uk7.jpg (14212 バイト)   11月16日

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 ベスト・バリューの実際(ニューハム)・その2

 今日は,昨日に引き続きニューハムのベストバリューの大枠と協議の具体的な方法を報告したい。

 まずはじめに,ベストバリューを導入しての成果を尋ねてみた。「この3年間に毎年1100万ポンド(約18億円)が節約され,効率性の向上とともに600万ポンドは教育へ,50万ポンドはITへなど新たな取り組みが増えた。」という回答が即座に帰ってきた。

1 システムの大枠

 さて,ニューアムはどのようにベスト・バリューを組み立てたのであろうか? 

  •  ニューハムが共通のビジョンとカルチャーを作ること

  •  できるだけITを活用すること

  •  住民の意見を聞くこと

 の3つを出発点に決定。マネージャーに権限委譲し,新しい業績マネジメントのカルチャー,すなわち業績を指標化し,実施し,結果をモニターし,チェックするシステムづくりを行った。まさに,行政評価のシステムそのものではないか。

 初年度の取り組みとして,子供,高齢者,税,交通,住宅,ITなど27(うち4つは97年にテストケースとして実施済)のジャンルに分けて,それぞれについて開発チームが次のような問いかけからはじめた。

  • 今,どのようなサービスをしているのか?

  • サービスをどのように向上させるのか,また,それにはいくらかかるのか?

  • 市民のニーズがあるのか?

  • サービスは他と比べて何が優れているのか?

  • サービスのメリットは,他の手段ではいられないのか?

  • 自治体以外でもっと品質が高く,安価に提供できないのか?

  • できるとすればどのように,いくらでできるのか?

  • もっと市民の満足を高めることができるのか,それにはいくらかかるのか?

  • コストを少なくして同じ満足を得られないのか?

  • 我々が提供すべきサービスなのか?

 そして,サービスごとに,要約,主要な成果の分析,将来の活動ついての方向,品質、コスト、市民満足、および市民満足に対する指標と改善目標,実行計画,結論で構成する詳細な基礎評価報告書を作成する。この報告書は,議会の委員会に提出し,報告される。これは向う5年間を見直し計画となる。

 開発チームは,サービス分野ごとに10名程度。サービス分野以外の職員も若干加えて,新しいインパクトを期待しながら作業を行った。これは通常業務をこなしながらのプロジェクトチーム制をとった。

 具体的には,評価調書を記述しながら,評価内容をまとめて報告書を作成する。評価調書そのものをベスト・バリュー・レビューに要約して落とし込んでいく作業を行う。この作業で,あらゆる角度からサービスの現状,課題,市民の反応,改善の方法などが浮き彫りにされていくシステムである。 評価調書の内容

 調書の基本は,日本の事務事業評価調書に類似した点が多い。しかし,最も異なる点は,記述項目がひじょうに多彩でかつ多角的な検討を行っていることである。また,「評価表は,単なるツールだ。基本はチームが組み立てること,それを整理するに過ぎない」となぜ評価表のことを聞くのか怪訝そうであった。

 例えば,市民満足でも,コミュニティ(納税者の視点)の満足,顧客(利用者)の満足に分けて捉えていること,協議と言う考え方がここでも生かされており,納税者,利用者,職員の満足や提案・意見を取り入れることを基本としていること,サービスの代替手段や供給者がないかなど,まさに,単なる評価というよりも,現状分析,課題の抽出,解決方法,代替手段の検討,サービスの供給計画と政策の立案過程を思わせるものである。また,政策評価,施策評価,事業評価のレベルで分類すれば,政策評価レベルの業績評価手法と言える。

 このように,実際のシステムの事例を見て,ベスト・バリューは,単なる評価システムではない。サッチャー政権の強制競争入札やエイジェンシー化の系譜を引き継ぎつつ,品質を重視し,計画・予算ともリンクを強めた総合マネジメントシステムである旨,認識を深めたところである。

 対応したマネジャーのお話では,パイロット事業でもかなりの時間,労力を投入しているということであり,組織内に根づかせるための苦労は容易でないことが想像できた。このため,マニュアルを充実させていること,また,1年目は,サービスそのものに焦点を当てて洗い出しを行ったこと,2年目の事業では大きなテーマ(例えば教育など)で,施策の横の連携をとり,評価方法について民間の相談者をシンクタンクと契約してアドバイスを受けながら円滑な評価に努めたそうである。3年目は,基本目標をコストの5%削減,品質の10%向上を基本目標に実施して現在に至っている。

