季節やテーマ沿った絵本の紹介    

    <8月・8月だから…考えてみたい平和>
           


まずは、絵本から…。
じゃがいもかあさんアニータ=ローベル作 いまえよしとも訳(偕成社)
amazon1982.7月1日発行・40P・1400円
むかし、いくさをはじめた東の国と西の国の谷間に、ひとりのかあさんが
ふたりの息子と住んでいた。広いじゃがいも畑と、むすこをいくさから守
るため、かあさんは、家の周り全てをとりかこむ塀をつくった。

ある日のこと。りっぱに育ったふたりの息子は、塀ごしに大勢の兵士たち
をみる。あでやかな軍服ときらきら光る剣、ぴかぴかの勲章に憧れたニ人
は、兄は東の国へ、弟は西の国へと行ってしまった。

やがて、それぞれの軍隊で将軍と司令官になった二人は、いくさで食べ物
がなくなり、腹をすかせた兵士たちとともに、かあさんのもとへ戻ってき
た…。


偕成社の復刊絵本。

使われているのは黒・赤・青の三色のみの色彩。地味めの本ですが、いく
さの愚かさを、昔話仕立てで、わかりやすく描いていきます。

表紙に描かれているのは、かご一杯のじゃがいもを抱えて立っている、か
あさんのふっくらと温かい姿。淡々したストーリーですが、そのかあさん
の母親としての願いと嘆き、怒りが伝わってきます。

そして、それでも、もくもくと仕事をし、ひとりでじゃがいも畑を守り続
けるところに、母親というものをみたなぁ。

作者のアニータさんは、「どろんここぶた」や「ふたりはともだち」を書
かれた、故・アーノルド=ローベル夫人。1934年ポーランドに生まれ、子
どもの時、ユダヤ人の強制収容所に入れられ、命が助かったという経験を
持つそうです。
「六にんの男たち−なぜ戦争をするのか?マッキー作(偕成社)
この世に、なぜ戦争が起こるのだろう?…そんな問いに答えた絵本。

こんなつまんないことで争いが起きて、それが大きくなっちゃうの??
こんな人間のつまんない欲望のせいで、人が死んじゃうの??

何かを手に入れるとまた、もっと欲しくなる。そして、またもっともっと
欲しくなる…。ある意味、争いの全ての根本的なことは、そんなものがは
じまりなんだろうなと、思ってしまいました。色のついてない線画の絵本
です。むずかしい言葉は使っていませんので、1、2年生からでも大丈夫
でしょう。 
「風が吹くとき」レイモンド・ブリッグズ・作 小林忠夫・訳
                           (あすなろ書房)
amazon1998.9月発行・1600円
 「さむがりやのサンタ」で、おなじみのブリッグズ。この絵本も、コマ割
形式で進んでいきますが、がらっと趣が違います。

定年後、田舎に引越し、静かな生活を送っていたイギリスの夫婦。
彼らは、政府のいうことを何の疑いもなく信じ、原爆が落ちた後も間違っ
た知識のもと生き伸びようとアタフタします。核、原爆について驚くほど
そして滑稽なくらいなんの知識もありません。だからこそ素直〜に信じ、
そして死んでいってしまう…。知識の詰め込みはつまらないけど、反対に
無知−知らないってこともほんと怖いです。やりきれなさが残りました。

なお、私は小林忠夫氏の訳で読みましたが、現在は、同じ出版社からさく
まゆみこさんの訳ででています。
「はらっぱ−戦争・大空襲・戦後…いま西村繁・画 神戸光男・文
                             (童心社)
amazon1997.2月発行・35P・1500円
東京のある町の、ある「はらっぱ」。そのはらっぱの移り変わりを描いた絵
本です。

遊び場がイモ畑になり、空襲にあい、また遊び場に戻る…。はらっぱが、
くぐり抜けてきた60年のさまざまな出来事を記録しておきたい、それを絵
本の形で広く伝えたい…。そして、自然がいっぱいで昔はよかったという
人もいるけれど、戦争の日々を考えると、そうともばかりは言えないので
は…という作者の気持ちが伝わってきます。
「絵で読む広島の原爆」那須正幹・文 西村繁・絵(福音館書店)
amazon1995.3月発行・83P・2600円
長い時間をかけて書かれたという、同じ西村繁さんの絵本です。

原爆の開発から投下に至る歴史背景、広島の町の様子や人々の暮らし、核
兵器の原理など、知っておきたい資料もふんだんに使われています。大人
の方にも、一度目を通していただきたい本です。
「ひろしまのピカ」丸木俊(小峰書店)
amazon1980.6月発行・1500円
20年以上前に書かれた絵本ですが、まだ現役です。

原爆の開発から投下に至る歴史背景、広島の町の様子や人々の暮らし、核
兵器の原理など、知っておきたい資料もふんだんに使われています。大人

7歳のみいちゃんが朝ご飯を食べていた時、ピカッというおそろしい光が、
空をつらぬきました。みいちゃんは、おかあさんと体に穴があいてしまっ
たおとうさんと一緒に地獄の街をにげまどいます…。

