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作品一覧
〜ひて

ひと 一人息子、陽のあたる教室、ひまわり、ビューティフル・マインド、評決のとき、ビヨンドtheシー 夢見るように歌えば、昼下がりの情事、ピンク・キャデラック


一人息子

36年日本
飯田蝶子主演、日守新一、笠智衆出演、小津安二郎監督
信州から東京に出た息子を支えるため、貧しいながら学費を捻出してきた母親が、大人になった息子を訪ねて東京に出向く

☆小津作品初トーキーということで、保存状態の悪さのせいか、非常に聞き苦しい部分もある。外は暴風なの?と思うほどの雑音やセリフが大変聞き取りにくい部分も。しかし物語に差し支えるようなものではないし、製糸工場の音が絶え間なく聞こえたりすることで生活の空気を感じられるというのはトーキーの凄い点かも知れないと思う。お話の方は、母親が東京に出てきてみたら、息子はいつのまにか結婚して子供が生まれていて、しかも夜学の先生。息子の学力の高さから東京行きを勧め、一緒に 東京に来た先生はとんかつ屋。かつての夢はしぼみ、母に見せるにはどうにも居心地の悪い東京生活。でもね、息子は母親を喜ばせようと一生懸命だし、母親も笑顔を見せる。それでも切ない胸の内。夢破れた現実にやはり落ち込む母親、言い訳する息子、夜中の言い合いに涙する嫁(夜泣きの赤ん坊は静かだというのに)。「どうしてどうして、夜学の先生でもとんかつ屋でもいいじゃん。偉くなんかならなくたって」と言いたくなるけど、時代が違ったんですよねぇ。末は大臣と期待をかけて、親は貧しくとも我慢した時代。出世することが 誰もを喜ばせ幸せにした時代。しかし言い訳する息子のあきらめの性根が間違ってるという母の言うことは一理ある。要は気持ちの問題だと。確かに。成功するかしないかじゃなくてどんな思いで生きてるかが大切だというのはわかってはいるけれど・・。母親は、息子の心優しさにふれて、それが一番と満足もして信州に帰るのだけど、仕事仲間に息子の報告をするシーンが・・切ないよ、ほんとに。痛いほどの母心。ここの飯田蝶子の演技がぐっとくる。そして先生役の若い笠智衆にも驚いたけど、セリフの言い方とか全然変わらなくてほほえましい。

陽のあたる教室

95年アメリカ
リチャード・ドレイファス主演
生活のためいやいや高校の音楽教師になった音楽家が いつしか仕事を心から愛するようになる

☆かつてホランド先生と同じ仕事をしていたので、身につまされた。ごく一部の生徒しか本当の興味を持っていない授業で「音符」を教える味気無さ、つまらなさ、大変さ。授業を面白くするんだ・・と範囲を広げ、柔らかくかみ砕いて遊びに近くもなった。「こんなことするために学んできた専門知識?」と 自分との葛藤もあった。専門外で試される自分の力に戸惑いながら、新しく学ぶ楽しさもあった。体をこわして退職する時は ホランド先生みたいな華々しい感動の幕を下ろすわけにはいかなかったけど、生徒達との音楽を通したふれあいの数々は 自分の中でひそやかに今も音楽を奏でているかも知れない・・
☆音楽家の息子が生まれつき耳が聞こえない・・というのは悲しかった。胎教でおなかにヘッドホンあてて音楽聞かせていたのにね。後天的に音を失っても、思い出や心の中に鳴り続ける音楽がある(ベートーヴェンはそうだった)。しかし音を知らずに生まれてきたら・・?
☆レビューでのガーシュイン・ナンバーが良かった。ロウィーナの歌声はとてもキュート。ホランド先生の教師人生と共に挿入されるアメリカ音楽の歴史へのオマージュのような映像も良かった。
★音楽映画に弱いならキちゃうかな・・と思って見ていた。感動的だけど、アメリカらしいストレートでわかりやすい感動で ゆったりと見られたものの、ひねくれ者の私にはもうひとひねり欲しいかな。

ひまわり SUNFLOWER

70年イタリア
ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ主演ヴィットリオ・デ・シーカ監督
結婚して12日ほどで愛する夫をロシアの戦地に送り出したジョヴァンナは、帰らぬ夫を探しにロシアに赴く

