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☆オリジナルはジョン・ウォーターズの88年の映画とのこと。残念ながら未見なのだが、舞台がボルチモアなことやペチコートのお話、トレーシーのパパのイタズラ玩具の店などにウォーターズの片鱗がチラチラして楽しい。これは是非オリジナル見てみなきゃと思わされた。ウォーターズはあの「ピンク・フラミンゴ」の味を知らないんですが、「シリアルママ」とか好きなんですよね、笑えるし。ミュージカル化がまた楽しくて、 次から次へと思わずリズムとりたくなる(映画館なのに)ナンバーがパレード状態でつながれ、全く飽きさせない。トレーシーを演じるニッキー・ブロンスキーもチャーミングだし、トラボルタの女装によるママもすごくかわいらしい。そしてかわいさで全くひけをとらないのがパパ役のウォーケン。彼のダンスを見たくてしょうがなかったので、トラボルタとの歌とダンスのシーンは一番好きです。ミシェル・ファイファーは憎らしい役に徹してましたが、やっぱり とても歌がうまいし脚線美素晴らしい。「ハイスクール・ミュージカル」未見なので初めて見た(聴いた)ザック・エフロン、甘い声で魅惑的に歌う!クイーン・ラティファの歌ったナンバーも好きだけど、実は一番驚かされたのがジェームズ・マースデンだったりする。歌うまいじゃん、サイクロップスの数十倍輝いてます。あとトレーシーの親友でアメをなめてるアマンダ・バインズがかわいかったな・・。人種差別問題を扱いながら重くなく、見所聴き所満載、とっても楽しい映画でした。
ペイ・フォワード ☆この世はクソだと思ってる少年が、社会科の先生から世界を変えるために何が可能か考えて という課題を出され、三人に善意を施し 施された三人はまた別の三人に善意を先送りするという方法を考えつく。勇気を必要とするようなものじゃなきゃ善行といえないのか、とか そんな構えなくたっていいじゃないかと思う部分もあるのだが、主要三人が 自分のおかれている状態をじっくりと見つめる過程は見応えがある。ケヴィン・スペイシー、ハーレイ・ジョエル・オスメント、そしてジム・カビィーゼルは知的な抑えた演技ながら内面的なものをうまく表現していい。だからヘレン・ハント、今回はちょっとハリキリ過ぎという気が・・。
00年アメリカ
ケヴィン・スペイシー、ヘレン・ハント、ハーレイ・ジョエル・オスメント主演ミミ・レダー監督
蒸発した父、アルコール依存症の母を持つ少年が 善意の先送りムーブメントを思いつく
☆主要三人の描き込みは大変深いのだが、あとの人はただ出てるだけのエキストラみたいな薄っぺらなキャラに感じる(唯一カヴィーゼルだけは本人の個性と演技の魅力ゆえ例外)。父親役のジョン・ボン・ジョビなんて顔見せみたいな役じゃない?ありゃ出さない方が良かったよ(ボン・ジョビが悪いんじゃないと思う)。
☆やけどの跡が痛々しいケヴィンのうまさは当然として、ハーレイ君。特徴のある声で矢継ぎ早にたたき出すセリフの呼吸が天才的。やっぱ天才少年なのね。それで華奢なのにケツアゴ。だからどうしたって感じだけど(笑)
ベートーベン 不滅の恋 ☆ベートーベンの遺書に 全財産を不滅の恋人に譲るとある。その女性が一体誰なのか。彼の友人であり秘書だった男が 曲を捧げられた女性を訪ね、話をきくことにより、ベートーベンの生涯と恋を浮き彫りにしていく内容。女性の目から見たベートーベンということで、変人でありながらもその人となりはかなりソフトに描かれているように思える。年代を追って名曲が次々 挿入されていくのも素晴らしい。しかし「クロイツェル・ソナタ」や「第九」に託されていたベートーベンの心情は、本当にこの作品の解釈のとおりなのか、そして甥のカールの出生の秘密についても 仮説とされていることなので、ちょっとマユツバである。それにベートーベンといえばまず「ハイリゲンシュタットの遺書」があるのだが、これには殆どというか全くふれてないし。 伝記物として見るわけにはいかない部分があるが、仮説を大胆にとりこんで ロマン的な味わいがある。第九の「歓喜の歌」のあふれんばかりの歓びの調べと 幼年時代、満天の星が見える湖に身を横たえて星と同化した彼と 本当に星になりつつあった彼を一緒に描いたシーンが感動的。万雷の拍手が聞こえなくて肩をたたかれてそれを知った実話とあいまって 見事なクライマックス。
