「行政評価を考える

〜市民に分かりやすい評価システムを目指して」
〜事業・政策を的確に捉えた成果指標の確立について〜

は じ め に

“自治体破綻”という言葉まで耳にする今,国,自治体ともに危機的な状況にある。
 全国と比較して優良と言われる札幌市だが,決して誇れる状況にはない。行財政危機の中で,市の各部局において創意工夫を重ねながら,市民サービス向上のための取り組みがなされている。
 しかし,もはや画一的な行政手法ではこの危機に対応できない時代になっている。職員一人ひとりが経営意識をもつこと,そして前例にとらわれず,将来を見据えた大胆な発想と行動をすることが求められている。
 行政評価は,我々職員の能力を引き出してそれを“成果”という形で市民に還元するために最適な仕組み,道具である。また,顧客であり,株主である市民との協働によりさらに効果をもたらすものと考える。
 このような視点から我々研修グループは,まず「市民に分かりやすく」をテーマに調査研究を進めた。

 以下,不透明な行財政の現状と課題,行政評価の導入状況を明らかにするとともにグループの目指す「行政評価システム」を述べていきたい。

今後の札幌市の取り組みに微力ではあるが参考になればと願いながら。

1 戦略的な都市経営を目指して

(1)     行政を取り巻く環境

 社会は大きな変化を続けている。少子高齢化,高度情報化,国際化は経験のないスピードで進んでいる。長引く不況と産業構造の変化による失業の大幅な増加,地球規模で起こる環境問題など,行政はこうした不透明な変化を読み取り,予測し,的確に対応していくことが大切な責務になっている。
 我々は,まず,行政を取り巻く環境を下表の3つの面から捉えた。

■表1−1グループの時代認識

@     行財政改革

A     地 方 分 権

B     VFM=Value For Money*1(税金の払いがい)

以下,それぞれについて整理したい。

@ 行財政改革

行財政改革は,すべての行政マンが日々その必要性を実感していることだろう。右肩上がりの経済成長が終わり,自治体の財政は,歳入の伸び悩みや福祉対策経費・公債費の増加などにより,毎年度多額の財源不足に陥っている。財政の健全化を急ぐとともに,組織体制や施策・事業の進め方,財政運営のあり方などを,簡素で効率的なシステムに転換していかなければならない。

 A地方分権

今日,我が国の地方自治体は産業振興だけでなく,地方の個性の創造が求められるようになった。地域資源を活用した創造的な施策などの戦略的な行政運営が必要とされている。平成124月にいよいよ具体的な地方分権の動きが本格化する。地方分権は,権限の問題を強く意識しがちだが,本質は地方がその独自の資源を生かし,自らが創意工夫を重ねて,個性を創造していくことにある。地方自治体は自らの責任と判断で,限られた財源を有効に活用して戦略的に地域運営に取り組んでいかなければならない。『経営体としての体制の確立』が早急に求められている。それには,現状分析や課題の発見,対応策の検討と戦略的な計画を設定することが必要である。

BVFM

厳しい財政状況のもとで,市民の間に税金の使い方への関心が高まっている。同時に,行政自らが透明性を確保するとともに,有効性・効率性などを追求していること,適切に事務事業を選択していることを積極的に示すことが求められるようになった。
 VFMとは,市民が支払う税に見合う成果であり,行政がさまざまな施策や事業を展開するにあたっては,市民に対し,その必要性や効果を明らかにするアカウンタビリティ(説明責任*2)を果たすことである。公正で透明性の高い行政の実現には,市民と行政情報を共有することが前提になっている。
 さらに,市民と行政とのパートナーシップを進め,市民意見を反映して施策・事業を選択・重点化していくことが必要である。
 そのためには行政マンが能力を高め,市民参加による知恵を集め,協働してまちづくりを進めていかなければならない。常に成果を意識して行政運営を進めることが,戦略的な都市経営につながっていく。
 以上のような行政を取り巻く環境に照らして,札幌市の現状を分析したい。