☆よかった、イタリア語のをちゃんと観られて(英語吹替えがあるらしいので)。オープニングの一面のひまわり畑、かぶさる哀愁のメロディを聴いた途端、「あぁこれ知ってる〜」と強烈な印象を抱かせるヘンリー・マンシーニの音楽。戦争によって壊れてしまった男女の愛の物語なのだが、そのストレートな悲恋に加え、ひまわり畑の意味があまりに切ない。ジョヴァンナが訪ねたロシアのひまわり畑の土の下には、沢山のイタリア兵が眠っているという。 南国の太陽を愛してやまない人達が極寒の異郷の地で倒れ、死して今も太陽を求めて咲き誇る・・。生き物が埋葬された土は、花や実がことさら豊かにつくという。有機物質で土が肥えるからだろうが、あの見事なひまわりがイタリア兵達の肉体を糧とし、その故国への強い思いを精一杯咲かせているようで、切ないのなんの。帰りたいのに帰れない、そんな思いはジョヴァンナとアントニオだけではないというのをひしひしと感じさせられた。質素な十字架が 立ち並ぶ墓地も忘れられない。髪形や佇まいで心象をくっきりと表現出来てしまうソフィア・ローレンが素晴らしく、空ろな心でいても なおも女性を惹きつけるマストロヤンニの哀愁もいい。彼のロシア妻役のリュドミラ・サベリーエワがまた、見とれるほど可憐。登場人物は少ないのに、その濃密さはスクリーンをたっぷり埋め尽くす。戦地で死にかけ、同時にアイデンティティーも死んでしまったアントニオと、傷心のあまり一度は死のうとし、一度は愛情も 自分の手で殺したジョヴァンナ。戦争の痛みが重く切なく影を落とし、二人のどうにもならなさがわかっていても涙が出る。そんな悲しい作品ながら、私が大好きなのは、新婚のアントニオが巨大なオムレツを作り、新妻ジョヴァンナがテーブルセッティングするシーン。やっぱりイタリアだ、とっても素敵だ。

ビューティフル・マインド

01年アメリカ
ラッセル・クロウ主演ジェニファー・コネリー、エド・ハリス出演ロン・ハワード監督
実在の数学者ジョン・ナッシュの大学時代から精神分裂病を患い、克服してノーベル賞を受賞するまで

☆この作品を"実在の数学者の伝記映画"とか"病気を克服した数学者とその妻の感動の物語"と通りいっぺんに受け止めて敬遠すると、ちょっと勿体無いかなと思う。脚本と演出がうまいんだと思うけど、ほう、これはこれは・・と思うような なかなかニクイ展開を見せる。ナッシュが窓に落書きのように書きつける数式は全然わからないんだけど、彼が精神病を患う苦しみはわかる・・ような気がしてたら、 あれま〜っつー展開になるんですね。うまいわ。大学時代の彼は、授業には出ないし独創的な理論を生み出したいがため スランプにもなる。変わり者で学友との関係もスムーズでないけど、ただ一人のルームメイトには恵まれる。研究所入所後には、妻アリシアとの出逢いがあり、また機密の暗号を解く依頼を受け、更にCIAエージェントのパーチャー(エド・ハリス)にも協力したことで急激に精神状態が悪化する。 その後のネタバラシは絶対しちゃいけないと思うので、ここまで。でも書きたいので、以下、反転です。
↓ネタバレです。反転してご覧下さい。未見の方は絶対に読まれませぬよう。
本人が幻覚だとわかっていても 幻覚が見えるものだとは知らなかった。ナッシュは「脳は二倍、心は半分」と言われたそうだが、その半分の心が強く求めたもう半分の心が 彼の幻覚で生まれた三人なのだという気がする(だから分裂病なのか)。学生時代、一人だったから本当は友達も欲しかったろう。ストイックなまでの自分を解き放してくれるもう半分の心がルームメイトのチャールズだったのではないか。 次にCIAのパーチャーが現れた。研究所での仕事は彼には少し刺激が足りなかったのかも知れない。そんな時にきた暗号解読の依頼。自分が解読したことでアメリカが救われる。ヒロイックな昂揚感と暗号解読の面白さに浸りたくて、そんな思いがパーチャーを生んだのでは。やがてパーチャーの存在は彼をひどく苦しめ、安らぎを求めてチャールズの愛らしい姪が生まれたのだろうか。治療と投薬により、彼は三人が 幻覚だと理解するものの再発、一人で家でぼんやりする彼の傍らにはチャールズがいて、頭がうまく働かないと思う彼をパーチャーが焚きつける。彼のもう半分の心の声といってもいいと思う。そこで「本物なのは貴方、私、私の心、貴方の心」(ここはジェスチャーで見せた いいシーンでした)とアリシアが諭して やがて彼は「相手にしなければ(幻覚の三人が)あきらめるだろう」と言えるようになる。 相手にしない、つまり彼のもう半分の心が 彼自身認識している心と同化し始めていたのか、或いは彼が自分の足りない部分を無理に求めなくなったのか。だから彼らは声高に彼に何かを求めたりしない。見守ってくれてる。優しい目で。いつも一緒にいて。ナッシュが彼らを完全に消したくなかったに違いない。今はもう消してしまったのだろうか。それが気になる。
☆ラッセル・クロウ、やっぱりうまいです。場面場面で完全に形相が変わってしまう。仕草とかもよく研究してる。ジェニファーも見事な大人の演技でした。だけどやっぱり私はエド・ハリス。黒スーツ、黒タイ、黒ハット。あぁ、かっこいい。どこにいてもナッシュと同じく私の目も彼を追いまくりでした。

