行評価レポート
戦略計画とは何か?
●まちの基本方向を示すのが長期総合計画
行政評価に取り組んでいると、目標の設定に戸惑うことが多い。政策、施策という体系があって、事業があるはずである。しかし、自治体の長期総合計画(基本計画)からストレートに事業の目的、目標を導ける例は少ないのではないだろうか。
長期総合計画の策定を見ていると、例えば、札幌市の第4次長期総合計画ではかなりの期間をかけて様々な指標から現状分析を行い、課題を抽出して、対策を考え、議論を重ねて個々の施策を積み重ねて、計画目標という6つの柱を構成する。そして、4つの施策の体系で、テーマ、基本方針、施策という構成を作り上げている。
しかし、例えば4つの施策の体系「市民〜創造性をはぐくむ」「地域〜ともに暮らす」「環境〜明日へ引き継ぐ」「経済〜活力を高める」になっているが、その一つである「市民〜創造性をはぐくむ」にしても、三つのテーマを取り上げ、市民の創造性を高めるとともに創意を生かすための環境づくりを目指した施策展開を図るとし、さらには、そのテーマの下に4つの施策の基本方針とそれぞれに施策が文章として記述されている。
施策の体系ー市民〜創造性をはぐくむ
| 次代を担う子どもが生きいきと育つ環境づくり |
1 少子化対策のための市民理解の促進 |
国内外の動向を踏まえつつ札幌特有の少子化の要因などを調査・研究するとともに、市民の参画により、子育てに希望を持てるような地域社会や職場のあり方の検討を進める。また、男女がともに子育てができるよう、育児休業の取得や労働時間の短縮について職場の理解を促進するなど、男女共同参画社会の形成に向けた取り組みを進める。
さらに、学生、生徒など次代を担う若い世代が家族や性について学ぶ機会や、乳幼児とのふれあいにより、子育ての持つ喜びや楽しみを体験できる機会を充実する。 |
| 2 地域で子どもが健やかに育つ環境づくり |
子育てや母子保健の学習機会の充実などを通じて、子育て家庭と地域との交流を図り、地域全体で子どもを育てる意識をはぐぐむ。
特に、保育所や児童会館をはじめとする地域の資源を、子どもの遊び場や子育てサークル活動の場として活用するとともに、子どもを育てている家庭の交流や地域の支援ネットワークの形成、子育てリーダーの育成を図る。
また、子育てボランティアの育成や一時的保育の充実など、家庭での子育てを支援するためのサービスの充実を図る。
さらに、妊産婦、乳幼児に対する保健・医療などの支援に加えて、若い世代も対象とした妊娠、出産、育児に関する学習機会の充実を図る。また、北海道との連携のもとに、周産期医療体制の充実を図る。 |
| 3 子育てと仕事などとの両立支援 |
子どもを育てながら働きやすい就労環境形成に向けた取り組みを進めるとともに、保育所の自主的な取り組みを促すことにより、仕事や社会的活動の多様な形態に対応した保育サービスの確保を図る。また、幼稚園の預かり保育への取り組みを促進するとともに、保育所と幼稚園との連携を図る。さらに、昼間保護者のいない家庭の小学生が放課後を過ごす安全で健全な場の確保を進める。
在宅保育サービスや認可外保育施設も利用できるよう、民間サービスの実態把握に努めるとともに、市民への情報提供を進める。 |
| 4 障害や病気の子どもとその家庭への支援の充実 |
ハンディキャップのある子どもの生涯の各段階を視野に入れ、将来の自立を目標とした一貫性のある療育体制づくりを進めるとともに、家族を心身にわたって支援するための相談やサービスの充実を図る。また、親の会活動など、家族の交流や共感による精神的な支援や、さまざまな情報交換などを行う活動への支援を充実する。 |
| 市民の主体的な活動の促進 |
省 略 |
| ゆたかな都市文化の形成 |
省 略 |
こうしてみると計画は、施策の基本方向を示しているのに過ぎないと言えそうである。また、あいまいで抽象的な文言が並ぶ長期総合計画は、そもそも評価システムを想定した計画ではない。実際の事業も計画を念頭に組み立てられたものは少なく、現実の問題があり、それを解決するために立案されたもの。実施計画(札幌市であれば5年計画)策定のときに、長期計画の体系に合わせてグルーピングしたというのが偽らざる事実である。長期総合計画の方向や理念は、まちにとって重視すべきことである。しかし、評価システムを前提にしたときには機能しづらいのが現実である。
●具体的かつ行動に直ちに結びつくー戦略計画
戦略計画とは、限られた行政資源を具体的に活用して、行動、行為に結びつけことのできる計画である。現実の問題、課題を分析して、予測や判断を行いながら、目的を明確に、対象、手段や、実施による成果を測定可能な目標に掲げた実践計画である。
言い換えるとあいまいさを排除して、意思を明確に表示し、実施に必要な行政活動を、予定する時期を明示しながら目的・手段を明らかにして体系化したものである。そして、活動の成果を測定することにより、計画の進行を管理し、期待した成果を測定し、フィードバックしていくというプロセスを包含したものと言える。
その前提としては、組織の使命(ミッション)が常にあり、目的(ゴール)、目標(オブジェクト)で構成する。こうした戦略目的、戦略目標によって、事業は何か、何であるべきかが定義できる。さらに下位の目標を導き出しことが可能であり、成果の尺度が決められ、測定が可能となり、成果をフィードバックすることで改善につなげることができる。
業績評価という目標管理型の行政評価は、この戦略計画があってはじめて機能するし、計画そのもの一部を構成するマネジメントツールになれる。単なる事業のチェックであれば、従来型の長期総合計画でも差し支えはないかも知れないが、自治体のマネジメントツールとして位置づけるのであれば、計画の戦略化は避けてとおれない課題である。
| 使命(ミッション) |
目的(ゴール) |
目標(オブジェクト) |
| 組織に固有の基本目的を簡潔に表現したもの |
- 将来の方向
- 優先順位
- 活動のもたらす成果を表現したもの
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測定可能な成果目標 アウトカム(例外的にアウトプット) |
●部門ごとの戦略計画づくりを
とは言え、議会の議決を経た基本構想とそれに基づく基本計画を作り直すことは容易ならざることである。しかし、全国の自治体では、北海道をはじめ、広島市など各地で既存の長期総合計画に具体的なベンチマーク指標を設定する動きが活発化している。本来の戦略計画とはいえないが、より近づける試みとして評価できるものである。
これに一歩進めて、例えば、札幌市で言えば、局ごとにミッションを明確に、組織単位で目的と手段の体系化を図り、現状の分析、課題、優先事項、重要成功要因(指標)、個々の具体的なターゲット(指標)と実際の事業の整合性などを再構築してみる作業は今でも可能ではないか。通常は、事業評価からスタートして、上位の評価を目指すのが一般的なわが国の行政評価の流れであるが、上位の評価にこのようなプロセスを取り入れることによって、戦略計画がない現状を補完することができる。言わば部門ごとの擬似戦略計画づくりと言える。行政評価は導入した。しかし、成果がなかなか見えない今、評価システムのバージョンアップには不可欠な作業である。
※次回は、具体的な事例を通して部門ごとの戦略計画づくりをシミュレーションしてみたい。
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