

| 作品一覧 か 怪〜七人みさき〜、カイロの紫のバラ、ガウディ・アフタヌーン、輝きの海、過去のない男、風とライオン、家族のかたち、家族の肖像、片腕カンフーvs.空飛ぶギロチン、ガタカ、カッコーの巣の上で、悲しみが乾くまで、彼女を見ればわかること、カバーガール、神に選ばれし無敵の男、仮面の男、花様年華、から騒ぎ、硝子の塔、カラマリ・ユニオン、カリフォルニア、カルラの歌、華麗なる賭け、華麗なるヒコーキ野郎、彼が二度愛したS、眼下の敵、間諜最後の日、ガントレット、カンバセーション 盗聴、歓楽通り |


☆原作は京極夏彦。自身もちらっと出演。おどろおどろしい雰囲気や倒錯した妖しさがなかなかムフフな感じ。なんだか「必殺」みたいだな〜と思ったら、主水が出てきて驚いた。でもケリのつけ方がですね、どこまでが小細工の仕掛けでどこからが術によるものなのかがよくわからないので、ちょっと気分がすっきりしない。
☆田辺誠一、雰囲気はいいんだけど声が高い。もう少し低いトーンで色っぽい声が好み。佐野史郎も顔だけじゃなくて 演技ももっと胡散臭い方が好み。山本夫人の遠山景織子ちゃんがはまってていい感じ。私が淳くんなら家でもやってもらうのに・・って何をだ(笑)。
カイロの紫のバラ THE PURPLE ROSE OF CAIRO ☆オープニングが、フレッド・アステアの歌う「チーク・トゥー・チーク」、ラストはアステアがジンジャー・ロジャースと踊るその歌の場面というのが心憎い。夫に大事にされてるとは言えず、ウェイトレスの仕事でもお小言ばかりもらってるセシリア(ミア・ファロー)は、街の映画館で上流階級の恋愛を描いたロマンティックな映画を観るのが一番の楽しみ。彼女が通いつめる映画「カイロの紫のバラ」の登場人物の一人で彼女のお目当てである、 探検家のトムがスクリーンから抜け出てきて、自由を満喫したいとセシリアに愛を告白する。ストーリーが前に運ばなくなったため、スクリーンの中では他の登場人物達がみんなでトランプ、見守る観客達はブーイング、そんなまさかという展開が遊び心いっぱいで楽しい。俳優とは?映画とは?と小首かしげて考えてしまうちょいとシニカルなペーソスを交えたセリフ群も実に楽しい。やや自虐的なところもウディ・アレンらしい。トムを演じた俳優本人に出会って 大喜びのセシリアもとてもかわいい。俳優とファン心理が「雨に唄えば」をちょっと思い出させる。いいなぁ、好きよ好きよ。でも最高の瞬間はやはりラストでしょうか。「トップハット」を見つめるミア・ファローの表情がいとおしすぎる。悲しさ、寂しさ、儚さ、甘美さ、映画の中の世界が虚像だとわかってる、現実の自分のいる世界をちゃんと認識してる、でも映画に触発されて生じた感情は全て現実のもの。自分のもの。自分自身で自由にできるもの。その想いに激しく共感してしまう。 理屈なんてどうでもいい。ありえないことでも構わない。観ていて心の中に大きな波が押し寄せて、自分が大きな満足を覚えたなら。そんな瞬間をいっぱい味わいたくてただただ映画を観続ける。たかが映画されど映画。この作品もそんな一本。
85年アメリカ
ミア・ファロー主演ジェフ・ダニエルズ、ダニー・アイエロ出演ウディ・アレン監督
夫にかまわれず、映画を観るのが楽しみだった女性の前に映画の登場人物が抜け出してくる
☆実は、二枚目やってるジェフ・ダニエルズってすごく私には新鮮だった。だってどちらかといえばくずれてサエない(失礼)風情の彼を最近はずっと見てたので。ダニー・アイエロはやっぱりダニー・アイエロでした(笑)いいねぇ。
