知識ベースの戦略マネジメントへの移行が進む現代。バランスト・スコアカードは,中核となる”ヒト”に視点をおいてた全員参加による戦略実行のシステムといえそうだ。
過去の行動の結果である遅行指標,将来の業績のドライバーである先行指標。様々な指標で評価を行う。組織体を正しい方向に導くのは戦略である。「だから戦略を測定せよ!」が,BSCの本質を示している。測定する指標は組織の戦略とビジョンから導かれたもの。BSCは戦略マネジメントのツールである。
キャプランとノートンは「戦略志向の組織体制には次の5つの原則がある」と指摘する。
- 戦略を現場の言葉に置き換える。
- 組織全体を戦略に向けて方向付ける。
- 戦略を全社員の日々の業務に落とし込む。
- 戦略を継続的なプロセスにする。
- エグゼクティブのリーダーシップを通じて変革を促す。
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組織にはハード,ソフトを問わず,有形,無形の資産がある。それを長期的な価値を創造するために結合する。いわば,価値をもった”ご馳走”に変えること。料理長ばかりでなく,組織構成員すべてがレシピを導入して,セグメントされたパートで努力する。「戦略を現場の言葉に置き換える」は,構成員にいわば分かりやすいレシピを提供することである。
組織には,様々な部門がある。個々の戦略がある。個々の戦略を方向付け,結合させることが必要だ。部門間には大きな壁がある。この障壁を越えて,統一したメッセージを伝え,「組織全体を戦略に向けて方向付ける」ことが不可欠である。
優れた戦略も個々の組織構成員が理解して実行しなければ実現できない。「戦略を日々の業務に落とし込む」。あらゆる階層が戦略を目の前の業務に咀嚼して実行する。自ら貢献できる目標を見つけ努力する。それができて,戦略が浸透できたと言える。
どの組織にも計画と予算はある。でも,戦略を議論しない。戦略と予算を結合させ,議論し,学習し,日々繰り返すことにより戦略が継続的なプロセスになる。
ツール,プロセスは重要である。でも,最も重要な要素は,エグゼクティブのリーダーシップである。改革には組織のあらゆる部分に変革,調整が必要である。強力なリーダーシップがなければ,戦略の実行ができない。「エグゼクティブのリーダーシップを通じて変革を促す」ことができる。
この本は,欧米の企業,非営利組織の豊富なバランスト・スコアカード導入事例を題材に,この5つの原則を多角的に検証して,具体的な方法を提示している。
戦略を論理的にマッピングして組み立てる「戦略マップ」の考え方は,行政評価や計画づくりにもすぐ応用できる手法。BSCの構成を読み込むだけでも,戦略がわかり易く理解できる。翻訳本特有の言い回しで,理解しにくい点もあるがBSC研究には必見の著作と言えよう。