上限金利の引き下げこそ構造改革だ

今回は、借金をしたときに支払う利息の上限を引き下げるべきであるという私の持論を紹介します。どうぞ御覧下さい。(2003年10月16日)



公定歩合が0.1%(http://www2.boj.or.jp/dlong/stat/data/cdab0100.txt)、銀行の普通預金の金利が0.001%という超低金利が続いている。こうした状況の中、消費者金融業者は2%程度の低利で資金を調達(表1)し、その金を15%から29%という高利で顧客に貸し付けている(表2)。その結果、莫大な利益を得ている(表3)。

【表1】消費者金融大手四社の2002年度の平均調達金利
会社名 利率
アイフル 1.97%(平均調達金利)
アコム 1.82%(平均調達金利)
武富士 2.07%(平均調達金利)
プロミス 2.01%(平均調達金利)
※各社の2003年3月期有価証券報告書を基に作成した。

【表2】消費者金融業者の主力商品(目的自由商品)の貸付条件(※1)
通称 会社名 融資額 貸付利率(実質年率) 返済例における貸付利率(実質年率) 遅延損害金(実質年率) 担保・保証人 備考
アイフル アイフル株式会社 1万円〜50万円 21.50%〜28.835% 28.835% 29.20% 原則不要   
アコム アコム株式会社 1万円〜50万円 15.00%〜27.375% 27.375% 29.20% 不要 ※2
武富士 株式会社武富士 1万円〜50万円(または年収の10%以内) 27.375% 27.375% 29.20% 不要  
プロミス プロミス株式会社 1万円〜300万円 13.50%〜25.55% 25.55% 29.20% 不要 ※3
ポケットバンク 三洋信販株式会社 1万円〜50万円 18.00%〜29.00% 29.00% 29.20% 不要 ※4
クレディア 株式会社クレディア 1万円〜100万円 28. 500%   29.200% 不要  
ノーローン シンキ株式会社 1万円〜50万円 22.50%〜28.835%   29.20% 原則不要 ※5
ほのぼのレイク GEコンシューマー・ファイナンス株式会社 1万円〜50万円 29.200% 29.200% 29.200% 原則不要 ※6
マルフク 株式会社マルフク 1万円〜100万円 29.2% 29.2% 29.2% 不要  
三和ファイナンス 三和ファイナンス株式会社 1万円〜50万円(または年収の10%以内) 25.55〜29.20% 29.20% 29.20% 原則不要  
ぷらっと 株式会社ぷらっと 1万円〜50万円 29.20% 29.20% 29.20% 不要  
AIC CFJ株式会社 1万円〜50万円(または年収の10%以内) 23.00%〜29.20%   29.20% 原則不要  
キャスコ 株式会社キャスコ 1万円〜50万円(または年収の10%以内) 25.00%〜29.20% 29.20% 29.20% 原則不要  
ユアーズ 株式会社ユアーズ 50万円まで 28.95% 28.95% 29.2% 不要  
モビット 株式会社モビット 1万円〜300万円(新規契約の場合は上限200万円) 15.0〜18.0%   21.90〜26.28% 原則不要 ※7
東京三菱キャッシュワン 株式会社東京三菱キャッシュワン 1万円〜300万円(新規契約の場合は上限200万円) 15.00〜18.00%   21.90〜26.28% 不要 ※8
アットローン アットローン株式会社 50万円以内 15.00〜18.00%   21.90〜26.28% 不要 ※9
※1 この表は2003年10月9日の各社のサイトを基に作成した。但し、AICは2003年9月9日付の中部支社発行の読売新聞に掲載された広告を、ノーローンは2003年9月2日付の中部支社発行の読売新聞に掲載された広告を基に作成した。
※2 新規契約においても貸出利率は一定ではなく、顧客の現況により、貸出利率は決定される。
※3 新規契約の場合、貸付利率(実質年率)は25.55%。
※4 電話申し込みによる新規契約の場合、貸付利率(実質年率)は29.00%。
※5 借入日の翌日から七日間無利息。
※6 ここで示した貸付条件は「瞬即50」のもの。
※7 UFJ銀行系列。
※8 東京三菱銀行系列。
※9 三井住友銀行系列。

【表3】消費者金融大手四社の2003年3月期連結決算
会社名 営業収益 経常利益 税引き後利益
アイフル株式会社 4494億5800万円 1117億9700万円 599億1000万円
アコム株式会社 4375億7200万円 1442億4400万円 750億9600万円
株式会社武富士 4219億7400万円 1832億5500万円 951億4600万円
プロミス株式会社 4106億1900万円 1080億3000万円 607億1600万円
※100万円未満は切り捨て。

