LGA(Local Government
Associasion)でのヒアリング調査
イギリスの地方自治制度は意外なことばかり。今のところ,公選の市長制度が5月に誕生した大ロンドン市以外ないこと,中央の統制が日本以上に強いこと,自治体の先取り行政が難しいこと,……。中央の強引な改革に,自治体に不満はないのだろうか。事前調査すればするほどそんな疑問がこみ上げてきた。
(参考)イギリスの地方自治制度
さて,今日からいよいよヒアリング。LGA(Local
Government Associasion)を訪問した。サッチャーにはじまる改革がブレア政権に引き継がれ,強力(強引?)に進められているが,イギリスの自治体がどのように受け止めているのか。ベスト・バリューをどのように評価し,今後の方向性はどのようになるのか。改革のアウトラインをつかむための訪問であった。
LGAの概要,ベストバリューの仕組み,パイロット事業の内容を概観しながらLGAで聞いたポイントを紹介しよう。
1 LGA(Local Government
Associasion)の概要
| Local
Government Association(地方自治体協会)とは? |
1997年4月の設立された地方自治体を構成とする協会。従前カウンティ,デストリクト,大都市の協会を統合したもの。政府からの補助金を得ている。 |
目 的 |
地域社会の均衡ある発展をはかり,健全な財政と,持続可能な環境,機会の均等をすべての市民に提供するため,次の事項を目的とする。
- 地方の声を中央に効果的に届けること。
- 地方の役割を高めること。
- 政府とヨーロッパとよりよい効果的な関係を結ぶこと
- 自らの問題を自ら解決できる権限を高めること(分権推進)
|
構 成 員 |
イングランド及びウェールズの自治体451団体と警察44団体(5千200万人の人口をカバー,自治体の職員は220万人を超える。 |
LGA(Local Government Associasion)は,上記の目的で設置された。自治体から,各種行政サービスに関する相談を受けたり,ベスト・バリュー,地域開発,教育,環境,財政,そして社会保障などあらゆる行政分野のガイダンスや調査書などを出版も行っている。地方政治に係る文献,報告書,そして政府の方針など幅広い資料を集めて,情報センターも有している(自治体職員以外も事前予約すれば利用できる)。このため,実際にパイロット事業を行ったロンドンのニューハムと今年から着手したノッティンガム,エセックスでのヒアリング調査の前に,各種情報を得るために訪問した。
(LGAは,国会議事堂に近い官庁街にある。景観に配慮しているのか,こちらの建物は看板が小さく見つけるのが大変。12日に下見をしていたので無事たどり着いた。)

中央がLGA入っているLocal
government house
2 ベスト・バリューのフレームワーク
ベスト・バリューについては,事前にかなり資料を読んでいるので,自治体にどのように受け取られているのか,課題は何かに絞って聴取した。
なお,指標の設定方法や目標値の決め方などは,後日訪問するニューハム,エセックス,ブレーンストリーで聞くことにしたが,通訳を介しているため約束の1時間はあっという間に過ぎた。
なお,ベストバリューの理解を深めるためまず仕組みを説明しておく。「Modern Local Government In Touch with the People」に示されているフレームワークは以下のとおり。

具体的には,(1)政府の目標や地域の事情を考慮しながら,
自治体のサービスを確立し,その達成手段を考える。(2)4〜5年サイクルのベストバリューの業績計画を作成 (3) サービスの目標と手段,他との比較,市民意見の聴取などにより現状を評価する (4) 毎年の業績計画,具体的な目標値を公表して,計画達成を点検する (5) 政府や市民からのテストを受ける監査・点検によりフォローアップする (6) 市民生活を守るため,失敗に関しては政府が介入する。という流れで実施される。なお,政府の介入という強行手段が最後に残されているのが注目される。
| (LGAでのお話から) ベスト・バリューの制度について,自治体の反応を尋ねてみた。
- 「かなり自治体のに負担を与えること,地域の事情を無視して全国を一律に比較することに対する反発がひじょうにある。人口や産業などまちのおかれた条件はことなり,順位付けではなく,過去に比較してどのぐらい向上したかが重要。などの不満は多い。
- 実際のベストバリューパフォーマンスプランを見ても自治体によってかなり差がある。現状の分析や課題の抽出などの方法が確立されず,とりあえず指標を設定しただけの計画もある。
- しかし,比較で問題が明らかにされること,そして問題の分析と解決,改善と向上が始まるという考え方をだれも否定はできない。
- 問題点は多いが,LGAやI&DeA(後述)などが研修や情報提供などサポートしながら制度を向上を目指している。」と話していた。
※PFIでも同じであるが,制度をつくって,実施を投げかけるだけではなく,情報提供や研修などサポートを充実すること,政府,自治体,そして研究機関などのパートナーシップを進め,制度の効果的な実施を行う姿勢が印象的だった。 |
