優秀なコンピュータエンジニアだった。

事故に不審感を持った彼は、真相を知るために、また今まで存在すら知らなかった
息子の姿を追うように、奔走し始めます…。


前半、投げかけられる伏線。
複雑な糸がほどれていくように、少しずつ真相が見えていきます。
説明不足からか、ん?って思うようなところもありましたが、確かに存在していた
息子として、彼にも読者にも迫ってきます。親子の絆を描いた作品でもあるかな。

“イントゥルーダー”。コンピューターが絡んだ話でもありますが、彼の心の中に
息子がイントゥルーダーしてきた…とも読めました。
ただ、こういうラストにはして欲しくなかったな…という気持ちが残りました。

サントリーミステリー大賞・読者賞ダブル受賞作品です。


 9月3日(金) 「イグアナくんのおじゃまな毎日」 佐藤多佳子(偕成社)

amazon1997.10月発行・263P・1200円

佐藤多佳子さんの作品は、テンポ…リズムが良くって好きなのね。児童書です。

11歳になった樹里がもらった誕生日プレゼントは、“生きている恐竜”イグアナ。
くれたのは、親戚の徳ジジイ。いつも意地悪で、そしてパパの学校の理事長だ。
ヤツのご機嫌をそこねると、ウチは<食うのに困る>といつもパパに言われてる。

改築して作ったばかりのサンルーム。
パパは、そこで本を読もうとし、ママは、そこで植物を育てるつもりだった。
しかしイグアナは、南の国の生き物だから、25度以上40度以下の温度で飼わね
ばならず、サンルームはイグアナの部屋と化してしまう。

押し付けられるように飼わされたイグアナ−名づけてヤダモンのせいで、家族の間
にはケンカが絶えなくなっていきます…。

突然現れたお邪魔な存在に、一家の生活は一転、ふりまわされることに。
早起きしてイグアナサラダは作らなきゃいけなくなるし、大事にしていた本も、
花の鉢もズルズル、ビリビリ…。
それでも、家族がだんだんと、イグアナとの生活を受け入れ、心合わせていく様子
がユーモラスに、歯切れ良く語られていきます。このヤダモン、だんだんとかわい
く思えてくるから不思議です。

 ※現在、文庫化(中公文庫)されています。

 ★ 戻る