nito 様の作品
−babylight−(優しい光)
なんだ、お前?このアラン様に何か用かい?
・・・・うん?隊長とアンドレの話しが聞きたい?
また、懐かしい名前が出てきたな。
まあ突っ立ってないで座れよ。目の前にたたれたんじゃ、こっちが落ちつきゃしねえ。
おい、ちょっとそこの窓開けてくれ。息苦しくってたまらない。
・・・・・・・・・もう秋の風なんだな。
ああ・・・・・・・・・・あれはこんな秋晴れの日だったっけ。
************
衛兵隊兵舎の敷地内には、小さな礼拝堂があった。
もっともあの衛兵隊に、くそ真面目に礼拝する奴なんているはずもないから、人気など滅多にない。
その裏には大きな金木犀があってな。
はじめて見る奴は、それが金木犀の木だなんて気がつかないくらい、本当にでかいやつなんだ。
その大きな金木犀の木がある礼拝堂の裏庭は、いつも俺達の格好のさぼり場所になっていたよ。
で、オレ様はいつものように裏庭で昼寝と洒落込んでたわけだ。
金木犀の香りと温かい空気に、いい気分でうとうとしてたら不意に声が聞こえてきた。
「オスカル。おい、オスカル」
「ん・・・・・・・・・ここだ、アンドレ・・・・・」
目をつむってたってすぐに分かる。
隊長の声だ。
オレは一応訓練をサボってる罪悪感も手伝って、慌てて近くの植え込みに隠れた。
でも、隊長は一体どこにいるんだ?
オレがこの裏庭に来たときは誰もいなかったし、ここに来てからも誰かが来た気配は今まで無かった。
なのに、隊長の声がする。
オレは不思議に思ってこっそりと植え込みから顔を出して覗いてみた。
でも、そこには今やって来たばかりのアンドレの姿しかない。
そのアンドレは何の迷いもなく真っ直ぐ金木犀の木下に歩いて行くと、優しい声を出した。
「オスカル、時間だぞ。休憩はおしまいだ」
「もうか・・・・・・」
普段オレ達には絶対聞かせないような、不貞腐れた子どもみたいな声が木の上から降ってくる。
オレがビックリして木を見上げると、眩しいくらいに満開になってる金木犀の中から隊長のブーツが覗いた。
「おい、お前まだ寝ぼけてないか。落ちるから、ちゃんと目を覚ましてから降りてこい」
「平気だ、まったくばあやみたいに口うるさい奴・・・・・わあっ!」
落ちるっ!
オレは思わず目をつぶっちまった。
「だから言わんことじゃない・・・・・。おい、大丈夫か」
「ああ。お前こそ大丈夫か」
意外と平気そうな隊長の声に恐る恐る目を開けてみれば、隊長はしっかりアンドレの奴を下敷きにしてる。
どちらかと言えば、あれじゃアンドレの方が怪我をしていそうだ。
でも、アンドレの奴は嬉しそうな顔で、
「本当に怪我はないな?」
「大丈夫だって言ってるだろう。心配性だな」
「お前に関しては、心配してしすぎるって事は無いんだよ」
笑いながら立ちあがる二人に、まだ揺れ続けてる金木犀の花がちらちらちらちら舞い落ちて。
まるで光の中にいるみたいだった。
光の中の二人の笑顔が、キレイだったよ。
まるでこの世のものじゃないくらい・・・・・・・・。
そういや、あの二人がいなくなっちまったのは、次の年の7月だったな。
あの金木犀の木の下で笑ってたときから、一年もたってやしない。
なんだか、あの金木犀が二人を気に入って、連れていっちまったみたいだな。
ん?もう帰るのか?
じゃあ帰りにあの辺によって、今年も金木犀が咲いてるか確かめてきてみなよ。
きっと今年も、きれいな金の花を咲かせてるはずだぜ。
隊長の髪の色みたいな、きれいな金色に光る花をな。
最後に?なんだい?
・・・・・・・・・訓練サボって隊長から怒られなかったかって?
おうさ。司令官室呼び出されたよ。
・・・・・・・・・・なに笑ってやがる?
ん?黙って叱られてたわけじゃないんだろうって?
そりゃあさ「はっ、隊長が木から落ちないよう、訓練も休んで密かに護衛していました」って言ったら、
真っ赤になって許してくれたぜ。
さ、これでアラン様の話しはおしまいだ。
じゃあな、気をつけて帰りなよ。
** タイトルについて **
赤ちゃんが周囲に振りまいてくれるような、
優しい気持ちや光、みたいなニュアンスで。
nito様より
オスカル様いつまでも子供のように木登りとは…(^^;)
アンドレはいつまでも心配が絶えませんね〜
こういうシーンを盗み見れるアランが羨ましいです。
爽やかでほのぼのとした作品をありがとうございました。
背景はアラスの写真集からです sato
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タンポポが辻
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