uk7.jpg (14212 バイト)   11月23日

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  ベスト・バリューのノウハウ(補足)

 昨日,今回の旅の疲れがどっとでた1日。このレポートも半分寝ながら書いたような気がする。訪問も24日のブレーンツリーが最後。そろそろ温かいご飯が恋しい時期だ。「26日の夕食は,サケの切り身と温かいご飯にしてね」と妻にメールしてしまった。

 さて,昨日の補足を述べておく。ベスト・バリューについてコストの把握で,管理部門の間接経費をどうするか尋ねてみた。「ベスト・バリューのコストは,全国の自治体を統一の基準で比較するためのもの。そこまで厳格にはやっていない。間接費をのせてどうするのか?。様々な管理業務があって,単位あたりの間接費をだしたって,そのサービスがなくなっても,計算した間接費が削減されるとは思わない。コストは目的に合わせて考えるべきだ」。と逆に指摘された。確かに真のサービスコストを算出して,民間委託した場合と比較するような場合は,間接費を考慮することも大切である。しかし,お言葉のとおり,すべての事業にそこまでのコスト計算が必要か多少疑問が沸いてきた。間接費がなくてもどれだけ効率化したか,比較は可能で,経年変化を追うこともできる。コストで何を測るのかをはっきりさせて数値を使うべきと思えてきた。

 次に,成果指標の問題で,外的な要因が大きく,成果指標を選択して,目標を設定することが難しいという日本の行政評価の問題点を話したとき,こんな話が返ってきた。

 「指標を厳格に考えすぎてはいけない。ひとつの尺度にすぎない。英国でも,今の政府の指標が,ほんとうに成果を表しているか,品質が測れるのか議論がある。でも,割り切りが必要だ。成果指標を設定したとき,目標達成のために自治体ができることはこの部分だと言う戦略を明らかにすることが大事だ。指標がその議論の場を提供してくれると考えるべきだ。外的な要因が大きい場合は,この成果を目標にするが,自治体が担うのはどの部分だと言うことをコメントで補い,別の指標,アウトプットで補うこともひとつの方法だ」とアドバイスを受けた。

 日本でも代替指標という考え方はあるが,成果指標は設定した上で,自治体のできることを議論する過程・プロセスが大切にするという割り切りに,指標設定の難問が氷解した気がした。

ベスト・バリューの実際(エセックス)

 今日は,ロンドンの東に位置するエセックスを訪問した。エセックスは,日本で言えば県に相当する自治体。県庁所在地であるチェルムスフォードは,ロンドンから鉄道で60分の至近距離に所在している。

 県レベルでのベスト・バリューはどのように行われているのか,また,かねてから「Performance Quality Check」という行政サービスの品質チェックを行っている。こうして既存の仕組みとベスト・バリューなどの関係が興味深く選択したものである。とは言いながら,クオリティ・チェックまで話が及ばず時間切れとなった。

 最初に,議会の議場を案内してもらった。英国の下院を小型にしたイメージを描いてほしい。与党,野党が対面で対峙しているような形式の議場だ。今年からパイロット的に,議員内閣制をとっている。すなわち,議長のもとに各サービス分野に大臣を置き,行政に責任をもつシステムだ。従来の委員会の委員長が大臣を兼ねていると説明を受けた。

(エセックスの概要)

 人口は,134万人。まじめに働き財をなした労働者階級が生活する地域と言われている。県庁所在地のチェルムスフォードは人口が161千人の閑静なまちである。県の主な仕事は,教育,社会サービス(高齢者や障害者のケアなど),図書館,ハイウェイと運輸行政,環境行政,ごみ回収,経済(企業支援など),消防・防災などのほか,域内の戦略計画などを担う。出生,結婚,死亡などの記録も県の仕事である。域内には12のデストリクトなど(市)が存在するが,県の傘下に属しないユニタリー自治体も存在する。退職した労働者が豊かな自然とロンドンから近い利便性から転入していることもあって高齢化が課題のひとつである。

 エセックスのベスト・バリュー・パフォーマンスプランは,簡潔だ。今年のプランに載せている分野は,安全,健康とケア,交通,産業,環境,生涯学習,そして観光など。例えば,地域の安全と,健康とケアの向上という分野では,地域の安全が優先事項の第一に挙げている。犯罪,環境汚染,事故から日々の暮らしを守ること重点においている。

 たとえば安全に関する具体的な指標は,以下の表のとおりである。色のない指標が政府及び自治体監査機構の指標,色つきはエセックス独自の指標である。結構,自治体の努力だけでは解決できない指標も取り入れている。空白は,まだデータのないもの,目標値の未設定のもの。

 ベスト・バリューは国からガイダンスが示され,指標も決められている。しかし,自治体がそれぞれ方針を解釈して,地域の実情に照らして指標も付け加えている例が多い。先日のニューハムもかなりの数,独自指標を設定している。統一指標は,全国の水準を比較することができるメリットが大きい。