評決のとき

96年アメリカ
マシュー・マコノヒー主演
検察側は白人、被告は黒人という難しい裁判を引き受けた弁護士が仕事を全うするまで

☆事件のきっかけとなった事件が痛々しすぎる。最終陳述でこの事件にふれる弁護士によって あまりにひどい事件の全容が明らかにされるが、涙がとまらなかった。私だって被告と同じことをする。
☆弁護士役のマシュー・マコノヒー。金縁眼鏡をかけるとインテリっぽく、笑顔が明るくて健康的だが、服を脱ぐと筋肉モリモリでびっくり。なんかいろんな役の出来そうな人ですね。この役もヘタすりゃ ただのイイコちゃんで終わりそうなのに、彼の好演が厚みを持たせた。被告をサミュエル・L・ジャクソン。 家族を思う悲しい瞳が印象的。さすがにうまい。やり手の検事がなんとケビン・スペイシー。スタイリッシュにキメてくれる。憎々しげでないところがマル。そしても一人。弁護士の片腕となる有能な法律学生をサンドラ・ブロックがやっている。「スピード」に共通するタフな役どころで魅力的だ。
☆しかしこの作品の大きなテーマとなっているアメリカの人種差別問題は、日本人である私にはよく理解し難い部分がある。頭ではわかっても 感覚的にわかっていない感じ。

ビヨンドtheシー 夢見るように歌えば BEYOND THE SEA

04年アメリカ
ケヴィン・スペイシー主演・監督ケイト・ボスワース、ボブ・ホスキンス、ブレンダ・ブレッシン出演
15歳までしか生きられないと診断されていたボビー・ダーリンが音楽の道で成功し、37歳で早逝するまで

☆実はサントラ聴きながら打ってます。幼い頃にリューマチ熱を患い、15歳までしか生きられないと医者に言われたウォルデン少年が、母から音楽の楽しさを教えられ、ボビー・ダーリンとしてショービジネスの世界で成功、女優サンドラ・ディーとの結婚生活や時代の移り変わりで落ち込んだ時のこと、出生の秘密をからめて37歳の生涯を閉じるまでを、ケヴィン・スペイシーが製作・監督・脚本・主演とありったけの才能にボビーへの愛をこめて描き出した作品。とにかく頭から ケヴィンの歌のうまさに聞き惚れる。そして彼の分身のように時々現れる幼いウォルデン少年が、ボビー・ダーリンの人間性の部分を語るファンタジックな構成にもなっている。だが前半は次々と披露される楽曲がとにかく楽しくて、ケヴィンの歌もパフォーマンスも本当に見事なものだから、エネルギッシュにテンポよくどんどん進んでいく。ボビーの出生の秘密が明かされてからは、一転してドラマ部分が充実、ヅラをとった哀愁の漂う姿もまたいい。そしてエンディングに向けて、また 華やかさが復活、ウォルデン少年(ウィリアム・ウルリッチ)がここで初めて歌を披露、ケヴィン=ボビーとのモノクロで統一したダンスシーン「AS LONG AS I'M SINGING」なんてスタイリッシュで素晴らしい。「マック・ザ・ナイフ」や「ビヨンド・ザ・シー」を含むスイングナンバーが心地よく、ビッグバンドの演奏がまた秀逸(プロデューサーはフィル・ラモーン)でツボにはまり、それに極めてレベルの高いケヴィンの歌・・私は残念ながらボビー・ダーリン本人の顔も声も知らないため、 似てると言われてもさっぱりなのだけど、髪と鼻をいじくったケヴィンとしてすっかり楽しんでしまった。ヅラネタも妙におかしくて笑える。とにかく作る側の敬愛と思い入れがたっぷりこめられた作品というのは好きだし、それで音楽が思う存分楽しめてお気に入り俳優が素晴らしい・・これ以上何も求めるものはありません。

