今日は,I&DeAというシンクタンクを訪問した。応対してくれたベスト・バリュー担当者は,ショートヘアの美人。でも,大きさに圧倒された(この言葉は,セクハラになるかも)。報告は,明日に譲るとして,今日は,昨日に引き続いてノッティンガムのPFIについて報告したい。
ノッティンガムが以前炭坑が栄えた地域。しかし,閉山で経済の斜陽は著しい。路面電車の資金にEU交付金というのがあったが,これは欧州連合が,域内の裕福な地域から集めた資金を,貧しい地域の事業に交付する制度を利用したものだ。経済が好調なイギリスであるのに,どこに行っても景気のよい話を聞かないような気がする。
1 主な仕組み
さて,PFIの具体的な流れを次に図示してみた。

ノッティンガムは,県及びノッティンガムの開発会社で構成するプロモーターを形成する。プロモーターは,路面電車の具体的な仕様を決める。これは,アウトプット仕様と言われるもので,路線,完成期限,サービス時間,輸送人員,清潔度などの仕様で,車両の大きさや定員などは,請負会社が決定する。例えば,6:00〜8:00のこの区間は,何人の乗客輸送を可能にする,いわゆる性能を発注するもので,小さな車両で運行回数を多くするか,大型車両で回数を減らすかは任意。ただ,停留所で通勤時間帯は,待ち時間が6分以内など品質は仕様に入れる。なお,27年を経たのちは,資産はプロモーターが継承する。施設は,27年経過して後,5年間は大規模な補修をしなくても活用できる程度の耐久性を要求する。
このアウトプット仕様に基づいて入札を行うが,欧州全域から競争入札する。入札業者は,上の図の「Avaibility
Fees」をいくらで請負う旨の金額を入札する。入札業者の選定については,コンサルタント会社を使って,財務や経営内容,将来性など多角的な検討を行う。建設後27年間の運営を含めた契約であり,厳格な審査が必要である。結果としては,3社を選定しての入札になった。
プロモーターは,政府交付金などの資金を提示,入札業者は仕様にしたがって建設した場合の建設費を算定,不足する資金は銀行ローンを組む。2003年秋に開業するよう建設し,運営を開始して得られる運行収入を考慮して,あといくらの「Avaibility
Fees」があれば請負えるという入札をするものである。
完成前は,自治体は資金は,建設に伴う交付金の出資のみで,建設費は必要としない。建設後,政府からの運営支援交付金を原資に「Avaibility
Fees」を請負会社に支払う。建設当初に大きな初期投資が不要であること,建設や運営に民間のノウハウを活用できることなどのメリットがある。
2 請負会社
事業を請負う会社は,鉄道会社,建設会社,車両メーカーのコンソーシアム。この事業のために設立した会社である。資産を有するわけではなく,銀行ローンを組む場合,事業の採算性など銀行側の厳しいチェックが入ると同時に,27年間の運営に対しても銀行が経営状況を毎年評価して,返済を担保する。
請負会社は,建設会社・車両制作会社と契約を結び建設する。どの企業と契約するかは任意であるが,請負会社(コンソーシアム)の母体と契約することになる。
3 リスクの負担
PFIはリスクを民間に移転するのが特徴だが,整理すると次のとおり。
| |
具体的なリスク |
| 請負会社 |
デザイン,建設計画や補助的な提案,法的届け出・許可申請,運営・メンテナンス,検査機関の監査など |
| シェアするリスク |
災害,戦争,遺跡の出土,全国ストライキ,予測しがたい事情の変化など |
| プロモーターのリスク |
交付金の申請・確保,プロモーターの調整,法律改正に伴う事情の変化,仕様の変更の場合の負担など |
表は,単純化しているが契約における最も大切なポイントであり,ひとつの事項についての解釈に3か月もかけた例があり,大変な作業を伴う。契約事項ため,弁護士など専門家へに依頼するため,費用が億単位に及ぶ。
4 自治体側の問題
直営で建設する場合と異なり,あらゆる事態をあらかじめ想定する必要がある。これまでに事例がないPFIで,通常は企業が行う契約前の検討プロセスを自治体が行うことになる。弁護士に支払った費用だけで数億円に及ぶ。
また,請負業者の選定は,建設期間ばかりではなく,今後27年間経営がもつかを詳細に検討する。これも自治体に審査能力はなく,経営コンサルタントを活用する。 自治体が借入をするわけではないが,銀行の審査・調整などの業務も増加する。
さらに,請負企業は,寄り合い所帯で社員は数名。ひとつの問題を解決するのに数ヶ月かかることは当たり前。プロモーター側のリーダーシップが必要になり,業務は大変と話していた。ベイツレポートが指摘した「手続きが煩雑で時間がかかる」という問題点が目の前に存在し,まだまだ先進地イギリスでも解決していない様子であった。
5 その他
住民との協議は,計画段階から頻繁に行う。通常のパブリシティや地元説明会,公聴会など多くの手順を踏む。なぜなら,日本で言えば都市計画決定と同じであり,私権が制限され,強制執行の対象になるからだ。公開ミーティング,インターネットなど多数の媒体を使う。
現在建設中であるが,建設ニュースを全世帯に配付。この道路は,どのような工事を行うか(例えば,水道管を迂回し,パイプを入れるなど),工事中バス路線がどのように変更するか,通行止めはいつどこで行うか等詳細な情報である。
簡略に報告しているが,以上のとおり,PFIは複雑なシステムである。事実上政府からの強制でPFI手法を用いたので,代替手段との比較を経ていない。金額に換算してどの程度のメリットがあるかは分からないとの話であった。
ただ,初期投資が大幅に押さえられ,設計・建設・資金調達・運営に民間のノウハウを活用できるなどPFIのメリットは大きいと語っていた。反面,担当の当事者としては,従来,経験のない法的な契約の検討や折衝など負担感を感じていることも否めない。契約書自体は守秘義務があるとのことでいただけなかったが,大蔵省のタスクフォースが,PFI契約の標準仕様を作成している旨アドバイスを受けた。一部,アウトプット仕様の内容など資料をいただいた。法的な内容なので翻訳が難しそうだ。帰ってからも大変な作業が待ちうけている。

お話をうかがった担当マネージャー
(イギリスのテレビから)
ホテルでBGMがわりでテレビをつけている。パソコンが趣味の私にとって興味有る番組がやっていた。パソコンを買っても使いこなせず,家で埃にまみれている場合が少なくない。この番組は,e-mailの基礎やプレゼンテーションなどの使い方を教える番組。どこかの国のIT受講券など(実現しなかったが)という馬鹿な施策より,テレビでどんどんこのような番組を流した方が録画もできるし,「広くIT技術を教えることができるのではないか」とふと思った。
(イギリス一口余話)
環境交通地域省で教えられた政府刊行物センターの名前がいかにもイギリス的だ。「Her
Majestics Stationery Office(HMSO)」という。訳すると「女王陛下の威厳ある書簡を司る事務所」とでも言うのだろうか。行ってみようとホームページで探したら,まず必要な文書を検索,注文してから取りに行くシステムらしいのでやめた。Bookshopはロンドンの中心部にある。ベスト・バリューの報告書やPFIの標準的な契約書式なども手に入る。ほかにも「Her
Majestics」と冠した施設が少なくない。王政が深く根ざしたイギリスの伝統がうかがえる。でも,この威厳のあるはずの女王陛下が,マグカップやTシャツ,キーホルダーの図柄になってあちらこちらの街角で売られている。女王陛下を売るなんて,何とも威厳さにアンバランスを感じた出来事だった。
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