ガウディ・アフタヌーン ☆オープニングタイトルの絵が凄く素敵。明るく鮮やかな色彩でアールヌーボーかアールデコのようなデザインがめまぐるしく現れ、うっとりしてしまった。作品の方も舞台がバルセロナで、タイトルどおりガウディの建築物も話の舞台として登場したりする。不完全で摩訶不思議な世界。それは、主人公カサンドラ(ジュディ・デイビス)が人探しを請け負って首を突っ込んでしまった 変わった人間関係の 構図のようでもあるし、性転換した父親フランキー(マルシア・ゲイ・ハーデン)と服装倒錯者で性倒錯者である母親ペン(リリ・テイラー)の夫婦に幼い娘のデライラという 実に不思議な家族の姿のようでもある。なんか妙なんだけど、根底の部分でごく常識的なものと全く変わらぬものを持ってるような感じがする。"見た目に惑わされないで"というような。ヘンだけど不快にはならない。
01年アメリカ、スペイン
ジュディ・デイビス主演マルシア・ゲイ・ハーデン、ジュリエット・ルイス、リリ・テイラー出演スーザン・シーデルマン監督
バルセロナで翻訳の仕事をしていたアメリカ人女性が人探しを頼み込まれる
☆ジュディ・デイビスが母親に不信感を持つ独身女性、現実的なようで人がいいというか・・をしっかり好演していて、話をキワモノにしちゃわないのがいい。リリ・テイラーの役は、とっても"らしい"(笑)。そしてベンの恋人としてジュリエット・ルイスが出てるのだが、どっかフニャフニャしたヘンな女の子役を 天然のように演じられるのは彼女をおいていないという感じ。相変わらずというか・・強烈。 でももっと吃驚させられたのがマルシア・ゲイ・ハーデン。仕草や雰囲気がオカマに見える!トイレシーンにはぶっとんだ。
輝きの海 SWEPT FROM THE SEA ☆原作は、あの「地獄の黙示録」の原作である「闇の奥」のジョゼフ・コンラッド。コーンウォールの閉鎖的な村で、母親から全く愛されず村人からも疎まれてきた娘が、遭難した船の外国人と心を通わせる。外国人の若者も 裕福な家の父と娘、そして医者以外の村人達から疎まれるため、二人は孤立した状態になる。海に囲まれているから外の世界に対して恐れを抱く村人達のことも、今いる陸地に自分の求めているものが見出せないから、海へ 想いが向けられるエイミーやヤンコのことも、コーンウォールのあまりに美しい風景を見ていると どこか胸を打たれるものがある。ヒロイン、エイミー・フォスターの世界の描き方が素晴らしく、レイチェル・ワイズも美しく好演している。嵐の夜の彼女の心細さは想像するに余りある。そして外国人ヤンコを強く気にかけていた医者役のイアン・マッケランがいい。学があり、人格もあるこの医者がエイミーに対する偏見を少しずつ認め、またほぐしていく 過程が穏やかで深くていい。エイミーの母はゾーイ・ワナメイカーがやっているが、この人は本当にイギリスの厳格で頑なな婦人の役が似合う。
97年イギリス、アメリカ
ヴァンサン・ペレーズ、レイチェル・ワイズ主演イアン・マッケラン、キャシー・ベイツ出演ビーバン・キドロン監督
閉鎖的な村の 子供の頃から変わり者と言われてきた娘が難破船のただ一人の生存者と恋におちる
過去のない男 MIES VAILLA MENNEISYYTTA ☆う〜ん、やっぱりカウリスマキ。見ていて聴いていて心地よさに浸りながら安堵の思い。暴漢に襲われて一度は死んだのに一命を取り戻した男。身の証は何もなく名前も生まれも覚えてない。コンテナ住まいの家族に救われ、救世軍の世話になりながら身一つで生き延びていく。知り合った救世軍の女性イルマに恋をし、名前がないことから予期せぬトラブルにも遭う。それでもこの過去のない男が前向きに淡々と生きていくんですね。「真夜中の虹」を思い出すなぁ。 名前をでっちあげたりせずに頑なに記憶のない自分を押し通すのに笑え、残っている音楽の嗜好が生活に潤いをもたらす。映像も美しいけど、やっぱり音楽いいですよ。ブルースを歌う救世軍のお年の女性、生真面目にロックを演奏する救世軍のバンド、さすがに年齢を感じさせるようになったもののなんだか初々しいカティ・オウティネン、そして踏んだりけったりの境遇ながらユーモアを感じさせる過去のない男、犬のハンニバル、裏金ふんだくりながら憎めない警官、 心温かい銀行強盗etc..愛すべき魅力的な登場人物達。酒場の壁にカウリスマキ作品の常連だったマッティ・ぺロンパーの遺影が飾られていたのにグッときて、クレイジーケンバンドの「ハワイの夜」をBGMに寿司と日本酒をたしなむ列車内の食事に驚き、なくした過去との決別と心機一転を形にしたラストにほのぼのし・・いい作品でした。