94年アメリカ
ゲイリー・オールドマン主演
ベートーベンの遺書にある不滅の恋人が誰なのかを元秘書が捜し求める
☆よく知っている(というか既にイメージが出来上がっている)人物を演じるのは、違和感を持たれたりして難しいものだと思うが、ゲイリーはうまく演じている。口を真一文字にむすんだ表情なんて、肖像画とかなり似ていて感心してしまった。癇癪の起こし方もお見事。
ペーパームーン ☆昔から大好きな作品。モノクロの画面にモノラルのジャズが流れる。テーマの「ペーパームーン」の歌も好き。とにかく雰囲気が大好き。
73年アメリカ
ライアン・オニール主演テイタム・オニール助演ピーター・ボグダノヴィッチ監督
母をなくし身寄りがなくなった女の子と 母の友人の詐欺師の珍道中
☆最年少アカデミー賞女優となったテイタム・オニールのぶんむくれた顔がかわいい。煙草をふかすシーンの堂の入り方には驚くが、深夜 鏡の前でネックレスをあてて腰をふったり コロンをつけるシーンは、ハリウッドの子役を光らせる演出の原点といった趣。親子ならではの息の合ったのびやかな演技が微笑ましい。
☆詐欺師のモーゼが「男をだます女になるな」とアディに諭すあたり、笑ってしまうけど、人をだますにも種類があるのね・・と わかるような、なんとなく。
ペイルライダー PALE RIDER ☆正直に言うと、子供の頃 埃っぽさが妙に気になって 西部劇があまり好きじゃなかった。それが年を重ねたら、西部劇に脈々と流れる男の美学・女の美学・人間のあり方・・といったものを かっこいいと感じるようになってきた。主役級には大抵饒舌な者はなく、ぽつりぽつりと吐くセリフがやたらキマッている。撃つ 時はえらく敏捷なくせに 他の動作は妙にゆったりしてる。さて、この作品は アカデミー賞をとったイーストウッドの「許されざる者」の基盤となったといわれる 渋い作品である。善悪がはっきりしており、素朴な女性達が魅力的で。じっくりと味わう大人の作品という感じがする。
85年アメリカ
クリント・イーストウッド主演監督
流れ者の牧師が 寄った谷の人々の心を一つにし、町の権力者から彼らを助けて去っていく
☆イーストウッド、かなりふけてはいるけれど やることなすことかっこよすぎ。牧師という設定が はぁぁ・・ですが、勿論ただの牧師なわけがなく、ピストルがなんでこんなに似合うの。この人がやったら どんなかっこよくても許せる気がします(笑)。
ベスト・フレンズ・ウエディング MY BEST FRIEND'S WEDDING ☆親友にやきもち焼いて 結婚を邪魔しようとするすごくイヤな女の筈なんだけど、キュートで爽やかに演じちゃうジュリアはさすが。マニッシュなスーツのフェミニンな着こなしも素敵だけど、ドレス着るとどうしてこの人はこんなにゴージャスなんでしょう。
97年アメリカ
ジュリア・ロバーツ主演ダーモット・マルロニー、キャメロン・ディアス出演
元恋人で今は親友の男性の結婚話を聞かされて、友情より恋心に気づき 彼を取り戻したいけど・・
☆ジュリアとキャメロン二人の美女に愛されるマルロニーはおいしいね。とにかく裏表のない性格がキュートなイイ役やってるキャメロンもおいしい。でも一番おいしいと思うのは、ジュリアのゲイの親友役のルパート・エヴェレット。知的でユーモアがあり 話術が巧みですごく魅力的。男女の関係というのは 時に煩わしいこともあるので 彼がゲイであるということで とても理想的な親友関係にみえる。ラストの「ジェームズ・ボンドです」もニクイが、彼のでっちあげ話に食事の席が大いに盛り上がるシーンが好き。
ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ HEDWIG AND THE ANGRY INCH ☆アメリカでバンド活動を続けていたら、自分が育てたも同然のミュージシャン、トミーが自分の曲を勝手に歌ってスターになってしまう。傷ついたヘドウィグの半生がグラムロックと映像で語られる。昔世界には三つの性があって、双頭四足だった人間は神の怒りにふれて真っ二つにされたという魅力的な歌詞の「愛の起源」、アニメも面白く、それがヘドウィグの失われた半身=片われ探しと繋がる。搾取され続けた彼の性とアイデンティティー、"彼女"となった証として体に残ってしまったアングリーインチ、 ブロンドのウィッグと涙の跡をも隠すようなバッチリメイク、体にフィットしたセクシャルな衣装、見れば見るほどヘドウィグがとてもかわいく見えてくる。でもそんな彼=彼女が一番美しく見えたのは、ラストのショーでウィッグも衣装も胸の詰め物もとってしまった姿。トミーの言葉、「イブはアダムから生まれたのだから、アダムの中に帰ればいい」「アダムに善悪のわかる実を食べさせたのは、イブがアダムを愛していたから」、トミーがまさにイブであったことをわからしめるシーンのなんと美しく感動的なこと。 体の内側がぐっと温かくなってくるような・・求めていた片われが自分の中にいる、なんてセクシャルで本能的で幸福に満ち足りた暗示。自分を抑圧していた、ヘドウィグの夫イツハクの自己の解放もなんとも幸せな姿だった。ベッドの上でアメリカンロック聴きながら飛び跳ねてた幼いヘドウィグ=ハンセル少年のシーンが大好き。他にもベッドで寝る二人の象徴的な寝姿とか、クマのグミとか、トミーとの出会いとか印象的なシーンがいっぱいある。音楽もいいし、映像もいいし、ストーリーもいい。
01年アメリカ
ジョン・キャメロン・ミッチェル主演、監督マイケル・ピット、ミリアム・ショア出演
東ベルリン出身で性転換手術を受け、アメリカでロックシンガーとなったヘドウィグの半生
ベニー・グッドマン物語 ☆ベニーとクラリネットの出会いから 彼が音楽的成功をおさめるまでをジャズ嫌いの令嬢との恋をからめて描いた作品。ストーリーはわかりやすく 大きなひねりもないが、演奏がたっぷり楽しめるのは上出来。モーツァルトのコンチェルトをロンドまるまる聴かせてしまうのは凄い。ダンスホールでの演奏も沢山出てくるし、 クライマックスであるカーネギーホールでのコンサートでは、何曲も続けざまに楽しませてくれる。「SING SING SING」とか「STOMPIN' AT SAVOY」といった名曲もいいが、初めて聴くようなナンバーも まさにHOTという言葉がふさわしいノリのよさとライヴな魅力で 思わずスウィングしてしまう程 引き込まれた。
55年アメリカ
スティーブ・アレン主演
スウィング・ビッグバンドのリーダーでクラリネット名手ベニー・グッドマンの物語
ベニスに死す MORTE A VENEZIA ☆素晴らしい。耽美の極み、美とは何かをテーマに据え、美をいろいろな見方からとらえており、しかも全編に流れるマーラーのシンフォニーが 美を追い求めて身を焦がす想いを切々と謳いあげる。原作はトーマス・マン。作曲家であるグスタフ・アッシェンバッハは、音楽を通して美を表現することに全身全霊をかけてきた男。その崇高さと人間的尊厳こそが 健全な美をもたらすと信じてきた彼に、友人は 美には悪が必要なのだ、健全な美なんて 退屈だと言う。またその友人は、美は創り出すものではなく そこに存在するものだとも言った。彼の演奏会での聴衆のブーイング。友人は、君の音楽は空っぽだとのたまった。悩んで悩んで悩んで、彼は自らの信ずる美を音楽の中に求めてきた人生だったと思う。その彼がベニスで少年タジオと出会う。その美しさ、彼の目を惹き付けて止まない まさにこれこそが美だと 彼に悟らせた少年。彼を眺めている歓びは、家族と過ごした 幸せな時に匹敵する至福をもたらし、一生かけて求めてきた美の概念の答えを ただタジオの姿を追い続けるということでグスタフは得てしまう。確かに美は創り出すものではなく、存在していたのだ。