01logo.jpg (7551 バイト)  「機能的な参加型評価システムのあり方」


第6章 参加型評価の理論と実際,目指すべき方向

 わが国おける参加型評価に関する研究は,西尾勝など[79]よる研究が代表的である。この研究を概観するとともに,前章までのわが国及び海外の事例を比較・検証し,目指すべき参加型評価の方向を明らかしたい。

[79] 西尾勝「行政評価の潮流―参加型評価システムの可能性」2000年行政管理研究センタ−

1 評価に市民が参加する形態

 西尾勝は,評価に市民が参加する形態を次の3つに分類している [80]図表6−1参照)。

 一番目は,行政の内部評価に市民の意見を反映させる意見反映型である。これは,多様な市民参加の手法を活用して,様々なルートから評価に意見を反映するものである。

 二番目は,NPOなどが評価に関与して,政府とともに評価する協働評価型である。行政の最終的な評価結果に対する拘束力の強弱に差はあるが,評価に直接的に関わるタイプである。

 三番目は,行政とは別個に市民や評価機関が独立して評価を行う市民評価型である。様々な角度から指標を分析して自治体の格付を行い,あるいは,ランキングするなどのほか,行政経営そのものを包括的に評価する行政経営品質評価[81] もこのタイプである。

 まず,意見反映型は,多様な市民の価値観を反映して,多元的・多角的な評価を行うことができる。しかし,それらから一定の方向を導き出すことは,多様であるからこそ困難が伴う。この意見反映型で重要なことは,西尾勝の「政府機関による情報の提供・公表・公開が不可欠な前提条件となるので,情報公開制度,行政手続制度,パブリック・コメント制度,聴聞制度等の法制化が求められる」[82] という指摘のとおり,制度的な担保が必要である。同時に,行政と市民との間の情報の非対称性を解消することが重要である。徹底的に情報公開を進め,単に求められれば公開するのではなく,専門家や行政職員ではない市民が理解できる言葉での公開が必要である。

 次に協働評価型は,わが国では,例としては極めて少ない。しいて言えば,委託によるNPOによる評価がこのタイプである。その特徴としては,参加というプロセスにより,市民が顧客としてではなく,参画の主体として自立を促す効果を挙げている。

 古川俊一は「評価が専門性を持てば持つほど民主的な統制から逃れる恐れがある。政治によるチェックとともに,市民参加が必要である」 [83] と外部評価の必要性を指摘する。協働評価型は,直接的な外部統制・外部マネジメントの意味合いも有している。

 さらに,市民評価型は,市民生活に密着したサービスへの評価や組織全体,サービス全体の包括的な評価であることが多い。ガバナンスという新しい社会システムにおける自立した市民による協働という意味合いも有している。

 以上のような市民参加による評価を進めるには,普通の市民が,普通の感覚で評価できることが前提となる。西尾が指摘するように,「内部評価の場合には高度な分析手法を活用し,分析結果の解釈は一義的ではなくても差し支えないが,外部評価の場合には精度を犠牲にしても,分析結果を簡明なものにすることが肝要である。」 [84]ということは,大切な視点である。


[80] 西尾勝「行政評価の潮流―参加型評価システムの可能性」2000年行政管理研究センタ−,30頁-31頁。
[81] 行政経営品質評価については,本稿第2章,16頁参照
[
82]
西尾勝「行政評価の潮流―参加型評価システムの可能性」2000年行政管理研究センタ−,32頁
[83] 西尾勝前傾(古川俊一第2章「市民参加の評価方式」),43頁。
[84] 西尾勝前傾,23頁

2 エンパワーメント評価

 参加型評価は,そもそも政府活動の評価にとって重要な視点である課題の認識や介入の適切さ,適時性を保障するために考えられたとして,山谷清志は,次のような分類をしている(図表6−2)。

 一番目は,利害関係者の多様な価値観や対立した意見を調整するという利害関係者による評価である。複雑で対立した利害を調整していくことは,大きな困難が伴う。

 二番目は,利害関係者の協調による協働型の評価である。評価のプロセスを通じて,知識やノウハウを身につけるだけではなく,関係者の協働を進める評価でもある。利害関係者の対立という問題に解決を与えようというものである。