 エセックスでは今年が初めての経験。各省庁レベルの指標もこれからどんどん設定されるであろうし,適切な指標の選択はこれからと話していた。

指 標

98-99

実 績

99-00

現 状

00-01

目 標

千世帯あたりの強盗被害件数 7.8 7.72

2005まで10%減

人口千人あたりの暴力被害 0.25 0.28  
人口千人あたり乗り物窃盗 11.59 11.07  
障害者のための設備が整った横断歩道の割合 74.3% 75.4% 78%
2000年に調査を予定している犯罪,大気汚染,事故に対する住民意見調査

エセックス警察エリア内の人口千人あたりの交通違反件数 53.2 56.1  
解決した犯罪件数の割合

29%

   

※エセックス「Rising to the challenge,performance 2000」より抜粋

 参考に指標設定のプロセスまでを聞いてみた。

 まず,ベスト・バリューは,「地域の戦略が国家の戦略にそっているか」,「コストの効率性を測定しているか」「サービス提供のアウトカムを設定しているか」「品質はどうか」「公正なアクセスを保っているか」の5つがポイント。こうしたことを念頭にレビューを描く。現状の指標の収集は,今回の計画が99年12月に方針が示され作成まで短期であったことから,主に統計部門が行った。

 指標の選定は,責任者として上級のマネジャー,大臣が入ったチームが行った。今回の目標値は,経験値的な設定である。来年度以降の指標の選定と目標値の決定は,各部門の部長クラスの会議で検討して,案をつくり最終的には閣議の了解をとって作成する。

 協議の具体的な方法を尋ねてみた。国がどのようなCSをすべきかガイダンスを流しているので,その方法にそってリサーチ会社に委託して行っている。エセックスとして独自の設問はつくるが,現在のところ12の分野において,顧客の意見を聞かなければならない指標が設定されている。今後,さらに増加する見込みであり,市民パネルの活用やグループ・インタビューなど直接意見を聴取する場面が増えることを示唆していた。

 パイロット自治体との温度差を感じた取り組みである。ただ,計画のもとになったエセックス・アプローチというレポートを,閣僚及び上級スタッフから直接聞き取り,責任者がストーリの基礎をつくり,今回の計画を作成している。

 現在の計画は,全分野の5分の1をレビューしたもの。毎年,20%ずつプライオリティーの高い分野を追加。5年で全体像を完成させる。今年頭出した分野は,数値がコスト面で10%,それ以外で15%を超える相違があれば,その理由を具体的に記述,翌年のプランに生かしていく。政府がきめた指標は,全国上位の25%以内を目指すという基準が示されているので,今後,目標設定は25%のどの位置を満たすかを検討して決めるなる。独自の指標については,サービス部門の意見を聞きながら設定していくことになる。

 やはり,日本の自治体と同様,旗を振っているのは計画部門で,まだサービス部門までは浸透していないことが分かった。今後は,まず上級のスタッフにプランニングの研修を実施,徐々に下位スタッフに広めたい。そんな状況にある。現場レベルでは浸透度は今ひとつの状況だが,庁内の問い合わせも増加傾向にあると話していた。

 なお,市民参加について聞いたみた。実のところ,今春,計画の要約を地方税の納付書と一緒に配付している。「反応は全くない」という率直な回答。日本の行政評価の現状とどこか似ている。予算とのリンクも,全体のレビューを終えていないことから具体的な関連はない。財務担当の大臣も関与するので不明確であった何に投資すべきかの判断材料として活用余地は大きいと考えであった。

 以上の状況は,パイロット自治体と比較して当然予想していた内容。しかし,トップがかなりリーダーシップを発揮できる組織であり,それがベスト・バリューの成功の鍵という言葉が重く聞こえてきた。

 明日は,最後にパイロット自治体のブレーントリーを訪問する。先進的な自治体であり,吸収すべき優れたノウハウに期待したいところである。


(エセックスのクオリティチェック)

 クオリティチェックとはサービス評価と言える。電話での問い合わせに対する回答時間,オンブズマンへの苦情の把握や内容,コミュニティへのサービスの機会は平等か,政策を確実に実行するにはどうしたらよいか(モニター調査)のデータをとったり,モニター調査して,行政の品質向上に努める評価だ。8年前から実施して毎年評価結果を公表している。市民に約束して,その達成を図る市民憲章に端を発している。

1123021.jpg (8353 バイト)今回,お話を聞いたエセックスの担当者


 (イギリス一口余話)

 イギリスの議員は,ほとんどが無給だ。受け取るものは実費弁償的な要素が強い。しかし,権限は大きい。サービスごとに数名の委員会を構成する。多くはこの委員会に議会の決定権限を委任する。数名の委員会が,サービスの内容を決定し,チーフ・エグゼクティブ(行政の長)のもとに,サービスを執行するシステムだ。ノッティンガムでも議会に行ってみた。やはり,委員会ごとの予定がびっしり。無報酬で,日中は仕事をもっている人が多いことから,議会の開会はすべて午後7時過ぎから(土日は昼間も開催)。本会議は年数回程度。ただ,チーフ・エグゼクティブや財政部長は公募制で,スタッフ機能は高く,大規模な自治体では,行政側が主導権を握る場合が多くなっているということである。やはり,ノッティンガムの議会においても市民パネルの予定が入っており,市民参加の方法として定着しているようである。

 エセックスはこれをさらに進めて,議員内閣制の実験を開始。行政への責任を明確にしようとしている。


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