終 わ り に 

(1)成功の鍵は,人づくり

 行政評価は,単に評価表を埋めていくことが目的ではない。事務事業,施策,政策の目的は何か―「何を対象に,いつまで,どういうふうにしたいか」を明確にして,その目標の達成度を検証し,改善に導くことを目指すシステムである。
 とりもなおさず,投入したお金,人,物に見合う成果を上げることで,税を支払った市民への責任を果たしていくことが最終的な目的である。
 これまで,様々な視点から行政評価についての提言を行ってきたが,評価の成功を支えるのは『人』である。どのように理想的なシステムを構築し行政改革を図ったとしても,それを運用していく職員の意識を改革しなければ,形だけに終わってしまう。
 また,行政評価はマニュアルだけではできない。当然,評価の手順を定めたマニュアルの役割は大きい。しかし,成功の鍵は,すべての職員が成果を志向する評価の目的を理解すること,様々な事象の分析能力や政策形成能力を身につけることにある。
 次に,評価を行う上で市民との協働は最も大切なこと。これからの職員には市民の感じていること,望んでいることを的確に捉え,コーディネーターとして常に市民に新しい情報を提供し,市民の反応に対して迅速に処理していく能力が求められる。
 それは,世の中の動きを敏感に汲み取る感性,捉えた情報を的確に分析する力,問題を解決する“意思と力を備えた人材”になることである。
 一人ひとりの力は小さくても,現場でのQC活動などから地力を高めていくことが,将来的な発展に向けて大きな役割を果たしていくとともに,成功体験の積み重ねが自信を付け,職員の意欲を,能力をさらに引き出すものと期待できる。 

 (2) 創意工夫が生かせるシステムを 

また,実際の業務,評価を行うのは現場であり,市民のニーズを捉えた創意工夫がすぐに生かせるシステムの整備が必要である。現場の権限強化や区役所の予算要求権など,自ら決定して実行できる体制を構築しなければならない。業務の改善や提案など職員の努力が報われる人事・給与システムなど,現場から仕事を盛り上げていく方策が望まれる。
 計画―実施―評価―改善の管理サイクルが,日常の業務の中に自然に根付くことが,これからの財源的に厳しい時代にあわせた都市経営にはより有効,より必要である。
 その役割の一端を担うのが行政評価による評価−改善というラインである。


《 参 考 文 献 》

(行政評価一般)

「実践自治体政策評価」 ぎょうせい(斎藤達三)

「自治体の行政評価システム」 学陽書房(高寄昇三)

「行政評価」の時代 NTT出版(上山信一)

「行政経営」の時代 NTT出版(上山信一)

「新行政のための事務事業評価システム」地方財務199923月号(田辺正)

「広がる政策評価導入の動き」 地方財務19993月号(田辺正)

「地方自治体の行政改革戦略と政策評価」 地方財務1998年7,8月号(山本清)

「事業評価・行政評価の可能性」 地方自治職員研修19989月号特集

「分かりやすい自治体の政策評価」 学陽書房(今井 照)

「米英の地方行政における政策評価の新しい潮流」 東京都(政策報道室)

「行政評価」 東洋経済新報社(三菱総合研究所)

「政策評価の現状と課題―政策評価研究会中間報告」 通産省(政策評価研究会)

「三重が,燃えている」 公人の友社(中村征之著)

「行政評価による地域経営戦略」 東京法令(行政経営フォーラム海外調査会

「事務事業評価の検証」 自治体研究社(三重県地方自治研究会)

「社会アセスメントー公共事業評価の手法と総合化」東洋経済(三菱総合研究所)

「地方自治体の事業評価と発生主義会計」 中央経済社(石原俊彦)

「長浜市における事務事業評価システムの導入」 関西学院大学産研論集26号(石原俊彦)

「自治体における政策・事業評価システムのあり方」 (三菱総合研究所)

「行政評価理論入門」 経済セミナー537号(田辺正)

「県と市町村職員から見た政策評価」 埼玉県(彩の国づくりチーム)

 (市民満足・市民参加)

「CS(顧客満足)の実際」 日経文庫(佐野良夫)

「東京都政策指標の開発に向けて」 東京都(政策報道室)

「品質管理(QC)の実際」 日経文庫(谷津進)

「分権時代の自治体職員―住民・行政の協働」 ぎょうせい(大森弥ほか)

「参加と協働―新しい市民=行政関係の創造」 ぎょうせい(荒木昭次郎)

「分権時代の自治体職員―アカウンタビリティと自治体職員」 ぎょうせい(大森弥ほか)

「社会実験「市民協働のまちづくり手法」 東洋経済新聞社(山崎一真)

「公共政策と住民参加」 北海道町村会・地方土曜講座ブックレット(宮本憲一)

(分析手法・ベンチマーク) 

「企業診断の実際」 日経文庫(宮崎一紀,柳田譲)

「品質管理(QC)の実際」 日経文庫(谷津進)

「これからの公会計」 ぎょうせい(片山光代)

「自治体のバランスシート入門」 ぎょうせい(天明茂ほか)

「新国民生活指標〈平成11年版〉」 経済企画庁(国民生活局)

