「1番」の夏祭り
「1番」の夏祭り(2000年8月29日)
8月29日火曜日、連日の精神的にハードな仕事からのつかの間の解放を得て、コンサート会場であるZepp Osakaへと向かっていた。会場があるコスモスクエアについては何の予備知識もなく、阪急電車の梅田駅から地下鉄駅に乗り換えて、切符売り場の料金表を見てとても驚いた。阪急の河原町−梅田間(390円)よりも、梅田からコスモスクエア駅に向かう料金(460円)の方が高いのである。
腑に落ちぬまま、御堂筋線の本町駅で中央線に乗り換えて、一路コスモスクエアに向かう。その手前の大阪港駅あたりからようやく事情が分かってきた。詳しい事情は分からないが、どうやらコスモスクエアとは、大阪港を跨いで造られた人工島であるようだ。電車のドアが開くと、磯の香りが漂ってくる。この駅辺りまで来ると、乗客はほとんどがコンサート会場に向かう客ばかりであるようだ。
磯の香り立ちこめるコスモスクエア駅を降り、いざ会場に向かおうとすると、巨大な建物はポツリポツリと散在するものの、やたらと広大な空き地が目立った。また、海に囲まれていることから、塩害などによる建物の早くからの老朽化も予想される。いつ頃から大阪市はこの事業に着手したのかは分からないが、人工島という一大プロジェクトをやっておいてこんな状態では、SimCityでは確実にダメ市長の烙印を押されるであろう。
そのような外面的なことに関する思いを携えながら、夕暮れの灼熱の中を汗を拭いつつ歩いて、会場であるZepp Osakaに到着した。コスモスクエア駅から丸見えではあったが、やや小振りな建物である。ライブハウスと聞いていたからそのようなものなのかと考えていると、私が観にきた以前の2回のコンサートでもお会いしていたKuwamomoさんと再会。彼の友達との会話の中で分かったことなのだが、「これで36回目のコンサート」であるとのこと。さすがはKiroroフリークである。先日10万Hitした彼の運営する個人サイト(相互リンク)は、とても情報量が多いのでお世話になっている(今回の公演についても詳細な報告がなされている)。
このコンサートに来る前から分からなかったことがあった。ファンクラブの特典でチケットを先行予約で入手していたのだが、その整理番号が「1番」となっていたのである。今回は会場の1Fはオールスタンディング(総立ち)で行われるライブであるから、まさか席番号ではあるまいしと思って、出店で買ったスポーツドリンクを飲みながら、すでに東京と福岡の公演をめぐってきたKuwamomoさんに聞いてみると、
「まさか1番の人に会えるとは思わなかった!」
と驚かれてしまった。どうやら、正真正銘の一番最初に入場できる人であるみたいだ。いくら抽選でその番号が決められているとはいえ、締め切り日ギリギリで申し込んでいただけに、またKuwamomoさん(五十数番だったかな)のようなフリークには申し訳ないという気持ちからも、それに対する疑念は拭えないまま、残暑厳しい夕暮れの中で滴り落ちる汗は拭いながら開場時間の午後6時を迎えた。
そこでイベント会社のアルバイトのお兄ちゃんから
「まずは整理番号1番から10番の方、どうぞ〜」
と声がかかった。うわー、ラッキー(^_^)vと小躍りする気持ちを抑えつつ、整然と列の先頭に並んだ。こうなると開演が待ち遠しい。どんなに至近距離でKiroroを見ることができるだろう・・・・。正直、今回のライブでメインに歌われる曲が収められているミニアルバム「七色」には不満がなくもなかったが、近くであのチャーミングな二人を見れればいいやという気持ちに変わりつつある。もっともこの「七色」に対する不満も、ライブの進行と共に、ヴォーカルの千春さんの抜群の歌唱力のおかげで徐々に静められていって、たっぷりと満たされるのではあるが・・・・。
係員の手慣れた慎重な指示に従いつつ、ゆっくりと会場に入場する。弱めに冷房は効いているものの、暑さは拭いきれない。会場の中が全体的に黒く塗られているのも心理的影響としてあったのかもしれないし、何よりも熱心なKiroroファンの熱気がそうさせたのかもしれない。
係員の誘導が終わり、いざ入場ということになってみると、最前列からステージまでは胸まである高さの手すりを挟んでわずか2,3mほどしかない。しかも、綾乃さんが弾くキーボードと千春さんの歌うマイクの真っ正面である。これには驚いた。
開演時間の7時までその位置で立ちながら、隣り合わせになった整理番号9番の女性と、この位置に立てた喜びなどを話していた。二十歳くらいの彼女によると、彼女のお母さんもKiroroファンであるとのこと。二階の椅子席で観ているそうだ。相変わらずのKiroroファン層の広さを痛感した。
ちなみに、終演間近にKiroroが教えてくれたのであるが、2列目の近いところに70代と思われるおばあちゃんがいて、何と開演中の2時間近くずっと立ち続けていたのである。これには本当に驚ろかされた。また、2,3列目には四・五十代と思われるおばさんも多くいて、幅広い年齢層のファンを持つKiroroであることを改めて実感した。
