ベスト・バリューの実際(ニューハム)・その3
〜Best Value
Performance Plan 2000/2001 〜
今日は,「ベスト・バリュー」と言われる手法が,具体的にどのように計画に生かされていくのか,ニューアムの「Best Value Performance Plan 2000/2001」を題材にレポートしたい。
このプランは,「私たちは,あらゆる課題について,市民が自治体と同じように考えている訳ではないことに気がつきました」と,率直に市民のニーズや満足調査が不備だったことを認めている。

左が計画書,右が全住民に配布した要約版
そして,自治体の仕事を市民に理解してもらうとともに,市民,NPO,企業とのパートナーシップを促進すること,今後,毎年計画を策定して,地方の目標と全国の目標を見ながら,他自治体と比較して,約束したことをチェックすること,5年先の将来を見据えて,昨年を振り返り,そしてもっとも価値の高いサービスを提供しているかを評価することを目的にこの計画を策定している。政府の目標より,2,3年先早く達成することを宣言しており,ニューアムの意気込みを感じさせる。
計画の具体的な構成は,前文,要約,計画の主要テーマ,ビジョン,ベストバリューとは何か,そのアプローチ,ベスト・バリュー・レビュー(見直しの具体的な方向),詳細のサービスの説明,財政・予算・効率化へのアプローチ,指標など計画策定の資料などである。
計画の趣旨は,前文に書いてある「この計画は,私達の優先事項をあなたに示し、私達はどれほど改善し、どのように業績を測定するか,また,現状の課題は何かを具体的な数値で公表して,将来どのようにサービスを提供するかを計画するのもの」という説明が端的に示している。
また,3年間で5パーセントのコスト削減,10パーセントのサービス品質レベルの改善を宣言している。品質を重視してはいるが,効率性の向上も決して忘れてはいない。
市民との対話の中で設定したニューアムの課題は,次の6つとしている。
- Newhamはクリーンではないこと(道路の汚れなど)
- 犯罪と安全への懸念
- 交通渋滞
- 若い人々の学校生活の充実
- 新しい起業の支援
- 公共交通の充実
ベスト・バリュー・レビュー(向う5年の見直し計画)には,ニューアムのすべてのサービスが網羅されているわけではない。弱い分野から取り組んで5年のうちにすべてをレビューしようというもの。97年のテストで4分野,98年からのパイロット事業で23分野をレビューし,2001年3月の「Best Value Performance Plan 2001/2002」で100分野を達成しようという計画だ。
昨日,説明した開発チームは,この分野ごとに結成してしている。ただ,チームが土台をつくったレビューも,計画そのもののでは簡単に記載されている。
例えば,道路のメンテナンスでは,「全国的な調査で,道路と舗装メンテナンスが最も悪いサービスということが明らかになった。多くのフォーカス・グループの調査により,キーになるポイントは,障害者のための舗装、街路灯,道路のオブジェ(?)であった。このフィードバックで,私達は、これらのサービスを改善するために私達の資源の活用に的を絞ることが可能になった。 性能を下げずに9%のコストダウンを図ること,また,委託した企業へのコントロールが不十分であったことから,検査を強め,見つけられた障害の数(現在55%)を,来年47%に,5年で20%まで減らすことが必要である。」
また,ローカルなサービス戦略では,「ワンストップサービスを通じて,品質およびアクセス性を高める。それには,システムと教育訓練,パートナーを新しい計画に巻き込むための機会が重要である。レビューによる行動計画は、住宅と社会事業の事務所からローカルサービスセンターに転送している数を減らすためにプログラムを開発すること,また,ローカルサービスセンターを、健康センターや職業安定所など他のサービスセンターと統合することを提案する。コールセンター(あらゆる問い合わせに対応できるセンター)を設置するため,民間部門会社とパートナーシップを進める。新しいサービスの成績判定基準は次のとおり。5回の呼び出しもしくは15秒以内でローカルサービスセンターが応答すること,一回の問合せですべての必要が満たされること」。
※ニューハムでは,域内を3つに分けてサービスセンターを置いている。ここですべての手続きができる。ベストバリューのパイロット事業で検討した結果でワンストップサービスを実現,職業安定所など国に属する他の機関もここに組み込むことを目指している。
さらに,公共交通では,「教育部門および社会事業部門のクライアントのため交通手段を提供する。この品質に影響している問題を検討した結果,直営のサービスがもっとも顧客の満足を満たすことが判明した。このため,サービスの改善に1年あたり21万ポンドを追加することに同意する。これは,新しい高速な自動車を購入して乗車時間の短縮し,乗車時間をモニターし,どのバスからも携帯電話ができるシステムの購入すること,ヘルプデスクの設置を含む計画を策定する。乗車時間の時間目標は,1時間以下は100%,45分以下は80%,30分以下は60%達成することである」。など。
以上のとおり,現状の問題を具体的に捉え,対応を記述し,数値など分かりやすい目標を設定して見直し策を盛り込んでいることが特徴である。
ただ,忘れてならないことは,「緻密な現状分析,ベンチマーク,そしてグループ・フォーカスなど市民などからのインタビューなど,協議,パートナーシップを生かした事前の作業があって,個々のレビューが組み立てられている」ということである。サービス分野すべてにこのような作業をしていくことは大変な業務量である。
これに対して,「大変さは否定しない。我々のミッションを考えたとき,労苦を惜しんではいられない。生みの苦しみはあるが,市民はベスト・バリューを活用したサービスシステムの中心であり,10年先にすべての人が,ニューアムを生活し,働く場所として選択してもらうことが我々の目的である」と話していたマネージャーの使命感あふれる態度が印象的であった。
最後に議員の役割について触れておく。
ニューハムの議員は,60名。経営に明るい議員が,ベスト・バリュー・ワーキング・グループをつくっている。開発チームの作成した報告書は,議会に報告され,行政のトップマネジメントも参加するワーキングで内容が精査される。最終的には,行政と議会の間で,住民ニーズも踏まえながら,指標の選定,優先順位などが決められていく。
議会には,現状の分析などの準備段階,ベストバリューの定義,見直し点の抽出,サービス供給の計画,業績目標の設定など要所要所で報告し,最終的な計画に仕上げていく。
目標を達成するためのサービス計画が決められることから,毎年の予算はそのサービス実施のために機会的に振り分けていくことになる。旧来の予算編成は,削減する資源をいかに見つけることに汲々としていた。しかし,改善に向けての方向や投入すべき資源,サービス内容をあらかじめ,議会の同意を得て構築しているため,何を削減するかというマイナス思考が省かれ,予算編成は大幅に軽減されてと話していた。
なお,中央政府との関係では,政府が決める前に取り組んでいたという自負があり,指標についても地域の実情を踏まえて分析するには独自の指標が必要とされることを強調していた。計画の要約は,全住民に配布されている。「政府が法律で決めているからね」と言われたとき,その表情に日本の自治体が政府にいだく感情と同じものを感じた。
指標の設定,目標の立て方,市民との協議の方法については,今後,サービス分野を拡大して,プランを作成していくため,様々なマニュアル,資料にまとめている。その資料をいただいたが,ここイギリスですべてを分析することは困難である。帰国後精査の上報告書にまとめることにしたい。

