(3)  内部評価

 まちづくりの方向性といった大局的な見地での外部評価に対して,事務事業及び施策を対象とする行政の自己評価を内部評価と位置づける。個々の事務事業は,行政の専門技術的な面が強く,市民の関心もあまり強くない。また,すべての評価に外部評価を導入することは,時間,コストの面から現実的ではない。

 よって,ベンチマークを政策評価としてその下位に位置する評価は,内部評価として簡易性や分かりやすさから全国で主流の目標管理型の業績評価手法が最適と考える。

 以下具体的な評価方法について提示する。 

 @ 内部評価の提案事項

 全国自治体の評価事例,先進自治体やシンクタンクでのヒアリングを通じて得たことを基に,内部評価について次の3点を主眼に提案したい。 

u「分かりやすく,客観的に」を心がけて評価の信頼性を確保すること

u 成果指標設定に「アウトカム」プラス「市民満足」「コスト」で味付けを

u 評価の前に,分析能力を磨き,計画体系を描き指標の相互関連を把握すること

 信頼性の高い評価をするため,評価作業においては次の4点を心掛けるべきものと考える。

 市民から見て分かりやすい行政評価とは,それぞれの施策・事業が何を(誰を)対象に,どのような手段で,目指している方向は何か,そしてどのような結果をもたらしたかを示しているものであろう。 

 そのための第一歩は,

a.どのように成果を示すか? 〜成果をアウトカム指標で示すこと

 指標は,投入された予算・職員などの量=インプット,生じた事業の量や数=アウトプット,施策・事業により生み出された成果=アウトカムに分類される。

 例えば,雪まつりに支出された金額・職員の人件費がインプットで,99年の場合,来場者220万人がアウトプット,そして経済への波及効果268億円がアウトカムである(数値は11年度「札幌市の観光」より)。すなわち,仮に目的を「雪を生かした世界に類を見ない大雪像群で幻想的な非日常空間を演出(手段),観光客などを誘致し,市内での消費を増やして経済の活性化に寄与する(目的)。」とする。

 目的を対応する成果は波及効果268億円であり,アウトカムと言える。アウトプットである来場者は確かに重要ではあるが,最終目的ではなく,成果はアウトカム指標によって測定されるべきものである。自治体が,どのような目的で事業を選択し,どのような成果があったのかを分かりやすく提示するためには,アウトプットとアウトカムを区別することが非常に重要なことである。 

目  的→施策・事業の実施(インプット)→アウトプット→アウトカム 

ただ,すべての施策・事業でアウトプットとアウトカムの間に因果関係があることについて蓋然性があれば,アウトプットをアウトカムの代替指標とすることも可能である。雪まつりで,もし経済波及効果が計算できない場合,来場者数220万人は誰もが支持する成果を代替する指標と言えよう。 

次に分かりやすさで大切なことは,

b.共通指標コストと市民満足度から成果を導くこと

 「分かりやすい」ということは,多くの人に実感・想像のできる指標である。一般の感覚から来るコスト意識が大切である。市民にとって目にみえるのは,どれだけの「お金」をかけてどれだけの「成果」を得られたか,である。

 分かりやすさの視点でコストを共通指標と捉えて,その明確化が大切ではないか。

 “「市民満足度」―「コスト」=「成果」”である。

■表3−3 市民満足の調査手法と特徴

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 市民満足度は市民参加の代替として考える。市民不在の施策・事業選択はありえない。

 内部評価といっても,市民の満足を重視する視点から,施策の核になる事業については,アンケート,グループインタビュー*7などCS(市民満足)*8を必ず取り入れる。

 市民満足は,生活面の満足,施設・サービスに対する満足,事業・施策に対する満足を適宜事業の性質に応じて選択して測り,事業に生かしていくことが大切である。

 具体的な手法は前頁の表3−3に整理した。

 行政評価で明らかにならなければならないのは「成果」である。コストと市民満足度を明確にすることで,

「市民満足度」―「コスト」=「成果」として計算できる。

 数学的な計算ではなく定性的ではあるが,一般の感覚になじみ,高い精度で成果を客観的に測ることができる。

 しかし,成果には,行政がコントロールできない社会的経済的環境などの影響を多分に受ける。アウトプット,アウトカム,市民満足度など複数の指標を組み合わせて成果をより客観的に示すことも一つの方法である。職員は世の中の動き,他市町村の動向,企業の行動,消費動向など,直接関係ないと思われる部分についても敏感に捉えていくことが重要である。