昼下がりの情事

57年アメリカ
オードリー・ヘプバーン主演ゲイリー・クーパー、モーリス・シュバリエ出演ビリー・ワイルダー監督
探偵の娘が 命を助けた恋多きアメリカ人実業家と 身元を隠して昼下がりの逢瀬を重ねる

☆う〜ん、誰が何と言っても私はこの作品ではモーリス・シュバリエが好きなんです。舞台はパリ。コンセルヴァトワールでチェロを専攻する一人娘を愛する 探偵やってるお父さん。すっごく素敵ないいお父さんで、大詰めからラストまでの彼には泣かされる。勿論そこに至るまで、どのシーンの彼も好きなんですけどね。彼のようなお父さんがいるからこそ、オードリーもゲイリー・クーパーも ラストで輝くんだよね。
☆オードリー演じるアリアンヌは、父の探偵資料に興味津々。依頼人の話に耳をそばだてた彼女は、夫人の不倫相手の実業家フラナガン氏(クーパー)の命が危ないことを知り、彼を助け、彼と付き合うようになる。世界をまたにかけ 行く先々に愛人を持つフラナガンと"自分も恋多きパリの愛人"を演じるのだけど・・。オードリーけなげです。本気の恋なのに遊びのふりをする。ちょっと鼻に ついてきたところで一気に話を進め、恋心を必死で押し隠そうとする彼女のいじらしさをぐいぐい見せる。ビリー・ワイルダーのうまさです。ゲーリー・クーパーはうんと年上の恋人って感じで渋いけど、彼の専属の楽隊四人がまたいい味出してて 笑えるシーンも五人で盛り上げた感じ。サウナまでお供なんて楽士さんもツライね。

ピンク・キャデラック PINK CADILLAC

89年アメリカ
クリント・イーストウッド主演バーナデット・ピータース出演バディ・バン・ホーン監督
高飛びした凶悪犯を油断させて捕まえ、警察に差し出すことが仕事の男が、ニセ札を持って逃げた女を追いかける

☆追跡者というとかっこいいが、アンフェアな方法で凶悪犯を捕まえる面白い男がイーストウッド。追跡を頼まれた女は、純血団という白人至上武装軍団に所属する男を亭主に持ち、夫のピンク・キャデラックに乗って赤ん坊連れで大量のニセ札持って逃げ出した女。これが一筋縄でいくわけがない。純血団は目の色変えて女を追う。今まで不幸だったキュートなアバズレタイプの女と子供を守るために、 自分のポリシーを散々捻じ曲げて護送する羽目になるイーストウッド。肩の凝らないアクションコメディだ。彼の過去のいろ〜んな出演作を思い出させるお遊びもチラホラ、路線も彼のカントリー風味の作品と殆ど変わらない。但し、凶悪犯を捕まえる手段としてのさまざまの変装ぶりは笑える。うそ〜って言いたくなるくらい似合ってないので(そこが狙いでしょ)このコスプレショーは大変見ものだ。 イーストウッドの懐の深さを感じてしまいます(笑)。おなじみジェフリー・ルイスも顔見せてるし、ジェームズ・クロムウェルがちょいとコスい呑気なキャラで出てるのも驚いたし、「許されざる者」のフランシス・フィッシャーも出てるし、まぁ監督がバディ・バン・ホーンであるせいもあるかもだけど(「ダーティー・ハリー5」も彼)ジム・キャリーが出てるんだよ〜〜「ダーティー〜」でも見ものの 彼だけど、こちらはなお驚いちゃう。腕をTシャツの胴の中に入れて袖から手だけ出してエルヴィスのマネしてるコメディアンの役。わずか数十秒ぐらい。ちょっと信じらんない(笑)