名古屋市交通局の市営交通再建策への意見

今回は、名古屋市交通局(http://www.kotsu.city.nagoya.jp/)が2003年2月に発表した「市営交通中期経営健全化計画案」に対する私の意見を紹介します。どうぞ、御覧下さい。(2003年3月9日)



※ここからは、枠内の文章が名古屋市交通局が2003年2月に配布した「市営交通事業中期経営健全化計画(案)のあらまし」の内容をまとめた小冊子「市バス・地下鉄のあすに向けて」からの引用、枠外の文章が私の意見である。

名古屋市においては、公共交通機関の利用割合は、東京都区部、大阪市に比べ極めて低い状況にあります。道路混雑の解消や環境保全のためにも、私的交通から公共交通への転換が必要です。

平成11年度の三大都市における市内交通機関別利用の割合
名古屋市 公共交通29.9%、私的交通70.1%
東京都区部 公共交通82.3%、私的交通17.7%
大阪市 公共交通65.5%、私的交通34.5%
公共交通にはタクシーを含む。この表は「市バス・地下鉄のあすに向けて」の内容に基づき中根が作成。

名古屋市において公共交通機関の利用割合が、東京都区部、大阪市に比べ極めて低い状況にあることが不思議なことであるかのように「市バス・地下鉄のあすに向けて」には記されているが、実際には不思議でも何でもなく、名古屋市の長年の政策の結果である。名古屋市は一貫して自家用自動車絶対主義の政策を遂行してきた。自家用自動車の利用をより便利にするために道路の拡幅や建設が強く進められてきた。直近二十年は特に顕著で、それが交通局事業(市バス・地下鉄)の衰退と債務の増加につながっている。つまり、名古屋市は自ら交通局事業の衰退と債務の増加を推進し、そして、自らその債務に苦しんでいるということだ。これは自爆行為と言う他ない。自爆行為をやめなければ明日はない。自家用自動車絶対主義から公共交通絶対主義への転換が必要である。手始めに自爆行為の最たるものである道路の拡幅・建設を完成間近のものを除いて全面中止すべきだ。

【市バス事業について】
市バス事業については、お客様の減少にともない料金収入がが減少していることなどから、事業運営の効率化を進めていますが、厳しい収支状況となっています。
(市バスの)営業係数(100円の収入を得るのに費用がどれだけかかるのかを示す数値。中根注)は150。六大都市(東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸。中根注)の最下位です。

市バス事業が苦境に立たされているのは名古屋市が自家用自動車絶対主義の政策をいまだに遂行しているからである。経営状態が悪いのは政策の結果であり、そのことを強く認識しなければならない。

【市バス事業について】
(市バス事業の再建のために)人件費の削減(職員数の削減、人件費単価の引き下げ、新給与制度導入に向けての検討)、経費の削減(中・小型バスの導入)、収入増加策の実施(プリペイドカードによる他社との共通利用システムの導入、バス路線の共同運行、資産の有効活用・附帯事業・広告の増収)を行う。なお、この項目は「市バス・地下鉄のあすに向けて」の内容に基づき中根が記した。
利便性の確保を図りつつ、効率的な輸送サービスが提供できるよう、地下鉄等の開業にあわせ、お客様のご利用の実態をふまえたバス路線の再編成や運行回数等の見直し(これは運行回数の削減を意味している。中根注)を行います。

このような後ろ向き、その場しのぎの施策では事態を打開できない。当面は持ちこたえることができても、結局は退化・退廃への道を引き返すことはできない。前向きで建設的な施策が必要である。そのための施策をいくつか列挙する。

【1】 東新町〜栄〜笹島町間の広小路通の左側車線を終日バスレーンとする。但(ただ)し、道路の拡幅は行わない。一般車両の混雑が予想されるが、バスの円滑な運行のためにはやむを得ない。バスの円滑な運行を何より優先する政策が必要だ。
【2】 【1】と同様の手法で、栄〜矢場町、金山〜神宮東門〜熱田伝馬町、名古屋駅〜菊井町〜押切町、高辻〜滝子〜桜山の四区間でも終日バスレーンを設置する。
【3】 バスターミナル周辺の道路に終日バスレーンを設置し、バスの円滑な運行を確保する。
【4】 バス停の位置を調べてみると、地下鉄出入口から離れている場合が多い。これは一般車両の円滑な走行のためと思われるが、公共交通機関たる市バスが一般車両に遠慮するなどというのは本末転倒である。安全に支障が生じない範囲内でバス停の位置を見直すべきだ。
【5】 違法駐車(交差点内や横断歩道上の違法駐車や警察署の隣の違法駐車さえ放置されているのが現状である)の徹底的排除で、自家用自動車の利便性・経済性の低下を図る。
【6】 運行回数の削減をしてはならない。過去にこのようなサービス低下で復活を果たした例は皆無に等しい。サービスの向上とそのための強力な政策の後押しこそ、復活には必要なものだ。
【7】 基幹バス・新出来町線のバス用中央道路区間(下段注)のバス専用時間は午前7時から9時までと午後5時から7時までとなっているが、それ以外の時間はバス専用ではないため(バス優先となっている)、一般車両が多く流入し、円滑なバスの運行を妨げている。これでは何のために大金を使ってバス用中央道路区間を建設したのかわからない。当然、終日バス専用とすべきだ。バス優先では、誰もバスを優先しない。
下段注・・新出来町線は桜通大津〜引山間において、バス用中央道路区間を走行している。この中央道路区間は、午前7時〜午前9時、午後5時〜午後7時がバス専用レーン、それ以外の運行時間帯バスは優先レーンとなっている。
参考ページ
http://www.kotsu.city.nagoya.jp/jigyou/busjigyo00/bus-teijiunko.htm (名古屋市交通局のページ)
http://www.kotsu.city.nagoya.jp/jigyou/kotsujigyo-15nendo/05.pdf (名古屋市交通局のページ。PDFファイル)