三番目は,協働型を一歩進めて,市民が評価に関するノウハウを身に付けることを積極的に支援して,評価に学習する機能を持たせ,真に対等な関係を構築しながら,市民の自己決定,自己責任を促すエンパワーメント評価である。

 最後のエンパワーメント評価のあり方は,自治体が政策を実現する場面においても,同じことが当てはまる場面があるのではないだろうか。ガバナンスには,異なる主体間の対等な協力関係を構築することが重要である。評価のノウハウを持つ人は,行政にも市民にも少ないという現実がある。少ないからこそ,エンパワーメントを前提にして,市民に対する積極的な支援が必要とされるのである。

 なお,エンパワーメント評価では,海外の開発援助でのプロジェクトを現地の関係者などを巻き込んで評価しようという意味での参加型評価の研究が行われているので紹介する。

 JICA国際開発研修所の研究[85]では,「参加型評価とは,最終受益者を含めた幅広い関係者(stakeholders)が,評価計画の作成,情報の提供・収集・分析,プロジェクトの当初計画の修正などに可能な限り参加して行う評価である。」[86] と定義している。

 開発援助の場面では,外部有識者による評価を強化してアカウンタビリティを向上させても,開発プロジェクトの改善のために評価結果が確実にフィードバックされるとは限らない。このため,プロジェクトの改善や持続的発展のためには,関係者自らが評価に参加し,問題を分析し,対応策を考えることが有効であるとしている 。

 従来の評価と参加型評価が最も異なる点は,「従来の評価では評価結果を受けて次の協力を検討したりするなど,評価結果が重視されていたのに対し,参加型評価では評価に参加するプロセスにより参加者のオーナーシップ強化やマネジメント能力向上を図るなど,結果だけではなくプロセスによる影響も重要視している点である」[87]と指摘している。



[85]JICA国際開発研修所「参加型評価基礎研究ー国際協力と参加型評価」2001年
[86] JICA国際開発研修所前掲,3頁。
[87] JICA国際開発研修所前掲,20頁。

3 評価主体による参加型評価の分類

 先に西尾勝は,参加型評価を意見反映型,協働評価型,市民評価型の3つに分類し(図表6−1),また,山谷清志は,利害関係者による評価,協働型評価,エンパワーメント評価の3つに分類(図表6−2)している。それぞれの特徴は,前節で整理している。

 この論文で取り上げた自治体などの評価の実例は,前者の分類で言えば意見反映型のタイプがほとんどである。後者の分類の前提である利害調整や主体的な市民の自己決定とは,かなり距離がある。
このため,意見反映型を掘り下げる意味合いで,評価の主体により区分し,この論文で取り上げた参加の要素がある自治体の外部評価と海外の事例などを,自己評価,協働評価,第三者評価の3つに分類して以下その特徴を整理した(図表6−4)。

(1)自己評価型

 市民参加の要素がある自己評価は,内部評価と内部・外部評価併用型に分類できる。行政評価がわが国自治体に導入された当初は,外部評価はほとんどなく,自己評価のみで完結する自己評価完結型である。このタイプは,結果の公表やそれに対する市民の意見表明の機会を設け,意見を改善に反映するなどの消極的参加を取り入れたものが多く見られる。参加の度合いは弱く,評価結果も評価調書を公開するのみで非常に分かりにくいものが多く見られる。自己評価で完結し,市民の視点が取り入れる余地は,非常に少ない。

 これに対して,外部評価委員会型がある。これは,客観性を担保し,市民ニーズを的確に反映した評価を行うため,外部評価委員会を設けて内部評価をチェックし,あるいは二次評価するものである。外部評価委員会には,専門家のみで構成するものや専門家に指名した市民委員を加えて構成する専門家・指名委員型と,これに公募委員を加えるもの,さらには公募委員のみで構成する公募委員型がある。専門家・指名委員型は,市民の視点も考慮するが,専門家的な視点も重視している。公募委員型は,市民の積極的な参加があり,専門家と公募市民でのバランスを図り,幅広い意見を取り入れようしているケースが多い。専門家のみで構成する委員会は,現状の評価が誰にもよく分かるというものではなく,あくまでも専門的な意見を取り入れて評価の精度向上やお手盛り評価を排し,客観性を高めようという面が見られる。