02年フィンランド
マルック・ペルトラ主演カティ・オウティネン出演アキ・カウリスマキ監督
列車から降りて仮眠をとっていた男性が暴漢に襲われ、過去の記憶をなくしたまま身一つで再出発を図ることになる
風とライオン THE WIND AND THE LION ☆オープニングの波の映像を見て「ビッグ・ウェンズデー」を思い出した。その波打ち際を馬が駆ける映像の力強さ・鮮やかさから目をひきつけられる。とにかく戦闘シーンやアメリカ艦隊のモロッコ行進シーンなど、カメラワークがとても魅力的で男くさい雰囲気がぞくぞくするほど溢れている。リフ族のシャリフを演じたショーン・コネリーもとてもセクシーだ。人質として頑なな態度をとっていた外交官夫人役のキャンディス・バーゲンも、話が進むにつれてどんどん輝きを増してきて、ルーズベルトとシャリフの間に立って 自分の考えで行動するようになるあたりは、彼女らしい魅力が存分に発揮されている。風とライオン、その意味もなかなか深い。骨太な構成、ジョン・ミリアスさが強く感じられる作品。
75年アメリカ
ショーン・コネリー主演キャンディス・バーゲン、ブライアン・キース出演ジョン・ミリアス監督
モロッコからの撤退を条件に、リフ族のシャリフがアメリカ外交官夫人と子供を誘拐する
家族のかたち ONCE UPON A TIME IN THE MIDLANDS ☆邦題の「家族のかたち」というのは、ラストにはとてもピッタリくる。でも原題の「ONCE UPON A TIME IN THE MIDLANDS」、"ONCE UPON〜"の枕詞をもってきただけの空気がたっぷり。"さすらいの風来坊"が、ふと捨てた家族を思い出して金を作って戻ってくる、かつて愛した女との再会、一人娘は大きくなって・・だがかつて飛び出した我が家には別な男が居座っていた・・。舞台はノッティングヒルだというのに、音楽がすっかりウエスタン調。愛する女とその娘をめぐって 男の闘いが静かに、いやコミカルに火蓋が切られる(笑)。いや〜ツボです。遊び心を加えた絶妙な味つけがたまらない。正反対のタイプの甲斐性のない男を演じたロバート・カーライルとリス・エヴァンスがいい。片や強気なヘタレ男、片や弱気な善良男、どっちもかわいいんだよねぇ、見ている分にはとても(笑)。ジミー(カーライル)がシャーリーの家にころがりこむまではとても良かった。しかしそこからラストまでの流れが正攻法になってしまい、キュウゥゥゥ〜ッて双方の"ダメ男の美学"に 酔いしれたかったのに作品が現実的な女の視点になってしまい、そこがとても残念。最後まであの絶妙な味つけを貫き通して欲しかったなぁ。その点だけが惜しまれるのだけど、車の中でもノリノリで楽しそうな子供達といい、デック(リス・エヴァンズ)のモーターサービスの従業員四人のノーテンキぶりといい、ジミーの姉夫婦にしても、人間関係でハラハライライラすることがあっても、ささやかな心の幸せを大事に自分流に楽しんで生きてるような人達ばかりで、何度も微笑ましい気分になる愛すべき作品 でした。
02年イギリス
ロバート・カーライル主演リス・エヴァンス、シャーリー・ヘンダーソン出演シェーン・メドウス監督
TV番組で偶然見かけた元妻が交際してる男のブロポーズを断ったのを見て、ジミーは飛び出したノッティングヒルに帰る
