自動車社会の異常な現実

 今回は、自動車社会に存在する「異常な現実」についてお話しします。歩道を普通に歩いている歩行者が暴走車にはね殺されることは「異常な現実」以外の何物でもありません。そのことを知って頂きたいのです。
 1999年6月24日



自動車社会には、「異常な現実」が存在している。歩道を普通に歩いている歩行者が暴走車にはね殺されることは、「異常な現実」以外の何物でもない。まずは、その実例を紹介する。



「異常な現実」の実例 その一

1998年4月11日20時45分ごろ、茨城県大子(だいご)町袋田の県道で、近くの諏訪神社の祭礼で練り歩いていた山車(高さ4メートル、長さ4.5メートル)を取り囲む人の列に、ワゴン車が突っ込んだ。山車を引いていた氏子や見物客ら28人がなぎ倒され、近くの病院に運ばれたが、5人が死亡、9歳の子供を含む2人が重体、21人が重軽傷を負った。凶器となったワゴン車は、橋の上で、山車の後方に時速60キロで突っ込んだ。ブレーキの痕跡はなかった。また、運転者は飲酒運転をしていた。これは「異常な現実」以外の何物でもない。



「異常な現実」の実例 その二

1999年6月11日午前7時45分ごろ、愛知県豊橋市の県道で、集団登校中の小学生9人の列に前から走ってきた軽自動車が突っ込んだ。9人のうち2人が重傷、7人が軽傷を負った。

軽自動車は児童の列の前側から左右に揺れながら突っ込み、数人をはね飛ばして止まった、と考えられている(下段注)。現場にブレーキ痕はなく、居眠り運転だったようだ。そして、ひどいことに運転者は酒気帯び運転をしていた。これは「異常な現実」以外の何物でもない。

下段注・・事故に遭った一年生の男の子は、「一列になって登校中、前から突然、車がきた」と話している。

以下は、1999年6月11日付中日新聞夕刊からの抜粋である。

「調べでは、事故に遭った児童たちは、一−六年生の男子四人、女子五人。現場から西に約二キロ離れた富士見団地内で午前七時十五分頃に集合し、一列になって学校に向かっていた。現場は学校からは約三百メートル西方で、道路は片側一車線で幅約七メートル。歩道と車道を隔てる縁石はなく、付近の住民からは、市に対し車・歩道の分離を求める声が出ていたという。」

「現場にブレーキ痕はなく、居眠り運転と見られる。**容疑者(中根注→私の判断により伏せ字にした)の呼気一リットル中から〇(零。中根注)・二五ミリグラムのアルコールが検出された。**容疑者は、静岡県湖西市にある自動車工場で、同日(中根注→1999年6月11日)午前四時十分まで夜勤をし、工場近くの飲食店で同僚とチュウハイ二杯と焼酎二杯を飲み、同七時ごろ店を出て帰宅する途中だった。」

[現場見取り図]

↑北
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歩道(幅 0.8m)
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車道(幅 2.7m)

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車道(幅 2.7m)

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歩道(幅 0.8m)○○○○○○○○○→→
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※ ○=児童の列。9人なので九つの丸。東へ進行中の事故だった。この児童の列に加害者の軽自動車が突っ込んだのである。なお、事故現場付近は緩やかな右カーブになっている。事故現場の先には、事故現場付近よりも急なカーブがある。



「異常な現実」の実例 その三

1998年5月26日付西日本新聞、「あなたの隣で… 交通被害者の人権を考える−4−」より。年齢は当時のものです。

「飲酒、無免許、暴走運転。改造された車は無登録で無保険。そして、ひき逃げ…。『こんなでたらめな犯罪が、何で業務上の過失なのか』―。兵庫県明石市の橋本敏さん(四九)は、静かに笑いかけるまな娘の遺影を前に、こぶしを握り締めた。」

「一九九六年十月二十九日夜。大学三年生だった橋本さんの長女は、自転車で自宅近くの交差点を渡っていた。目撃者によると、左右の安全は確認したが、時速百キロで突っ込んできた車を避けることはできなかった。長女は頭を強打し、翌日の未明、息を引き取った。くしくも、その日は二十一回目の誕生日だった。」

「逃走した二十六歳の男性は事故の翌日に逮捕され、やがて起訴されたが、橋本さんは納得できなかった。起訴の罪名は、業務上過失致死罪(刑法)と道路交通法違反、道路運送車両法違反、自動車損害賠償保障法違反。」

「『運転免許さえ持たない男が酒を飲んで、無登録の改造車のハンドルを握り、高速道路並みにアクセルを踏み込む…。通行人をはね殺すことが十分に予想される行為なのに、どうして殺人じゃないのか』。橋本さんは率直な疑問をぶつけたが、担当の検察官は『業務上過失致死罪以外に当てはまるものはない』と言った。求刑(懲役三年)の際も『軽すぎる』と訴えたが『これ以上は無理』というのが答えだった。判決は求刑よりさらに軽い懲役二年八ヶ月だった。」