人間として、美を知らない心が美を創り出すというのは奢りであり、人間に出来るのは、美を見出し愛する心をそのまま表現するということではないのか。さらに美を愛する時には 心の痛みや不健全さ(=悪)を伴う場合だってあるのだ。ケンカをして砂にまみれるタジオを見て グスタフはおろおろするが、平然として夕陽に手を 差し伸べるタジオを見ていると、本来 美は美としての自意識を持ってるわけではなく あるがままの無造作な姿であるからこそ、永遠ではないからこそ美しいのだ とも思えてきて。他にも美について考えさせられる言葉やシーンが沢山ある。そして一つはっきり言いたいのは、これは少年愛の映画なんかじゃないということ。たまたまグスタフにとっての美神が少年だったというだけだ。
71年イタリア、フランス
ダーク・ボガード主演ビョルン・アンドレセン出演ルキノ・ヴィスコンティ監督
病気のためヴェニスに静養に来たドイツの作曲家が とても美しい少年と出逢い、愛するようになる
☆しかしビョルン・アンドレセンの美しさときたら、確かにこの作品がJUNE的バイブルだったのも納得。首から上を少女にすげかえたみたいな美人さん。ほっそい骨張った体がまたとてもエレガントで、白いシャツに浮かび上がる肩甲骨なんて、まるで天使の翼を隠してるみたい。彼が友達とじゃれ合ってるところなんて、うわうわうわ・・という。確かに見てるだけで幸せ。
ペリカン文書 THE PELICAN BRIEF ☆原作はジョン・グリシャム。「ザ・ファーム」と同様、権力を持つ者の巨悪に気づいた者が抹殺されようとする話。中心人物は法科の24歳の女子大生。演ずるはジュリア・ロバーツ。ここでピンとこないというのが私の場合ちょっと・・。逃げるためにジュリアが次々と髪型やら服装やら変えるのは楽しめる部分とは思うのだけど。ということで?私が楽しめたのは男性陣の顔ぶれ!まずジュリアを助ける新聞記者のデンゼル・ワシントン。清潔感と高潔な感じがいいですね。彼の上司にジョン・リスゴー。でも出番少なすぎ。出番少ないと言ったらジュリアの教師で恋人 サム・シェパード。そんなあっさりと消さないで(泣)素敵なのに〜。その友人にジョン・ハード。大統領はロバート・カルプ。懐かしい〜彼は「アメリカン・ヒーロー」のレギュラーだったわね。凄腕補佐官がトニー・ゴールドウィン。頭の切れるヤリ手ぶりが強く印象に残る。側近の一人にウィリアム・アサートン。驚いたのは鍵となる重要参考人がジェイク・ウェーバーじゃないですか。とまぁ魅力的な顔ぶれながら、お話が結構駆け足な感じがして、もうちょっと重みが欲しかった気がする。
93年アメリカ
ジュリア・ロバーツ、デンゼル・ワシントン主演サム・シェパード出演アラン・J・パクラ監督
最高裁判事らの連続殺人について女子大生が考察した黒幕の文書がホワイトハウスに渡り、女子大生が命を狙われる
ベルベット・ゴールドマイン ☆グラム・ロックのうんと華やかなファッションや 耽美でデカダンなライブアクトやプロモーションフィルムは見応えがある。私はグラム・ロックをリアルタイムでは知らない。デビッド・ボウイを知った時、彼はスタイリッシュなオジサンロッカーになっていた。「地球に落ちてきた男」は何度か見て、中性的・無機的な魅力は 感じたけれど。でもこの映画を見ても 今一つ表層的な部分しかつかめない。
98年イギリス
ユアン・マクレガー、ジョナサン・リース・マイヤーズ主演
偽装射殺事件をきっかけに消えたグラム・ロックスターの真相と行方をファンのジャーナリストが追う
☆ブライアン・スレイド役ジョナサン・リース・マイヤーズは雰囲気が出ててよく似合う。だが彼に影響を与えたカート役のユアンには??だ。「そこまでやる!?」なライプアクトはすごいですよ。実に潔いです。でも見た目がもうちょっとシャープだったら・・(笑)そのバディがもう少しスリムだったらねぇ。栄養状態よすぎる。 ロッカーというものは 雰囲気だけでなく体もひどく不健康なものだった。あと個人的好みだけど、ユアンのロン毛はあまり好きじゃないかも。