 作成した評価表は全て公開し透明性を確保する。評価結果を公表し,市民からの反応があった場合,それを蓄積して業務に生かすとともに,満足度の目安として評価にフィードバックさせることも忘れてはならない。

【コストの考え方】

 コスト計算では直接事業費+職員費(投入人工×平均職員費と退職手当引当金)=事業費を基本にするが,より正確にするため,発生主義会計を取り入れ,一般管理費などの単位コストや退職引当金,減価償却費などを簡便な方法で活用できる公会計手法の確立が課題である。

  • 比較対象として,他自治体,民間を調査する。
  • ハードには減価償却費を考慮したコストで,ソフト施策では利用者一人あたりの費用を示す。
  • 単価で表示することで,費用と効果の判断材料とする。
  • そして他類似事業,周辺市町村,全国とのコスト比較を行う。

  など, コストを様々な切り口でみて評価することで,事務事業の適否が判断できる。

B事務事業評価と施策評価〜計画体系図

 さらに,事業間の軽重,優先順位づけを行い,成果を測るためには,政策―施策―事務事業というピラミッド階層にそった体系的な評価を進める必要がある。

 当然,ベンチマークという政策指標に対応して,施策,事務事業評価の成果指標が関連し,この集積が政策を実現させると言える。

■図3−3政策と成果の関係

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 施策評価は,事務事業の積み上げで評価し,構成する事務事業の達成度や施策の核になる事業の重点評価=施策の要因となる事務事業に重きを置きながら,総体的に評価する。事務事業,施策,政策の評価の分析,改善を相互に繰り返しながら,大きな成果へつなげていく。以上の点を考慮に入れ,「一覧性があること,簡潔であること,分かりやすいこと」を心掛けて事務事業評価表と施策評価表を作成した(A-36,37頁別紙1,2参照) 

評価の前提として,担当部局が全市的な視点で事務事業の体系的な位置づけを行い,他の事務事業との関連を意識しながら,求める成果を明確にするために「計画体系図」を描く。

職場での議論を通じて,長期計画の中での位置づけを描いて職員間で共有化を図る。これにより,長期総合計画,5年計画との関係を明らかにする。個々の事務事業にだけ着目してしまうと大きな目標が見えてこない。職員一人ひとりが自治体の目標を政策―施策―事務事業という体系のなかで事業の位置づけを明確にとらえ,求める成果を意識することである(政策と成果の関係は,図3−3参照)。

また,他の施策に属する事業も何らかの関連があるものが見えてくるため,改善の方向を考える上で,連携や共同化,重複など様々な角度で事業を検討できる。

具体的に計画体系を描くとは,言い換えると長期計画の基本的な方向を,「@何をすべきか(達成すべき測定可能な目標),Aなぜするのか(目標を導き出した根拠),Bどのようにするのか(目標達成のための手順・筋道),Cいつまでにするのか(計画達成期日),Dいくらかかるのか(目標達成のコスト見積)」を念頭において具体的に成果指標を入れながら事務事業相互の関係と施策,政策目標の関連づけを行う作業である。

計画の戦略化作業であり,次期5年計画では,アウトプット主体の目標をこのような戦略的なアウトカム主体の計画に変更することも必要といえよう。

さて,このように描いた計画体系図を基に,評価表の記入作業を次の手順で行う。

(事務事業評価表)

(ア)       上位の目標,中位の目標を記入,事業との関連についてコメントする。

(イ)       事業の対象,手段,意図・成果が評価するポイントであり,何を(誰を),どういう手段で,どういう状態にしたいか,求める事業の効果・成果は何かを記入する。

(ウ)       事業の必要性は,社会背景など客観的データに基づいた分析を行う。将来的には,時系列比較できるようCS調査を定期的に行うとともに,事務事業に応じて簡便な方法を取り入れる。

