無手勝流まちづくりを綴る ー私の読んだ一冊
「まちづくりに先例はいらない」。ちょっと過激なその言葉に,著者のNPM(ニュー・パブリック・マネジメント=公共経営学)に裏打ちされた街づくりへのビジョンがある。
NPMは,市民を顧客と捉え,限られた資源(人,物,金,時間)で,いかに市民の満足を高めるかを目指した新都市経営の手法である。常にお客様である市民の立場に返って,市役所のサービスを考えることが原点だ。
助役を置かない条例制定,ISO9000の取得,職員による庁舎の自主清掃,窓口業務の土日サービス開始,そして,職員へのボーナスの現金支給.....。群馬県・太田市は,マスコミでも話題に事欠かない。
しかし,一見奇抜な施策の根底には,確固たる著者の考えが見え隠れする。
助役を置かない条例は,「部局の権限強化によりサービスの迅速化を図る」,ISO取得は,「高品質なサービスで行政の使命を果たす」,自主清掃は,「改革に不可欠な職員の意識改革のきっかけに」,土日サービスは,「お客様志向を実践する」等々。すべてNPMの原理を行動に示したものばかりである。
アカデミックな公共経営学の教科書より,分かりやすい実学の書とも言えそうだ。
著者が尊敬する大企業経営者の言葉―「前例がない。だからやる」が,激動の時代にあって,行政のあり方を示唆している。
検討するのは,「前例はどうか,他市でやっているかでない。市民にとって,まちにとって,その施策・事業が必要かが大事だ」。
この本は,群馬県・太田市の清水市長が,自らの4年間を振り返った”戦記”である。
いつか私たち行政マンは,仕事に対して,成し遂げたときの喜びや心ときめかす感動を忘れているのではないか?。
マンネリ化した私に”渇”を入れ,使命感あふれる札幌市職員のあるべき姿を示してくれたような気がする一冊である。
清水聖義著「前例への挑戦―自治体はサービス創造企業」
(学陽書房 H11.11.10)
札幌市厚別区保健福祉部保護課 長谷部英司 評