3 札幌市が導入すべき行政評価手法   

(1)     提案の基本的な考え方 

   今までの行政は法適合性やプロセスを重視してきた。それが硬直的な行政運営をもたらし大胆な発想や創造的な政策を生み出す機会を奪ってきたのではないだろうか。

   これからは業績を重視するとともに住民のニーズを意思決定に反映した都市経営を基本にすべきものと考える。

   こうした考え方を踏まえ,グループとしてはNPMに基づく成果志向・業績重視の行政評価手法を提案したい。  @ 評価に最適な目標管理型予算や人材などの行政資源は,行政機関を通じて様々な事業や施策に変化して社会に色々な影響を与える。この影響=結果に着目して都市経営を進めなければならない。

「プロセス」から「結果」=「成果」に注目して評価を行うことは必然的に事後評価の手法をとることになる。

また,行政は税金を支払った市民の付託に応えて働くものである。税をもとにした行政資源の投入により,「株主」である市民にどれだけ付加価値をつけて還元できるのか。そして「顧客」である市民の「満足度」の向上が行政の成果といえる。

「顧客のために」ではなく「顧客の立場に立った」サービスの提供を意識しなければならない。評価の重要な視点は,「行政資源をどれだけ投入し,どれだけ効果的に市民に満足を与えたか」の成果と顧客満足である。その成果と満足の量に相当する行政の「業績」を測定する経営管理システムが必要となる。評価に重要なことは,事前に明確な目標数値を設定し,その達成度を監視することである。

事前目標と実績を比較して分析することにより,将来とるべき手段を有効に選択することができる。これが“Plan-Do-Check-Action”の経営管理サイクルを構築し,定着させることにつながっていくものである。

今回提案する評価手法は,目標値を管理して行政経営,ひいては都市経営に寄与する「目標管理型の行政評価」である。A       内部評価と外部評価現在の行政評価は,評価の主体で分類すると行政自身が行う内部評価と外部の主体が行う外部評価に分けられる。それぞれのメリット・デメリットは表3−1のとおりであるが,市民意見を重視した外部評価と行政の公平・効率的な自己評価である内部評価に分けて,具体的な方法などを述べていきたい。

■表3−1内部・外部評価のメリット・デメリット 

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 (2) 外部評価−市民の意見を採り入れる 

@ベンチマークの導入とその理由

政策レベルで市民主体の外部評価の手法として,ベンチマーキング方式を提案する。

 ベンチマークとは英語で「水準」や「基準」といった意味である。この評価手法は民間企業で発達したもので,組織の経営を向上させるために何らかの基準や目標を設定し,優れたパフォーマンス(業績)をしている他の組織や機関と比較して,それに近づけるよう組織運営の改善・改革に結びつけるものである。

 また,オレゴン州で導入された後,結果志向に着目して独自の工夫を重ねながら進化している手法である。

ベンチマークを使用した政策評価は,具体的な事業を直接見直すものではない。市民にとってなにが不足し,なにが満たされているかを示すものであって,その街,地域に固有の課題を浮き彫りにするツールである。また,市の方針決定に有効な判断材料を提供して,政策の現状分析とそれに基づく改善に役立てられる作用がある。

政策目標は札幌市だけが担うものではなく,市民や企業,NPO,そして国や道などの協働がなければ達成されない。札幌市の重要な課題であるパートナーシップを具体化する上で,大きな視点でまちづくりへの共通目標をともに作り上げることは,行政と市民の協働を進める上で大きな役割を担うと期待される。

ベンチマークは「目標値による行政運営」,つまり数値目標管理を導入して行政運営を改善していこうとする手法の一部である。企画立案段階で設定された長期・中期・短期の目標の達成度合や,行政資源投入量,効果・市民満足度などを反映させた指標を体系的に設定し,これを測定・分析する。ここから問題点を浮き彫りにし,改善につなげることができる。

  A ベンチマークの効用

ベンチマークの最大の特徴は,指標という共通言語を通じて市民と行政の会話が促進されることである。

一方デメリットは,社会目標的(スローガン)になる可能性があったり,指標の体系が組織や業務に対応しておらず直ちに都市経営としての改善につながりにくいといったことが考えられる。

