第1幕
ドン・ホセとカルメンの出会い

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 あらすじ

セビーリャのタバコ工場の衛兵ドン・ホセは、タバコ女工のカルメンと出会います。
時を同じくして、彼の母親の手紙を携えてミカエラが訪ねてきます。
手紙を読んで、ミカエラとの結婚を決意するドン・ホセ。
そのときタバコ工場の中でけんか騒ぎがあり、女工仲間を傷つけたカルメンが逮捕されます。
彼女を連行することになったドン・ホセですが、篭絡(ろうらく)されて逃がしてしまいます。


 ドン・ホセの出自

このオペラを理解する上でドン・ホセの出自は重要なのですが、台詞で語られるため、グランド・オペラではカットされてしまうことが多いようです。

ドン・ホセがスニガに語っているところによると
・ナヴァラ地方の出身である
・キリスト教徒である
・けんかが元で故郷を離れ、軍隊に入る
ということが分かります。

出身地のナヴァラ地方というのは古くはナヴァラ王国で、バスク語を話し、カスティーリャに併合された後も副王制下の形態を残す特権体制を取っていました。

特に小説版では、言葉も文化も違うアンダルシア地方において、ドン・ホセはスペイン人である以上にナヴァラの人間であるという自覚があるように見受けられます。


 ちっちゃなミカエラちゃん

第1幕の幕が上がると、ミカエラがドン・ホセを訪ねてやってきます。
あいにく当番の隊が違い、彼女は出直すことにしていったん退場します。

ドン・ホセの母親の手紙を携え、息子へのキスまで預かってきたこの女性、どういう関係なのでしょうか?
これもオペラ・コミック版の台詞で説明されています。

彼女はドン・ホセの実家で育てられた孤児です。
ドン・ホセが故郷を離れるにあたり、母親と一緒にセビーリャから10qほどの町に引っ越してきて暮らしています。
この時点で父親は亡くなっていますので、ドン・ホセの母親からすれば唯一の家族ということになるでしょう。
ドン・ホセからすれば、妹のようなものだったかもしれません。

ちなみにカルメンの衣装が演出により様々なのに対し、ミカエラの衣装は大体同じようなイメージになっています。
これも台詞の中に説明があるからで、お下げ髪に青いスカートというのは、ドン・ホセの故郷の女性のスタイルなのです。

台詞の中でドン・ホセは「小さなミカエラが」と言っていますが、年齢は明らかにされており、17歳です。


 タバコ工場

19世紀のセビーリャでは、タバコが重要な産業となっていました。
そのタバコ工場の護衛をするのが、ドン・ホセ達の隊の役目です。

が、事件でも起きなければ全く暇なお仕事。
兵士達はダラダラと交替まで時間をつぶしています。

季節は初秋。
タバコ工場では400〜500人もの女工達が下着同様の姿で働いています。
タバコ工場の目の前に兵隊さんの屯所。
男子校と女子校が隣り合わせにあるようなもので、何をするっていったら、そりゃ……(笑)

ところがドン・ホセはいたって真面目。
女工をからかったりすることもありません。

これは単にドン・ホセが堅物という理由だけではないようです。
先述したようにドン・ホセはナヴァラ地方の人間で、どこかしらスペイン人をだらしなく思っている節があります。
台詞の中でも女工達について「ふしだらだ」とか「アンダルシアの女が怖い」などと言っています。

恐らくそういった理由で、カルメンにも興味はなかったのではないでしょうか。
逆にそれがカルメンの気を引くことになるのですが……


 ちょろい?ドン・ホセ

言い寄る男達に目もくれず、自分に興味を示さないドン・ホセに花を投げていくカルメン。
不意打ちを食らって動揺するドン・ホセ。

その後、カルメンはけんか騒ぎを起こし、逮捕されます。
女工仲間とのけんかのあげく、作業用の小刀で相手の額を十字に斬り付けたのです。

初っぱなから強烈なイメージのカルメン。
連行するドン・ホセに、逃がしてくれたらリーリャス・パスチアの酒場で落ち合いましょうと「セギディーリャ」を歌います。

グランド・オペラではこの歌1曲で逃がしてしまうような雰囲気なので、ドン・ホセがちょっと「ちょろい」んでないかい?と思われますが、なかなか深い心理戦があったんです。

オペラ・コミックの台詞では、カルメンはドン・ホセに自分もナヴァラの出身だから、同郷のよしみで逃がしてくれと口説きます。

小説版では言葉についての記述はもっと詳細で、バスク語を話すドン・ホセはスペイン語に独特の訛りがありました。
そこをカルメンに見破られ、バスク語で話しかけられるのです。

もちろん、カルメンは見た目も中身もジプシーなのですが、あちこちを旅していたおかげで様々な言葉を操れたとあります。
でたらめなバスク語にうそだと知りながらも、心乱されるドン・ホセ。

オペラでは「愛してくれるか」とまで歌っているのですが、小説ではカルメンの「道の途中で突き飛ばすから倒れてくれ」との提案に「やってみせろよ」というニュアンスの言葉にとどまっています。
この間「知らない言葉」で女と話していたと後に証言され、ドン・ホセは営倉入りすることになります。



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