4 ケーススタディ 

今回,ベンチマーク及び施策,事務事業評価についての提案を行ったが,札幌市の観光事業を施策評価表,事務事業評価表に記入して仮想の評価を試みた(試作した評価表と記入要領は別紙1,2のとおり)。

まず,「計画体系を描いて事業の位置づけを明確化する」こととし,11年度の予算から「ユースホステル移転新築」「観光キャンペーン事業」「観光産業経済効果調査負担」「コンベンションの推進」「観光イメージアップ事業」「札幌観光まつり事業補助」を題材に描いた体系が図4−1のとおりである(本来関係する分野を網羅する必要はあるが今回は省略した)。

図4−1計画体系図

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図4−1を見ると第4次札幌市長期総合計画の中では,「経済―活力を高める」に観光事業が位置づけられる。施策レベルでは「集客産業の振興」となるが,経済分野だけ見ても集客施設やイベントばかりではなく,産業・技術,学術なども相互に関連する事業であることが分かる。
 例えば,特産品では札幌独自のブランド,農業であれば「さっぽろ・さとらんど」のような観光農業施設,コンベンションであれば優れた産業技術なども集客の要素と言える。
 また,観光資源として,自然・スポーツ・芸術・文化・街並みなどが,コンベンションには,学術・芸術・文化・アフターコンベンションなどが関連項目として挙げられる。

 観光事業を一つ題材にしても関連施策は幅広く,何をどのようにキャンペーンすればよいか,魅力を高めるには何に力点をおくかなど考慮すべき点は少なくない。
 次に政策,施策,事務事業の成果指標(アウトカム)を整理すると図4−2のようになる。
 事務事業の何が観光客入り込み数増加に必要か,観光客の増加が上位のどのような成果をもたらすか,その関係が見えてくる。

さて,こうした事前検討を経て,実際に記入した評価表が別紙3,4のとおりである。
 取材が不十分で正確な評価表の記入にはならないが,様々な課題や評価のポイントが見えてきた。

 具体的に生じた大きな問題は,まず事務事業と成果の因果関係は簡単に証明できないことである。
 例えば,札幌市では東京などで観光キャンペーンを進めているが,東京でキャンペーンを見て聞いたお客の数がアウトプットのひとつであるから,アウトカムはキャンペーンにより実際に札幌を訪れた人数が成果指標に当たる。
 しかし,キャンペーンの効果としての来札者の増加数は実際上計測できない。
 また,事業の開始前と開始後で仮に年間10万人の観光客が増えたとしても,10万人の増加に観光キャンペーンがどの程度寄与したか,因果関係があるか不明確である。エア・ドゥの就航によって札幌〜東京の航空運賃が安くなったなど様々な外部要因が考えられる。
 キャンペーンとの関係で一番早いのは,札幌を訪れた観光客にモニター調査して,来札の誘因を探る方法はあるが,検証のための費用がかかりすぎたのでは本末転倒になってしまう。
 このため,キャンペーンに対する会場での評価,札幌をどう感じたかなどキャンペーンでのアンケート,会場への来場者数,通常の観光客アンケート調査などの指標で補強することも必要である。
 また,観光客がマイナスになったときには札幌に対するイメージがどう変化したか,魅力が認識されていないのか,また魅力不足なのかなど多角的な検討や評価などを一体的に見て判断することになろう。
 最終的には,成果をストレートに出すことは難しいとしても総合的に因果関係を考えることによって評価することになる。このようなノウハウはまだ確立されておらず,評価の積み重ねを蓄積していくことが大切である。
 また,目標管理では割り切れない事業がある。「観光産業経済効果調査負担」は,観光がもたらす経済効果を産業連関分析により金額で算出する調査で,観光事業に対する投資に見合う効果を測定する基礎資料である。成果を『客観的で正確な波及効果額の算出』とすると,算出した額の正確性や価値が成果であり,数値で目標を設定して達成度を計る方法にはなじまないのではないか。むしろ調査の必要性,活用する範囲など別の視点の方が評価のウェイトが高いと言えよう。
 さらにハードでは,「ユースホステル移転新築」を例にとると3章で述べたとおり,当該年度の建設費は重要であるが,「減価償却費と毎年の維持管理経費」−「宿泊費収入の見込み額」がどの程度かなど経営的なコスト評価が求められる。
 このほか,成果指標の設定が困難,コストをどのように捉えるかなど生じた疑問は数多く,評価システムの構築の難しさを垣間見た。 