ところが、こうした異常事態にもかかわらず、政府は出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)と利息制限法で定められている上限金利を引き下げようとしない。膨大な広告を通じて消費者金融業者に支配されている新聞やテレビも、闇金融の悪行を追及するだけで消費者金融業者に対してはほとんど批判をしない。特に、広告における金融業者の占有率が新聞よりもはるかに高いテレビの状況はひどい。例えば、最近、業界大手の武富士に関して、サービス残業問題や貸金業規制法(貸金業の規制等に関する法律)違反問題が発覚したが、テレビは沈黙していた。大手広告主の武富士が関わっている場合、問題はないということなのだろう。話にならない。そこで、私は、上限金利の大幅な引き下げを軸とした出資法と利息制限法の抜本的な改正を提言する。

現行の出資法 中根作成・出資法改正案
第五条第一項 金銭の貸付けを行う者が、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 第五条第一項 金銭の貸付けを行う者が、年9.855パーセント(二月二十九日を含む一年については年9.882パーセントとし、一日当たりについては0.027パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは十億円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第五条第二項 前項の規定にかかわらず、金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年二十九・二パーセント(二月二十九日を含む一年については年二十九・二八パーセントとし、一日当たりについては〇・〇八パーセントとする。)を超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 削除(第一項と統合。業者と個人の区別をなくしたため。)

現行の利息制限法 中根作成・利息制限法改正案
第一条第一項 金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、その超過部分につき無効とする。

元本が十万円未満の場合 年二割
元本が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
元本が百万円以上の場合 年一割五分
第一条第一項 金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは、利息のすべて並びに元本部分につき無効とする。

元本が一円以上の場合 年9.855パーセント(二月二十九日を含む一年については年9.882パーセントとし、一日当たりについては0.027パーセントとする)
第一条第二項 債務者は、前項の超過部分を任意に支払つたときは、同項の規定にかかわらず、その返還を請求することができない。 第一条第二項 債務者は、前項の超過部分を任意に支払った場合でも、利息のすべて並びに元本部分の返還を請求することができる。

また、消費者金融だけでなく、クレジットカード会社のキャッシングサービスの金利も、クレジットカード会社の借入金の金利(表4)と比べると非常に高い。しかも、各社ほとんど「横並び」である(表5)。クレジットカード会社の広告も数多いため、常日頃、「横並び」を批判する新聞やテレビがこの「横並び」を批判することはほとんどない。

【表4】主なクレジットカード会社の2002年度の借入金の平均利率
会社名 平均利率
日本信販株式会社 1.9%〜2.2%
株式会社オリエントコーポレーション 2.10%〜3.35%
株式会社ジャックス 0.500%〜1.723%
株式会社アプラス 1.6%〜2.3%
※2002年度の各社の有価証券報告書を基に作成した。

【表5】クレジットカード会社の通常カードにおけるキャッシングサービスの貸付条件
クレジットカード名 会社名 貸付利率(実質年率) 遅延損害金(実質年率) 備考
NICOSカード 日本信販株式会社 26.28% 21.90〜26.28% ※1、※2
DC CARD 株式会社ディーシーカード 27.8% 29.1% ※1
三井住友カード 三井住友カード株式会社 27.8%以内 21.9% ※1
UCカード ユーシーカード株式会社 27.8% 21.90% ※1
イオンカード イオンクレジットサービス株式会社 19.8%〜25.6% 25.6% ※1
OMCカード 株式会社オーエムシーカード 28.8% 29.2% ※1
セゾンカード 株式会社クレディセゾン 24.0〜25.0% 29.2% ※1
JCBカード 株式会社ジェーシービー 27.80% 21.90% ※1
UCSカード 株式会社ユニーカードサービス 27.80% 21.90% ※1
ライフカード 株式会社ライフ 28.8%、29.2% 記載なし ※1
ジャックスカード 株式会社ジャックス 18.00% 記載なし ※3
UFJカード 株式会社UFJカード 27.80% 29.20% ※4 
シティバンクカード シティコープ・カードサービス・インコーポレイテッド 27.8% 21.9% ※4
アプラスカード 株式会社アプラス 29.16% 記載なし ※4
TS3カード トヨタファイナンス株式会社 26.40% 21.9% ※4
QUOQCARD 株式会社クオーク 27.3% 29.2% ※1
JA CARD 協同クレジットサービス株式会社 27.8% 21.9% ※5
ダイナースクラブ シティコープダイナースクラブジャパン株式会社 27.8%、29.20% 14.6% ※5、※6
オリコカード 株式会社オリエントコーポレーション 26.4%、27.6% 21.9%、26.28%、29.2% ※7
しんきんカード 株式会社しんきんクレジットサービス 27.8% 21.9% ※7
KCカード 国内信販株式会社 27.6% 29.2% ※7
アメリカン・エキスプレス・カード アメリカン・エキスプレス・インターナショナル,Inc.(日本) 記載なし 記載なし ※7
CFカード 株式会社セントラルファイナンス 記載なし 記載なし ※7
※1 2003年10月9日の各社のサイトを基に作成した。
※2 短期キャッシング(支払い期間が5日〜11日)の場合、貸付利率(実質年率)は13.27%〜29.20%。
※3 2003年10月12日のジャックスカードのサイトを基に作成した。
※4 2003年10月13日の各社のサイトを基に作成した。
※5 2003年10月14日の各社のサイトを基に作成した。
※6 キャッシングサービスの貸付利率(実質年率)は2003年10月15日までは27.8%、2003年10月16日からは29.2%。
※7 2003年10月19日追補。2003年10月18日の各社のサイトを基に作成した。

