第8章 結 論
1 参加型評価の要諦
本論文では,機能的な参加型評価がどうあるべきかを論じてきた。第7章では,具体的な方法論を提案したが,最後に今後の参加型評価のあり方を以下のとおり整理した。
@ 政策過程のあらゆる場面での市民参加が前提条件である。
A 市民に対する積極的な“攻めの情報公開”を行う。
B 参加に対する制度的な仕組みを担保する。
C 参加型評価は,一律ではなく,多元的な評価システムの中に成立する。
第一に,参加型評価には,政策過程のあらゆる場面での参加が前提条件である。評価のみの参加では,効果的な評価は困難である。自治体の政策は連続している。評価の場面で途切れているわけではない。現状分析,課題の抽出,政策決定の場面から,市民の主体的な参加があってこそ,振り返って評価ができるのである。また,こうした積み重ねがあって,政策実施前の事前評価も,将来をイメージできるようになり,精度を向上させることができる。
第二に,市民が知りたい政策情報をまず積極的に発信していることが“攻めの情報公開”である。市民は,すべての事業ごとの詳細な情報までは求めていない。まず市民は,評価に関して言えば,事業レベルでは,どのような事業をはじめるか,どのような事業を止めるかに関心をもっている。施策レベルでは,何を重点としているか,施策内容をどのように見直していくのか,さらに政策レベルでは,政策の質をいかに向上させるかなどに,注目しているのではないだろうか。そのポイントを捉え,評価情報を活用した価値の高い政策情報を提供することが,評価への参加につながって行くのである。
第三に,評価への参加については,外部評価委員会の設置,市民パネル,地域別の委員会など様々な参加のチャンネルを構築してこそ,多様な価値観を反映した評価が可能になるのである。行政評価は,コミュニケーションツールである。多様な市民のニーズに完全な一致点を得ることは困難である。評価から得られる政策情報を基に,庁内はもとより市民との対話・議論を巻き起こして合意形成を進めていくことは,行政評価の重要な機能である。多様なニーズには,多様なアンテナ,チャンネルを揃えてこそ得られるのである。
第四に,参加型評価は一律ではない。単に外部評価委員会を設置すれば足りるものではなく,多元的な評価システムの中に成立する。市民参加の手法は様々である。対象,レベル,時期に応じた参加型評価が必要である。
2 評価を政策形成に
行政評価は,コミュニケーションツールである。政策形成には,組織内部ばかりでなく,市民と共に具体的な目標を共有して,行政と市民が同じステージの上に立って議論を進めていくことが不可欠である。参加型評価は,情報提供と意見集約の仕組みをビルトインしたシステムである。 行政評価は,大住が指摘するように,「経営改革のための業績目標と成果を測定する尺度にすぎず,業績や成果を向上させる手段として活用されなければならない。」
のである。単なる行革の削減ツールではなく,政策形成と政策の質を向上させる一翼を担ってこそ,“機能する参加型評価”と言えるのである。
最後に,参加型評価は不可欠である。しかし,専門性のある行政が,政策を立案し,実施していく必要性が失われているわけではない。自治体が行政活動を担う主体であることは,厳然として現代行政の基本である。行政の専門性を失ったとき,行政としての存在意義を失うことになり,市民の協働による社会の解決のみに依存すればよいのである。統制なき行政の専門性は危険であるが,民主的な統制を受けた行政の専門性は,ガバナンスといわれる現代行政のあり方の中でも依然として有効な手段である。評価には自ずと限界がある。あくまでも政策の意思決定者は,首長であり,議会である。評価そのものは意思決定のための情報提供はするが,どんなに評価技術が向上しようとも評価自体で価値を選択することはできないのである。
3 今後の課題
行政評価は,数多くの自治体が導入していながら,様々な問題を抱えている。本論文は,こうした行政評価を機能させるため,市民の参加に視点をおいて,具体的な参加型評価を考察してきた。いわば,“ガバナンス時代”にふさわしいシステムモデルを提示したものである。
本論文においては,参加型評価のあり方についてアウトラインを提示した。評価の対象別に,参加の程度や範囲を具体的に考察するまでには至っていない。この点は,今後掘り下げていかなければならない課題である。行政評価そのものは,まだまだ発展途上にある。行政活動は実に多様である。だからこそ,それぞれの自治体にあった多様な評価システムが生まれてくることであろう。今,市民自治をどう確立していくのか。自治体の憲法と言うべき自治基本条例の制定がブームになっている。市民自治を進める上でも参加型の行政評価は,可能性を秘めている。
今後,行政評価に,なお一層確固たる位置づけを与え,実効あるものにしていかなければならない。そのためには,条例化も選択肢のひとつである。また,ますます地方財政は厳しい時代を迎える。選択と集中といわれる時代に,施策別の枠予算やメリットシステムなど目新しい手法は目白押しである。いかに評価を組み込んだ計画や予算システムを構築していくかも大きな課題である。また,市民参加により客観的に公正に評価した結果を,確実に政策にフィードバックさせるシステムを構築しておくことも望まれる。
景気低迷や赤字財政の増加が続く中,全国各地で改革の槌音が広がっている。今,まさに地方の挑戦が,日本の閉塞状態を解消し,明日に希望の灯をともすものと期待したい。
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