行政評価の導入事例は,次のとおり。
ベンチマークは,オレゴン州に代表され,東京都,青森県などに導入の動きがある。まちの課題と方向を明確にして,具体的な目標を定めることにより,市民に分かりやすく,また設定の過程に市民参加を行うことで,目標の共有化が図られるなど,政策レベルでの評価手法として有効性が注目されている。
静岡県に代表される業務棚卸表は,業務の「目的・手段の樹木的(連鎖的)構造」が特徴で,漠然とした日常業務を体系化することによって目的と手段が明確となり,仕事を分析するのに役立つシステムである。
イギリスは,市民憲章で行政がなすべきことを公約するとともに,税金に見合う成果と言う視点で,市場競争原理を導入したり,全国の統一した指標を設定して,市町村のサービスを同じ土俵で競わせるなど,中央主導のシステムである。
三重県が先駆的に取り入れた事務事業評価は,指標を設定して,目標達成度を図る目標管理型のシステム。簡便で専門的知識が不要なことから,導入を検討している自治体の注目を集めている。札幌市の試行している事務事業評価もこのタイプ。
このほか,成果指標を設定する目標管理型に対して,評価の視点を5段階,ABC評価するなど,ある程度の基準を設定して定性評価するタイプの評価システムも一部の自治体で導入している。
さらに,行政評価を外部評価,内部評価に分類すると,前者の代表例がベンチマークである。委員会を設置し,市民主体に指標の設定を行う外部委員会型で,オレゴン州のプログレスボードが有名。道の政策アセス委員会も,評価のみを行う外部委員会タイプと言える。内部評価としては,目標管理型など現在多くの自治体で導入している業績評価法が主流である。
自治体の多くは事務事業評価にとどまっており政策評価まで至っていない。これは事業見直しや予算削減の手段となっており短期的視野で評価の効果を上げようとしているためである。事務事業は政策という大きな目標を実現する手段であり,長期的視野に立った戦略や計画を整理し,そこに事業を絡ませていく必要がある。ベンチマークなどの上位の指標を設定して長期的な目標を明確にすることにより,体系的な評価を目指さなければならない。
現在の事務事業評価の目的は,財政悪化による事業の効率化で予算の削減を目指すなど後ろ向き。限られた資源である予算と,政策目標である計画とは,本来同一の評価に基づくべきである。削減や見直し中心である現状の評価を,計画の管理や予算査定へ活用していくことはこれからの課題と言える。
現在の評価は事務事業中心で専門用語が多く市民にとって理解しにくい。指標の式も複雑でその効果が把握しにくい。定性評価は記入者の主観となるので拠りどころが不明である。
財政悪化や地方分権など,現状の課題を認識することなく業務に携われるのが問題。現在の評価は,職員による内部評価的な色彩が強く,評価そのものの目的が浸透していない。行政評価は,評価主体の評価能力や仕事の進め方に関する意識などが評価を左右するが,能力向上や意識改革といった方策が不十分である。
3 札幌市が導入すべき行政評価手法
(1)外部評価一市民の意見を取り入れる
| @ベンチマーク ・目標設定における参加・協働型,市民の分かりやすさ
Aベンチマーク指標設定委員会
・パートナーシップ
B専門評価会
・大型プロジェクトなど特殊で専門的な事業の事前評価・科学的分析手法を活用
C議会
・事務事業評価などを題材に議論の場として活性化 |
市民と行政がまちづくりの方向性を共有するため,ベンチマーク指標を数値目標として設定することが適当と考える。そのために設定に関わる組織を新たに始動させる。市長,各分野の代表,公募委員など10名程度で構成するベンチマーク指標設定委員会と市民(委員会選出・公募・ボランティア・
NPOなど)多数にて構成し,行政はあくまでサポーターに徹した指標選定部会である。
まず,指標選定部会にて,どんな指標を数値目標として選定するのか,候補を選び,目標値を提言する。選定のための調査・分析等にかかる経費は行政が負担する。
ベンチマーク指標設定委員会は,指標選定部会により選ばれた指標候補と目標値について議論し,指標と数値目標を決定する。数値目標は市民の目標であるとともに行政の目標でもある。
市民は,数値目標達成のための諸活動を心がける。行政は,指標の数値目標を尊重し,適切な施策・事務事業選択を行う。
目標数値に対する成果がベンチマーク指標により客観的に示された後,指標選定部会がデータの収集,分析を行い,次の指標と目標値選定作業へとつなげる。
指標設定―目標設定―達成度測定―成果の検証と改善を繰り返す。指標の数や種類,目標数値は作業を繰り返す中で収束していくものと思われる。それは,まちづくりの方向性が浮き彫りになるに等しく,市民と行政が「限られた資源をどこに投入していくのか」を真剣に議論することになる。年を経るごとに成熟していくシステムである。
その他,大型プロジェクトなど特殊で専門的な事業の事前評価は専門評価会を設け,科学的分析手法を活用する。
議会には,行政評価をきっかけに,活発な議論を期待する。
(2) 内部評価
| @共通指標 ・事務事業間の効率性・有効性を測る
・コストを明確化する(住民満足−コスト=成果)
A施策評価と事務事業評価
・業績評価法が簡易性,分かりやすさの点から最適
・事務事業評価の積み上げと施策評価を一体化する