 これに,市民活動を行っている団体の代表などを指名して,市民の視点で評価取り入れようとする専門家・指名委員型は,専門家と市民の視点のバランスを配慮したものである。ただ,従来の市民意見を聴いたというアリバイ的な審議会の延長に見られる懸念もある。なるべく,委員の設定にあたっても行政の恣意を排して,積極的な参加意思をもった公募委員を加えようという流れは,評価のみならずまちづくりのあらゆる場面で増加している。これは,透明性を高める意味合いもある。また,現状に対する強い問題意識をもったモチベーションの高い市民の参加の参加は,議論を活発化させるものである。

 さらに,最近は,市民意識調査,あるいは満足度調査などという名称で,事業や施策を提示してアンケートでその満足度や重要度などを尋たり,評価を問う調査が行われている。その結果を評価の要素として取り入れている自治体が増加している。例えば,宮城県は,満足度調査の実施を条例にも規定している。15年度は第2回目の調査になるが,アンケートにあたっては調査票に対応して,福祉,環境,教育,産業,社会資本の5分野,36の「目的」ごとに県の取り組みを詳細に情報提供したうえで設問を用意している。また,大和市では,市民の視点に立って重点化した行政資源の配分を目指し,市民納得度調査を実施している。これは,教育,保健福祉,都市づくり,環境など45施策について,施策ごとに,「主な仕事」,「効果の一例」や「使った金額(一般財源の総額及び市民一人あたりの金額)」を示し,この情報を基に回答を求めるという方式で調査を実施している。

 満足度調査といっても様々なバイアスがあって,調査の方法によっては結果が異なることもあり得る。市民満足度調査のみに目を奪われることは問題であるが,市民の意思をはかるひとつのチャンネルとしては可能性が高い手法である。

(2) 協働評価型

 次に,行政と市民が協働して評価するタイプがある。住民生活に直結した社会的な指標を住民参加で選び目標値を設定し,その達成度を評価する。行政と市民のコミュニケーションツールとして活用される。ニーズ把握,指標設定,評価に至るまで参加が確保されている。

 例えば,コミュニティ・ベンチマークといわれる評価手法である。第2章で紹介しているが,代表例としては,米国オレゴン州が著名である。わが国では青森県の政策マーケッティングブック[88] という取り組みがある。こうしたベンチマーク手法を取り入れた評価は,わが国の自治体でも増加している。

 まちづくりの計画から作り上げていくプロセスから市民が参加し,行政,市民それぞれが分担してまちづくりを実践し,共に評価・改善していくという共治の実態があってこそ成立するものである。オレゴン州でも10数年を経て今の形を作り上げており,機能するまでには市民参加の熟度がさらに高まっていくことが大切である。

(3) 第三者評価型

 行政が全く関与していない第三者評価は,完全な外部評価と言えるもので,市民主体に住んでいる自治体を評価する市民評価型と市民・企業などが全国自治体の包括的な評価を行う格付型がある。

 市民評価型は,市民が主体的に評価して行政に改善を求めるもの である。わが国では目立つ事例はほとんどなく,代表的な海外の事例としては,前述したニューヨーク市のコミュニティ協議会がある。地域に密着した組織が,地域で関心の高いテーマについて評価したうえで行政とその改善を話し合うものである。市民にとっては身近な事例であるため関心が高く,参加しやすく,評価結果がどう生かされるかを実感できるメリットがある。

 格付型は,市民・企業が一定の基準を設定して,行政を第三者の立場で評価するものである。テーマごとに自治体を格付,ランキングするものが見られる。行政からの独立性が強く,評価・格付の公平性と信頼性の確保が課題である。

 わが国では,「全国住民サービス番付」「住みよさランキング」「全国情報公開度ランキング」などの事例がある。例えば,日経産業消費研究所では,都道府県,市を対象に各種データを分析し,暮らしやすさや真の豊かさ,地域の先進度などを評価・ランキングしている。また,全国の市を対象に行政サービスの水準や行政革新の取り組み状況を調査のうえ,革新度をランキングし,行政革新度・行政サービス水準なども評価し,公表している[89]  。また,全国市民オンブズマン連絡会議[90]では,自治体の情報公開度合いを,首長の交際費支出の開示,公開文書のコピー代,条例の有無,情報の提供方法などのアンケート調査を行い,点数化して「全国情報公開度ランキング」 [91]として公表している。

