hyouka.gif (5964 バイト)

line1.gif (1090 バイト)

行政評価フォーラムに参加して

 4月22日,東京で開催された行政評価フォーラムに参加した。「自治体が変わる,市民が変わる,行政評価で変わる」をテーマに開催されたフォーラムの内容をレポートする。

※レポート内容は筆者がこう受け取ったという主観であり、発言者の真意と異なることもありえるので念のため申し添えます。


(行政評価フォーラム)

  • 日時 4月22日13:00〜17:30
  • 会場 東京商工会議所4階ホール
  • 主催 地方自治研究機構 野村総合研究所

(主な内容)

1 基調講演「行政評価の時代的意義」:清水・群馬県太田市長

 清水市長の著作は,昨年末に私の読んだ一冊として職員向けの都市研究広報に書評を書いた関係で,興味深く講演を聴いた。

 「良いものを作れば売れる時代から,(ONE TO ONE)など個性が重視される時代になった今,お客様が何を考えているかが企業の生き残りの成否を決める時代になった。これを行政に当てはめたのが太田市の仕事の進め方である。

 質とニーズを求めたとき,まず着手したのがISO9000の取得だった。これは職員の意識改革に有効。無理と思った定年間際の職員も自宅に帰ってからも深夜まで勉強を続けた。職員の意識改革に果たした役割は大きい。目標が納得できれば公務員の能力は計り知れない。バランスシートも近く公表するが,マチの実態を知ることで,コスト感覚を高め,内部改革にも役立つ。

 ニーズ=お客様が何を考え,何を求めているかをないがしろにしたら,改革とは言えない。太田市の行政評価は,市民満足度を測ることからスタート。今年度から実際の事務事業評価に取り組むが,常にお客様に目を向けるのが行政評価の根本だ。」

 市長の著作に詳述されているが,ニュー・パブリック・マネジメントに根ざした考えが端々にちりばめられていた講演であった。「職員の創意工夫が大事だ。一律カットのマイナスシーリングは太田市では行わない。職員に権限委譲し,顧客志向が根付いて行政評価の背景になる職員の意識改革につながった。行政評価は,どれだけ市民を向いて仕事をしたか,職員がどのように考え,どんな仕事をしたかがキーポイント」という言葉が印象的であった。

 (参考) 太田市長・清水聖義著「前例への挑戦―自治体はサービス創造企業


 基調講演「自治体における行政評価導入の実態」

谷口・野村総研上席研究員

 自治省が実施した調査を主体に報告があった。ー地方公共団体のおける行政評価の取り組み状況

 また,行政評価は,先進自治体の取り組みから全国に広がり,行政評価をどのように活用するかの第3ラウンド,質的な向上の時代に入った。また,行政評価の要諦として次の4つを提示していた。

(行政評価の4つの要諦)
  • 評価はツールであり,ゴールではない。
  • 評価と意思決定は別物。
  • 評価は成長するもの。
  • 外部の視点を取り入れること。

 4つの要諦は言いかえると,「行政のニューパブリックマネジメントの取り組み=改革への出発点が行政評価である。評価は意思決定はしないこと,意思決定は人の価値判断である。そして最初から完成系を求めず,徐々にレベルアップを図りながら成長しつづけるもの。内部ばかりではなく,市民の視点,ニーズを志向していくことが大切である」ことを示唆していた。

3 パネルディスカッション「行政評価の役割と課題」

(パネラー)清水・太田市長 山谷清志・岩手県立大学教授 惠小百合・日本ナショナル・トラスト協会理事 橘幸信(総合的行政評価システム研究会) 水上耕一郎・野村総研部長

(コーディネーター) 小田貞夫・NHK放送文化研究所主幹

(小田) 自治体はつぶれないという神話があった。これは「競争にさらされない。誰かが助けてくれる。厳しい批判にさらされない。」状況が作り上げた虚構である。しかし,もはやこれは通用しない。時代が変わった。行政評価は,自治体もこの変革に対応していくためのツールだ。

 「行政評価の意義」

(山谷)行政は従来のやり方では競争に負け,倒産=失業もありえることを認識すべき。行政評価には2つの流れがある。ひとつは,政策科学的なアプローチ。もうひとつは,パフォーマンス・メジャーメントである。ここで忘れてはならないのは,業績が上がれば,また効率的であれば良いというものではない。市民が必要なときに必要なサービスを受けられる。満足度を上げることが必要だ。

 よくアカウンタビリティといことが言われる。単に説明責任と訳されるが,地方分権,情報公開,行政手続法など様々な改革と連動するもの。そして,「市民に理解できるかが大事で,啓蒙やエンパワーメントが必要。行政評価はNPOが行うのが理想的と言えるかもしれない。

(清水)朝出勤して,お茶を飲み,新聞を読む。それから仕事という公務員の役所文化を変える。予算の達成度ではなく,今,市民が何を望んでいるかが大切だ。総合計画の10年先をいっても市民は関心がない。今,何を望んでいるかである。

 「行政評価の実効性を高めるには?」

(橘)市民は行政の対象である。行政評価の中に取り込むことが必要。そしてシステムづくりから参加できる方法として,条例づくりを提案したい(詳細は,「総合的行政システムの実現に向けて」という研究会の条例案が示されたー資料は省略)。