(エ)       目標達成度は,主要な活動指標,成果指標についてその達成割合を記入する。別紙でデータを整理し,推移をグラフなどビジュアル化する。

(オ)       役割分担は,公共的に担う必要性,経済性,委託可能性,NPO,PFIの活用などの多角的な検討を行う。

(カ)       その他特記事項は,評価に配慮すべき特別な事項を記入する。

(キ)       改善の方向は,成果の向上,質的な向上,コスト低減など有効性,効率性,経済性の観点から方向を示していく。

(ク)       総合評価は,@市民満足A必要性B有効性C効率性D経済性について,すべてをクリアしているものをA,いずれかひとつに問題があるものをB,2つに問題があるものをC,3つ以上問題有りとするものをDとする(4段階評価)。

     有効性=効果があること,効率性=投入量と仕事の比較,経済性=コスト

  (施策評価表)

(ア)       施策の成果は,個々の事業それぞれに,事業費,主な成果指標,達成度,総合評価結果を記載する。

(イ)       市民満足は,施策そのものもしくは,中核事業についての市民ニーズ,満足の指標とその度合いを記入する。

(ウ)       施策成果指標は,施策ごとに必ずアウトカム指標を設定し,その達成度合いを測る。

 なお,総合評価は,@市民満足,A必要性,B有効性,C効率性により3段階(ABC)評価で判定する。

C 評価の導入とTQM手法

評価表の記入は,マネジメントサイクルをしっかりと意識して問題や成果を捉え,多角的な検証や分析などを行う高度な行政経営能力が必要である。

民間企業では,客観的に把握・分析した事実に基づき,サービス・製品の質の維持・改善・向上を図っていくという品質管理活動(QC活動)繰り返している。

それを,第一線の製造・販売部門だけでなく,全部門・全従業員・事業の全プロセスを取り込んで実施していくことをTQM(Total Quality Management)という。

TQMを行政に当てはめて考えると,まちづくりの基本方向から長期計画を定め,実施計画,予算にブレークダウンし,目標を明確にして,日常の業務を目標に照らして管理し,課題を解決し、改善していくことと言える。

業務の分析や体系を描くには,このTQM手法を用いるのが有効であろう。今回の研究ではまちづくりの基本方向を定める部分を外部評価に託した。TQMの発想・手法を応用し,大きな目標や計画を正確に捉えて行政運営を進める上では,現状分析のためチェックシートや親和図,マトリックス図など,数値データを扱うQC7つ道具や言語データを扱うQC7つ道具*9などの基本的なツールを使いこなせなければならない。

課にTQMマネージャーを養成,導入推進のリーダーとして計画体系の理解や評価にあたって指導を行い,評価システムの円滑な浸透を図るべきものと考える。係長レベルの職員で養成するのが適当だろう。そのための研修の充実も必要である。

同時に,どのような考え方,視点で評価していくかを分かりやすく解説したマニュアルを充実して,能力を補強していくべきである。 

D 予算との統合

行政評価はPDCAの中で特にCheckとActionを担うツールである。事務担当者は予算の調書と同時期に評価表を記入することになる。成果の良し悪しによって次年度の事業が選択され予算が配分されていくのであるから,両者を切り離して考えることはできない。

現時点で予算調書はワープロやパソコンの導入によってほとんど電子情報化されている。

このため,行政評価システムを導入する際に既存の予算調書との融合を図る必要がある。予算査定が事務事業評価の2次評価となり,最終的には評価表をフォームで入力し,それがデータベースを構築する。既存の作業の延長であれば,負担感を減らすことができ,日常の業務の中で常に成果と次の投入量のバランスを考えながら仕事をすることにつながる。

以上述べてきたとおり,計画と予算と行政評価の連携を図ることが大切である。

ベンチマーク指標で示された目標を共有し,体系的な評価を行うことにより,計画と実行と評価と予算編成というPDCAのサイクルが完成する。

流行にのった“行政評価導入のために評価作業”,“行政評価のための評価”ではなく,市民サービス向上のために実のあるシステムを目指すべきものと考える。

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