uk7.jpg (14212 バイト)   11月22日

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 ベスト・バリューのノウハウ

 昨日訪れたI&DeAは,「The Improvement and Development Agency」・改善と開発協会とでも訳すのであろうか。地方自治体を対象にしたシンクタンクで,ベスト・バリューを進める上で,自治体に専門的なアドバイスを行う。

 ベスト・バリュー担当は2階だが,各フロアには,都市計画から地域開発,ITに至るまで様々なセクションが表示されていた。こじんまりした事務所を想像してやってきたが,5階建てのビルの全フロアを占める大きなシンクタンクであった。ベスト・バリューに関しては,研究開発を行うとともに,情報提供や相談,サポート業務を行っている。

 ベスト・バリューが本格導入されて,地方自治体自体とまどいがあることは否めない。英国の自治体は,議長が自治体を代表し,その力が大きい。議員がベスト・バリューのキーになる。このため,職員ばかりではなく,議員を対象にしたセミナー・研修なども手がけている。何か誤解したらしく,ベスト・バリューの基礎から説明してくれた。何か,質問するより講義を聞いているような雰囲気だった。その中からポイントを絞って報告したい。


1 ベスト・バリューは何を目指すのか

 ベスト・バリューのポイントは,地域コミュニティに新しいビジョンを描くこと,そして品質の高いサービスを提供するため説明責任を果たすことである。いかに地域のニーズを汲み取り,変化に対応していくか,そして,住民と協議すること,他の公的な機関,民間企業とのパートナーシップを進めることが基本である。

 これには,リーダーシップを発揮することが必要で,ベスト・バリュー成功の鍵である。なぜなら,ベスト・バリューのレビューは,大きな政策そのものであり明確な政治的意思をもつことが必要だからだ。

 「ベスト・バリューは政治的な決定を行うためのシステムである」。と明言していた。「評価は何のためにするのか」。この単純な問いかけに,「政治的な決定をするため」という至極当然な答えが返ってきた。目的を明確にすること,比較すること,市民との協議すること,最大限の効率性を追求すること。それは,すべて政治的な意思決定を行うために必要な事項である。

 I&DeAは現場のマネージャーのサポートやアドバイスをする前に,議員やチーフ・エグゼクティブなどの経営層にこの点を十分理解させることに重点をおいている。これがないと現場での緻密なデータ収集,調査が生かされず,現場自体がやる気をなくしてしまうからだと話していた。

2 具体的な方法について

 アカウンタビリティは,ベスト・バリューを支える主要な原則のひとつである。ベスト・バリューパフォーマンスプランの構成も,意識してどのようなニーズがあるか,対象と目的を特定し,どのようなサービスを行うかを述べている。指標により現状と目標を示し,市民との協議を起こすための工夫をしている。単に,指標を並べるだけではなく,市民に理解してもらうことを念頭に作成することが必要である。

 したがって,レビューの部分では指標をビジュアル化すること,地域の身近な具体例を挙げること,なぜこの改善方法を選択したかの理由を述べることなどを指摘していた。

  現状はどうかと尋ねてみた。「全自治体のプランを見たわけではないが,説明責任と言う観点では不十分な点が見うけられるが,今後,毎年続けることにより改善が進むであろう」と話していた。

 成果指標・Outcomeの難しさについて尋ねてみた。「指摘のとおり,成果指標の捉え方は難しい。しかし,ベスト・バリューにおいて,アウトカムは重要な指標である。工夫次第で成果が見えてくる。例えば,図書館の開館時間を延ばしたとき,顧客の満足は,本来,直接聞くのがよいがそうもできない。しかし,利用数の増減で測ることができるではないか。成果指標は,サービス評価の基礎であり,何がアウトカムかを定義するところから,サービスの改善が始まる。まず,顧客のニーズは何かをしっかりと捉え,実際のサービスの中で,何が変化するかを注意深く探すことによって糸口が見えてくる。現場の人の日頃からの変化をみる目が必要である」。日々の業務の中の変化を注意深く見つけること。それがアウトカムの糸口という言葉がひじょうに印象的であった。

