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  尼崎市の事務事業評価システム

ーモデル事業評価研究報告書からー

1 システムの特徴

 尼崎市では、11年度から「尼崎市事務事業評価システム研究会」を設置し、監査法人トーマツの協力・支援のもと調査研究を進めている。この11年度の研究報告書から、今後の課題や注目すべき点を筆者なりに整理してみた。(あくまでも筆者が報告書をこう捉えたということであり、文責はすべて筆者にあることを念のため申し添える)。

 導入の目的は、顧客・成果志向の行政運営、行政の体質改善・職員の意識改革、都市経営的視点の導入などは、他の事例と共通するが、コスト評価機能の強化ということを第一番目に掲げ、「コスト評価や事後評価機能を高めていくことにより予算配分・執行の適正化を図る」ことが特徴的である。

 さらに、評価の視点を資源調達・インプット(予算,人員)・プロセス(行政活動)・アウトプット(財・サービス)までを執行評価として、経済性・効率性の視点で評価している。政策評価は、事業により発生した成果・効果等をアウトカム指標で施策や事業の有効性の視点から評価すると位置づけている。既存の事務事業評価が、アウトカムを意識しすぎている傾向があるのに対して、アウトプットまでの執行評価、アウトカムの政策評価と明確にしたことが特徴的である。(下図参照)

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 事業レベルでも、コストから純然たる経済性・効率性を測る評価とアウトカムでの有効性を測る評価が並存して、従来、この区別があいまいなままで現場で混乱が生じている問題に解決の視点を提示していると言えるのではないか。

2 事業の現状・フルコストの把握

 評価対象の事業が、実施計画上の事業、予算上の事業、事務分掌上の事業があるため、内部管理事務など施策体系に位置づけることが難しい事業について再検討の余地がありとしつつ、予算編成上の事業単位を基本に、施策・目的別に事務事業を整理する必要性を提示している。

 また、事業にかかる人件費とコストでは、今回実施していないが部門別の間接費の配賦が必要としている。人件費としては、事務分担表に事業ごと記載している人工(A事業に1年間0.2人分投入していれば0.2人工と数える)に決算費目の平均人件費単価を乗じて、概算人件費を算出。今後の課題として、管理職の人件費、スタッフ部門全体の管理経費をどのように配賦するかを挙げている。さらには、施設サービスについては減価償却費などを適用してフルコストを捉えている。

3 執行評価の手順

 執行評価をフルコストを把握して、コスト意識を醸成する、また、コスト評価を行うことで改革改善運動につなげることを目的に掲げている。また、サービス水準を維持してコストダウンを図る、同じコストでサービスの水準を向上させる品質を意識しているのが特徴。フルコストの把握、事業目的と活動内容(アウトプット指標)を明らかにして、経年変化,施設間の比較、類似団体・民間比較によりコスト評価を行い、改革改善に向けた分析を行うことを執行評価の手順として示している。

4 モデル事業評価

 モデル事業は、21事業を選択。性質別(調査研究,受付相談、啓発育成、給付補助、融資貸付、窓口応接、監視指導、維持運営、資本整備、事業推進など)、対象別(内部サービス、市民サービス)、期間別(単年度、複数年度)に分けて、それぞれに評価にあたっての問題や視点、捉え方を導き出そうとしている点が注目される。

5 フルコストの考え方

 コストを重視した評価である。このため、フルコストの考え方を報告書そのままに次に提示する。

@直接事業費 事業担当課で把握している各種決算資粗を茎つさ決算額を節・細節別/性質別に集計。
A直接人件費 直接事業に従事した職員(課長補佐以下の職員・嘱託職員)の人件費を集計。事務分担表に基づく人工数を現在の単位より細かく算定し、職員が属する決算要目の平均人件費単価をもって算出した。なお、管理職、全庁スタッフ部門の間接人件費及び退職手当については、モデル事業評価のコストには含めず、本格導入時に計算手法を検討。

B直接費計

(@+A)

上記の直接事業費と直接人件費の合計
C部門間接費 各課における共用消耗品費、旅責等(決算では「その他諸経費」に集約されていることが多い)の部門間接費については今回配賦せず、今後、配賦方法について検討する。なお、全庁的経費については管理不能経費として各事業には配賦しない。
Dコスト計

(支出額)

(B+C)

上記までの合計が決算書ベース(現金主義会計)の事業コストとなる。
E非コスト項目

(控除)

発生主義的な考え方のもと、支出時点においては実質的なコストとならないものを一旦控除する。投資的経費(固定資産の取得費、臨時多額の修繕費等で減価償却計算を予定しているもの)、市債元本償還金、貸付金等。
F雑収入

(控除)

コストに関連して発生する収入は、コスト計(支出
額)から控除する。なお、一般財源、市債、国県支出金及び受益者負担金等についてほ控除せずにフルコストに含め執行評価に係る単位コストの財源内訳において、市負担分に係るコストを市民にわかりやす<表示することとした。
G非支出綻費(加算)

 ・減価償却費
 ・金   利

モデル事業のうら、当初支出の規模が多牢で事業との結びつきが強いもの、企業会計的手法による分析が有用と考えられるものについて考慮した。

《減価償却費》定額法(残存価格10%)により償却
し、耐用年数は法人税法(10年度改正)に準じた。
《金利》財源が市債の発行で賄われているものの市債金利をコスト計(支出額)に加算する。また、機会原価も一部コストとして加算している。

Hフルコスト
コスト計(支出額)に上記を加減算したものをフルコストして把握し執行評価に用いる。

6 今後の課題

 今後の課題では、事業の整理統合が必要であること、正確なコスト集計のため、部門間接費以外の他の部署が所管している関連経費をどのように配賦するかなど関連経費の集計範囲、配賦基準などのマニュアル化が必要であること、管理職人件費、退職手当引当金、機会原価等の取り扱いをどうすべきかなどを取り上げている。

 特に注目されるのは、事務・事業のタイプ別で評価の方法が異なること、具体的には、

  •  内部管理事務は、施策体系への位置づけは難しく、アウトカム指標による評価ができないため、効率化を図ることを目的とした業務改善の評価を中心にすべきこと

  •  サービス提供能力に係る評価が必要な事務事業があること

  •  複数年度事業について、事前の政策評価を中心に、事後評価はこの事前評価と事後の政策目標、便益、成果指標の変化を捉えて総合的な評価をおこなうこと

 を提示している。

 以上、報告書から筆者が特に注目した内容を紹介したが、従来行政が軽視してきたコストを中心に評価を組み立てていることが大きな特徴で、全国各地で発生主義会計の手法を導入する動きが加速する中、コスト評価の中でどのように生かしていくかのリーディングケースとして期待できる。

 なお、12年度以降、モデル事業の検証、職員の研修、アウトプット指標のデータベース化、政策評価の導入などステップアップを予定しており、今後、目が離せない事例と言えよう。