自治体の長期総合計画は、まちづくりの理念や基本方向を示すもので、必ずしも政策、施策に具体的な数値目標が提示されていないのが一般的である。また、ラインの実施計画があっても事業量的な目標が多く、いわゆる戦略計画といわれる行動計画がない。
このため、まちづくりの目標を共有して、事業に生かすことが不十分であり、得てして目の前の課題を解決するために事業を進めている。また、予算という形で一旦事業の実施が具体的に承認されると、財源や人などの
投入資源と成果を管理していくマネジメント・ツールが確立していないことも指摘される。このような問題点がある中で、全国的には既存計画に成果指標を設定していく動きが活発化していることが注目される。
現在、全国の多くの自治体に行政評価が導入されている。しかし、必ずしも理想とする効果が得られていない。目標管理型の業績評価に明確な目標がなく、しかも体系的な評価が導入されていないことが影響している。欧米では、戦略計画と業績評価がセットであり、この業績評価の部分のみをピックアップして、精緻に日本型行政評価に再構築したものがいわゆる事業評価と言えそうである。
業績評価は、そもそもマネジメントするためのツールである。マネジメントには次の3つがポイントである。すなわち、政策目的を実現するための活動であり、当初の目標と成果の乖離をしっかり捉え、優先事項を判断すること。さらに、限られた行政資源を適切に配分することが求められる。政策目的、具体的な目標、実現するための事業という前提のもとに、評価を活用してこそマネジメントツールとして機能するものである。
- 政策目的の実現
- 成果の測定、優先性の判断
- 行政資源の配分(財源と人を生かす)
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2 施策評価をマネジメントに活用
政策体系と行政評価の関係は、次のとおり捉えることができないだろうか。
政策は、「市民にとってどうか」を中心に市民満足と有効性の視点で、施策評価は、「どのようにマネジメントするのか?」を中心に有効性と優先性の視点で、事業評価(執行評価)は「どのように改善するか」を主眼に、必要性、効率性の視点でそれぞれ評価すべきである。
行政活動は長期的なスパンで、はじめてアウトカムが発生する面が大きい。個々の事業レベルで、常にアウトカムの発生をモニターすることは全く不要とは言わないが、そのような精緻な評価がどの場面でも必要かは疑問である。評価の前提として、目的と手段の体系をしっかり考え、計画していれば、極論かもしれないが「アウトプット」→「アウトカム」という自然な流れになるはずである。仮にならないとしても、より上位の評価で施策、政策の成果をモニターすることで、事業にフィードバックすることができるのではないだろうか。
また、行政活動の種類によっては、アウトカムを考えるよりも必要性があるか、効率的かを考えるべき場面も実際の事業評価で突き当たる。事業評価は、係長・担当者が評価により日常の事業の改善を目指すことを主眼にすべきであり、事業評価のたびに常にアウトカムのみに目を奪われ、いたずらに時間を費やすのであれば、却って評価が非効率を生んでしまう。
事業評価は改善のためのツールである。これに対して、施策評価は、局・部長・課長が部門の目的の達成を目指してマネジメントするためのツールであるとして位置づける割り切りが必要である。そうすることで、成果を測定して、計画の進行を管理し、優先性を判断して限られた資源の配分や意思決定に寄与することが可能になる。同時に事業評価レベルで説明責任を論じているのが、職員すら分かりずらい評価シートを市民に説明することは困難である。もちろん、情報公開として提供するのは言わずもがなであるが、それは見やすい一覧表も合わせて提供する程度でよいのではないか。施策レベルでしっかし市民にわかりやすい具体的な情報を提供することこそ、説明責任を果たすことになるのではないかと考える。
※政策評価は、市民とのコミュニケーションを重視したベンチマークをイメージ
3 既存計画の戦略化へ
長期総合計画や実施計画とは別に部門の計画を策定する部局も存在する。分かりづらい、総花的で抽象的な計画を、部門ごとにしっかりとして基本的な政策体系を構築し、日常の業務に生したり、政策を条例という形でオーソライズしているケースや基本的な定量目標を設定やアニュアルレポート(年次報告)も実践する例も散見される。
このような計画にあっても、今、必要とされるのは、限られた財源をいかに配分して、政策目的を効果的に実現していくかということを、どのようにマネジメントするかということが大きな課題である。
この課題をクリアするには、計画の戦略化が必要とされる。下図は、欧米の戦略計画のイメージである。
■欧米で主流の戦略計画のイメージ

