Nordic Notes

(芸術新潮 2004年1月号掲載記事より抜粋)

 ブリテン諸島のトラッド・フォーク・リヴァイヴァル運動に刺激される形で、北欧のトラッド・フォーク・シーンが徐々に活性化しだしたのは、'70年代半ばのことだ。各地でポツポツと始まったフォーク・フェスティヴァルによって自国の伝統音楽に関心を向けるロック世代のリスナーが増えてゆき、やがて20世紀に入ってからはほとんどすたれていた伝統楽器を手に取り独習する者なども現れ始める。 '80年代に入ると、そんな動きを国もバックアップするようになり、伝統音楽を志す者の数が更に増加。たとえばフィンランドで、ヴァルティナを筆頭とする新しいバンドが続々と登場し、'90年代の大活況を呼び込んだのも、'80年代前半に、クラシック音楽の殿堂であるシベリウス・アカデミーが新たに民俗音楽学科を設け、若手音楽家を積極的に育成したためである。

 スウェーデンの場合、スウェーデン王立学院に、正式に民俗音楽学科ができたのは '90年代半ばのことだが(“トラッド界のアバ”と呼ばれる若手の人気バンド、ラーナリムのうち3人もそこの出身)、既に'80年代半ばには、トラッド・フォーク・リヴァイヴァル第一世代のミュージシャンたちが、学内で若者の指導にあたるようになっていった。たとえば、フルート/マンドーラ他のマルチ・フレイヤーであるアレ・メッレルや女性フィドラー/シンガーのレーナ・ヴィッレマルク、あるいはトラッド・フォーク・バンドのグルーパなどだ。演奏家として、また時に教師としての彼らの活躍がなかったら、多くの若手が競い合う現在のスウェディッシュ・トラッド・シーンの活況はなかっただろう。

 伝統音楽歌手として抜きん出た実力を誇りつつも、同時にジャズも歌ったりするヴィッレマルクは、ソロ活動と並行して15年ほど前からメッレル他とフリーフォートというトリオを組み、現在もすぐれた作品を作り続けている。フリーフォートのメンバーに更に数人が加わったノルダン・プロジェクトは、よりジャズにシフトした実験的な作品をECMレーベルから何枚も発表しているので、ご存知の方も少なくないはず。またグルーパの新作『フヤァラル』も、2003年にドイツのグラミー賞にあたるドイツ音楽大賞を受賞したほどの大傑作だ。これらヴェテランたちの作品をはじめ、スウェディッシュ・トラッド系の作品に、やたらと秀作、実験作が多いのは、同国の伝統音楽家たちの層の厚さをそのまま表していると考えていいのだろう。

 英米のロックを聴きあきた方々に、是非とも足を踏み入れてほしい沃野だ。

■文中に登場するアーティストのCD■

フリーフォート
『スルーリング』
DHN-1032
品切れ中

グルーパ
『フヤァラル』
DHN-1043
品切れ中

ラーナリム
『カラフル・ワールド』
DHN-1035
\2,500(税抜)
\2,625(税込)

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