「ベンチマーキング入門」 日本能率協会マネジメントセンター(グレゴリー・ワトソン)

「顧客満足度調査のノウハウ」 かんき出版(浅野紀夫)

「住民サービスここが一番(全国都市番付)」 日本経済新聞社(日経産業消費研究所)

TQM発想による創造的行政運営」 ぎょうせい(地方行政活性化研究会編)

「自治体経営のためのベンチマーキング入門」 地方財務9849月号(田辺正)

(新公共経営その他)

  「行政革命」 日本能率協会マネジメントセンター(デビット・オズボーンほか)

「ニュー・パブリック・マネジメント」 日本評論社(大住荘四郎)

「破綻と再生」 日本評論社(五十嵐敬喜)

「公共経営の創造」 PHP研究所(宮脇淳)

「事例で見る地方自治3E監査の実務」 中央経済社(太田昭和監査法人)

「行政改革をどう進めるか」 NHKブックス(白川一郎)

「自治体破綻」 日刊工業新聞社(井熊均)

「未完の分権改革」 岩波書店(西尾勝)

「政策経営と地域経営」 学陽書房(阿部孝夫)

 このほか,ヒアリング調査にあたり東京都,川崎市,静岡県,神戸市,野村総合研究所,三菱総合研究所の皆様に貴重なアドバイスをいただきました。この場を借りて厚くお礼申し上げます。


《この論文における用語の説明》 

[*1]VMF(Value For Money)

イギリスで発祥した行政改革の理念。「税金の払いがい」のことで,税に見合う効果をいう。最小の経費で最大の行政効果を目指す考え方。

[*2] アカウンタビリティ(Accountability)

行政の計画や実施したことをその過程を含めて市民に説明する責任や義務のこと。行政資源を適正に,効率的に利用して,どのような効果を挙げているかを明らかにする責任である。

[*3] NPM(New Public Management)

民間企業の経営手法や成功事例(ベスト・プラクティス)を行政経営に取り入れて,行政の効率化や活性化を目指す公共経営の考え方。従来の行政の管理者を経営者に置き換え,市場競争原理を導入しようというところに特徴がある。

[*4]パブリック・コメント

行政が事業を行う前に,内容を公表して市民の意見を求める「意見照会手続き制度」のこと。ホームページ・窓口・新聞・雑誌・報道発表・広報などで可能な限り案件の趣旨・背景,関連資料などの公表を行い,郵便・ファクシミリ・電子メール等で意見を募集する。行政機関に対して提出された意見や情報を考慮して意思決定を行い,提出意見や意見に対する考え方の公表を義務付けている。

[*5]タウンミーティング

地域の住民集会のこと。オレゴンでは直接市民が参加して個人や地域の重要な政策課題を発見する一つの方法として積極的に利用した。

[*6]アウトカム

政策,施策,事務事業によってもたらされた行政の効果をいう。行政評価における重要な概念。行政が意図する状態を数値化して分かりやすく捉えた成果指標である。インプット(投入量)やアウトプット(事業量・活動指標)と比べて,外的要因に左右される場合があること,測定が難しいことが特徴である。

[*7]グループ・フォーカス・インタビュー

数人から10人程度の市民を対象に,テーマを提示してインタビューする方法。自由な議論やインタビューにより市民ニーズの課題や傾向を探る。政策判断の材料に利用する。

[*8]CS(Customer Satisfaction)

顧客の満足度を調査により数値化して客観的に評価,分析を行い,サービスの向上を目指す顧客満足度調査のこと。これを市民の満足に置き換えて,行政サービスの効果を測る指標とする。

[*9]QC七つ道具・新QC七つ道具

品質管理に用いる手法で,主に数値データを用いる手法がQC七つ道具で,「チェックシート」「グラフ」「特性要因図」「パレート図」「散布図」「ヒストグラム」「管理図」をいう。一方,主として定性的な言語データを扱う手法が新QC七つ道具で,「親和図」「連関図」「系統図」「マトリクス図」「アロー・ダイヤグラム」「PDCP」「マトリクス・データ解析法」がある。データによる事実の把握→科学的分析と判断→具体的な実施→結果・改善という流れにこの手法を活用しながら,市民満足と品質の向上に寄与する。

[*10]費用便益分析

施策により発生する社会的費用や社会的便益を推定または測定し,これを貨幣価値で表示し,その比較により実施の妥当性を判断する手法である。

社会的便益=事業の結果による社会構成員にとっての効用の増大,社会的費用=事業に投入する資源。社会的便益社会的費用が大きくなるほど望ましい。

[*11]費用対効果分析

社会的費用や社会的便益について比較する手法。費用のみを貨幣価値で捉え,便益一単位当たりの費用を比較する方法。社会的便益と社会的費用を費用便益比(便益÷費用)で表現できるので,費用便益比により,複数の施策の効率性について相対比較が可能である。

[*12]イントラネット

インターネット環境を利用した組織内情報通信網のこと。基本的には組織のメンバーだけがアクセスできるもので,インターネットに接続しない限り外部からのアクセスを遮断できる。逆に環境を利用してインターネットと接続することにより組織内外の意見交換が可能となる。

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