犯罪の街・そして地下鉄の落書きなどのイメージが強かったニューヨーク。1994年に当選したジュリアーニ市長は、犯罪防止や福祉、産業、観光、ITなど数多くの改革を行い、ニューヨークのイメージを一新した。その改革の一端を知るため、毎年度、市の機関の業績を評価し、当該年度と翌年度の事業目標と業績目標を示す市長経営報告(暫定版)をレポートしてみた。
この報告は、部局別報告(第一巻)、部局別及び全市的指標(第二巻)、要約(第三巻)の3部で構成。年度途中の暫定版と年度終了後3か月程度で出される確定版がある。
部局別報告(第一巻)では、各部局・機関ごとの(1)政策目標と事業目標(2)重点項目と達成内容(3)予算重点項目、財政計画(4)部局の事業目標に関する長期傾向及び関連指標、から構成されている。
例えば人的資源局では、
政策目標=すべての公的扶助受給者を、彼らに就労と自立の準備をさせるような(中略)労働その他に参加させる。
事 業 目 標 |
2,000年度実績 |
2,001年度計画 |
| 州のガイドラインに従い、18000人のセイフティ・ネット受給者すべてを労働に参加させる。 |
17,584 |
22,000 |
| ………… |
………… |
………… |
| セイフティ・ネット受給者の就職報告件数23000を達成させる。 |
19,523 |
33,000 |
| ………… |
………… |
………… |
東京都・13年7月発行「ジュリアーニ市政下のニューヨーク」85ページより
上表のとおり,政策目標の下にいくつかの事業目標を掲げ、多くが目標値を設定したいわば目標管理型の業績評価である。重点項目は、概況と実施政策を主と定量的にして記述している。予算重点項目は、支出実績や職員数を示している。
部局の事業目標に関する長期傾向及び関連指標は、グラフや図表を多用してビジュアルに表現している。部局別及び全市的指標(第二巻)は、過去のトレンドではなく、直近の実績や計画値など客観的に市政の現状を捉えたもので統計書ではなく、業績報告書の主要部分をなしている。200ページを超えるもので,市民向けにわかり易くとはいかない。このため,第一巻,二巻をセットにした要約版を作成している。かなり市長の実績を強調しているところがいかにもアメリカ的である。
業績目標を明示して実績と比較し,業績に影響する要因や業績,サービス供給を改善する計画,予算などを記述するこのレポートは,市民に対する説明責任を果し,業績の定量的な評価を行うとともに各部局などが予算を検討する際の材料を提供する意義もある。作成は,市長運営室が行い,スタッフは60人がかかわる。また,44の部局に連絡担当官を置いてデータ提出や取次ぎなどを行い,かなりの職員が作成にかかわっているのが特徴である。
我が国の行政評価は,評価シートをそのまま公表するパターンが多いが,政策目標や事業目標,実績が一体となっていないと分野ごとの業績が不明確になる。ニューヨーク市の報告は,公表方法のひとつの方向を示唆するベスト・プラクティスと言えよう。
※参考文献:東京都・13年7月発行「ジュリアーニ市政下のニューヨーク」