「都市再生」徹底批判

 今回は、小泉内閣が掲げる「都市再生」に対する私の批判を紹介します。どうぞ、御覧下さい。
 2002年4月26日

【用語解説】

都市再生本部・・環境、防災、国際化等の観点から都市の再生を目指す21世紀型都市再生プロジェクトの推進や土地の有効利用等都市の再生に関する施策を総合的かつ強力に推進することを目的として、2001年5月8日、内閣に設置された。本部長は内閣総理大臣。副本部長は内閣官房長官と国土交通大臣。本部員は金融担当大臣、経済財政政策担当大臣、規制改革担当大臣、科学技術政策担当大臣、防災担当大臣、国家公安委員会委員長、総務大臣、財務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、経済産業大臣、環境大臣。

容積率・・建築基準法第52条。「建築物の延べ面積(二階建ての建物なら、一階部分と二階部分を合わせた面積)」の敷地面積に対する割合のこと。用途地域と前面幅員道路(敷地が接している道路)により決められる。

建ぺい(建弊)率・・建築基準法第53条。「建築物の建築面積(二階建ての建物なら、一階部分のみの面積)」の敷地面積に対する割合のこと。用途地域により決められる。

斜線制限・・建築基準法第56条。良好な市街地環境の確保を図るために建築物の高さや位置を規制するものである。建築可能な範囲が設計図上で斜線を引いて示されるため、この名がある。斜線制限には道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限の三種類がある。道路斜線制限は、道路の上空を一定の角度で確保し、道路を挟んだ対向建築物の日照・採光・通風に支障がないようにするためのものである。隣地斜線制限は、隣地敷地に建つ建築物相互間の採光・通風・プライバシーに支障がないように一定の角度内に建築物を収めるものである。北側斜線制限は、第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・第一種中高層住居専用地域・第二種中高層住居専用地域内の北側隣地の日照の確保を図るためのものである。

日影制限・・建築基準法第56条の2。中高層建築物により発生する日影を規制するもの。これによって建築物の形態が制限され、建ぺい率制限・容積率制限・斜線制限と相まって、ある程度の日照の確保すると同時に過密環境が防止される。

天空率・・地上から上空を見上げた時、どれだけ空が見えるのかを示すもの。砂漠や草原では高く、高層ビルが林立する所や森林では低くなる。

市街地再開発事業・・市街地再開発事業には、第一種市街地再開発事業と第二種市街地再開発事業がある。第一種市街地再開発事業は、権利変換(従前建物所有者や土地所有者の権利を、原則として等価で、新しく出来る再開発ビルの床に関する権利に置きかえるもの)という方法によって行われるもので、民間(個人、市街地再開発組合)や地方公共団体、公団、公社が施行者(事業者)になる。第二種市街地再開発事業は、用地買収(管理処分)方式により実施されるもので、都市の防災上の理由で、公益性・緊急性を要する地区に限って実施される。この事業は地方公共団体、公団、公社のみが行うことができる。

【2002年2月4日に行われた第百五十四回国会における小泉純一郎内閣総理大臣施政方針演説より】

快適な都市づくりも緊急の課題です。民間の力を最大限活(い)かして都市開発事業を推進することは、都市の再生に加え、土地の流動化を通じた不良債権問題の解消を図る上で極めて重要です。都市計画に係る規制を全て適用除外とし、民間事業者が自由に事業計画を立案できる新しい都市計画制度を導入するとともに、民間事業者に対する強力な金融支援などを実施します。都市の魅力と国際競争力を高めるため、東京湾臨海部における基幹的広域防災拠点の整備を始めとする都市再生プロジェクトを、着実に推進します。

この発言に対しては、一つずつ批判していく。

(1) 「民間の力を最大限活かして都市開発事業を推進することは、都市の再生に加え、土地の流動化を通じた不良債権問題の解消を図る上で極めて重要です。」→中曽根(中曽根康弘元総理)流の民活(民間活力活用)を摸倣した政策には賛同できない。小泉総理が絶大な信頼と尊敬をしてやまない「民間」はバブル時代に裏社会とも結託、自分の金儲けのための開発計画に基づき悪質かつ悪徳な地上げを都市部で大々的に行った。一方、非都市部では、ゴルフ場やリゾート施設の乱開発で自然環境が容赦なく破壊された。そんな「民間」を信頼することは到底できない。

