駐車違反問題に対する考察

 今回は、駐車違反問題について、『交通取り締まりのタブー!』(寺澤有氏・小谷洋之氏共著、2005年5月1日宝島社刊)を元に考察します。どうぞ、御覧下さい。
 2006年5月29日



※ここからは、特記がない枠内の文章は『交通取り締まりのタブー!』の文章、枠外の文章が私の批判である。なお、同書は寺澤有氏と小谷洋之氏の共著であるが、ここで引用している文章の執筆者はすべて、小谷洋之氏である。また、同書で取り上げられている警察利権の問題については、特に反論すべきところは無い。

都市部特有の現象として駐車場不足がある。
充分な数の駐車場を整備し、慢性的な駐車場不足を解決することこそが、最も効果的な駐車違反対策といえるだろう。
大量に駐車違反取り締まりやレッカー移動をしているにもかかわらず、違法駐車がいっこうに減少しないのは、ドライバーの遵法意識やマナーに問題があるのではなく、駐車需要と駐車場供給量が不均衡だからだ。警察は、違法駐車問題について、果たすべき行政責任を放棄し、すべての責任をドライバーに押しつけている。

もし、小谷氏の主張が事実であれば、大都市の駐車場はどこもかしこも「満車」、もしくはそれに近い状態でなければならない。だが、実際にはそうではない。休日の東京の繁華街ですら、駐車場には空きがある。大阪や名古屋も同様である。

リアルタイムで東京都内主要箇所の駐車場空き情報を提供している「s-park」というサイトがある。これを使い、2006年5月5日(祝日)の都内主要箇所(池袋、新宿、渋谷、銀座、東京駅、秋葉原、台場)の駐車状況を調査してみた。結果は以下に掲げる表の通りであった。

場所 調査時刻 満車の駐車場 空車有の駐車場
池袋 15時21分 池袋東口公共地下、収容台数171台 タイムズプラザ、リパークメトロポリタン、サンシャインなど8駐車場、総収容台数2,998台
新宿 15時1分 京王地下駐車場、タカシマヤタイムズスクエアビル駐車場、伊勢丹パーキング、西新宿第四駐車場、総収容台数1,763台 新宿駅西口駐車場、新宿駅東口駐車場、新宿アイランドパーキングなど24駐車場、総収容台数4,253台
渋谷 15時1分 西武パーキング、渋谷区役所前、タイムズ松濤第2、総収容台数880台 セルリアンタワー、渋谷駐車場、東急百貨店本店地下など16駐車場、総収容台数1,698台
銀座 15時51分 東京国際フォーラム地下駐車場、収容台数422台 西銀座駐車場、日比谷シティパーキング、新有楽町ビルガレージなど15駐車場、総収容台数2,798台
東京駅 15時41分 丸の内オアゾ駐車場、日本工業倶楽部会館・三菱UFJ信託銀行本店ビル駐車場、タイムズ京葉第5、丸ビル駐車場、三菱ビル・文部科学省ビルガレージ、総収容台数1,290台 日本パーキングセンター、八重洲東駐車場、古河ビル・三菱商事ビルガレージなど10駐車場、総収容台数2,359台
秋葉原 15時1分 秋葉原ダイビル駐車場、トラストパーク大東ビル、AKSビルパーキング、総収容台数202台 UDXパーキング、マルチメディアAKIBA、新お茶の水ビルディングなど17駐車場、総収容台数1,915台
台場 15時1分 パレットタウンウエストパーキング、青海臨時駐車場、パレットタウンイーストパーキング、青海東臨時駐車場、総収容台数3,637台 タイムズサンクスお台場店、タイムズお台場、タイムズ青梅フロンティア、タイムズテレコムセンター、総収容台数571台
注・・「s-park」に満空情報を提供していない駐車場も多数あり、それらの駐車場は調査の対象外である。また、収容台数19台以下の駐車場も、満空情報の有無に関わらず、除外している。

また、東京都都市整備局は、東京都下の昼間時間帯駐車場利用率を、「平日で約4割、休日で約6割」と公表している。

「駐車施設対策の基本方針」改定案(PDFファイル、2.2MB)
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/topics/h18/topi001-2.pdf

「駐車場が不足しているから仕方なく、路上に違法駐車している」という小谷氏の主張は、現実を無視した空論だ。実際には、「駐車場が有料だから」「道路に駐車した方が便利だから」という理由で違法駐車が行われているのである。それを承知の上で、「違法駐車を取り締まるべきではない」というのであれば、それは一つの筋が通った意見である。

全国で行なわれている駐車違反の取り締まり総件数を知っているだろうか。年間172万0866件(2002年)にも達している。これは1日あたり4700件、1時間あたり200件のペースでキップを切り続けなければ達成できない数字だ。

なかでも年間10万件以上の駐車違反取り締まりに励んだ都府県警察がなんと4つもある。

●警視庁(東京都)47万6251件
●大阪府警27万0450件
●神奈川県警17万3648件
●愛知県警11万9972件(以上、2002年の数字)

このトップ4だけで駐車違反取り締まり件数全体の6割を占めていることになる。年間10万件としても、雨の日も風の日も休まずに、毎日毎日274件ものハイアベレージで取り締まらなければ、この数字に到達しない。
取り締まりばかりに労力を割いているのが、現在の警察の姿なのである。
ほとんど事前の指導や警告などないまま、沿道に停まっているすべてのクルマのタイヤにチョークでマーキングし、一定時間、クルマが動いていないと確認すると、次々と駐車違反で取り締まっていく。

警察が駐車違反の車を根こそぎ取り締まっているかのような文章だ。しかし、現実は違う。警察署に近接する道路ですら、駐車違反は野放しだ。検挙されている車はごく一部に過ぎない。

例えば、2002年の東京都内の瞬間違法駐車台数(平日昼間の一定時間帯に一定基準以上の道路を対象として、四輪車の駐車台数を計測したもの)は115,661台だった。当然のことながら、一日全体の違法駐車台数は、もっと多くなる。それに対して、警視庁の2002年の一日あたりの駐車違反検挙件数は1,305件でしかない。

また、愛知県警の2002年の駐車違反検挙件数は11万9972件で、これを一日当たりにすると329件になる。夜の9時ぐらいに名古屋の栄地区を歩けば、300台の違反車両を数えることは難しいことではない。いかに違反車両が多いか、そして、取り締まりがなされていないか、ということである。

東京・新宿駅西口の様子 東京・新宿駅西口の様子
東京・新宿駅西口の様子。2006年4月、中根撮影。

名古屋・錦三丁目の様子 名古屋・錦三丁目の様子
名古屋・錦三丁目の様子。2006年5月、中根撮影。

駐車場供給不足の責任をドライバーに押しつけるな!
安易な取り締まりは「百害あって一利なし」なのである。

小谷氏の結論はこの二点に尽きると思う。つまり、駐車違反の取り締まりをやめろということだ。実は、小谷氏とは立場や視点がまったく異なるが、私も、駐車違反の取り締まりをやめるべきだと考えている。駐車違反の取り締まりをやめてしまえば、都市中心部の道路はほとんどすべて駐車場と化してしまい、道路交通は麻痺してしまうだろう(下段注)。それは現在の自動車社会を見直すきっかけとなり得ることであり、自動車社会懐疑派としては歓迎すべき事態だ。

下段注・・但し、緊急自動車や公共交通の経路は強引な手段(柵で囲いパトカーを常駐させる等)で確保しておく必要がある。



意見・提言集 自動車社会を根本的に見直す会