研修報告用の写真ーお話を伺ったお二人。中央が恥ずかしがりの私です。
(イギリスのミレニアムプロジェクト)

ロンドンの360度が一望できる
今,ロンドンの観光客の人気スポットが世界最大の大観覧車ーブリティッシュ・アイ。ミレニアムプロジェクトのひとつだ。地上135メートルから眺めるロンドンの風景は,また一興である。最初の印象は,「折角のロンドンの景観が台無しだ」と感じた。でも,ミレニアムプロジェクトの間,1年で取り壊す施設。やはりロンドンっ子は,古き良き伝統は忘れてはいない。今しか見れないロンドンの絶景に,平日なのに1時間待ちの大人気ぶりだ。

川向が,ロンドンのウォータフロントとして開発が進むドックランド
(イギリス一口余話)
ロンドンのバス,地下鉄は市内を縦横無尽の路線が張り巡らせられている。通りを歩くと必ず常に赤い2階建てバスが視界に入ってくる。交通渋滞の緩和がロンドンの最大の課題といわれている。運行頻度も高い。しかし,路上には駐車の車であふれ,なかなか効果はあがっていない。都市部での課題は全世界共通のようだ。
ところで,福祉の充実振りで評判のイギリス。しかし,地下鉄駅は階段・段差の連続。エレベータは一度も見かけない。バスも低床式も多くはない。バリアフリーが何につけても大切な昨今。体の不自由な方にとって,決して優しいまちとは言えない。ロンドンでの率直な感想である。
トップへ戻 る 11月18日 ベスト・バリューの行方(中間総括)