今回のコラムの目的は極めてシンプルで、本編「マッチボックスのアメリカン・ポリス」で触れた「ファイブ・パック」(マッチボックス5点入りギフトセット)とはどんなものかを、画像でお見せしたかった、ということに尽きます。
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ところがこれは、たまたま「ベーシック」と言われる通常のファイブ・パック製品ではなくて、「スーパーマン・リターンズ・セット」というキャラクター・セットなのですね。私は普段はファイブ・パック中のポリスやタクシーを、バラのルース品で買うことが多く、箱入りのセットそのものを買うことは滅多に無いのですけれど、新クラウン・ヴィックのポリス、黄色いチェッカーキャブのメトロポリス・オリジナル仕様にすっかり目を奪われて、珍しくパックごと買ったというわけです。
前回の「マッチボックスのアメリカン・ポリス」の更新時に旧クラウン・ヴィックの「メトロポリス・ミュージアム」仕様をご紹介し、その時に「スーパーマン・リターンズ・セット」は2種ある、と書いたのですが、結局私の入手したセットは3種目のものだったようです。
セット中のミニカーは劇中の仕様というわけではなく
て、全てマテルがデザインしたものです。例えば映画の中で隕石を展示している博物館(ニューヨークの自然史博物館を思わせる)は登場しますが、そこのセキュリティ車としてのクラウン・ヴィックは登場しない、といった具合です。
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箱は「ベーシック」の「ファイブ・パック」と同じ、ミニカーをタテに5台を並べたものですが、正面に大きくスーパーマンの「S」のエンブレムが付き、側面にはクリストファー・リーブに代わって「リターンズ」でスーパーマン役となったブランドン・ラウスが描かれています。
と言うことは、マテルはこの「スーパーマン」シリーズのミニカーを出すにあたって、商品化許諾を受けているわけで、箱の裏面には、「DCコミックス」「ワーナーブラザーズ」「フォード」「GM」の許諾を証する各社シンボルマークが並んでいます。つまりマテルは、かなりのお金を商品化権の取得に使っていることになります。
メット・トイ時代のコーギーが、バットマンをはじめスーパーマン/007シリーズ/ナポレオン・ソロ(UNCLEから来た男)/チキ・チキ・バン・バン/ビートルズ/グリーンホーネット/セイント/スパイダーマン/チャーリーズ・エンジェルなどの名だたるコンテンツと提携したキャラ車を出していたのはご存知の通りですが、いまやその「お株」は完全にマテルが奪ったと言っていいでしょう。
マテルとワーナーとの契約は、ワーナー本体ではなく「ワーナーブラザーズ・ワールドワイド・コンシューマー・プロダクツ」というグループ会社との間によるもののようで、この会社はワーナー関連のグローバルでのライセンス契約や商品化権を一手に取り仕切っているようです。この中には、「バットマン」「スーパーマン」をはじめ、TV番組である「ER」、最近では「ハリーポッター」までが含まれます。何とマテルは「ハリーポッター」に関する玩具のライセンス権も2000年2月に取得しています。
「DCコミックス」は、「スーパーマン」「バットマン」「スーパーガール」「キャットウーマン」「ワンダーウーマン」などのヒーローたちを輩出させた会社ですが、1969年にワーナーブラザーズの子会社となりました。 マテルは同社との契約によって、「ワンダーウーマン」や 「スーパーガール」と「バービー」(マテルの余りにも著名な女の子向けドール玩具)とのコラボレーション製品も作lりました。
マテルは、「スーパーマン」系はマッチボックスから、「バットマン」系はホットホィールから商品化する、というように、戦略的顧客層の違いを意識したブランドの仕分けを行っていることにもお気づきでしょう。
また、最近のパラマウント映画「トランスフォーマー」はもうひとつのアメリカ玩具大手であるハズブロー社(G.I.ジョーの商標を持っている会社)との契約関係で最初から制作されていることもご記憶でしょう。つまりマテルのマッチボックスやホットホィールでは「トランスフォーマー」関連商品は出せない、ハズブローは「バットマンカー」は出せないのです。
このように、人気のある著名コンテンツ(映画/TV/コミック/ミュージカル/音楽など)の商品化ライセンスは、玩具メーカーにとって生命線とも言える重大事なのですね。これらとの提携関係いかんによっては、空前のヒットをとばすことも出来ますし、一方でライセンス権(商品化許諾権)の取得にある程度のお金を払った以上は、これまたある程度以上のヒットを作らないと採算が合わない、ということにもなって来ます。常軌を逸したヒットに対応するべく、増産のための設備投資を焦り、ブームが終わった頃には過剰投資・過剰在庫を抱えて経営危機を招いた会社も数知れません。
しかし考えて見れば、「マテル」「ワーナーブラザーズ」「DCコミックス」というのは、いわば「最強」の組み合わせであり、それも全てアメリカ企業で占められているところがミソなのです。
日本の玩具メーカーもライセンス権の獲得には熱心で、トミカが「ディズニー」のシリーズを出していることもご存知でしょう。しかし国際競争力という視点で見れば、これでは「最強の組み合わせ」にならないのですね。トミカが商品を売っても、そのお金の一部は結果的に「ディズニー」に流出して行ってしまうからです。京商はフェラーリとの直接契約ではなく、マテルとからのサブ・ライセンスで、フェラーリ商品を売っていたようですが、マテルからの契約解消通告にしたがって今後フェラーリ商品を売ることが出来なくなるようです。(当初の2008年3月末という期限を2008年12月まで延長したとのこと。)
「契約」であるからには当然「期限」があり、必ず金銭が絡みます。特に「独占商品化権」をどこかの会社が持っている間は、他社は全く商品化が出来なくなります。せっかく金型などに投資した自社の事業を自社ではコントロールできないところが、ライセンス権の絡むビジネスのむずかしいところだとも言えるでしょう。
これからの日本の国際競争力の一端は、マンガ/アニメーション/ゲームなどのコンテンツ・ビジネスが担うだろうと言われていて、役所などにもその方向での動きがあります。もしそうだとするなら、原作─映像化─商品化を全て日本企業の最強の組み合わせで作って行く必要があるのですね。
結果としてヒットした映画やテレビのコンテンツの商品化許諾権を「あとから」取得するのではなくて、はじめから放映権や商品化との連動性を戦略的に設計したコンテンツづくりに玩具メーカーが参加して行く必要があるのです。最近はTV局、広告代理店、商社などによる映画への出資が盛んですが、背景はそういうところにあります。
「ALWAYS 三丁目の夕日」の「鈴木オート」のミゼットを私も買いましたけれど、どうも日本人はいつのまにか、プラモデルやミニカーに対する考え方がマジメ過ぎるものになってしまったのではないでしょうか。荒唐無稽なトイカーを夢想するのではなくて、「ウェザリングと使い込んだ車体のサビのチッピング表現」などという方向にすぐに行きたがるのは、最近の模型・ミニカー界の悪いクセのような気がします。
いつか全世界に夢を提供できる、「任天堂」「ジブリ」「タカラトミー」などオールジャパン最強チームの組み合わせによるキャラ車のミニカーを見てみたいものです。
このテキストを書いている途中で、タカラトミーが中国に一極集中しているトミカの生産を、ベトナムの工場に新製造ラインを建設して3年以内に全面移管する、というニュースがとび込んで来ました。理由は中国での人件費上昇と、輸出産業への優遇策縮小による低コスト生産拠点としての優位性低下だということです。ミニカーもやはり時代の流れから自由ではないということなのでしょう。
トミカの裏板で見慣れた「CHINA」の文字が「VIETNAM」になる日も遠くないものと思われます。
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