(2) 「都市計画に係る規制を全て適用除外とし、民間事業者が自由に事業計画を立案できる新しい都市計画制度を導入する」→「民間」に対するまったく根拠のない信仰もここに極まれりといった感じだ。バブル時代に「民間」は、都市部においては自分の金儲けのための開発計画に基づき、裏社会とも結託した悪質かつ悪徳な地上げを都市部で大々的に行った。一方、非都市部では、ゴルフ場やリゾート施設の乱開発が行われた。その結果生じたものが大規模な不良債権であり、破壊された自然環境や住民の生活空間だった。

(3) 「民間事業者に対する強力な金融支援などを実施します。」→バブル時代に大失敗をし、かつ、倫理も道徳もなく己(おのれ)の金儲けしか頭にない「民間事業者」に対する「強力な金融支援」は不要である。そんな金があるのなら。生活に困っている人を真っ先に支援するべきである。

【2001年12月4日に都市再生本部が決定した「都市再生のために緊急に取り組むべき制度改革の方向」より】

「民間の事業計画に基づいた思い切った都市計画変更」
・民間事業者が有する事業計画の企図を積極的に生かすため、民間事業者による事業計画の提案に基づき、地方公共団体が都市計画の変更手続きを実施していく制度を創設。

民間事業者にまともな「事業計画」を期待することはできない。民間事業者が第一義とするのは金儲けであり、それはバブル時代の裏社会の人間とも結託した都市部における悪質かつ大掛かりな地上げや自然環境を容赦なく破壊した非都市部でのゴルフ場やリゾート施設の乱開発で証明されている。そんな民間事業者の「事業計画の提案」に基づき、「地方公共団体が都市計画の変更手続きを実施」すれば、民間事業者の金儲けばかりが重視され、居住者の意向が無視されることはわかりきっている。事実、バブル時代には居住者の意向は無視された。大切なのは何より「居住者の意向」である。民間事業者の金儲けではない。

【2001年12月4日に都市再生本部が決定した「都市再生のために緊急に取り組むべき制度改革の方向」より】

「民間事業者に一定の強制力をもった事業権能創設」
・民間事業者が円滑に土地の買収と集約化を進められるよう、一定の民間事業者に、従来公的主体に限定されていた強制力をもった再開発の施行権能を付与。

バブル時代に裏社会とも結託、悪質かつ悪徳な地上げを都市部で大々的に行った「民間」に「強制力をもった再開発の施行権能を付与」してはならない。「民間」の一番の目的は金儲けであり、そのためなら、裏社会とも結託するし、居住者の意向も平気で踏み付けにする。そうした「民間」に権力を与え、自由自在・やりたい放題の活動をさせようとするのだから、言語道断・問題外である。また、この都市再生本部の文章は「民間」の金儲けのために全力を傾注する小泉政権の本質を表しているとも言える。「民間」の金儲けのためなら何でもやる。そのために貧乏人がどうなろうと構わない。これが「民間」の忠実なる「手下」の小泉政権の「綱領」だ。

【2001年12月4日に都市再生本部が決定した「都市再生のために緊急に取り組むべき制度改革の方向」より】

「設計の自由度の向上による民間事業者の創意工夫の発揮」
・街区単位で高度利用を図る複数棟の開発に係る手続きを簡素化・迅速化するための総合設計制度の拡充
・斜線制限について、天空率を比較する性能規定化を導入
・用途地域に定める容積率について、さらに高度利用を実現するための選択肢を追加
・前面道路の幅員による容積率制限について、緩和を可能とするための選択肢を追加
・日影制限について、一層の高度利用を可能とするための測定面の種類を追加

空間の高度利用(高層建物の建築)をしたい「民間事業者」の主張をそのまま丸写ししたかのような文章である。これでは「民間事業者」の下請け機関のようなもので、とても行政機関とは言えない。建築基準法における諸規制については、「民間事業者」ではなく居住者の意向を第一に考えていくべきであり、特に低層住宅が多い地域においては、むしろ高層建物の規制強化が必要である。

【2001年12月4日に都市再生本部が決定した「都市再生プロジェクト(第三次決定)」より】

「密集市街地の緊急整備」

 地震時に大きな被害が想定される危険な密集市街地(東京、大阪各々約6,000ha、全国で約25,000ha)について、特に大火の可能性が高い危険な市街地を対象に重点整備し、今後10年間で最低限の安全性を確保する。

(1)東京において、密集市街地全体を大きく貫く緑のオープンスペース機能を持つ連続した骨格軸を形成する。このため、環状六号線と環状七号線の間の未整備都市計画道路やこれに連なる公園や沿道の市街地等の整備を集中的に実施する。また、大阪においても同様に骨格軸の形成を図る。