ベルリン 天使の詩 DER HIMMEL UBER BERLIN ☆"子供は子供だった頃、天国がはっきり見えてた" それが大人になると漠然とイメージするだけになり・・というのがなんか切なくて、前半はずっとずっと寂しい気分で観てた。天使の目を通した世界はセピア色で、人間の独白を天使は全て聞き取れるのだけど、みんな心が倦み疲れてるんだもの。死を望むほどになったら 天使はその肩に手を置いて人間だけがイメージ出来る希望をふき込んであげる。でもその希望の実体を天使は知ることが出来なくて、主人公のダミエルは人間になりたいと思う・・。"フィリップ・マーロウのように仕事から帰って猫に餌をやる"っていう希望がいいね。 遠い遠い過去から人間を見守ってきたのだろう天使達。「平和を描いた物語は興味が持たれないのか」と嘆き、戦渦の傷跡が残る前のポツダム広場を探して歩く老人ホメロスにも切なさを感じ、こんな歴史をずっと見てきた天使はさぞ心を痛めてきたに違いないと思った。素敵なシーンは幾つもあるけれど、まず図書館のシーンが好き。何人もの天使が気づかない人間の傍に寄り添っていて、優しい笑みを浮かべる。人が近づくとするりと身をかわして。好き好きすごい好き。ダミエルが恋するサーカスのブランコ乗りの女性の曲芸も美しい。そしてピーター・フォークがいる。 撮影に来ている彼自身として。実は私、ダミエルの親友カシエルが結構タイプなんで(笑)、ダミエルがどうしても人間になりたいと強く願った直後にカシエルがする行動を遠目に撮った場面もものすごく好きなんです。ホントに美しいシーンだわ。そして人間になったダミエルが見る世界は天然色に。かなり作品のトーンが変わってユーモラスになるんだけど、ここからのピーター・フォークがまたいいんだわ。決して押し付けがましくなく 人の心にふんわりと人生の機微をふきこんでくれる そういう人達が天使なんだなぁって思わされて、観終わった後はちっとも寂しくなんかなかった。
87年西ドイツ、フランス
ブルーノ・ガンツ主演ピーター・フォーク、ソルヴェーグ・ドマルタン出演ヴィム・ヴェンダース監督
ベルリンの街で人々を見守る天使達の一人が人間になりたいと強く望む
ペレ PELLE EROBREREN ☆三年前に母を亡くしたペレ少年は老齢にさしかかった父親に連れられて、デンマークでの幸せな老後と労働からの解放を夢見て移住してきた。農場主に牛番として雇われた二人だが、生活はちっとも楽ではなかった・・。靄に霞む帆船、どこまでも続く野原の一本道、いかにも寒そうな北の地の自然が過酷で かつ毅然として美しい。自然は時に人の命を奪う無慈悲な顔を持ちながら、一方すこぶる優しい時もある。お仕置きで何度もぶたれたペレのおしりを冷やしてくれる浅瀬の水、海で消息を絶った夫を待つ夫人にペレの父(マックス・フォン・シドー)が寄せるほのかな恋心を照らし出す青い月・・。 それにしても使用人達の貧しさと過酷な労働、無学のため虐げられることに加えて移民の立場の悪さはあまりに痛い。だが苦しんでいるのは使用人だけでなく、農場主の家族も苦しみを抱え、ペレは 少年が見知るにはあまりに生々しいような男女の関係(説明はなくとも表現がとても雄弁で驚かされる)や事故や死を見ることにより、内面を成長させていく。一番つらかったのは、老齢の父が力も誇りも希望も失っていくのを目の当たりにした時のペレの涙。悲しいだろう、泣くなと言われても堪えることなんて出来っこない、あまりに悲しい涙だった。一方、幸せな気分になれたのは カーニバルの場面。 学校でも虐められるペレが唯一心を通わせた貧しい少年ルソとの再会で 二人がかわした笑顔の輝きが素晴らしかった。
87年デンマーク、スウェーデン
マックス・フォン・シドー、ペレ・ヴェネゴー主演ビレ・アウグスト監督
少しでも楽な生活を夢見てスウェーデンからデンマークに移住してきたペレ少年と父親の新生活