 (4)限定的な対象と参加手法

 わが国における参加型評価は,自己評価に外部の視点を入れるため外部評価委員会を設置するか,もしくはアンケート調査による意見反映あるいはその併用型の事例がほとんどである。条例に根拠づけられている事例はあるが,概して市民意見の反映度合いの強弱をみると,意見を尊重する程度に留まっているのが現状である。また,公募による市民の参加は,参加の度合いは高いにしても,ごく少数の市民に限られている。評価手法の多様化,高度化が進んでいる一方で,参加型といってもその対象や参加手法は,かなり限定的である。

 例えば,都市計画分野でマスタープランや地域計画への参加は以前から実施されている。最近は,総合計画の策定自体に参加する事例が各地で見られるようになっている。しかし,都市計画で定めた土地利用が描いた構想と一致しているのか,総合計画の政策・施策の実現はどの程度達成されているのかなど,計画策定に引き続いての評価まで結びついた参加事例はほとんど見られない。また,事業評価でも,例えば,禁煙教室事業など規模の小さなものから,健康診査のように多数の市民を対象とするものまで様々な事業がある。これを一律同じパターンの評価することは,時間的にも,コストの面でも無理がある。しかし,外部評価委員会などで評価するなど,同じ評価手法を取っているのが多くの事例である。


[88] 青森県のHP http://www.pref.aomori.jp/koutyou/marketing/index.html 参照
[89] 「全国住民サービス番付」2003.2日本経済新聞社(日経産業消費研究所編)として出版。
[90]
全国市民オンブズマン連絡会議は,http://www.ombudsman.jp/ 参照
[91] ランキングは,http://www.ombudsman.jp/rank/index.html 参照
 

4 参加型評価の効果

 (1)行政への効果

 評価に市民が参加する効果としては,次の4点が挙げられる。

@市民の視点でのチェックが可能
Aアカウンタビリティ(説明責任)の向上
B客観性,信頼性の担保
C評価の規律性の強化

 まず,行政の発想には,前例踏襲や手続き重視の影響が根強く残っている。成果を志向した評価システムを構築しても一朝一夕には変えることは難しい。市民が普通の感覚でチェックしたときに,市民の評価には,行政には発想できない“気づき”が期待できる。政策には合理性が求められるが,その合理性とは山谷清志の指摘のとおり,「行政の現場で政策運営する際に求められる方法,手段,それらの考え方が,社会一般の常識の範囲に収まること」 [92]である。市民の常識を超えるような政策の選択,例えば目的達成のために非常識なコストをかけてよいことにはならないのであり,市民の視点は,こうした合理性を説明するには非常に有効である。

 次に,説明責任ということがよく言われるが,これは単に説明を果たす責任ではない。「アカウンタビリティを果たしたかどうかというところは,客観的に定められたモノサシ,指標などによって自己以外の外部者によって判断される」[93] のである。 また,市民の視点が入ることによって,客観性が高まる。評価の中立・公正性が担保されることによって,評価への信頼性が増してくるのである。

 最後に,参加型評価の効果は,お手盛り評価の回避である。どうしても自己評価は甘くなりがちである。第三者が介在することで,評価への取り組みも真剣になり,評価に対する規律が維持されるのである。

 (2)市民への効果

 先に行政の側の効果を提示したが,参加する側での効果を考えてみよう。
 都市型社会では,多方面に渡る市民参加と市民活動が活発化している。評価システムは,社会にあって市民と行政をつなぐコミュニケーション回路のひとつである。行政評価は,行政全般の活動の実態を明らかにして,市民に開かれた行政を実現するための第一歩である。そして,分かりやすく,正確でかつ客観的な情報を,評価過程を通して共有していく“攻めの情報公開手法”である。