家族の肖像 CONVERSATION PIECE ☆なんというか、もう独特の空気がある。孤独な老人の寂しさと平穏、それが彼の住む上の部屋を借りたいと言ってきた人達によって変化が訪れる。一見自由を満喫しているようにみえる母娘とその愛人達の四人の存在は、教授の平穏を乱すと同時に寂しさを癒し、特に母親の若い愛人コンラッドはその不思議な魅力で教授の心を捉える。ずっと一緒にいて相手を束縛するのではなく、生活の一部分を共有することにより、心の絆が深まる断片的な関係。お互いに 相手のことをよく知りもしない、でも心を許そうと思う、愛そうと思う理屈を超えた関係。なんとなく人恋しいような物悲しいような気分になる作品だ。バート・ランカスターが翻弄されながらも彼らにひかれていく教授を、ヘルムート・バーガーが知的芸術的面を伺わせながら謎めいた若者コンラッドを演じ、その退廃的な魅力を画面いっぱい発散させている。
74年アメリカ
バート・ランカスター主演ヘルムート・バーガー、ドミニク・サンダ出演ルキノ・ヴィスコンティ監督
家族もいなくなり、平穏な一人暮らしをしてきた教授の上の部屋を借りたいと一人の夫人が頼み込んでくる
片腕カンフーvs.空飛ぶギロチン ONE-ARMED BOXER VS. FLYING GUILLOTINE ☆これを観たいと思ったのは、「Kill Bill Vol.1」のせい。仙人みたいな容貌の僧侶、封神の必殺アイテム"空飛ぶギロチン"がゴーゴー夕張の武器のオリジナルだったわけだ。チェーンで投げて標的の頭にスッポリ被せ、引っ張り寄せればギロチンになる凄まじい武器、内にも外にも歯がついた回転ノコギリですんごい音がするんですわ。封神のカンフーも自分の骨が折れてるような強烈な音ですが。この盲目の坊さん、顔小さいのに腕太いんだわ、すごいよ。対する片腕カンフーの片腕ドラゴンですが、タイトルどおりの対決前に武道会があって、 こちらがかなり面白い。次々いろいろな戦術と容貌を持った武道家が出てくるので、どんなキメ技が出てくるのか結構ワクワクしながら観てしまった。笑えるし。股旅風日本人も出てきたし、ヨガで戦うインド人も意表をつく技が(笑)。こちらでたっぷり楽しませてもらった後、ようやく封神と片腕ドラゴンの対決といく筈が、封神の送り込んだ刺客との戦いが前座を飾る。片腕ドラゴン、なかなか頓智をきかせた戦術で、これもまた笑える。わかりやすいし時間も短いし(85分)、たいそう面白かった。
75年香港
ジミー・ウォング主演、監督カム・カン、ドリス・ロン出演
空飛ぶギロチンの使い手封神が、殺された弟子の敵討ちに片腕ドラゴンを仕留めに行く
ガタカ ☆、これ、哀しい作品ですよねぇ。始まりからずっとずーっと哀しい。哀しくて美しくて、でも人間の人生の価値が先天的なもので決まってしまうんじゃなくて、後天的なものが非常に大きいのだ と望みを抱かせてくれる。この世に生まれ落ちた感動的な筈のその瞬間に、寿命から異常をきたす身体部分の可能性まで全部わかっちゃうなんて あんまりだあんまりだあんまりだ〜〜(泣) だからって遺伝子操作されて、極めて高レベルの それこそ針でつついたような微細な差で競い合うなんて。そんな世界じゃ、どっちに生まれついても幸せになんかなれっこない。絶対にこの作品のような世界にはなって欲しくないですね。抜け毛にまで気を遣う世界なんて、冗談じゃないわ(笑)
97年アメリカ
イーサン・ホーク、ユマ・サーマン主演ジュード・ロウ出演
遺伝子操作を受けずに生まれたため、宇宙に行く資格がない若者が優秀な遺伝子の持ち主から体の組織を借りる
☆線の細いイーサン・ホーク、ちょっと人間離れしているかも知れないくらい美しいユマ・サーマンとジュード・ロウ。三人ともあんまり生活感を感じさせない人なので、このいかにも人工的な世界に溶け込んで 不思議な雰囲気を醸し出してる。採血シーンとか採取血のサンプルとか見てて痛いんですけどね(実は採血ギライ。血が薄いし血管細いから。落第遺伝子の自分^^;)。それに イーサンとジュードってどう見ても似てないから(身長変えられるくらいなら顔も少し手直ししない?)、どうして気づかれないんだろうってなんか不思議でありました。
カッコーの巣の上で ☆気を病んでいる人間には、生の喜びにあふれた楽しみさえ有害で許されないことなのかと考えてしまう作品。規律で許された限られたことだけを単調に繰り返す毎日は 平穏かもしれないが、意欲も自主性も失われてしまう。危険な兆候のあるものを排除していく方法が はたして正しいのかどうか。精神病院だけじゃない。現代社会にも投げかけられる問題と思われた。