 「住民の側からの行政評価,住民は何を求めているのか」

(惠) 何もかも行政の責任をうんぬんするのは間違いだ。河川で子供が落ちて溺れるのが行政の責任か?。危険を教える親の責任ではないか。この構図が行政を後退させたといえる。

 「行政評価は何をクリアするか。ポイントは?。」

(水上)従来の仕組みでは顧客のニーズを把握できない。部局ごとで効率化を考えるのではなく,今求められるのは全体のシステムだ。トップが引っ張れる自治体は限られる。職員の中に議論を巻き起こすこと,引き込むことがやり方を変えるパワーになる。行政評価は精緻にすればするほど原局の負担が増加する。できる限り簡素にが行政評価の基本。そして頑張ったところが報われるインセンティブをどう与えるかが成功のかぎを握る。さらに透明な行政運営を,っまた,オープンに運用していくべきものである。

 「キーワードは参画である。どのように参加を容易にするのか?」

(清水)目標をもって何かをすることは大きな力になる。改革は苦しい。しかし,変えることを楽しみに変えることができる。

(山谷)自治体職員がアクティブに動くには,非現実的には終身雇用をやめること,言いかえると危機感を有するかどうかが重要だ。現実的に言うと,何が問題で苦しんでいるかが分かれば,問題解決の情報になる。現場の把握がポイントで,風通しのよい組織をつくることが早道だ。

(橘)公平性と平等を追求することが阻害要因では?。自然災害の被災地で500人の被災者に200個の弁当しかないとき,平等を追求すればお断りするのが行政で,弱者を優先して他は我慢してもらうのがNPOである。失敗を恐れない柔構造の組織にしていかなければならない。それを与えるのは議員であり,市民と言えないか。

(惠)失敗しても,原因を分析し市民に説明し,情報公開を徹底し,再発防止の努力を怠らなければ市民は責めたりはしない。情報の同報性で市民に議論を喚起していかなければならない。

(水上)行政評価の結果を公表していない自治体が多い。行政評価を市民とのコミュニケーションツールと捉えると公表しなければ目的は達成されない。常に原点に立ち返って考えるべきだ。

(清水)権力者の力を弱める=エゴが排除される。権限委譲とCSが大事だ。

(山谷)見られる。比べられるを意識してオリジナリティをもって評価を構築しよう。

(橘)議員に頑張ってもらいたい。評価と意思決定は別物。決定者は長で有り,議員である。

(水上)緊張感のある前向きな評価を目指そう。事業をきるのが評価ではない。今の課題を解決するための評価である。

4 分科会・行政評価の役割とアカウンタビリティ

  コメンテーター 三部佳英・宮城県政策課長 大久保義忠・行政改革推進課長 山谷清志・岩手県立大学教授 橘幸信(総合的行政評価システム研究会) 米田耕一郎・行政体制整備室長 コーディネーター 水上耕一郎・野村総研部長

 宮城県と太田市の事例を紹介したほか,アカウンタビリティの重要性を中心にディスカッションが進められた。

 (三部)宮城県については,ホームページを参照

 (大久保)太田市については,

 市民満足度をアンケート調査することからスタートした。基本方針は,「市民満足の向上」「目的・成果重視」「コスト意識の徹底」で,施策の満足度,重要度等から現状を客観的に把握し,検証,改善を実施することとしている。

 対象レベルを施策においていることが特徴で,総合計画に基づいて目的志向体系を作成すること,企業会計手法に基づくコスト算定を行う。評価調書は二種類で,施策評価表,重要事務事業評価表を作成。予算編成にも活用していく予定だ(12年度スタートのため,具体的な作業は今後の予定)。

 主な発言ポイント

 (山谷)アカンタビリティには,「法に違反していないか」「マニュアルや通知に反していないか」「企業会計手法にのとって赤字になっていないか」「費用対効果はどうか」「政策目標を達成しているか」などの段階がある。言い訳と言い換えても良いが,単純な説明責任ではない。

 (米田)政策の選択や優先付けは従来も行政がやってきた。それをシステマティックに行うのが行政評価で,説明責任を果たす機能は大きい。本来のお客さまを意識して行うこと,部下が行った評価をトップが尊重することが大切だ。

 (橘)評価では,議会と市民が関与すること,予算とのリンクが重要なポイント。

 (三部)地域地域によっておかれる立場は異なる。実態に合わせて評価に取り組むことが大事。

 (大久保)評価は,いかに不満足項目を消していくかが大切だ。

 (山谷)役所の中,市民にいかに情報を正しく伝えるかがポイント。

 (橘)配付資料をもとに批判的に庁内での議論を望む。

 (米田)お客様にも,サービスの相手,関係者,圧力団体,納税者など様々。それを見極めて評価に生かすべき。

5 配付資料

  • フォーラムのプログラム
  • 「地方公共団体に行政評価を円滑に導入するための進め方(H12.3自治省)」
  • 「総合的行政評価システムの実現に向けて(総合的行政評価システム研究会)」=行政評価条例・政策要綱案
  • 分科会資料 「宮城県における行政評価の取り組みについて」「太田市行政評価システム」「豊中市における事務事業評価の概要」「三重県事務事業評価システムについて」「川崎市方式(総合政策評価システム)の概要」「長浜版事務事業評価システムの導入について」「NRI行政改革レターバックナンバー」