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福岡市経営管理委員会の市長への提言

「行政経営」の確立を目指して

 4月24日,行政経営フォーラムの例会に出席して,この提言の起草にあたったマッキンゼーの上山信一さんから,提言に至る経過や斬新な内容を伺った。「DNA2002計画:市役所の”DNA転換”に向けて」というユニークな副題が内容を髣髴させ,従来の提言にない試みを期待させるものである。

 上山さん曰く,「国鉄改革に関与したJR九州の石井会長が,『今の行政は国鉄末期の状況に似ている。いくら革新的なツールを取り入れても,結局破産した国鉄のようなものである』と言われた。バランスシート,行政評価を取り入れても遺伝子を変えなければだめだ。行政には改革という遺伝子がない。この提言は,市役所のDNAを転換して新しい息吹を吹き込むものだ」,と。

 福岡市経営管理委員会は,注目していた改革事例のひとつだが,委員が全員・民間あるいは民間を経験した学者で,市長の理解もあって行政が事務局に徹して,委員に調査や提言に至るプロセスまでを任せたのが特徴だ。ニュー・パブリック・マネジメントをまるごと福岡市に当てはめて実践する初の試みと言えよう。

 出発点は,「市民の視線」から行政を見直し,民間の経営手法を取り入れること。委員会は,行政という異文化の把握に3か月を費やした。委員自ら全局長にインタビューしたほか,全職員には「やりたいことができない障害は何か」「やりたいことは何か」の2点をアンケート調査した。この調査で分かっことは,誰もがおかしいと思っていることにもかかわらず,上からも下からも誰も言い出さず放置されている現状だ。多くの職員が全く初歩的なことで足踏みしている。その一例が全員に配布される制服。着用している職員は皆無なのに,廃止を誰も言い出さない。

 こうした事例からまず改革の出発点は,庁内の規制緩和に決まった。誰もがおかしいと思っているのだから,逆に,廃止しろといっても誰も反対しないだろう。ES=まず職員の満足を高める必要がある。従来の発想や担当は排除してとにかくやってみよう。これがプロポーザル委員会という仕組みに結実した。職員の提案を受けて,既存の組織は通さず,とにかくトップダウンでやってしまう。行政評価もPFI,どんな優れツールも職員に外注管理能力がないのだから何にもならない。これがまずDNA転換という発想になった。現場レベルの実践活動から職員満足度を上げ,組織防衛を押さえるため外圧を徹底して利用する。

 このため,最初に着手するのはおかしい点を直すこと。具体的には,申請書の押印廃止(サイン可),印鑑登録の簡便化,契約事務の簡素化(少額隋契のアップ・見積書省略,プロジェクト制採用など)等すぐ実行すべき項目,窓口サービスの利用時間延長,タクシーのクーポン化,日額旅費の見直し,全庁OAの統合化などプロパーザルトップ会で検討の上実行などの提言を行った。デビット・オズボーンのBanising Bureacracyの5つの戦略の一つ,文化戦略の「組織文化を変える」ひとつの実践的アプローチと言えよう。

 以下,提言のポイントをまとめてみた。

(提言のポイント)     提言書にリンク

 基本方針

1.         現行の事業と業務の生産性の向上,組織目的の明碓化と行政に対する住民の評価のフイードバックを通じて職員のモラール(やる気)とプライド(誇り)を向上,職員ののびやかな改革努力を妨げる庁内規則を全面的に見直す。

2.         職員を信頼し,現場の状況にあわせた臨機応変な対応が可能な組織文化を碓立する。 

3.         単に民間経営の手法を導入するだけでなく,経営の基本原理と職員の発想法そのものを変えていくという不退転の決意が必要である。

4.         市役所は,3つの意味で市民のために存在することをまず確認する。  

  • 「納税者」としての市民。  

  • 「お客様」としての市民。  

  • 「行動主体」としての市民。

5.         改革を抜本的かつ持続的なものにするためには,(1)トップのリーダーシップ,(2)イノベーション(技術・ノウハウ),(3)健全な外圧(市民の参画・監視)の3つが不可欠。

  新行政経営システム  イメージ図

6.         行政経営の考え方は,従来の日本の行政文化にはない。行政改革においても,市民の声などの,外圧を有効に活かす仕組みが必要。組織を「遺伝子レベルから変える」に等しい挑戦である 従って,真の課題は,改革し,チャレンジし続ける組織文化を確立することである。

7.         「持続する改革」を達成するためには,職員主体の運動を立ち上げる。それを通じて市役所の組織の「遺伝子(気風,文化,制度=DNA」を変え,世代を超えて改革し続ける組織文化を確立するそのためには,市役所経営のあり方を決める経営体制(ガバナンス),管理システム(マネジメント),実践運動(ムーブメント)の3つを同時に刷新していく必要がある。 

8.         単なる意識改革運動や現行の制度の一部手直しでは,抜本改革は不可能。個々の業務のプロセスや全職員の行動様式,さらには発想法,組織風土にわたる市役所経営のすべてを“バージョンアップ”する必要がある。

9.         経営体制(ガバナンス)の刷新=しっかりとした「経営管理」を確立するためには,経営手法だけではなく,経営幹部のリーダーシップのあり方や能カアップ,さらには管理体制にも踏み込んだ改革が必要。

10.    管理システム(マネジメント)の刷新=最新の技術や民間企業の手法を積極的に取り入れる。経営体制(ガバナンス),管理システム(マネジメント),実践運動(ムーブメント)の3つのレベルの改革には,同時に取組むことが重要。

11.    改革にあたっては,まず第1段階では,可能な限り民間経営手法に学んでみる。第2段階では,市民の参画や協働の体制がとれる開かれた経営スタイルに転換する。その上で,第3段階として各部署・各人が自律的に動けるダイナミックな経営文化づくりを目指す。

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