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子どもの医療環境を考える
             
子どもの医療環境を考える1―――医療環境を改善したい―――
子どもが病気になったり入院すると言うことは大変なことです。病気であると言うこと以外にも、慣れない入院生活での精神的負担、家族に不自由な生活を強いられたり、経済的にも負担があります。
ところが現実の医療環境の中では、「病気」以外のことへのケアはほとんど行われない病院が多いのが現状なのです。それどころか思わぬところで患者や家族を傷つける場面があります。
付き添い入院するかしないかは病院で決められているところがほとんどです。家庭の事情でつきそいが難しい場合にも付添いが必要だったり、子どもと一緒にいてやりたいと思う親であっても付添いはまったく不可だったりすることがあるのです。
子どもが点滴注射などの処置のときに、母親は別室に隔離されることが常識となっています。子どもにとって辛い処置であるときこそ、親の顔を見せて安心させたいと思いますが、そうはいきません。親が処置の邪魔をする危険があったり、患児の嫌がる処置を親の前ではやりにくいから、それを見る親の気持ちも辛いだろうからということです。
昨今、医療の現場でQOL(Quality of Life)と言うことが言われはじめています。何もQOLは死にかけの病人のためにある言葉ではありません。まだ生まれて間もない子どもにだって尊重すべき人権の一つだと思うのです。
医療がすべてに優先されるとは限らないはずです。注射1本でも、子どもを泣き叫ばせてまで打っていいものでしょうか。患児や家族が不自由な生活を強いられていいのでしょうか。病気である子どもに親と引き離されると言う異常な生活をおくらせていいものでしょうか。
医療行為と子どもや家族の気持ち。それを天秤にかけてみると、医療の側と患者の側では傾く側が違うように感じることがありました。
医療と対決するのではないですが、理解して欲しいことがあるのです。
私が初めて子どもを入院させたのは、三男の口唇形成手術のためでした。大学の歯学部附属病院の口腔外科への入院だったので、子どものための設備のあまりない病院でした。私は二人の子どもを実家に預け、また自宅から遠く離れた病院だったため、ほとんど差し入れや見舞いのないさびしい入院生活を送りました。
二回目は次男がマイコプラズマ肺炎になったときでした。この時も私が付添いましたが、自分の病気に対する無知を思い知りました。看護婦に「肺炎ってなんですか」というような基本的な質問をしたのです。そうしたら「肺炎は肺炎よ」と言う返答でした。誰もが常識として知っているような内容だったのかもしれないけど、私のような医療知識のない者はどうやって知識を得たらいいのだろうと思いました。
その時の病院でプレールームにあった絵本、「チャーリーブラウン、なぜなんだい」にであったのです。そしてこの本はおなじみのスヌーピーの絵本です。ある看護婦が、小児ガンの子ども達を見ていて、作者のM.シュルツさんに、「子ども達のための絵本を作ってくれないか」と頼んでできたそうです。この本を見た日本人の看護婦が、聖路加病院の小児ガンの医師、細谷亮太さんにこの本を紹介したことがきっかけで、細谷さんが日本語訳し日本でも発売されました。
この本で、より良い医療のための医療ではないアプローチの存在を知りました。病気の友達とどう付き合うかとか、症状や心情を理解してもらい、患児の環境を良くすることも大切でしょう。
メスは持てないけどペンなら持てる私に、子どものより良い医療環境のための何かができないかと考えたのです。
※巣立ちの会通信 19号 より
子どもの医療環境を考える2―――アンケートの実施して―――
- ■アンケート
- 私の入院経験だけでなく、他の方の入院経験を伺い、いろいろな入院経験を調べることにしました。そのためにアンケートを行うことにしました。主にパソコン通信NIFTYSERVEの育児フォーラムに、ご協力をいただきました。その他、サークルなどを通じたり個人的にインターネットメールやファックスなどで回答を得ました。患児の家族が42件と医療関係者が 10件の回答を得ました。(10年5月時点)
- アンケートでは、入院した子どもの年齢や病名、入院の期間、病院の種類などから、入院の基本的な状況を調べました。付き添い入院の状況や残してきた家族、お金のこと、手術や処置のときの状況を伺いました。そして自由に入院についての感想や意見をいただきました。
- ■それぞれの入院
- 私自身、我が家の入院経験は、小児科でなかったり隔離病室だったりしたため、他の人の入院経験とは違うのではないかとの思いがありました。
- ところが、アンケートに回答してくれた方の多くが「私の経験は特殊なので参考にならないかも」と書いたのです。アンケートで、入院をパターン化して理解しようとしていましたが、入院とはそれぞれがユニークであるのではないかと感じました。
- 子どもの入院は、親にとってもたいへん苦痛なできごとです。そのお気持ちを、延々と書いてくださる方が何人かいらっしゃいました。その多くが、看護婦さんである母親だったことは特筆すべき事だと思います。医療とは関係のない私は、医療関係者だからこそ知識も経験もあり不安のないものだと思っていたのに、逆だったように思います。分かるからこそ、医療の不十分さを感じられていたようでした。
- 医療技術を理解することでだけでは、より良い医療を受けられる訳ではないことを、再認識することでした。
- ■ 付き添い入院
