2002年5月9日のテレビ番組「ニュースステーション」(テレビ朝日系)で道路問題の特集が放送された。北海道・南十勝(みなみとかち)の忠類村の議会が忠類村を通る高速道路の建設に反対する決議をしたことを取り上げ、これを猪瀬直樹氏(行革断行評議会委員、政府税制調査会委員)と司会の久米宏氏が絶賛する内容で、「これは小泉改革の方向性と合致する。改革の動きは非都市部からも起こっている」ということがこの特集の趣旨だった。ニュースステーションは、この日に限らず以前から道路問題を度々取り上げてきた。その内容は、小泉内閣の基本方針は道路を積極的に造ろうとするものではない、と視聴者に思わせるものであった。しかし、事実はまったく逆である。小泉内閣の基本方針は道路を造らないというものではなく、道路を乱造しようというものである。小泉純一郎内閣総理大臣が本部長を務める都市再生本部の決定方針や小泉内閣が決定した「規制改革推進3か年計画(改定)」がそれを証明している。以下に示すので、御覧頂きたい。
【2001年8月28日に都市再生本部が決定した「都市再生プロジェクト(第二次決定)」より】
「大都市圏における環状道路体系の整備」
大都市圏において自動車交通の流れを抜本的に変革する環状道路を整備し、都心部の多数の慢性的な渋滞や沿道環境の悪化等を大幅に解消するとともに、その整備により誘導される新たな都市拠点の形成等を通じた都市構造の再編を促す。
1. 東京圏における環状道路の整備
(1)首都圏三環状道路の整備
東京圏において、首都圏中央連絡自動車道、東京外かく(郭)環状道路及び中央環状線のいわゆる首都圏三環状道路の整備を推進する。
・このうち、現在事業中区間のうちの特に首都圏中央連絡自動車道西側区間、東京外かく環状道路東側区間及び中央環状線の3号線以北の区間について、その整備を積極的に推進し、平成19年度までに暫定的な環状機能を確保する。
・東京外かく(郭)環状道路(関越道〜東名高速)については、現計画を地下構造に変更し、これに伴う都市計画の変更に向け早期に関係者間の調整を図る。その際、上部空間の利用や生活再建の方策について、地域において幅広い選択が可能となるよう積極的かつ柔軟に取り組む。
・首都圏三環状道路の整備が最も遅れている東名高速以南について、中央環状品川線の都市計画決定等、計画の具体化を図る。
(2)横浜環状線の整備
横浜環状線の整備を推進するとともに、横浜港等に係る物流の円滑化等を図るため、横浜環状線北側区間と東名高速との接続区間の都市計画決定を早急に実現する。
2. 大阪圏における環状道路の整備
(1)大阪都心部における新たな環状道路の整備
大阪都心部に新たな環状道路の形成を図る。その際、第二京阪道路の近畿自動車道までの供用に併せ、これを整備することを目標とする。
このため、現在事業中である大和川線及び淀川左岸線について、これらと一体的に整備するスーパー堤防等の関連事業を積極的に推進する。
淀川左岸線延伸部について、都市計画決定を早急に実現する。
(2)京都都市圏における環状道路の整備
京都都市圏南西部において都心を迂回する京都第二外環状道路の整備を推進する。
3. 名古屋圏及び福岡圏における環状道路の整備
名古屋圏においては、名古屋環状2号線及び東海環状自動車道、福岡圏においては福岡外環状道路等の整備を推進する。 |
【2002年3月29日に閣議決定された「規制改革推進3か年計画(改定)」より】
都市交通基盤等の整備
国際的水準の都市づくりを実現するためには、整備が進んでいない都市計画道路について、整備目標年限を定めた上で、その早期達成に努めることが重要である。そのため、公共用地取得に係る財源確保及び執行体制の強化を図る。 |
これでおわかりだろう。小泉政権の基本方針は道路をどんどん造ることなのである。しかも、建設費がとても高い都市部の道路をどんどん造ろうというのだ。道路特定財源(ガソリン税、軽油引取税、石油ガス税、自動車取得税、自動車重量税)を一般財源化すると小泉総理は公約していたが、都市部の道路をどんどん造ろうというのでは何の意味もない。仮にすべての道路特定財源の一般財源化が行われたとしても、その一般財源から道路建設に大量の金が流し込まれるだけだ。小泉政権も、道路のために尽くすという旧来の自民党の方針と何ら変らなかったいうことだ。また、こんな大盤振る舞いの道路計画を掲げておきながら財政再建を標榜するのだから、小泉政権は本当に無茶苦茶な政権である。さらに問題なのは、このことを報道番組が言わないことである。前述のニュースステーションでも猪瀬氏は、知ってか知らずか、このことを言わなかった。北海道の全然車が通らない道路(道路幅は狭く、用地費も安い)よりも、都市部の高速道路(道路幅は広く、用地費も高い)の方が建設費はずっと高い。前述の南十勝の道路の建設費は2000億円とされていたが、小泉政権が建設を推進する都市部の高速道路の建設費はそれを遥かに上回ることは間違いない(下段注)。猪瀬氏はどうしてこのことを指摘しないのか。実に不思議だ。
下段注(2003年4月15日追補)・・首都高速王子線の建設費は4135億円であった。距離はわずかに7.1kmである。
最後に、本論からは離れるが、いわゆるメディア規制法案(人権擁護法案、個人情報保護法案、青少年有害社会環境対策基本法案)について記しておきたい。前述のニュースステーションで司会の久米氏から小泉総理とメディア規制法案の関わりを尋ねられた猪瀬氏は、「小泉総理はあの法案には熱心ではない。官僚が上げてきたものを通しただけ」という趣旨の発言をして小泉総理を「擁護」し、「免責」していた。無茶苦茶な発想である。メディア規制法案は内閣提出の法案である。そして、小泉氏は行政の長たる内閣総理大臣である。責任がないはずはないし、「熱心ではない」とか「官僚云々(うんぬん)」の論理も通らない。猪瀬氏のこうした理不尽な姿勢は厳しく問われなければならない。また、猪瀬氏はメディア規制法案に反対のようだが、猪瀬氏が幹部を務める日本ペンクラブ(猪瀬氏は日本ペンクラブ・言論表現委員長)と同様、メディア規制法案の廃案を求めるならば、直ちに行革断行評議会と政府税制調査会の委員を辞し、廃案を求める姿勢を決然と示すべきである。政権内部から行動を起こすことこそ、廃案につながるのではないだろうか。
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