欧米の行政機関における行政評価は、戦略計画と一体的なもので、計画し、実施し、評価して、計画との相違、乖離を比較測定して、何故かを考えるプロセスの一部である。戦略計画とは、組織の使命から落とし込まれた目的、具体化した成果目標、達成すべき時期、それを達成するためのタスク(事業、業務)から成り立っている。
単なるスローガンではなく、具体的でかつ事業にストレートに結びついた計画である。長期総合計画は、まちづくりの基本方向を示すものであるのに対して、戦略計画は具体的な事業計画。前者は、スタッフ部門が策定するが、戦略計画は日常目の前の課題に精通しているライン部門が策定するものである。既存計画もさらに進めて戦略化することにより、ラインでも目標共有が進み、評価との連携が容易になると考えられる。

4 施策評価の条件―マネジメントツールとするために
それでは、マネジメントツールの条件とはなんであろうか。
まず、第一に「
成果がわかりやすい」ことがあげられる。目標に照らして現状がうまくいっているのかいないのかは出発点である。次に、「
コストなど行政資源の投入状況が一目瞭然である」ことが求められる。資源の投入を最小にして最大の効果を上げることが行政の必要十分条件であるからである。また、「シンプルである、一覧性がある」「
比較できる」こともポイント。複雑なツールは、得られる情報で意思決定することではなく、手法そのものが自己目的化する傾向がある。あくまでも重要な情報から意思決定をすることが主眼である。
| 《マネジメントツールの条件》 @
成果がわかりやすい。
A コストなど行政資源の投入状況が一目瞭然
B シンプルである、一覧性がある
C 比較できる |
さらに、施策評価をマネジメントツールとしてどのように活用すべきか。評価は、シートを書いて終わりが一般的な流れである。しかし、活用して意味があるし、議論して精度が上がるものである。施策評価は、例えば札幌市では局内マネジメント会議で局長・部長レベルでの報告、先細りする財政事情の中で、優先順位付けを議論したり、どのように生産性を上げ、有効性を高めるかその方法を考えることに活用ができる。また、トップマネジメントの議論の題材を提供して,意思決定の有力な資料とすることが大切である。さらには、成果を市民に分かりやすく説明する題材とすることもできる。
以上の点を踏まえて試作した評価シートのイメージが次の評価シートである。施策評価シートは、シンプルに、一覧性に配慮している。評価であり、施策の成果を総合的に評価(ABCD)・コメントするなども必要である。
また、事業の成果が施策の評価につながるため、事業評価の達成度・成果を一覧でモニターできるシートが必要であることからマネジメントシートを作成した。成果に対して、コスト・投入資源がどのぐらいあるかは、常にマネジメントの基本になるからである。
| 《評価シートの必要項目》 @
局・部の使命 目的 目標
A 目標に対応する成果指標(アウトカム)
B 年次別の目標値
C 目標の達成度
D 目標ごとの投入資源(コスト、及び投入人工の再掲)
E 目標と達成度の乖離の要因分析
F 成果に対する総合的な評価(コメント及び例えばABCD評価)
G 改善事項
※シートは「A4」1枚と施策評価シート及び投入資源と達成度のマネジメントシート
※年次報告には、体系図を添付する。 |
5 施策評価にあたってのポイントと今後の課題
事業評価は、係長・担当者レベルが評価であるが、施策評価はマネージャークラスによる評価である。よって、データ、情報収集は係長、一般職が行うにしても、評価シート記入は、管理職が行べきであり、管理職がシートを記入することを義務付けることが必要である。三重県の政策推進システムでも同様の考えが見られる。最近は名古屋市など事業評価も課長職が記入する例も見受けられる。
また、前述したとおり、評価シートを活用した局内マネジメント会議を行うなど、プレゼンテーションの機会を作ることもレベル向上には有効であろう。事業レベルでヒアリングはなかなか困難であるが、予算査定などの機会に事業の成果について、もしくは評価担当部局がヒアリングを行うなど、シート記入に終わらせず、議論し、意思決定に活用するため、内容についてのやり取りが不可欠である。市民向けには、さらに分かりやすくシートを活用した年次報告が説明責任の上で必要である。
施策評価の課題としては、施策をブレークダウンした事業の成果が積み重なって施策の評価につながる。このため、局の業務の中で中心的な一般行政経費部分の事業が事業評価に組み込まれていないと施策の評価が難しい。
事業評価は、行政活動別に評価項目を設定し、シートをすべて記入するのではなく、ひとつのシートを使いながら記入部分を削減簡素化する。
行政活動別のチェック項目類型化が課題である。現在の事業評価では項目が散漫で焦点が見えてこない。
さらには、評価を前提とした政策体系になっていない現状では、施策評価の単位を明確にする必要がある。計画の施策体系別かに評価するか、現状の組織単位に合わせて評価するかなど今後検討を要する課題である。
2002.1.15