(2)    札幌の現状

本市は,地方分権の進展を始め,社会経済状況の変革に的確に対応した行政運営を推進するため,事業の必要性や効率性などを随時検証してきた。職員参加型の「ダイナミックリファイン=DR運動」や,他の自治体に先駆けて事業再評価プログラムも導入し,5年計画の事業の見直しも行った。その後も事務事業全般にわたって見直しや再構築を行うなど,財政運営の一層の効率化を図ってきた。一連の行財政改革推進計画の取り組みにより,平成10年度は一般行政部門で約41億円,企業部門も含めると,約55億円の財政効果をもたらした。平成11年度も引き続き取り組み,132億円の見直し効果が見込まれている。

sisai.gif (12906 バイト)しかし,市税収入は,景気低迷により3.6%も減少し(10年度の前年度比),収入率も前年度を下回るなど厳しい状況にある。市債残高は,近年の経済対策や減税補填債の発行などにより,大幅な伸びを続けている。平成10年度末の本市の一般会計市債残高は9347億円となり前年度比9.2%の増となった。
 11年度末の市債残高は,1兆円を超え,市民一人あたり約56万円が見込まれている。
 今後,急速な少子高齢化への対応や公共施設の更新などの深刻な経費増加が見込まれる。
財政基盤の強化に努め,限られた予算の中で創造的な施策を行うとともに,一層サービスの質的向上を図り,税に見合う成果の極大化を目指していかなければならない。

 

行政評価は新時代に対応した都市経営を進めていく手段の一つとして注目されている。札幌市も,行政評価の一形態として117月から事務事業評価を試験導入した。122月に結果が公表され,指標設定の難しさ,職員への浸透,評価の体系化などの課題を抽出して今後本格導入への準備を進めている。局の機能強化や公会計制度の改革などと有機的に組み合わせ,行政資源(財源,人員等)の効率的・効果的な配分に有効なシステム作りを模索しているところである。我々が認識した行財政改革,地方分権,VFMに対応していくシステムの中核と位置づけられるものである。

 (3)    行政評価とは?

行政評価とは,戦略化した計画のもとに政策,施策,事務事業を科学的な分析や経営管理手法を駆使して,有効性,効率性,経済性などの様々な視点で評価し改善につなげていくための道具である。業績を重視するとともに市民のニーズを意思決定に反映した行政運営を基本とする「New Public ManagementNPM=新公共経営)*3」に由来している。
 一般企業の成果は利潤である。行政の成果は,“株主”・“顧客”である市民の「満足」である。しかし,今までは成果よりも,「どのぐらいの金額をかけてどれだけの量の事業をしたか」に重きを置いてきた。
 行政評価は,都市経営の根本を成果志向に根ざしたものに変える手段である。

■表1−2行政評価の効果
   @市場競争原理による効率性,有効性,経済性の向上
   Aアカウンタビリティの実践,市民との対話促進
   B行財政改革の推進
   C職員の能力向上と活用

 

 まず,行政における市場競争原理とは,他自治体,民間とのサービス水準の比較,公民の役割分担や民間委託などを視野にしたコスト比較などを行うことである。それが行政評価により明らかになることで,効率性,有効性,経済性が高められる。また,情報を分かりやすく提供し,説明責任を果たし,市民と行政のコミュニケーション手段として活用される。

 さらに職員間に,従来の「PlanDo」から「PDCA(Plan-Do-Check-Action)」サイクルへの転換を根付かせることができる。評価と改善を繰り返し,行政の効率化・事業の効率性の向上,政策の有効性向上をはかる。職員が,事業の必要性,効果,コストなどを常に意識して事業の企画・運営を行うことにより,その政策形成能力などを一層高め,行政の財産である人材の有効活用が図られる。これにより行財政改革へ寄与する点も大きな効果と言える。

 行政評価は,以上のような効果をもたらす有効な手段として注目され,全国の自治体に浸透しつつある。しかし,行政の個々の事業,施策,政策をどのような評価の対象にするのかなど課題も多く,都市経営手法としては未成熟の段階である。それぞれの自治体の実情に合わせて改良し,より効果的なものにしていく必要がある。
 なお,手法や種類,他自治体の導入状況については次章で触れることとしたい。

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