☆マックス・フォン・シドーの 父というよりはまるで祖父のような存在と愛と衰えの表現も素晴らしく、ペレ・ヴェネゴー少年の素直で抑圧された情熱を秘めた瞳と表情が強く心をとらえる。ラスト、ここに来た時には父の腕に抱かれて心細そうな目をしていたペレが、父と違う人生を自分で見出そうと一人で旅立っていく 不安にさせるほど華奢で若い姿に、心からありったけの愛とエールを贈りたいと思った。
ベンジャミン・バトン 数奇な人生 THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON ☆やはりまずフィンチャーがこんな正攻法の撮り方をしたということに正直驚かされた。2時間47分の長尺、老人で生まれ若返っていくという数奇な人生を描いていながらストーリーはシンプルともいえる。しみじみと、しみじみしみじみと、・・美しくいい映画だと思った。その時々でさまざまなことを思い、いろいろなことを感じさせられ、その複雑な心の旅は正直うまく言葉では表せない。でも見終えた時、人生というものをとてもいとおしく感じた。ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェットの二人は、特殊メイクもさることながら彼らでなければこの作品を支えきれなかったのではなかろうかと思うほどの 無二の存在と思われたし、オスカーノミネートのタラジ・P・ヘンソンにジェイソン・フレミング、ティルダ・スウィントンが非常に味わい深い印象を残し、上映時間の長さなど全く感じなかった。カトリーナに直撃されたニューオーリンズ慰労のような作品背景もよかったが、時々挿入される雷にうたれた男の映像がなんかフィンチャーらしい気がして好きだった。
08年アメリカ
ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット主演タラジ・P・ヘンソン、ジェイソン・フレミング出演デヴィッド・フィンチャー監督
老人の体で生まれたベンジャミン・バトンが人々との別れを重ね、徐々に若返っていく人生を描く
ベン・ハー ☆児童文学を卒業して大人の本を読むようになった頃、家にあった文学全集に収められてて読んで夢中になってしまった作品だった。こんな面白い話読んだことないとマジで思った程、のめりこんだもの。その映画化作品は何故かずっと観る機会がなかったのだけど、やっぱり凄い!本読んでた時の興奮を思い出した。大変なスケールのスペクタクル作品だ。本でこれは面白いと思ったのはガレー船のくだりだったが、映画でもそこは大変強い印象を残す。奴隷の漕ぎ手達が音頭に合わせて一糸乱れぬ 漕ぎを見せるシーンだ。ミスター腰布チャールトン・ヘストンの魅力も大きいが、戦闘シーンには唖然とさせられるものの、ローマ帝国の時代に船があったということがなんだか驚異的。それを何百人という奴隷に人力で漕がせてたってのがもう想像を絶する。読んで呆気にとられたシーンがこうしてビジュアルで見られるというのは、自分の印象とかけ離れていない場合、すこぶる楽しい。映画としてもう一つの見所は、間違いなく戦車レースのシーン。ベン・ハーの戦車はとても美しく従順な白い馬で、 翼つけたらペガサスって感じなのだけど、彼の宿敵メッサーラは漆黒の馬に真紅の戦車、こちらの威容も素晴らしい。競技場のセットの物凄さに目をみはり、レースシーンの迫力ときたら、CGもない時代にどうやってこんな迫力のシーンを撮影したのか、ただただ驚く。本気ではらはらさせられた。
59年アメリカ
チャールトン・ヘストン主演ジャック・ホーキンス、ヒュー・グリフィス出演ウィリアム・ワイラー監督
ローマに反逆したという罪で捕らえられ、奴隷に身を落としたユダヤ人貴族のベン・ハーが心の平静を取り戻すまで
☆しかしそんな"動"の部分の魅力だけでなく、この作品はイエス・キリストの生涯と微妙にリンクしているところが奥深い。キリスト役は顔も声も画面に登場しない。そこが効果大で、後ろ姿だけでイエスだとわからせる演出には敬虔さが感じられる。ラストは、映像で描く世界としての限界を感じたのだが、原作はどうだっただろうか。宗教的な内なる世界をどう締めくくっていたか、もう一度本を手に取りたい気分だ。