 参加型評価を取り入れていくことは,市民に多様な参加,協働の道を開いていることになる。評価活動を通じて行政と市民がともに学び,議論し,考えていく,いわば協働するための学習ツールにもなり得るものである。将来的には,様々な場面で市民がコミュニティの問題を自己決定していく段階がやってくる。参加型評価には,市民の自己決定権を拡大していくために必要な情報共有を進めることと,市民へのエンパワーメント効果も期待されるのである。

[92] 山谷清志「自治体の政策責任」1999年(自治体学会編「年報自治体学(第12号)」)38頁
[93]山谷清志 前掲,30頁

5 参加型評価の方向

 参加型評価の類型を提示してきたが,自治体における参加のあり方として求められるものはどのような形態であろうか。

 まず,市民参加の手法は様々であるが,参加の度合いを分類すると右の図表6−5のとおりとなる。
まず,行政評価への参加は,評価の対象レベルなどに応じて取り入れられる参加手法も異なっている。 例えば,コミュニティ・ベンチマークのような政策レベルの評価では,指標(ベンチマーク)の選択や目標の設定などに,タウンミーティング,フォーラム,パブリック・コメント,市民パネルなど幅広い参加手法を活用していくべきであろう。

 しかし,大型の公共事業などは別にして,個々の小規模な事業一つ一つにフォーラムを開いたり,市民パネルに意見を聞いたりすることなどは,時間や費用といった面からも現実的な方法とは言えない。政策,施策,事業というレベル,事業の規模や費用,その影響の範囲など,その態様に応じた参加手法を選択すべきである。ただ,注意すべきことは,例えば,図表6−6のとおり,一般的な現状分析,課題の抽出,解決策の策定や実施,評価そして改善という行政活動の流れの各場面に評価の要素がある。

 そして,今後,あらゆる場面でその透明性を高め,市民参加を進めていくべきであり,行政評価への市民参加もその一場面として捉えるべきである。また,まちづくりの計画などは,そのまちの行方を左右する重要なものであり,広範な参加により策定されるべきものであり,個々の施策,事業もこうした参加に支えられた計画の延長線上にある。単に一つのシステムとしての行政評価のみに目を奪われず,政策を進める全般を通じて行政の活動を明らかにしていくことは言うまでもない。参加型評価を考える上で,行政活動全般での市民参加を意識して制度設計を考えていくべきであろう。そこで,参加の範囲と度合いを2つの軸に,評価に参加を取り入れる 目的を図表6−7のとおりマッピングしてみた。

出典:JICA国際開発研修所「参加型評価基礎研究ー国際協力と参加型評価」2001年,20頁を参考に筆者作成

 行政評価には,政策,施策,事業のレベルで行う一般的な評価のほか,特定分野における分野別評価もある。対象によりT〜Wのタイプが参加の目的に照らして該当する場面が異なるとともに,目的に応じて組み合わせて評価する場合が想定される。

 例えば,大規模なスポーツ施設をつくる場合などは,タイプTのように広範な市民の参加を募り,様々な手法を活用して参加度合いを高めて市民意見を集約していく必要がある。事後評価というよりも事前評価に適したタイプである。

 次に,市民や関係主体がともに取り組まなければ進められない事業などは,タイプUが適している。海外での開発援助などの評価はこのタイプである。いずれ事業主体の日本の手を離れ,現地の関係者が実際に運営していかなければならないからである。市民の運営を任せるコミュニティセンターなどの建設・運営などの事業が例として挙げられる。

 また,定例的で網羅的に実施する一般的な行政評価であれば,幅広い市民の意見を反映するためには,タイプVが適しているだろう。

 さらに,最後に利用者が非常に限定されるサービス,例えば障害者に対するサービスであれば健常者ではなく利用者の視点も取り入れるなど,参加度合いは低くとも狭い範囲の参加者によるタイプWによって掘り下げた評価が適当な場合もある。ただ,費用が莫大ということになれば,幅広い市民が入って必要性を評価するなど,他のタイプも適宜組み合わせた評価を目的に応じて選択していくべきである。 このように,参加型評価の方向を考える上で,“参加の範囲”と“参加の度合い”を適切に組み合わせて制度を構築していくことが必要である。

第7章 戻 る