これもまた、「異常な現実」の事例である。



「異常な現実」の実例 その四

『クルマが優しくなるために』(杉田聡氏著、筑摩書房刊、1996年10月20日第1刷発行)より

「東川佳子さん(十七歳)は、九一年三月二日に死んだ。その三日前、高等学校からの帰り道、信号を無視してつっこんできた乗用車に横断歩道上で跳ねられたのである。歩行者信号は青だった。佳子さんは、乗用車のバンパーに投げ上げられてフロントガラスで頭を打った。そしてアスファルト道路上に投げ出された。体は、道路中央から、縁石まではじき飛ばされた。加害者は、いつか大きな事故を起こすとまわりでささやかれていた二一歳の青年だった。この日彼は、寝不足のままハンドルをにぎっていた。」

「現場は交通量の多い国道だった。すぐに救急車がかけつけ、佳子さんは救急病院にかつぎこまれた。はじめは手の骨折だけで別状がないと思われたが、その晩には脳にも異常があることが分かった。すぐに脳の検査がはじめられた。出血があるため治療も始まった。そんな状態で翌朝を迎えた。しかしその日の朝はまだ、家族に『お早よう』と声をかけることができた。だがその日の晩に、容態が急変した。人工呼吸器が取り付けられた。しかし佳子さんは脳死状態に陥り、二日後には息がなかった。こうして、一人の少女が、当たり前の日常生活の場面で、突然、命を奪われた。」

驚くべきことに、この加害者に、裁判で執行猶予がついたという。あまりにもひどい。裁判所が「異常な現実」を黙過しているようなものだ。



「異常な現実」の実例 その五

『クルマが優しくなるために』(杉田聡氏著、筑摩書房刊)より

「今井竜太郎君(一〇歳)は、八月の暑いさなかに京都の街中で死んだ。一〇歳の誕生日をむかえてから、わずか一月と五日の命だった。九四年八月一八日朝、青信号の横断歩道を自転車に乗って渡ろうとしたその時、横断歩道ぞいのガソリンスタンドから出てきたトラックが、唐突にこの子をおそったのである。後からついてきた弟の目の前で、竜太郎君は突然トラックの陰に消えた。この子はトラックの下に自転車ごとまきこまれた。そのためしばらく助け出すこともできず、一五分たって救急車が到着したときにはとうに息がなかった。」

これを「異常な現実」と言わずして、何と言うのか。




 ここからは、「異常な現実」への対策を提示していく。



「異常な現実」への対策その一(2005年1月10日改訂)

永久免許停止制度の導入等、免許停止制度・点数制度の根本的改革

永久免許停止制度の導入・・無免許運転者、酒酔い運転者、単独・共同危険行為実行者、ひき逃げ実行者、歩道・横断歩道に駐車した者、故意により交通事故を起こした者、危険運転による交通事故を起こした者、専ら(もっぱら)自らの不注意により交通事故を発生させた者で下段注1に記す条件を満たす者を対象にする。

下段注1・・他人を死亡させた場合。他人に治療に要する期間が三カ月以上の負傷をさせた場合。他人に後遺障害が残る場合。

停止処分者講習を受講したことによる停止処分期間の短縮措置の廃止。また、停止処分期間終了後、再び車両を運転しようとする者は必ず講習を受けなければならないものとする。なお、講習費用は国費で賄うものとする。

点数計算の優遇措置(下段注2、3)の全廃

下段注2・・運転可能期間が一年以上あり、且つ、その期間無事故無違反である場合はそれ以前の違反等の点数や免許停止歴が合算されない。

下段注3・・免許を受けていた期間(過去三年以内に限る)が通算して二年に達しており、且つ、二年以上無事故無違反の者が、軽微な違反を犯し、その違反の後、三カ月間無事故無違反で経過した場合の当該軽微な違反点数が合算されない。



「異常な現実」への対策その二

免許取得の厳格化・・運転免許試験を、過酷と思える程の厳しいものにする。教習時間を大幅に増やし(普通免許の場合、200時間以上は必須。大型免許の場合、さらに300時間以上を必須とする。右左折や駐停車、歩行者への対応といった基本動作すら習得できていない人が多いからである)、規定の教習時間に達しない限り、普通・大型免許を交付できないようにする。お年寄りの散歩に繰り返し付き合う。小学生の登下校に繰り返し付き合う。救命救急措置をもっと詳しく学ぶ。暴走行為が悪徳であることを念入りに教え込む。「車を運転することは、他人の命を預かることである」ことを教え込む。運転免許取得可能年齢を22歳以上に引き上げる(バイクも同様)。つまり、「卓越した技術」「豊富な知識」「頑強な安全意識」を有する者にのみ、運転免許証を交付するということである。



「異常な現実」への対策その三

運転免許取得可能年齢を22歳以上に引き上げる(バイクも同様)。この措置により、若者の無謀な運転による事故を防止することができる。



「異常な現実」への対策その四

原動機付自転車の運転免許試験において、実地試験を導入する。



「異常な現実」への対策その五

歩道上の自動車を没収する・・歩道、横断歩道上への駐停車は、「異常な現実」を形成している大罪である。よって、歩道・横断歩道上への駐車車両は、盗難等特段の事情がある場合を除いて、即時没収の措置を執(と)る。所有者への返却は行わない。また、歩道・横断歩道上への停車車両の運転手についても、特段の事情がある場合を除いて、即時免許停止の対象とする。