・内部の評価をフイードパック
B計画体系図
・職員が行政の計画体系図を描くことにより目標の明確化、共有化
・5年計画との関係確立
CTQMマネージャーの設置,研修強化
・現場段階からの職員意識改革と能力向上
DCS
・ポイントになる事業にCSを導入
・市民の満足度を意識
E予算とのリンク
・従来の予算査定書と統合し予算査定のツールに |
事務事業評価は,行政の専門技術的な面が強く,市民の関心もあまり強くない。また,すべての評価に,外部評価を導入するのは,時間,コストの面から現実的ではない。このような考えから,まちづくりの方向性といった大局的な見地での外部評価に対して,事務事業評価及び施策評価を行政の自己評価=内部評価と位置づける。
ただし,@市民に分かりやすく,A客観化,A透明性の確保,C市民満足の視点を取り入れることで,信頼性の高い評価を担保する。
事業間の軽重,優先順位づけなどや成果を計るためには,政策―施策―事務事業というピラミッド階層にそった体系的な評価を進める必要がある。
当然,ベンチマークという政策指標に対応して,施策,事務事業評価の成果指標が関連し,この集積が政策を実現させると言える。
内部評価とする下位の評価は,簡易性や分かりやすさから,全国で主流の目標管理型の業績評価手法が最適と考える。
施策評価は,事務事業の積み上げで評価し,構成する事務事業の達成度や施策の核になる事業の重点評価=施策の要因となる事務事業に重きを置きながら,総体的に評価する。
また,事務事業、施策、政策の評価の分析,結果,改善方向を相互にフィードバックしながら,大きな成果へつなげていく。
さらに,住民にとって目にみえるものは,「成果」はどれだけあって,いくらかかったか=「コスト」が大きな評価要素である。分かりやすさの視点でコストを共通指標と捉えて,その明確化が大切ではないか。コストを明確することで,住民満足―コスト=成果が計れる。定性的ではあるが,高い精度で成果を客観的に計ることができる。コスト計算を正確にするため,発生主義会計を取り入れ,一般管理費などの単位コストや退職引当金,減価償却費などを簡便な方法で活用できる公会計手法の確立が課題である。
次に,評価の前提として,職場での議論を通じて,業務を長期計画の中での位置づけを描き,職員間で共有化を図る。これにより,長期総合計画,5年計画との関係を明らかにする。また,業務の分析や体系を描くには,
TQMなどの手法を用いる。このため,課にTQMマネージャーを養成,計画体系や評価にあたって指導を行い,評価システムの円滑な浸透を図るなど,研修の充実も必要とされる。
さらには,内部評価といっても,住民満足を重視する視点から,施策の核になる事業については,アンケート,グループインタビューなど
CSを必ず取り入れるも忘れてはならない。同時に既存の予算調書と融合するなど,評価事務の負担軽減についても配慮しなければならない。
(3) その他
| @情報企開(インターネットほか) ・分かり予すく,ポイントを PR
Aフイードパックシステム
・意見・要望の把握、反映を迅速に
・イントラネットの活用
B導入計画・組織・予算 |
住民への情報公開として考えられる手法として,直接の閲覧やインターネットによる評価表(写)の公開というのが一般的である。
しかし,現状は専門的で分かりづらく,ポイントを押さえて,やさしく解説するなどの広報的なPRも心掛けていくべきである。
情報公開を基に集約された意見をいかに使うかが評価システム成功のひとつの鍵になる。
様々な手段で投じられる意見を,イントラネットの活用などで,データベース化し,各部局が活用できるとともに,活用結果を公表するなど,施策や評価に生かしていくことが必要である。
評価手法を導入する時期としては,計画の体系と照合し適切な指標の設定を図ることが大切であり,次期5年計画策定時を目標に評価システムの完成を目指す。
4 ケーススタディ
5 終わりに
| (1)職員の意識改革の実行【評価システムの成否を決める。
( 2)QC活動一日常の現場の活動を大切に。
小集団活動の奨励(わいわいテーブルの拡大など)
(3)インセンティフー表彰,特別昇給の活用,現場の権限強化,区役所などの予算要求権付与
(4)PDCA(計画一執行一評価一改革) |
評価を導入することが外部に対する小手先のポーズに終わらないよう,職員一人一人が評価システムの真の目的を理解して,業務にあたる事が求められている。そのための情報活用を行うために,研修の機会をより多く積むこと等,職員の資質の向上図ることも必要になる。
日常的に業務に対する問題点の発見を意識する気構えで働くことが望まれる。QC活動などグループ活動から地力を高めていくことが,将来的な発展に向けて大きな役割を果たしていくものと期待できる。
実際の業務,評価を行うのは各現場においてであるが,現場の意見を実現するシステムの整備が必要である。
そのため,現場の権限強化や予算要求権を与えることも必要と考える。
また,業務の改善や提案など職員の努力が報われる人事,給与システムなど,現場から仕事を盛り上げていく方策が望まれる。
計画―実施―評価―改善の管理サイクルが,日常の業務の中に自然に根付くことが,これからの財源的に厳しい時代にあわせた行政運営にはより有効,より必要である。その役割の一端を担うのが行政評価による評価−改善というラインである。