行政評価の事例紹介(1)ー東京都新宿区

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市民に分かりやすくをモットーに,評価表を分離

 行政評価は,市民への説明責任を果たすことが大きな目的の一つである。しかし,評価表の既存事例を見るとあまりにも評価の視点が多く,見慣れないとポイントが薄れてしまう傾向が見受けられる。

 この点,新宿区のモデル評価は,「市民に分かりやすく」を意識して,公開用の基本シートを別に作成しているのが特徴だ。公開用と言え,その他は非公開というわけではなく,疑問や求めがあればすべて公開という原則は堅持している。

 以下,20事業をモデル評価した新宿区の11年度実施結果報告書からポイントを紹介しよう。

  4つのシートで評価の流れつくる

 評価の流れは,

  • 担当部が評価シートを作成する。
  • 企画部長,総務部長,企画,予算,広報,総務,職員の5課長からなる評価委員会がヒアリング。
  • 様々な指標を示して,評価委員会が有効な指標を認定する。
  • (2)の評価指標シートには,委員会の認定した指標と基準や実績値を記載。
  • ヒアリングを行った上で委員会が改革方針を提示
  • 評価シートの情報と区民世論調査などを参考に評価委員会が事業評価を行う。
  • 委員会の改革方針に基づいて担当部局が改革プランを作成
  • その後区長が決定し,予算・計画への反映

    ※4つのシートは下記を参照

 担当部の評価ではなく,評価委員会の評価ということが他の先進事例と大きく相違する。担当部がお手盛り評価になりがちなことを抑え,他部局の委員が評価して客観性を担保しようという試みと言えよう。

 指標も一つではなく,いくつかを提示してそれを第三者である他部局の委員が有効な指標を選択する。このため,担当部の職員しか理解できない指標は排除されることになる。組織の寛大化傾向を抑止し,「市民に分かりやすく」を追求している。また,既存事例にある必要性,、優先性,重要性などの評価ポイントを記載するところがシートになく、成果指標に絞った点も特徴のひとつである。

 なお,具体的な評価表の項目や実施後の課題は次のとおり要約した。

(評価表の項目)

 (1)基本整理シート

事業名  
事業の種類と位置づけ 実施期間,関係事業,基本計画及び実施計画での位置づけ,他計画での位置づけ,根拠法令・要綱等,関係課
事業費と業務量 決算額/予算額(9年度,10年度),予算額(11年度),従事職員数(9,10,11年度)
事業内容 目的,対象,手段,実施結果,効果,効用
事業に関する区民の声・満足度の把握方法  

(2)評価指標シート

評価指標設定 指標名,指標の種類,定義(式),比較基準,基準値,測定可否,評価順位,評価委員会の認定
実績値(評価委員会認定指標) 指標名,9,10,11年度実績

(3)評価・改革プランシート

分析評価(評価委員会) 指標への意見,事業に関する評価,改革方針
改革プラン 指標の改革プラン,事業の改革プラン,改革による予想効果

(4)基本評価シート(公開用)

事業名  
事業の内容 目的,対象,手段
評価指標 指標名,比較基準,基準値,実績値(9,10,11年度)
事業の評価  
改革プラン  
備考  

 ※公開用は,シート(1)〜(3)のポイントを抽出したもの

 (今後の主な課題)

  •  対象事業拡大と職員への浸透
  •  第三者の視点を取り入れる工夫
  •  予算・計画などへの活用
  •  評価委員会の役割などの運営方法の検討
  •  公開用への追加検討(職員数,人件費)
  •  評価のランクづけ
  •  アウトカム指標などデータ収集方法
  •  区民意識などの指標への活用

 対象事業拡大時の対応に注目

 対象事業を拡大した場合,すべて評価委員会で評価することは物理的に困難になってくるのではないか。評価のノウハウを蓄積し,担当部での評価精度を上げる、あるいは評価委員会による抽出評価などが必要になってくるのではないかと考えられる。また,評価の視点を成果指標に絞り込んでいることが特徴であり、様々な種類の事業を対象にしたとき,成果指標をいかに構築できるかがこのシステムの成否を決めることになる。いずれにしても,「市民に分かりやすく」を追求したベスト・プラクティスであり今後の成果を注目したい。

※市民に公開した資料であるため,新宿区には了解を得ていませんが,実名で紹介します。紹介内容はあくまでも資料を基にした個人の解釈ですので予め申し添えます。