 さらに,コストの把握のことを聞いて見た。コストを具体的にどう把握するかについては,減価償却などの概念をきちっと踏まえて捉えることは当然という感じであった。それより,ベスト・バリューの評価は,コスト削減ということを意識したものである。ということを強調していた。限られた資源を配分してサービスを提供しているのだから,この視点は不可欠である。成果があってもコストがかかれば意味がない。強制競争入札の流れを引いている。ブレア政権もCCTのコスト削減や自治体の意識変化に与えた影響は評価しており,品質をプラスしたベスト・バリューには至極当然のことである。

 次に,ベスト・バリューの最も重要な指標のひとつに顧客満足ということを挙げていた。具体的に満足を測る方法は難しい。しかし,政府や自治体監査機構及びI&DeAも最も力を入れている分野のひとつである。さきほど成果指標の難しさを述べたが,成果を示す指標としての意味合いも大きい。

 具体的な調査方法は,200ページを超えるマニュアルをいただいた。これを読めということらしいが,気が遠くなってしまった。時間をかけて翻訳が必要なのでここでは紹介できない。ご容赦を。

 なお,電話調査,対面調査,郵送調査,市民パネルの方法とメリット,デメリット,またプランニン段階での調査,実行過程での調査など多様な方法を網羅して,具体例を挙げて説明している。

 顧客といっても様々。年齢,民族,能力,住んでいる地域,所得,サービスの利用度合いなどの条件が異なる。こうした異なる対象を定義して,場合場合に適切な使い分けが必要である。直接の顧客,間接の顧客,潜在的な顧客,そして一般の住民,監査人,企業,職員,組合,その他のサービス供給者など利害関係者もしっかり区分する。また,調査時の質問の平易な言葉遣い偏った質問を避ける,視点を変えて質問するなどのテクニック的なこと。また,調査の方法によって,質的なもの,量的なものとの相違など,調査の具体的な方法を教える詳細な内容である。

 ニーズを明かにすること,サービスの成果を測定すること,サービスの優勢性を判断することなど,顧客の満足度を調査する必要は極めて重要であると話していた。

3 まとめ

 I&DeAは,ベスト・バリューのサポートを主目的にする組織であり,各種マニュアルを作成,直接の自治体のサポートなども実施している。ベストバリューに係る動きを伝えるニュースを流すなど,サービスもきめこまかい。言外に自治体間の格差が大きいことを示していたが,支援体制が充実しており,「数年間での全自治体への浸透を目指したい」と話していた。

 成果指標の設定については英国も日本と同様の困難さを抱えている。しかし,顧客満足という視点を重視し,調査方法の定型化及び指標の設定を進めているのが印象的であった。

 日本では,顧客満足重視とは言いながら,具体的な方法はこれからの段階。英国の調査方法は学ぶ価値が大きい。I&DeAは設置されたばかりだが,ほとんどが民間のシンクタンクの人材を活用している。日本は,自治体が先行しているが,ノウハウが共有されていない難点がある。国全体でのナレッジ共有体制の必要性を強く感じた訪問でもあった。


(イギリスのスナップ写真から)

 バッキンガム宮殿の衛兵の交代は,ロンドン観光の目玉のひとつ。時間を逃すと人だかりで肝心の交代場面は遠くからしか見れない。この写真は,かろうじて近くをとおった衛兵音楽隊の一こまである。

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バッキンガム宮殿の衛兵の行進


 (イギリス一口余話)

 イギリスの市役所の出入りのチェックは厳重だ。エントランスを入ると大抵受付がある。その先はオフリミット。許可されて,職員と一緒でなければ入室できない。ニューハムでは,3回。ノッティンガムでは2回,IDカードと暗証番号を使って,ドアを開けてようやく事務室までたどり着いた。来客があると職員は,受付まででてくる。そこから事務室または会議室などへお連れするシステムだ。常に窓口のお客に煩わされずに事務ができる。また,住民の秘密を守る上では優れている。受付も要件に応じて的確に振り分けている。でも,市民に開かれたはずの市役所が,そこまでして何を守るのか不思議になった。


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