    市民に分かりやすい行政評価を導入するには,市民参加の外部評価で,行政には無い市民の視点での大局的な評価が求められる。

 ベンチマーキング方式はこれらを包含した手法であり,デメリット部分は内部評価と密接にリンクさせることで補完することができる。

■表3−2ベンチマーク指標の特長

  • 市民に理解しやすい

  • 政策の大局的な評価

  • 政策の優先順位が選定できる

  • 成果志向となっている

  • 目標の達成度が具体的

  • 行政と市民が共有できる

 

  

B 導入するにあたっての具体的方法   

 外部評価には,行政の関与は最小限にすべきである。なぜなら,行政にとって有利,不利を問わず,市民の立場から客観的に評価することが外部評価のねらいだからである。このため,行政が必要なデータの提供をすることは当然であるが,市民自らが必要なデータ収集や市民満足度調査などを主体的に行うことが必要である。市民と行政がパートナーとして対等の立場で協働して市の目指す方向性を模索していかなければ評価の目的が達成できないものと考える。

以下,指標設定を担う組織・具体的な方法を提示したい。

       市民と行政のベンチマーク指標運営委員会  

行政ではなく市民中心でベンチマーク指標を設定するため,市長直属の「市民と行政のベンチマーク指標運営委員会(以下運営委員会)」とその下に指標選定部会(以下選定部会)を設置し,行政と市民が共通で取り組むべき課題を要約して表現した指標を設定する。この組織は,各分野の専門家や公募の市民委員を置き,指標の設定や達成度に対する評価,分析,目標値の再設定などの役割を担う。

       指標選定部会

実際に指標を選定する際には,分野ごとに「指標選定部会」というワーキンググループを設置し多数の市民に協力を募る。

部会の作業として,指標選定の前に札幌市の現状や市民の意識を踏まえ,まちづくりの方向性を検討し確認する。ベンチマーク指標は市民と行政の共通認識のもとで運営されるまちづくりの方向性だからである。部会委員がテーマを決めてブレーンストーミングするなど自由な発想のもとにコンセンサスを得る。

  これをもとに「これからのまちづくりの方針」と呼ぶべき報告書を作成し,指標運営委員会に提出する。

(指標の設定)

運営委員会は各選定部会からの報告書をもとに,各分野の代表者が市の目指す方向を全体討議し,「これからのまちづくりの方向性」を決定する。

この決定をもとにして「市民に分かりやすい」をモットーに,具体的な指標を設定していく。決定された指標は市民に公開して意見を募り,加除しながら指標を絞り込む。設定した指標は,まちづくりの指針として毎年達成度を検証し,成績表として市民に公表する。

  (運営内容)

    ベンチマーク指標は改革に結びつける手法でもある。札幌市には,指標の達成・改善に結びつく有効な事業や施策を進めていかなければならない尊重義務を課し,委員会とのパートナーシップ協定などで明示する。

目標の未達成は,原因を分析して達成するための改善を示し,時代の変化に合わなければ目標値を変更,場合によっては指標そのものを変えていく。

行政は,指標を達成することを念頭に施策,事務事業を企画・推進し,設定,評価,改善の繰り返しが,施策や事業自体への改善にもつながっていくことになる。

また,指標の達成度が高い分野と低い分野では,ニーズの度合が同じであれば,低い方へ行政資源を重点的に配分するなど,予算・人員の適正な配分による効率的な運営が図られる。

一方,市民の共有目標であることから,行政にできない部分で共に目標達成に協働する市民活動が活性化するよう,市民へアピールすることも委員会の重要な役割の一つと言える委員会等のイメージなどは,頁図32,表32参照)。

 以上,市民参加による外部評価について述べたが,パートナーシップという言葉自体は歴史が浅く,行政はもとより市民の間にも定着していない。いわば,手探りの協働形態と言える。

 従来の長期総合計画審議会は,行政が作業的な部分を担ってきたこと,まちづくりの大きな方向など抽象的な政策目的を提言したものの,必ずしも成果志向にはいたっていない。これを数値目標というベンチマークで,市民の身近な感覚に置き換えて表現することで,より多くの市民による議論が進むと考えられる。

 制度的な確立には時間を要するが,市民と共に行政がパートナーシップを学ぶ"場”としての機能も大きい。先進地のオレゴンでも未完の制度である。実践しながら確立を目指し,進化させなければならない。

図3−1 ベンチマーク指標運営委員会イメージと役割

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■表3−2 委員会と部会の構成と特徴

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