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「機能的な参加型評価システムのあり方」

放送大学大学院文化科学研究科(政策経営プログラム)修士論文(2003年12月)

長谷部 英司

要     旨

 今,自治体では,行政評価の導入がブームである。それは,現代社会において,前例踏襲や法令・手続き重視の行政から成果・顧客志向の行政への転換が強く求めてられているからである。しかし,このブームの陰では,行政評価本来の目的が果たせないまま形骸化し,単なる書類作成の作業と化した実態も見受けられる。

 他方,市民参加は,政策形成や実施の各場面すべてに重視すべき課題であるとされてから数十年を経過している 。行政評価が本来の機能を発揮するためにも,市民の参加は不可欠の要素であることは論をまたないであろう*1

  評価の過程に市民参加を取り入れる参加型評価は,一部の自治体で取り組みが進んでいる。また,海外の事例でも,参考にすべき事例が見られる。さらには,一部の先行研究でも類型化や必要な条件について分析がなされている。しかし,分かりやすさを欠き,意見集約や合意形成には不十分で,未だ機能的な参加型評価システムとは言い難い。

 この論文では,まず,参加型評価の取り組みと先行研究の成果を分析した。そこから,参加型評価を機能させるには,次の2点が重要であるという結論を得た。第一に,情報の非対称性を解消する「情報発信型評価」を確立すること,第二に,効果的な市民意見の集約と合意形成にもつながる「意見集約型評価」を取り入れることである。

  評価の前提条件は,評価主体となる市民に対し,行政活動をしっかり理解できる情報を提供することである。評価システムに,情報を分かりやすく発信する機能を組み込んで,マネジメントサイクルを確立することにより,適切な評価が期待できる。具体的には,@評価に用いる指標を有効に活用し,A他との比較ができる指標やコストで判断基準を提供し,B分かりやすい表現を工夫した業績評価報告を定期的に提供することがポイントになる。これにより,評価が説明の手段になり,コミュニケーションツールになるからである。

 次に,行政が意思決定を行うとき,外部との関係で,市民の意見集約と合意形成が決定過程の主要部分を占めていなければならない。この決定支援の役割を担うのが「意見集約型評価」である。具体的には,@二次評価組織を確立して内部評価の精度を高めること,A客観性を担保する外部評価委員会を活用すること,B参加のための多様な手段を用意すること,C参加型評価結果を確実に政策に反映するしくみを構築すること,の4つが条件となっている。

 さらに,行政と市民の意識の距離が遠いと言われる大都市では,身近な問題を評価する地域別市民会議,重要な課題に応じて評価を行うテーマ別市民会議を設置するなど,社会の縦横に,輻輳した意見集約システムを組み込むことが大切である。  

*1 1970年代,美濃部都政など革新自治体のもとでまちづくりへの市民参加が様々な形で模索されていった。 また,市民参加の研究の先駆けである「岩波講座現代都市政策U 市民参加」が刊行されたのは1973年であった。 

目      次 (html版)

16.2.15更新

第1章 序 論

1 行政評価ブームの背景
2 市民との合意形成が重要 
3 なぜ,参加型評価なのか 
4 本論文の構成―情報発信型と意見集約型評価  

第2章 自治体の行政評価の現状

1 わが国の行政評価導入の変遷 

(1) 行政評価とは何か  
(2) 評価の黎明期  
(3) 評価の高度化,階層化  
(4) 評価の多様化 (5) 評価の外部化 

2 行政評価の問題点 

第3章 なぜ,日本の行政評価は機能していないのか

1 制度的な側面

(1) 総花的な総合計画
(2) 評価者と権限のミスマッチ  
(3)あいまいな評価の活用法 
(4)評価情報の理解困難性  

2 技術的な側面(評価技法,ノウハウ,知識)  

(1) 評価のノウハウを持つ人材の不足 
(2) 評価視点の多様性  
(3)体系的な評価手法の未成熟  

3 組織文化・風土の側面 

(1) 文化戦略の欠如 
(2) 過剰な期待感と限界の交錯  

4 評価の信頼向上には市民参加が不可欠  

第4章 わが国自治体の外部評価

1 評価への市民参加事例  

(1)市町村の外部評価例 
(2)都道府県の外部評価 

2 自治体の外部評価の特徴 

(1)外部評価委員会などへの直接参加  
(2)市民の意見反映などの間接参加 

第5章 欧米における外部評価

1 イギリスのベスト・バリュー 
2 強固な市民社会を支える市民参加 
3 米国のベンチマークと業績報告

(1) オレゴン州のベンチマークス 
(2) ニューヨークの業績報告

4 わが国自治体への適用可能性  

第6章 参加型評価の理論と実際,目指すべき方向

1 評価に市民が参加する形態 
2 エンパワーメント評価 
3 評価主体による参加型評価の分類  

(1)自己評価型 
(2) 協働評価型  
(3) 第三者評価型  
(4)限定的な対象と参加手法  

4 参加型評価に期待する効果  

(1)行政への効果
(2)市民への効果  

5 参加型評価の方向 

第7章 機能的な参加型評価システムの提案

1 情報発信型評価へ

(1)攻めの情報公開  
(2)具体的な業績報告の方法  

2 成果は達成度が基本 

3 市民意見の集約型評価へ  

(1)多様な市民意見を反映 
(2)市民パネルの活用  
(3)パブリック・コメントの活用 

4 外部評価委員会の活用  
5 二次評価の庁内組織を充実  

補論 大都市における参加型評価―札幌市の現状を踏まえて 

1 身近な問題から参加型評価へ  
2 地域別,テーマ別市民会議の設置  

(1)地域別市民会議 
(2)テーマ別市民会議 

第8章 結 論

1 参加型評価の要諦 
2 評価を政策形成に  
3 今後の課題  

参 考 文 献 

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