【地下鉄事業について】
地下鉄は営業収支は黒字になっていますが、支出の中で建設に要した借入金の利子負担や、減価償却費の割合がきわめて高い状況にあり、(全体の)収支としては赤字になっています。
(再建のために)人件費の削減(職員数の削減、人件費単価の引き下げ、新給与制度導入に向けての検討)、収入増加策の実施(プリペイドカードによる他社との共通利用システムの導入、資産の有効活用・附帯事業・広告の増収)を行う。なお、この項目は「市バス・地下鉄のあすに向けて」の内容に基づき中根が記した。
利便性の確保を図りつつ、お客様のご利用の実態をふまえた運行回数等の見直し(三年間で既設線の運行キロ数を一割削減。中根注)を行います。

このような後ろ向き、その場しのぎの施策では事態を打開できない。当面は持ちこたえることができても、結局は退化・退廃への道を引き返すことはできない。前向きで建設的な施策が必要である。そのための施策をいくつか列挙する。

【1】 違法駐車(交差点内や横断歩道上の違法駐車や警察署の隣の違法駐車さえ放置されているのが現状である)の徹底的排除で、自家用自動車の利便性・経済性の低下を図る。
【2】 運行回数の削減をしてはならない。特に鶴舞線(上小田井〜赤池)、桜通線(中村区役所〜野並)の土・休日の運転間隔を10分にするというのはひどすぎる。過去にこのようなサービス低下で復活を果たした例は皆無に等しい。サービスの向上とそのための強力な政策の後押しこそ、復活には必要なものだ。
【3】 桜通線の延伸部分である野並〜徳重間の建設を現状のままで行えば、同区間は自家用自動車の支配力が絶対的であるため、大赤字は必至だ。自家用自動車絶対主義の政策を改め、自家用自動車の利用を不便にしなければ意味はない。また、建設方法についてもフル規格から単線折り返し方式への変更といった建設費削減策が必須である。
【4】 将来的には東山線(高畑〜藤ヶ丘)の運行回数までも削減しようというのはおかしい。東山線は終日、乗客が多く、削減の必要はまったくない。4号線の延伸部分(砂田橋〜本山〜新瑞橋)が開業しても乗客が大きく減ることは考えられない(本山での流入が大きく増加することもあり得る)からだ。むしろ増発が必要なくらいだ(特に平日の19時以降)。
【5】 全市域で自家用自動車より公共交通機関の利用の方が便利になるようにしなければならない。それこそが復活への近道である。

※新瑞橋=あらたまばし

経営の効率化をさらに進めることにより収支の改善に努める一方、市一般会計からの適正な財政支援を受けます。

市一般会計からの財政支援はバスレーンの新設やバス停の移設、違法駐車の徹底的排除といった公共交通復活のための建設的な投資や安心して歩くことができる街造り(下段注)に使うべきである。単なる赤字の穴埋めでは未来はない。

下段注・・名古屋では、東京・大阪と比べると自動車通行禁止道路が極端に少なく、休日の歩行者天国という政策もも存在しない。東京・大阪を見習い、自動車通行禁止道路を大幅に拡大すべきだ。また、歩行者の通行が危険な道路においては、車道部分を削減して歩行者の安全な通行を確保するようにすべきだ。

関係局と連携し、公共交通優先の原則に立った、総合的な交通体系の形成に向けて、施策の確立に努めます。

今までは関係局との連携はまったく行われていなかった。だからこそ、交通局事業の赤字が拡大しているのに、公共交通の衰退を招く自家用自動車の利用をより便利にするために道路の拡幅や建設が強く進められてきた。また、違法駐車の取り締まりもまったくといっていいほど行われておらず、それが自家用自動車の利便性を一層高めている。今まで関係局との連携がまったく行われていなかったのだから、今のままの体制では今後も連携は見込めない。強力な連携のためには市長を頂点とし関係各局長が参加する公共交通優先のための組織を作るべきである。



意見・提言集 自動車社会を根本的に見直す会