こうした異常な高金利が放置されているのは、表6、7、8にあるように金融業者と政界・官界との親密な交際があるからだ。また、莫大な広告費(表9)を通じてテレビ局を沈黙させることに成功した。だから、テレビ局は闇金融業者の悪行を追及する一方で、合法金融業者の批判は一切しない。テレビ局は、闇金融の被害者の地獄絵図の端緒はクレジットカード会社や消費者金融業者からの高金利の借金であることをまったく無視している(注)。テレビ朝日系の報道番組「ザ・スクープ」に至っては、違法ではない金融業者を「良心的な業者」とまで言った。違法ではない金融業者は、もちろん「合法」ではあるが、その高利を見ればわかるように、決して「良心的」ではない。

【表6】全国貸金業政治連盟が政治家のパーティー券を購入していたことが判明
出資法の上限金利の引き下げ阻止、さらには引き上げをも狙う貸金業界の政治団体である全国貸金業政治連盟が政治家のパーティー券を購入していたことが2003年9月12日に判明。パーティー券を購入してもらった政治家の中には塩崎恭久自民党財務金融部会長、砂田圭佑自民党財務金融部会長代理、七条明衆議院財務金融委員会理事、額賀福志郎自民党幹事長代理、石原伸晃行政改革・規制改革担当大臣、岡田克也民主党幹事長、山崎拓自民党幹事長、高村正彦元外務大臣、三塚博元大蔵大臣、坂口力厚生労働大臣といった要職者や要職経験者が含まれていた。特に塩崎恭久氏は「次代を担う改革派」「政策通」とされ、「サンデープロジェクト」(テレビ朝日系の報道番組)などでも評価されている人物であるが、関係業界からパーティー券を購入してもらうという旧態依然の行動をしていた。
※役職は2003年9月12日時点でのもの。

【表7】武富士への官僚の就職
氏名 官職 就職先、役職
福田勝一氏 警視総監 武富士顧問
松尾直良氏 大蔵省関税局長 武富士顧問
徳田博美氏 大蔵省主計局主計官、大蔵省銀行局長 武富士監査役

【表8】
武富士未公開株問題
1994年、武富士の未公開株が官界に流れる。徳田博美氏は家族名義で購入。

【表9】消費者金融大手四社の2002年度の広告宣伝費用
会社名 広告宣伝費用
アイフル 217億4700万円
アコム 154億5200万円
武富士 142億2600万円
プロミス 221億9800万円
※各社の連結決算資料を基に作成した。100万円未満は切り捨て。

注・・最初から闇金融に手を出す人はいない。クレジットカード会社や消費者金融業者からの高金利の借金により「借金漬け」「借金体質」(借金地獄に陥っている人には、「買いたいものは借金で買えばよい」と考えている人が多い。そうした間違った考えを肯定し、助長しているのが消費者金融業者のテレビ広告である)にさせられてしまってから、闇金融に手を出すということになるのである。

また、右派系の報道機関や言論人が好んで使う言葉として「競争原理」というものがある。「競争をすれば消費者の利益になる」と右派系の報道機関や言論人は言う。しかし、ここで示している通り、金融業界ではほとんど競争原理が機能していないことに対して右派系の報道機関や言論人は沈黙している。

これまでに掲げてきた金融業者と政・官・報道機関の一連のつながりを打破し、異常に高い上限金利を引き下げることこそ、構造改革である。小泉純一郎内閣総理大臣は、「異常に高い上限金利を放置する旧大蔵省のわけのわからない論理は小泉内閣には通用しない」と絶叫するべきである。



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