(2)密集市街地のうち、特に大火の可能性の高い危険な市街地(東京、大阪各々約2,000ha、全国で約8,000ha)について、今後10年間で重点地区として整備することにより、市街地の大規模な延焼を防止し、最低限の安全性を確保する。
 このため、空地の確保や建築物の耐震不燃化に向け、

・未整備の都市計画道路を重点整備するとともに、これと一体となった沿道建築物を整備する。
・これと連携し、高齢者など従前居住者用の住宅対策や、工場跡地等低未利用地を活用した市街地整備、電線類の地中化等の施策を、総合的・集中的に実施する。

 このような総合的かつ先導的な取り組みを、太子堂地区(世田谷区)、東池袋地区(豊島区)、西新井駅西口地区(足立区)、福島区北西部地区(大阪市)、寝屋川大東線沿道地区(大阪府寝屋川市・門真市)等において展開する。

(3)密集市街地全域について、敷地の集約化・整序や地区内の空地確保等居住環境向上に向けた住民の主体的取り組みの支援体制を強化する。このため、

・専門家やまちづくり組織を積極的に活用できるしくみを整備する。
・地権者による防災性の向上に資する自主的な建物更新を促進するため、日影制限や斜線制限の合理化等に向けて制度を見直す。

(4)また、民間活力を最大限発揮できる制度を導入する。

・一定の民間事業者に、従来公的主体に限定されていた強制力をもった再開発の施行権能を付与する。
・民間事業者の提案を積極的に受け止め、迅速に都市計画が変更される制度を創設する。

官(悪徳代官や奉行)と民(悪徳商人)が結託して長屋の住民を追い出そうとする時代劇の筋書きを見ているかのようである。この文章からは、「民間」の金儲けのために何でもやろうとする「官」の露骨な姿勢が窺(うかが)える。「『民間』さえ儲かればそれでいい、住民のことなど関係ない、それが我々の使命だ」というのがこの文章である。その証拠が、「一定の民間事業者に、従来公的主体に限定されていた強制力をもった再開発の施行権能を付与する。」「民間事業者の提案を積極的に受け止め、迅速に都市計画が変更される制度を創設する。」という文である。バブル時代に「民間」は、自分の金儲けのための開発計画に基づき、裏社会とも結託した悪質かつ悪徳な地上げを大々的に行った。「自分たちの金儲けさえできればそれでいい。住民のことなど関係ない。住民を追い出すためなら裏社会を活用しても構わない」というのがバブル時代に明らかになった「民間」の本質だった。そんな「民間」に権力を与えてはならない。バブル時代に明らかになった「民間」の本質は「悪」であった。そんな「民間」と手を組んでいいのか。そんな「民間」がまともな街造りをできるのか。真剣に考えるべき問題である。

【2002年3月29日に閣議決定された「規制改革推進3か年計画(改定)」より】

第二種市街地再開発事業への民間参入
民間の資金やノウハウを活用し、魅力ある都市の再生や木造住宅密集地域の改善を積極的に推進するため、用地買収型である第二種市街地再開発事業の施行主体として、地方公共団体、公団等の公的主体に加え、一定要件を備えた民間主体も認めることについて、第154回国会に法案を提出する。

小泉総理が絶大な信頼と尊敬をしてやまない「民間」はバブル時代に裏社会とも結託、悪質かつ悪徳な地上げを都市部で大々的に行った。そんな「民間」を「用地買収型である第二種市街地再開発事業の施行主体」にすることは許されない。

【2002年3月29日に閣議決定された「規制改革推進3か年計画(改定)」より】

都市に係る各種制度の見直し
経済社会活動の中心となる都市の魅力を高めるため、国際的水準の都市づくりを誘導する具体的なグランドデザインの策定を推進するとともに、民間主導の再開発事業を円滑に進めるための制度整備、インフラ(infrastructure 基礎となる施設、基盤。中根注)整備を阻む制度的要因の是正を図る。

「民間主導の再開発事業」には警戒しなければならない。「民間」が考えているのは自分たちの金儲けだけである。地域住民や自然環境のことなど一顧だにしない。それはバブル時代の悪質かつ悪徳な地上げやゴルフ場やリゾート施設の乱開発で十分すぎるほど実証されている。それゆえ、行政は、「民間」がやろうとしていることに対して、疑いと警戒の目を向けなれればならない。ところが、小泉政権がやろうとしていることはまったく逆で、「民間」に絶大な信頼と尊敬をして、かつ、「民間」の金儲けを後押ししようとするものである。「民間」の金儲けのためなら、制度や法令の改悪も厭(いと)わない。これが小泉政権の本質だ。



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