 一足飛びに大きな効果を狙わず,3年計画で現在のレベルを作り上げた点で,日本の行政評価の導入方法で示唆を受けることが少なくない。また,PFIをはじめベスト・バリュー導入にかかる国のバックアップ体制に感じたことであるが,大きな制度改革にあっては,制度設計そのものはもちろん大切であるが,しっかりとしたサポートシステムを構築していくことが求められ,日本における行政評価ブームに欠けている点を思い知らされた。

 以上の結果で,浮かせた財源をもとに,最初,IT分野に700万ポンド(11億5千万円)を投資,以降毎年50万ポンドを追加投資することを決めた。まず,サービスの問い合わせは,一ヶ所で住むコールセンターを設け,同時に住民の手続きが一ヶ所で済むようにした。また,地域のローカルサービスセンターを設置し,市民の声を吸収するシステムをつくっている。

 2010年までに,「すべての住民がニューハムに住み,働きたい場所として選択すること」,これが我々の目標であると述べていた。

2 協議の具体的な方法

 彼らの言葉によく協議という言葉が登場する。具体的な方法を尋ねてみた。

 (2010年イベント) 毎年実施する行事であるが,500人の住民を招待して,具体的なニューハムの課題は何か,何を欲しているのかを聞いて,意見を述べ合う集会を実施し,何をすべきなのかについて投票も行う。今年のテーマで,最も重視すべき点は,「犯罪」「環境」が挙げられている。

(リスニングデイ) 議員と職員,150人余りが地域を分けて1日ストリートを歩き直接住民の意見を聞く,年2回実施する。これらの成果は報告書にまとめ,職員が活用する。

(ユーザーフォーラム)サービスごとに地域住民を招いて,サービスについて直接質問する。

(住民調査)毎年,郵送により住民の意向調査を行う。母数は1000人。これ以外の各サービス部門では独自の調査を行う。サービス評価も併せて実施する。

※リスニングデイ,住民調査の資料はいただいたが,後日,分析して海外研修報告書にまとめたい。

 なお,将来的には近隣のバラと連携して,ローカルエリアフォーラムといて,意思決定に参加してもらう方法を模索している。

 以上,ベストバリューの大枠と具合的な協議方法を説明したが,職員参加によるプロジェクトチーム型のシステムでありこと,マネージャーへの権限委譲を進めて,各サービス部門が主体的に行動できること,我々は評価システムそのものをIT化することに目先が行っているが,まず,サービスの品質向上にIT技術を活用していることなど,ニューハムのシステムがよく理解できた。

 明日以降,ベストバリューにおける議員の役割,ベスト・バリュー・パフォーマンス・プランを題材にさらに詳細なレポートをお伝えしたい。


(今日の1日)

 「大英博物館を見ずに,ロンドンを語る事なかれ」。といわれていないかもしれないが,今日は,1日館内を歩き回った。大英帝国が,その威信を背景に集めたコレクションの数々。1か所で,歴史の世界一周をした気分だ。特に,昔からあこがれのあるエジプト部門は,巨大なラムセス2世の石像,ミイラやロゼッタストーンなど,歴史書で読んだ現物に対面して,展示物に刻まれた世界の歴史を体験した1日でした。長時間の博物館見学でひざに響いたはじめての体験でもあった。

 このあと,Charring街の書店郡を散策した。さすがに世界都市で,各国の書籍がそろっているのに驚いた。様々な本に触れてうれしくなった(英語がすらすら読めるわけではないが)。


 (イギリス一口余話)

 イギリスも携帯電話が大流行。街角には携帯電話ショップがあふれている。イスラム教の女性が,名前は忘れたが目だけでる黒い布を巻きながら,携帯電話をしている姿は何とも面白い。

 着メロもブームらしい。ただ,街角のコーヒーショップで,ぱりったしたスーツを着こなし,フィナンシャルタイムズを読みながらコーヒーをすする英国紳士。その胸ポケットから,かわいらしい着メロが聞こえたときは,思わずのけぞり,笑いがこみ上げてきた。


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