- 病院にとって、ほぼ2種類に別れる入院の形態があります。
- ひとつは完全看護。面会時間を除いて患児に会うことはできません。これの長所は、親の負担が軽いこと。感染などの危険が少ないことが考えられます。短所は、面会時間の終りには、毎回辛い別れをしなくてはなりません。子ども達は病気で弱っているにもかかわらず、一番の味方である親に見離されたような気分になります。
- もう一つは、親の付き添いが認められる場合。絶対に付添わないと行けない場合とそうではない場合もあります。これの長所は、子どもがずっと親と一緒にいられることは精神的にも安定します。親としても治療を見届けられる分安心することができます。短所は、親の負担が大きいこと。親の生活は、病院では食事や入浴のサービスが受けられないこともあります。寝起きするベッドも簡易ベッドなどになる場合もあります。
- 私は付き添い入院を経験しましたが、他にも子どもがいて、実家も遠く、思わぬ出費も増え、大変な負担になりました。食事はインスタント食品で風呂は患者の合間を縫って順番を取り入りました。簡易ベッドや患児のベッドに添い寝しましたが、とても疲れはてました。
- 逆に、付き添いが認められず毎日面会時間の終りに壮絶な別れのドラマが展開された方もいました。中には子どもが精神的に参ってしまって、症状が改善しないまま退院された方もいました。
- このような場合、院内保育という制度がある病院もあります。親ができない部分を保母がフォローしてくれます。しかしこういう病院はたいへん数が少なく、多くの病院では看護婦が保母の役割もになっていますが、十分でない場合もあるようです。
※巣立ちの会通信 20号 より
子どもの医療環境を考える3―――医療との付き合い方を考える―――
- ■ 病 名
- 子どもの罹る病気は様々です。アンケートによると、やや呼吸系の疾患が多いようですが、外傷や小児ガンもありました。
- その中で、「不明熱」「ばい菌の数が多いから」「風邪」と言う回答が多く見られました。
- いちいち患者やその家族がが、正式な医療用語で病名や症状を理解する必要はないと思います。しかし、入院までしているのに、「風邪」という病気への認識で、いいのでしょうか。例えば、親が看護しているときにAという症状が現れたとき、これは入院の原因となった病気とは関係ないかあるかを判断できなくて、医師に症状を的確に報告できるのでしょうか。また今後別な病院へかかるときに、カルテが送られることは少ないのですが、少なくと患者が過去の病歴を話すことくらいはできてもよいのではないでしょうか。
- 患者としても、ある程度正確な病名と経過を理解することは、看護のためにも、また患者の立場で「精神衛生的」にも必要だと感じています。
- ■ 親に見せない医療
- 子どもが辛い治療を行うとき、多くの場合親は子どもから引き離されます。まさに立ち会い出産の傾向の逆で、子どもが痛く怖い思いをするときにこそ、親はそばにいてやりたいところですが、実際は逆です。子どもの腕に点滴の針を刺すようなとき、口を強引に開けて押さえつけて治療や検査をするときなど、看護のためにいる親は「あっちで待っていてね」と言われるのです。しかも「あっちに行く」理由を教えられることもないのです。
- 今回、医療者に対してアンケートをとり、私自身もこのなぞが解けました。なぜ親を離すかと言えば、親がいると余計に泣くとか、親が手を出すと困るとかいうことでした。しかし、辛い治療であることの説明もせず、親に手を出すなという指示もせず、とにかく親を引き離すと言う考え方は、どうでしょうか。医療が、「人間」ではなく「病気」をお客様として扱う姿勢が現れているように思えます。
- 他のことでも、病院の中では疑問を持ったら病院側に対して、質問しないとわからないままです。お医者様のされることだから、口出ししてはいけないという考えの方も多いですが、それは医療者のためになっても、親にももちろん患者である子どものためにもならないことです。
- ■ 入院とお金
- 入院には、お金がかかります。医療費としては、子どもの場合各種の補助がありますが、補助対象にならないお金が多くかかります。
- 例えば、子どもを入院時にラッシュの電車に乗せる訳にいかないからタクシーに乗ることもあります。荷物が多く宅急便で送らねばならないこともあります。付き添い者の食事、風呂屋代、電話代。患児以外の子どもがいた場合、託児などにもお金が要ることもあります。
- 補助のある医療費に関しても、申請手続きは必ずしも簡単なものではありません。市区町村の乳幼児医療のように、支払時に立て替える必要の無いものもありますが、別の市区町村の病院だと、立替えてから役所に書類を持って行かないといけない場合があります。ある区の場合、この手続きは出張所ではできず、本庁舎まで行かなくてはいけません。希な申請用紙だと、職員もよく分からないので保健所と役所でたらい回しにされるケースもあります。
- ■ 私の経験から
- これまで私は、病気のことなど知らないですめば知らないに越したことはない程度に思っていました。治療や看護に関しても、病院に任せていけばいいと思っていました。
- 今は、医療者を信頼して任せる態度は必要だと思いますが、放任であってはいけなかったと、反省しています。
- 今はとても元気な子どもたちと家族ですが、医療に対しての素人の立場で、学び考えていこうと思っています。
※巣立ちの会通信 21号 より
・当サイトが朝日新聞の記事で紹介されました。→ココ
             
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