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 自治体DNA革命を読んで

抽象論よりも体験学習からはじめよう先端組織アプローチが真骨頂

 「着眼大局,着手小局」。組織に内在する課題を発掘してタブーや妥協を一切許さない。本質的な経営課題は,現場の運動論だけで解決しない問題である。しかし,一朝一夕にはいかない本質的な改革に手をこまめいているより,条件が整っているところからまず取り組もう。ある先端部門で実績をあげ,そこから他に広げていく「パイロットアプローチ」。これが福岡市におけるDNA改革,「着手小局」の極意である。

 一点集中突破による早い段階での成功をねらうーアーリーウィン(early win)。前例踏襲が好きな行政の逆手をとって,先端部門で真っ先に先例づくり。そして,今後を担う人材づくり。そこには,緻密な改革への組み立てがある。全体像を描くよりも,むしろ小さなことから現状を少しずつ変えていく。トップの大改革への意思統一は不可欠だが,組織員全体にといってもイメージは湧かない。抽象論よりも体験学習からはじめよう。そんな戦略的なアプローチがある。

 「自治体に改革という遺伝子はない」「市役所の常識は,世間の非常識」。辛らつな言葉に,行政の抱える問題が込められている。国鉄破綻に自治体破綻が重なる。「国鉄流10の反省」は,そのまま「自治体10の反省」に重なるような気がする。部内本位,予算本位,規定本位,前例踏襲。まさに自治体が歩んでいる道のりではないか。

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 JR九州の石井会長は,国鉄改革の立役者の一人。福岡市経営管理委員会の主要メンバーである。また,行政評価ブームを起こした上山信一氏も名を連ねる。民間経営のエキスパートらが福岡市に突きつけた改革提言書が,DNA2002計画である。センセーションナルな話題とともに,その改革の行方が全国の注目を集めている。

 この「自治体DNA革命ー日本型組織を超えて」は,その福岡市の改革の背景にある自治体の,いや日本型組織の問題点を鋭くえぐる組織論的アプローチが真骨頂だ。新しい改革手法を大胆に提案する。改革の指南書でもある。

 改革には痛みが伴う。将来の飛躍のために一旦身を縮める覚悟がいる。しかし,改革の目標には必ず終わりがある。まず,現状を否定する。創造的な破壊が必要だ。でも,前向きなビジョンをもって改革を進めよう。遊び心も忘れずに,明るい未来を描いて改革を進めよう。福岡市流の”明るい改革”の真髄がそこにある。

 改革の障害は大きい。強いリーダーシップも不可欠だ。でも,日本の現状は,少しの停滞も許さない。自治体にとっての大きな味方を忘れてはならない。顧客であり,株主であり,協力者である市民は改革を進める大きなインセンティブに。最大の外圧であり,味方を忘れてはならない。

 まず,できることら改革をはじめよう。前に立ちはだかる大きな壁に,諦めと焦燥感をもつよりも,明るい未来を描いて改革を進めよう。この本は,全国の改革の戦士にささげる応援歌である。 

(参考文献)

  • 「自治体DNA革命ー日本型組織を超えて」石井幸孝・上山信一編著 東洋経済新報社2001.9.6

2001.9.3