3 パイロット事業について
環境交通地域省が,ベストバリューのパイロットプログラムを評価するため,ウォリック大学のビジネススクールに委託して,イングランド・ウェールズの37自治体で事業の試行を行い,問題点や課題を整理している。
このような課題をどのように解決していくのか尋ねてみた。
なお,環境交通地域省の中間報告(Improving Local
Public Services Interim Evaluation of the Best Value Pilot Programme
)ではパイロット事業の結果を次のように報告している。
パイロットのうちのほとんどすべては、ベスト・バリュー実施に,予期していたより挑戦的な事業であることに認識した。同時に,長期的,継続的なサービスの向上・改善をもたらす可能性を持っていたことを示している。
ベスト・バリューの実施にあたって,コミュニティに対応したアプローチが生活に密着したサービスの改善に重要であること,外部委託・外注など公的私的なパートナーシップにより新しい資本投下のための資源を呼び込むこと,改善の効果が早期に生まれること,部局の横断的な取り組みに重要であること,などの効果的な組み合わせを考えて行うことが大切であると指摘している。
また,議員の役割として,サービス優先事項のため権限がクリアな感覚をもって戦略的な目的を設定すること,サービスレビューの進歩を監視すること,サービスの決定についてのコミュニティへの説明,市民との協議をする場合への支援を提示している。
さらに,サービスの提供に対する枠組とプロセスの重要性を指摘するとともに,継続的なサービス改善を追及するスタッフを開発する方法が一番大切であることを示していた。
問題点としては,ベストなサービスのコストを定量化することが困難であること,そして,ほとんどのパイロット自治体が費やした時間とスタッフ資源の大きさに懸念を感じている。
一方,企業的なアプローチが次の点でメリットがあるとしている。コミュニティに説明する戦略とビジョンを策定し,明確なプログラムを示し,パフォーマンスマネジメントと計画への企業のアプローチを参考にすべきとしている。
「Challenge」「 Compare」「 Consult 」「Copete」の4つの要素については,
(挑 戦)パイロット事業は,新しいサービスを提供する必要があるにもかかわらずほとんどは試験というよりも,既存事業の改善アプローチを中心に実施した。このため,チャレンジ制にはかけるがサービスに応じた組織の変革の必要性を報告している。また,形式的な評価になる危険性も示唆していた。
(比 較) 実際のサービスで内部や外部とのベンチマークの大切さは認識しているが,対象の方法や目的が異なり比較が容易でないことに分かった。多くは、過度に割り切った手段で実施することになった。時間と資源の投入は大きい。それにもかかわらず、内部および外部の比較が、変化を起こし,改善をもたらす多くの例があった。
(協 議)ほとんどのパイロットはそれらの意見聴取のメカニズムを拡張し、深くし、より体系的なおよび包括的なアプローチを発展させはじめました。そして,外部や内部の意見を積極的に聞いて活用することの重要性を認識している。
(競 争)多くのパイロットは、内部の改善に終始したが,いくつかのパイロットが、より洗練されたアプローチで,自発的に民間との競争により大きな改善の機会が得られることを認識してした。
パートナーシップについて,多くのパイロットは、他のローカルなサービスプロバイダー(供給主体)との連携強化に努めて,ベスト・バリューを達成することが主要な方法と考えている。しかし,多くの議員は、公的私的なパートナーシップ(PPP)について懐疑的であり,また,企業も共同化には積極的ではない。いくつかのパイロット自治体は,新しいコンソーシアムを開発することを可能にするため方法に賛成をしめしている。
業績評価と計画では,業績計画が改善のための主要なドライバーとして作動し、議員のの関与をかなり増大できると信じている。ただ,十分に頑強なパフォーマンスマネジメントシステムやしっかりとした評価指標をもっているパイロット自治体はなく,指標の比較データの不足,つぎはぎだらけの状況である。
パイロットプログラムは、立法とガイダンスを具体化するのに役立っていました。多くのパイロット自治体は,制度の実施にあたって多くの改良が必要であるとしている。また,個々の自治体の組織の具体的なニーズに合うように調整される実用的なサポートを提供すること,ツールとテクニックについての一般情報を提供することなど,さらには組織の文化な変化をサポートについても触れている。
(LGAでのお話から)
- 英国のベスト・バリューも開発途上であり,日本の行政評価と同じ,指標設定の難しさ,組織文化の変革の必要性,コスト定量化の難しさなどの課題を抱え,手探りの状況であることが分かる。
- LGAの担当者も同じ認識であるが,英国の良さは必ずしも政府の方法を是としていない自治体もあるが,パートナーシップにより自治体同士が連携してより効果的な制度にすることを目指していることにあると話していた。