「異常な現実」への対策その六

横断歩道の構造を以下の図のように見直す。

<現在の横断歩道>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
歩道                     
━━━━━━━━━┏━━━┓━━━━━━━━━
   停止線→┃ ┃━━━┃         
車道     ┃ ┃━横━┃         
       ┃ ┃━断━┃         
━━━━━━━━━┃━━━┃━━━━━━━━━
         ┃━歩━┃ ┃       
車道       ┃━道━┃ ┃←停止線   
         ┃━━━┃ ┃       
━━━━━━━━━┗━━━┛━━━━━━━━━
歩道                     
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
<新しい横断歩道>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
歩道                          
━━━━━━━━┏━━━┓┏━━━┓┏━━━┓━━━━━
   停止線→┃┣   ┫┃━━━┃┣   ┫     
車道     ┃┣ 停 ┫┃━横━┃┣ 停 ┫     
       ┃┣ 止 ┫┃━断━┃┣ 止 ┫     
━━━━━━━━╋╋╋╋╋┃━━━┃╋╋╋╋╋━━━━━
        ┣ 禁 ┫┃━歩━┃┣ 禁 ┫┃    
車道      ┣ 止 ┫┃━道━┃┣ 止 ┫┃    
        ┣   ┫┃━━━┃┣   ┫┃←停止線
━━━━━━━━┗━━━┛┗━━━┛┗━━━┛━━━━━
歩道                          
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【解説】
【1】横断歩道の前後に停止禁止区域(消防署や警察署の前に緊急自動車用として設置されているものと同じ方式とする)を設置する。この停止禁止区域に駐車した車両は、盗難等特段の事情がある場合を除いて、即時没収の措置を執(と)る。また、この停止禁止区域への停車車両の運転手についても、特段の事情がある場合を除いて、即時免許停止の対象とする。この停止禁止区域を設置することにより、渋滞時に停車車両が横断歩道やその周辺を占拠することをやめさせることができる。

【2】横断歩道を通り過ぎた地点にも停止禁止区域を設定するのは、渋滞の最後尾の車両が横断歩道やその周辺を占拠することをやめさせるためである。

【3】停止禁止区域を設定することにより、横断歩道周辺の見通しが良くなり、事故防止につながる。

【4】 この措置の費用には、道路特定財源(ガソリン税、軽油引取税、石油ガス税、自動車取得税、自動車重量税)を充(あ)てる。道路特定財源は、まず、歩行者の安全の確保のために使われるべきである。次に優先されるべきは自動車公害への対策である。自動車のための道路の整備をこの二つより優先させてはならない。



「異常な現実」への対策その七

歩行者の安全な通行を確保するため、以下の対策を実施する。

【1】中央線のある道路(片側一車線以上、両側で二車線以上)、一方通行の道路で車線が複数ある道路(河川沿いに見られる)については、両側にガードレールで仕切られた安全な歩道を確保する。縁石ではなくガードレールにするのは、歩道への駐車を困難にするためである。なお、歩道の確保が困難な状態の場合、車道部分を削ることで歩道を確保する。自動車の円滑な通行より歩行者の安全な通行の方が重視されるのは当然のことである。

【2】中央線や車両境界線のない道路で、且つ(かつ)、幅員が7メートル以上の道路については、両側、もしくは片側にガードレールで仕切られた安全な歩道を確保する。この措置も、道路の拡幅ではなく、車道部分を削ることで行うこととする。

【3】幅員が4.5メートル以下の都市部の道路については、すべて一方通行の道路とする。幅が狭い道路で、両方向に通行できる場合、歩行者の安全な通行が確保できないことが多いからだ。また、抜け道に使われる等、危険な道路については、片側にガードレールで仕切られた安全な歩道を確保する。下の写真は、東京・西早稲田の歩道である。
東京・西早稲田の歩道

【4】上記の【1】【2】以外の道路(主に生活道路)については、歩行者を絶対的に優先する。次に優先されるのは、自転車や荷車であり、その次が自動車・オートバイだ。優先順位が下位の者が上位の者に対して、道を譲る義務を負う。これは本来、当然のことなのであるが、現実には蔑ろ(ないがしろ)にされているケースが多々ある。蔑ろにされないために、歩行者や自転車・荷車に対して警笛を発したり、待避を要求する言動をした運転者に対して即時免許停止ができるようにするべきである(緊急自動車の緊急走行は例外とする)。

【5】これらの措置の費用には、道路特定財源(ガソリン税、軽油引取税、石油ガス税、自動車取得税、自動車重量税)を充てる。道路特定財源は、まず、歩行者の安全の確保のために使われるべきである。次に優先されるべきは自動車公害への対策である。自動車のための道路の整備をこの二つより優先させてはならない。

「異常な現実」に対処するため、自動車中心主義の破棄と厳正な措置を行うことが、今、急務なのである。



意見・提言集 自動車社会を根本的に見直す会