 以上のシミュレーションで得られた一端を述べたが,行政評価は評価を重ねることで進化いくシステムと言える。
 したがって,行政評価は実践しながら精度を高めていくことが必要である。それが行政にさらに高い成果もたらし,市民満足の向上につながっていく。

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 別紙1 事務事業評価表―記載の説明 

(1)      計画体系は,担当部局が全市的な視点で事務事業の位置付けを行い,他との関連を意識しながら,求める成果を明確にするために計画体系図を描く。それを基に上位の目標,中位の目標を記入,事業との関連についてコメントする。

(2)      事業の対象,手段,意図・成果が評価するポイントであり,何を(誰を),どうゆう手段で,どういう状態にしたいか,求める事業の効果・成果は何かを記入する。

(3)      事業の必要性は,社会背景など客観的データに基づいた分析を行う。市民のニーズ,満足は,各種アンケート調査,要望,調査など根拠を明示する。将来的には,CS調査を時系列比較できるような定期的調査を行うとともに,事務事業に応じて簡便な方法を取り入れる。

(4)      市民満足は,生活面の満足,施設・サービスに対する満足,事業・施策に対する満足を適宜事業の性質に応じて選択して測る。

(5)      目標達成度は,主要な活動指標,成果指標についてその達成割合を記入する。

(6)      コストは,直接経費,職員費(投入人工×平均職員費と退職手当引当金)で算出,利用者一人あたりなどの単価明記する。単価で表示することで,費用と効果の判断材料とする。比較対象として,他自治体,民間を調査する。

(7)      役割分担は,公共的に担う必要性,経済性,委託可能性,NPO,PFIの活用などの多角的な検討を行う。

(8)      その他特記事項は,評価に配慮すべき特別な事項を記入する。

(9)      改善の方向は,成果の向上,質的な向上,コスト低減など有効性,効率性,経済性の観点から方向を示していく。

(10) 総合評価は,@市民満足A必要性B有効性C効率性D経済性をについて,すべてをクリアしているものをA,いずれかひとつに問題があるものをB,2つに問題があるものをC,3つ以上問題有りとするものをDとする(4段階評価)。

  ※有効性=効果があること,効率性=投入量と仕事の比較,経済性=コスト 

 別紙2 施策評価表―記載の説明 

(1)      計画体系には,上位の目標との関係を明確に記載する。

(2)      施策の成果は,個々の事業それぞれに,事業費,主な成果指標,達成度,総合評価結果を記載する。

(3)      市民満足は,施策そのものもしくは,中核事業についての市民にニーズ,満足の指標とその度合いを記入する。

(4)      施策成果指標は,施策ごとに必ずアウトカム指標を設定し,その達成度合いを測る。

(5)      総合評価は,@市民満足,A必要性,B有効性,C効率性により3段階(ABC)評価で判定する。

   (仮想評価について)

   この報告書に添付する施策評価及び事務事業評価表は,実際の第4次長期総合計画及び平成11年度の観光にかかる主要な事業を題材にシミュレーションした。

成果指標に使用した観光客入り込み数,外国人宿泊数、雪まつり来場者数,同経済波及効果などの数値は,平成11年度札幌市の観光(経済局観光部編)を使用した。

事業費は,平成11年度は予算ベース,8〜10年度は決算ベースによるがデータの検証をしたいため,概ねの評価のあたりをつかむための仮想数値と理解していただきたい。

目標値は,根拠があっての数値ではなく,単に数ヵ年の伸び率を乗じたものである。

将来の事業費は,11年度をベースに年率1%アップで計画した仮想数値である。

本来の評価には,日ごろからデータを積み上げていくこと,コストについても対象者あたりの費用など多角的な検討が必要であるが,研修においてデータ収集が困難であったことから的確な評価シミュレーションを実施したものではないので念のため申し添える。

事務事業評価の総合評価のポイントである@市民満足A必要性B有効性C効率性D経済性と施策評価のポイントである@市民満足,A必要性,B有効性,C効率性は,それぞれ問題の有無を基準に評価する。

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