- 回答からは,特に一朝一夕にクリアできるとは考えていないようで,ベスト・バリューが軌道にのるかはこれからの努力にかかっている。イギリスでも同様にパイロット自治体の事例に学ぶ姿勢が大切だと話していた。
- LGAでは,自治体の情報を広く提供している。また,I&DeA(the
Improvement and Development Agency for local government。1999年に設置されたサービス向上・啓発協会。シンクタンク的な要素も兼ねる)という機関も設置。評価手法,顧客満足(英国ではUser
Satisfaction )の調査方法の情報提供,研修のほか,電子会議室を使用した相談や意見交換の場の設定,各種調査を行っている。パートナーシップが成功へのポイントである。
※行政経営フォーラムや甘木市の事務事業評価システム研究会のようにインターネット上の情報交換やネットワークを活用して,全国自治体の情報共有化を進めていることに世界的な情報化の潮流を感じた。 |
3 ベスト・バリューの評価
(LGAでのお話から)
- 「容易ならざる制度であることの認識がある。だからこそやりがいがある」ということに,チャレンジ精神を感じさせられる。
- 戦略性が高いマネジメントシステムである。また,市民満足調査やパートナーシップ(政府,自治体,関係機関,企業という面が強い)といった手法を駆使し,住民により近い行政,参加しやすい行政を目指している。
※Consult(協議)とパートナーシップということをかなり強調いていた。自治体への訪問で具体的な方法を尋ねてみたい。 |
4 ベスト・バリューの課題
(LGAでのお話から)
- 計画の策定,目標の設定及び評価とかなりのコストと人的な投入が必要である。パイロット事業で具体的な効果が算出された例もあるが,効率的なシステムの構築が求められる。
- 組織改革の必要性は認識されているが,ベスト・バリューにおいても具体的な方法が見えてこない。
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5 LGAの役割
(LGAでのお話から)
- 日本の自治体の協議会組織より,政策形成能力が高く,自治体へのサポート機能が充実している。
- 単なる陳情団体ではなく,政府主導ではあるが,ベスト・バリュー政策における役割も大きい。
- 組織内のナレッジ化だけではなく,国全体(イングランドとウェールズ)の政策情報のナレッジ化に大きく寄与している。
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6 ベスト・バリューの資料
環境交通地域省のHP 地方自治法や協議書 Best
Value
今回の訪問先は6か所であるが,ネットで候補を探し,3か所は自治体国際化協会ロンドン事務所でアポイントメントを依頼した。残りは,電子メールで訪問の打診を行った。
LGAは英国の環境交通地域省のホームページから存在を知ったもの。最初メールの打診には,長期間またされた挙句断られた。でも,パイロット自治体のいくつかに訪問の打診のしている中で,LGAのことが触れられていた。たまたま知り合いがいるという紹介で一旦断られたが実現したもの。英国もコネクションがものを言うようだ。
この方からは,ロンドンの書店の紹介も受けたので後日尋ねてみたいと思う。英国の自治体ではメールをかなり活用しているが,対応は様々。打診の回答で早いとことは30分で来るところもあり驚いた。反面,長期間放置されるところもあり,いまだに返事がないところもある。自治体の対応は日本と同じだ。
さて,今日は,クロイドンのLight Rail(路面電車)を見学した。路面電車の環境への負荷が少ないこと,経済性にすぐれていくことに注目して路面電車の導入を提言している札幌市職員と市民のグループがある。その依頼で実際の路面電車をビデオ撮影したもの。ウィンブルドンからクロイドンに路線がある。札幌市で唯一残されている市電に比較して,スピードが速く,運行の頻度も高い。発券がすべて券売機であるが,乗降の際,確認することはなく,信頼関係で成り立っている。各停留所には,後何分でどこ行きがくるのか表示され,乗客への配慮が行き届いている。(ビデオ撮影に夢中で写真は取り忘れました。あしからず)。
今日は,札幌市には報告不要の個人的な非公式訪問。明日がヒアリングの本番のようなもの。聞きたいことは事前に送付しているが,その後の調査で山ほど疑問がでてきた。通訳を通じての話は,遠くてなかなか相手の話が見えてこない。期待とととも不安も大きい。
(イギリス一口余話)
イギリスのビジネスマンは忙しい。今日,官庁街を歩いてそう思った。やたらにファーストフードをほおばりながら歩いている人が多い。老若男女を問わず,すれ違う人の多くがこの状態。確かにレストランなどは少ない気はする。私も試してみたが,人にぶつかりそうになった。消化に悪そうで何ともなじめそうもない。
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