いよいよ開演である。華々しく登場してきたKiroroによると、今回のライブのキーコンセプトは「お祭り(夏祭り)」であるとのこと。千春さんが「お祭り気分で、たっぷりはしゃいで、たっぷりと汗を流して、ぐっすりと眠ってくださーい」と観衆に呼びかけた。それに対して、すごいノリの男性ファン?の雄叫びが応えていた。私はこういうタイプのファンは初めてだったし、Kiroroは少し脅えてもいたようだが、これは極端にしてもそんなノリのいい関西のことが彼女らはとても好きなようである。
しかし、どうしてこんなタイプの観衆がいるのかなぁと考えたら、ひとつに2000円の低料金ということがあるのだろう。それで立ち席も椅子席も結構埋まっていた。Kiroroの説明によると、何と、2000年というミレニアムにちなんで2000円にしたのだという。安易というか、サービスが良すぎるというか、これはかなりの大赤字になることが予想される(従来の4000円前後のコンサートでも赤字になることがあるそうだから)。それでも営業活動として、自分の歌を生で披露していくということ自体に大きな意味がある(今後の売り上げにとっても)ということも聞いたことがあるから、「皆さん、お得なんですよ〜」というKiroroの言葉を素直に受け取って、このライブを楽しもうと思った。
それにしても、「お祭り」というだけあって、従来のKiroroのイメージ(=癒し系)とは異なるアップテンポなノリの曲が次々と上演された。昨年のCMソングにもなった「最後のKiss」のような夏らしい曲が次々と演じられ(そもそも「七色」というミニアルバム自体が、このライブのために収録されたそうである)、わいわい歌声をあげたり、踊ったり、振り付けをしたりとなかなか大変だった。熱気もなかなかのもので、汗もたっぷりとかいた。しかも、アンコール前の最後の曲となった「最後のKiss」では、銀色の紙テープが飛ぶやら、巨大な風船が飛び交うやら、最前列にいた私にとってはとても楽しい思いをさせてもらった。小さい風船もたくさん飛び交っていたので、それと銀色の紙テープはお土産代わりに持ち帰らせてもらった(^^;)。ただ、先ほど紹介したおばあちゃんにとっては、本当に大変なライブだったのではないかと思う。
そんなお祭り騒ぎの中、千春さんがしっとりと歌い、じんわりと胸にしみこむKiroroらしい一曲もあった。「ぴあの」(作詞・作曲金城綾乃)である。アップテンポな曲が多く収められた「七色」の中では異色の曲ではあるなぁ、とライブの前から思っていた。綾乃さんから今回その曲のエピソードを聞かせてもらって、とても暖かい気持ちになることができた。歌詞の中からも十分想像できるのではあるが、幼少時から現在に至るまでたっぷりと注がれてきた暖かい「母の愛」がテーマであることがよく分かった。前回のコンサートでしんみりと聴かせてもらった「おばあちゃん」とも重なるところが多く、沖縄での家族愛が、綾乃さんの曲からは柔らかに伝わってくる(もっとも千春さんも「未来へ」という母への思いを込めた名曲を作っている)。テレビでも見せるようなあの独特のほんわかとした雰囲気は、彼女が沖縄という風土で家族からたっぷりと愛情を注いでもらっていたからなのかなぁと想像することができる。それにしても、綾乃さんがこのような家族愛にもとづいたとてもいい詩を書くのには、普段のイメージがあるだけに驚かされる(ただも、この「未来へ」「おばあちゃん」「ぴあの」の三曲が持っている基調はずっと大切にしてもらいたい)。
しかし、普段のイメージをいつも通り守ってくれるのも綾乃さんである。今回のライブでは2回も失敗をして、お祭り騒ぎをさらに盛り上げてくれた。彼女の持ち曲である"HAPPY HAPPY DAY"を歌っている時には、歌詞をすっかり忘れてしまって「お花に水あげて・・・」というフレーズを繰り返す羽目になった。千春さんの「リベンジさせてください、関西は大好きですから何度でも歌いますよ」というフォロー。もう一度歌うことになって会場は大いに盛り上がった。
お祭り騒ぎで大いに盛り上がったライブは一通りの曲を上演し終えてアンコールを迎えたのだが、アンコール2曲目の「逢いたい」(今年の11月にリリースされることになった)のイントロでも、1曲目の「未来へ」でしんみりとしてきた会場の雰囲気をひっくり返すかのように、ピアノの伴奏を間違えてしまった。「すいませーん」と謝る二人に会場は大爆笑。「逢いたい」をびしっと決めた後は、最後はKiroroの原点とも言える「長い間」で締めくくり、夏のKiroroと以前からのKiroroらしさをたっぷりと会場にプレゼントしてくれて終演となった。
「お祭り」というコンセプトでのライブだった上に、残暑の厳しさやオールスタンディングということもあって思いの外疲れたが、久々に感じる快い疲れでもあった。ライブの余韻に浸りつつ、帰路の京阪電車の中ではうたた寝であった。今夏「1番」の夏祭りをプレゼントしてくれたKiroroに感謝して、「七色」を小さなボリュームで延々とかけながら、Kiroroの予言通りぐっすりとベッドで眠りについた。会場で買ったコンサートグッズ(Tシャツとタオル)をコインロッカーに置きっぱなしであったことも忘れるほどに(笑)。
>翌々日Zepp Osakaさんから無事配送してもらいました。ありがとうございましたm(_ _)m
2000/9/10 記
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