ベスト・バリューの行方(中間総括)
「今後の目標は?」という問いに,ニューアムの担当者は「ベストバリューを組織に浸透させること,そして,将来,ベストバリューの権威に相応しい自治体になることが目標である」と応えていた。一つひとつの事業の評価を行う事務事業評価の比ではない大変な作業をヒアリングで垣間見たような気がする。

上の図から分かるとおり,ミッションの基づいた長期計画があり,その下にベスト・バリューパフォーマンスプラン(以下「プラン」という。)が位置する。現状分析と5年先を見通したレビューに基づいて,サービスの改善計画(アクションプラン)を立て,プランが出来上がる。日本の施策体系から言えば,プランは実施計画レベルと言えよう。毎年,指標(インディケーター)でサービスの改善状況をモニターしながら新たな投資を考える。実施計画と進行管理及び予算配分を決めるシステムと言えるかも知れない。
このシステムを見て,日本の現状を考えたとき,あまりにも「成果指標がどうするか」など枝葉末節的な議論が多くはないか。業績評価法の根本的な仕組みを理解せず,技術・ツールに走っているのではないか。という反省が頭をよぎった。
「成果指標を考えるとき,外的な要因が大きくなかなか適切な指標が決められない。因果関係が分からない」と話したとき,LGAでは,「それは数年前の議論だね。因果関係がどうかよりも,例えば貧困を解消することを目標としたら,社会経済情勢がどうでも,やり遂げなければならないことだよ。その目標に向かってあらゆる力を結集することが大切。それがパートナーシップだ。」と一笑にふされた。ニューハムでも同様の反応であった。
また,ニューハムでは,開発チームには権限委譲され,意思決定ができるレベルのマネージャーが参加する。日本のように形だけの参加ではなく,主体的に活動する。「責任を持てる人が入らないチームが議論しても無意味。夢を語るわけではない」。という言葉が,あるべき方向を語っている。
まず,ミッションとまちづくりをどういう方向で進めるのか明確にして,それに近づくための努力を評価していくことが重要である。その課程で,現状分析に係る科学的な手法,ニーズを把握するための調査手法,協議をするためのシステム,将来動向を分析する方法,成果を指標化してモニターする,分析する方法が介在する。それを忘れ,一部分を取り出して議論しているのが日本の行政評価だと言えそうな気がする。
今回,調査した事項は,まだまだ整理が必要である。また,パイロット自治体ではないエセックス,もうひとつのパイロット自治体のブレーントリーのヒアリングを残している。以上の考えを検証する意味でも2都市でのヒアリングが楽しみだ。
ベスト・バリューは,今年がスタートライン。英国の他の自治体では取り組みを始めたばかり。日本の行政評価と大差はないはず。今後,どのように進化していくかはまだまだわからない。ニューハムをはじめ,行革先進都市のルイシャム,カムデンなどは比較的貧困層が多い地域。自主財源が10%そこそこの自治体だ。危機感が大きい自治体が先行して取り組んだ。貧困自治体でもシステマティックな改革に取り組み,成功できる。そんな先進自治体の事例に触れたとき,行方に明るさが見えてくる。
(イギリス一口余話)
イギリスの景気は良好で,来年度の成長率を2.25〜2.75%と予測している。政府の起債残高もGDPの30・9%(来年度末)に減少が予想される。こうした好景気と裏腹に,依然として高水準の失業率,ガソリンの高騰,相次ぐ水害の発生,老朽化して鉄道の大事故など,問題は少なくない。
明日,ノッティンガムへ鉄道で行くが,「通訳から時間に大幅な余裕をもっていくようにね。英国の鉄道は当てにならないから」と言われた。ここは先進国ではなかったのか?ふと考えてしまう。一度,鉄道を利用したが,車両は日本ではももうスクラップではないかという代物。全国各地で線路の亀裂など不備が見つかっている。国営鉄道を民営化するときに,車両など設備の保有会社3,レールの保守会社,そして25の運行会社,4つの貨物会社などに細分化。それらの連携が希薄でマネジメントの欠如を指摘する声が強い。
社会資本が充実していると言われる英国。しかし,歴史が古いだけに更新時期を迎えたハードが多い。PFIはそんな状況の中で編み出された手法でもある。PFIやベスト・バリューなど最新のニューパブリックマネジメントを導入しているイギリスとマネジメント能力の欠如した鉄道。その両極端に英国の現実を見たような気がする。
トップへ戻 る 11月19日 英 国 と P F I