01logo.jpg (7551 バイト)  行評価レポート


 欧米の行政評価事情(1)ー米国のGPRA

 業績評価は、事前に計画したプラン(欧米では戦略計画)に基づいて、行政が効率的に、経済的に、効果のある仕事を成し遂げたかどうかを測定するものであり、世界的にはこれが行政評価の標準とされている(※参考U参照)。日本の行政評価の中心である事業評価とは趣を異にしている。このレポートでは、世界標準のひとつであるアメリカの政府業績成果法(Government Performance and Results Act: GPRA)による評価の実際を明らかにしてみたい。

 米国は、1999年度からこの評価システムを導入している。簡単に言うと各省庁ごとに戦略計画を作成し、これに基づく年次計画を作成。年度終了ごとに報告を作成し、次の戦略計画に反映するシステムである。わが国の政府の政策評価もこのシステムと言える。システムの概念図は図1のとおり

 それぞれの行政庁のミッション(ビジョン)を、具体的に示す各部局の、さらに各プログラム(施策)の戦略目標・指標という形でブレークダウンし、毎年それぞれの成果を計測して、最終的な成果・達成度を明らかにする。戦略(長期)目標・指標(6 年間)と年次業績目標の設定をつなぎ、行政庁のプログラムを実施する仕組みがこの評価システムの中核である。

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図1:評価システムの概念図

 このような中核システムに加えて、重要な仕組みがCPG(資本プログラミング・ガイド=Capital Programming Guide: CPG) である。これは、資本資産計画、予算編成、調達、そして使用管理という資本資産マネジメントの手法で、行政庁の明確な戦略目標・指標をサービスや物(資本資産)につなぎ、政府に対する行政庁の予算要求を正当化するためのプロセスを示したもの。仕事を進める各行政庁は、ライフサイクル・コストとリスクを最小に抑えるためのライフサイクル・コスト計画を立て、政策の長期目標を達成するように資本資産の投資分析およびプログラム計画を行う。そして行政庁のミッションにとって最適なプログラムを選定して実施する。GPRA の目標と資本資産のライフサイクル・コストを結合することで、資本資産の効率性と効果を改善する。サービスと資産のそれぞれに支出と成果を関連づける高度な管理システムと言える。GRPAとCPGの関係

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図2:資本資産計画の概念図

 最も少ない投入資源とすることが経済性(Economy:投入のロスを最小限に抑えること=節減費用の評価)であり、経営資源の投入によって生じる成果を改善するものが効率性(Efficiency:アウトプットの極大化を図ること=政策の執行面での評価)であり、成果を目的・目標に合致することで最大の効果を生むことが有効性(Effectiveness:アウトプットを通じてアウトカムを改善すること(政策の効果の評価)である。3Eの関係は図3のとおりであるが、GPRAとCPGという2つのプロセスで、それぞれの最適化を目指しているのが米国の業績評価システムの特徴である。

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図3:3Eの関係

 業績による行政管理システムの全体構造は、図4のとおりである。行政サービスを行政のミッションからはじまり、さらに戦略計画のレベルから実行プログラムのレベルまでを結合するプロセスである。各行政庁の業績は年次報告の形で公表される。優れたシステムには表彰と褒章を用意し、プライドを喚起し、ベストプラクティスをフィードバックする。極めてアメリカ的なモチベーション喚起の手法も用意され、行政庁がそれぞれが競争関係にあることが特筆される。

なお、このシステムの効果は次のとおりである。

  • プログラムの業績測定により、プログラムの性能を向上させること、

  • 行政庁の効果およびアカウンタビリティを向上させること

  • 行政庁のサービスの定時制を改善すること

  • 議会の決定プロセスおよび政府の管理プロセスを向上させること(業績による行政管理システムの導入により、以下のような結果が期待できる)

  • 費用、品質、およびスケジュールの影響要因をより深く理解できること

  • 生産性が向上すること

  • 行政庁の決定プロセスがより戦略的になること

  • 職員に動機付けられること

  • この革新的な手法により、業績基準(ベンチマーク)を創造できること

  • 業績基準の利用により、業務プロセスを向上できること

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図4:評価システムの概念図

 このシステムは、わが国の政策評価のモデルになったものであるが現在においても完成系のものではなく、進化途上のシステムである。本格実施も2000年からであり、多くの課題がある。しかし、今後の進化が大いに期待され、日本の自治体における政策レベルの評価システムを考える上で大きなターゲットになりえるものである。

 わが国の事業評価は、事業の効率性を向上させる意味合いでは評価できるが、分かりやすさという点では疑問を呈せざるを得ない。これに対して、米国の業績評価システムは、政府の目指す方向と具体的なプログラムとその成果が具体的に表現される指標を通して理解されやすく、サービスの受けてである国民へのアカウンタビリティという観点からは特に重要なシステムと言える。

 両者が融合したときに、日本の自治体の行政評価が目指すべき方向が見えてくるような気がする。政策の方向を分かりやすく示し、資源の効果的な配分と政策のプライオリティを決め、成果を以降の戦略に生かしていくとともに、末端にある個々の事業に至るまで、明確なビジョンを体現しつつ極めて効率性の高いパフォーマンスをもったサービスを実現できる。事業評価の緻密な組み立てに疑問を呈する考えもあるが、できる限り簡便な手法を開発しつつ、このような政策レベルの評価と効果的に結びつけることによって、さらに一段上の行政評価と言えるのではないか。

(参 考)

  1. 米国連邦政府業績による行政管理システム 
    通達A-11 政府業績成果法(GPRA)の実施規定の邦訳など

  2. 「行政評価の世界標準モデルー戦略計画と業績測定」(上山信一監訳,谷口敏彦訳,村岡政明編集)2001.9東京法令出版アメリカ行政学会の業績評価ワークブックの翻訳。業績評価の本当の姿が見えてくる。日本の行政評価の現状にも警笛。

  3. 米国の地方団体・州・連邦政府における「行政評価」 CLAIR REPORT NUMBER 201(may. 29, 2000)

本文中の図の出典:財団法人 先端建設技術センター 「米国連邦政府業績による行政管理システム 通達A-11 
政府業績成果法(GPRA)の実施規定 −解説及び通達本文−」より

2001.10.22