あの日広島で、こんなことがあったんだよ…と伝える最適な本でしょう。

「ピカは、ひとがおとさにゃ、おちてこん」
おかあさんの言葉が、心に残りました。5〜6年生くらいから。
彼の手は語りつぐパトリシア・ポラッコ 千葉茂樹・訳
                          
(あすなろ書房)
amazon2001.5月発行・47P・1600円
舞台は、南北戦争。

戦場で傷を負った15歳の北軍白人兵士・セイは、同じ北軍として戦ってい
る黒人の少年・ピンクに助けられる。ピンクは、セイを支えながら、長い
距離を歩き通し、自分の家に連れていく。そこには、母親のモーモー・ベ
イが、息子の帰りを待っていた…。

作者のポラッコは、セイの子孫にあたる。物語は、この黒人の少年・ピン
クのことを忘れないように…と、ポラッコの家に 130年もの間、代々語り
継がれてきた実話だという。地味な絵本だけど、淡々と語りかけてくるも
のは、深くて大きい…。ピンクが戦いに参加していた意味を、このような
少年が生きていたという証を…ひとりでも多くの人に読んで欲しいと思わ
せる作品である。タイトルも、いいよねー。

実話というのは、それだけで力がある。だからこそもう少し、その背景に
あるものを(時代背景や、奴隷制度、南北戦争について説明が)盛り込ん
であると良かったかなぁと、個人的には思う。

小学校中学年くらいから読めると思うけど、ちょっと難しいところもある
かもしれない。まぁ、わかるより、感じて欲しいというところだが、その
子に合わせて、さりげない大人のホローも必要かと思う。(そういう私も
黒人のピンクが、どうして北軍の兵士として戦ってるんだろう??と、訳
者あとがきを読むまでは、わからなかったんだけど(^^;;

児童文学では…。
「あのころはフリードリヒがいた」ハンス・ペーター・リヒター
                          (岩波少年文庫)
amazon2000.6月発行・255P・680円
作者のポラッコは、セイの子孫にあたる。物語は、この黒人の少年・ピン
クのことを忘れないように…と、ポラッコの家に 130年もの間、代々語り
継がれてきた実話だという。地味な絵本だけど、淡々と語りかけてくるも
のは、深くて大きい…。ピンクが戦いに参加していた意味を、このような


ユダヤ人の友だちと遊んだ少年は、ヒトラー・ユーゲントに入団する…。
 “目撃者ではなく、自分は戦争に加担した”と語る、著者リヒターの苦
悩から、生まれた作品です。

こおりつくような衝撃でした。法律や公示などで、ユダヤ人を次々と束縛
していく。 “私だったら、どうする?”と、常に考えながら読みました。
巻末にユダヤ人に公布された法律が、年表になっているので、見比べなが
ら読んでみて。中学生くらいから大丈夫でしょう。
「弟の戦争ロバート・ウェストール(徳間書店)
amazon1995.11月発行・172P・1200円


テレビで流されていた、その映像は、まるで花火を見ているような…。そ
んな感覚にさえ陥った湾岸戦争の報道でしたよね。覚えていらっしゃる方
も多いはずです。

「弟の戦争」は、その湾岸戦争を題材にした児童文学です。

トムの弟フィギスは、遠く離れた人の心を読み取る不思議な力を持ってい
た。そんな弟が、ある日奇妙な言葉を話し出し、「自分はイラクの少年兵
だ」と言い出す。それはイラクがクウェートに侵攻、湾岸戦争が始まった
夏のことだった…。気がついたのは、兄のトムひとりだけ。イラクの少年
ラティーフがフィギスにとりついたなら、フィギスの魂は戦場のラティー
フの中にあると気がついたトムは、それからは、今までと全く違った目で
この戦争を見ることになります…。

弟にとりついたものでしかなかったイラクの少年ラティーフが、次第に生
きた少年として、読んでいる方にも迫ってきます。こういう形での戦争文
学(…といっていいかわかりませんが)もあるんだなと、目からウロコの
思いです。

イラクに暮らす人たちは、ぼくらと同じ、普通の人たちでした。そして、
つらい思いをするのは、いつだって普通の人たちなのです。(訳者あとが
きより)


きれいな戦争なんてあるわけがなく、やっぱりあの花火のような爆弾の下
には、たくさんの人々の命が、生活があるわけなんだよね。そこを、ごま
かされないようにしたいな…。

読むとしたら、中学生以上なら大丈夫でしょう。

写真と文章で綴る戦争…。
「子どもたちの戦争」マイア・オーセイミ著 落合恵子・訳(講談社)
amazon1997.8月発行・158P・2200円
トットちゃんとトットちゃんたち」黒柳徹子(講談社)
amazon1997.7月発行・346P・1500円
“大人になったら、もう一度子どもになりたい。だって、ぼくには子ども
時代がなかったのだから”


戦争・内戦・虐殺・飢え・貧困…。それは遠い昔の話ではありません。今
現在も、世界のどこかで苦しんでいる子どもたちが、たくさんいるんだよ
ね。子ども時代を奪われ、心も体も傷ついている子どもたち…。

1枚、1枚の写真が静かに、そして多くのことを語ってくれます。あまりの
実情に言葉を失います。人って、生まれて来る時、親も選べないけど、生
まれてくる国だって、選べないんだよね。こういうことが起こった、今起
こっているんだと、まず知ることからはじめること。大事なことなんじゃ
ないかなぁ。
          
 

   ★ 戻る