75年アメリカ
ジャック・ニコルソン主演ミロシュ・フォアマン監督
刑務所から精神病院に送られてきた男が、患者の無気力と看護婦長の管理体制に挑む
☆ワールドシリーズを見たいと言っても テレビの時間じゃないと許されない。何も映っていないテレビの前で「バッター打ちました!」と実況中継を始めるマックマーフィ。興味を持った患者達が集まってきて、見えないテレビに声援を送る。無表情な患者達が生き生きした 兆候を見せる感動的な場面だけど、ついてないテレビに興奮するという行為自体が気違いじみていることを思うと 悲しくなる。複雑な心境だ。
☆ニコルソンのパワフルな演技はさすがだが、驚いたのは いつもニタニタしてる小柄なマティーニがダニー・デウィートだったこと、突然嬌声をあげるカンの強い患者の見覚えのある顔が やっぱりドク(クリストファー・ロイド)だったこと。彼らをはじめとして皆 達者な 演技。婦長の静かなる凄みのきいた演技も印象深い。さらに製作にマイケル・ダグラスの名前がある。ひゃーびっくり。
悲しみが乾くまで THINGS WE LOST IN THE FIRE ☆見ず知らずの人間の暴力の仲裁に入り、運悪くも射殺された夫をデヴィッド・ドゥカヴニーが演じている。その知性と優しさを丁寧に見せることで、残された妻の心の傷と夫のヤク中の親友の存在が無理なくクローズアップされる。邦題でわかるように、夫を突然失った女性の悲しみが少しずつ癒されていくのにデル・トロ演ずる男の存在が大きく関係するということがすぐ読み取れるものの、それだけで終わらない作品だ。 とにかく心の機微を丁寧に拾い、二人の子供達や夫の仕事仲間ハワードの存在も温かくて、じっくりと向かい合いたくなる作品なのだ。やっぱりデル・トロがいい。心の痛みもさりげない善意も、それでいてどこか危険な匂いがするような雰囲気も実にうまく演じていると思う。ハル・ベリーは「チョコレート」以来久しぶりの正統派ドラマという印象。喪失のドラマという点も近い。ハルとトロという組み合わせが深みのある人間性をドラマから感じさせた。
08年アメリカ、イギリス
ハル・ベリー、ベニシオ・デル・トロ主演スサンネ・ベア監督
夫の突然の死に強いショックを受けた女性が、夫の親友だったヘロイン中毒の男を立ち直らせようと手を差し伸べる
彼女を見ればわかること THINGS YOU CAN TELL JUST BY LOOKING AT HER ☆監督で脚本も書いてるロドリゴ・ガルシアは「フォー・ルームス」のカメラさん。オムニバスが好きなのかも。製作はジョン・アヴネット。画面上部にフィルターをかけたような映像が独特の雰囲気を出している。話は五つからなる。一話はグレン・クローズ主演の「キーナー医師の場合」。老いた母の看病をしながら自分の明日にふと思いを馳せる独身の女医。グレン・クローズの優しい眼差しがいい。二話は、ホリー・ハンター主演の 「レベッカへの贈り物」。不倫している銀行支店長の 選択する余地もない決断。不倫相手のグレゴリー・ハインズがお久しぶりだったが、やっぱりホリーの演技がいい。病院から出てきた彼女が「私は一人で大丈夫」というようにややおぼつかない足取りで歩いていくシーンにグッときた。つらくても頼れる人がそばにいないから、自分を鼓舞して頑張るしかないその思いに強く共感させられた。三話は、キャシー・ベイカー主演の「ローズのための誰か」。 これもいい。年頃の息子を一人で育てる母親が、向かいに越してきた小さな男性(彼女の息子はドワーフと呼ぶ)と親しくなる。いつのまにか性体験も経験している息子が自分を追い抜いたような気持ち、自分の心も"誰か"を求めるその思いがファンタジックに描かれ、素敵な作品になっている。四話は、キャリスタ・フロックハート主演の「おやすみリリー、クリスティーン」。死の近い病で臥せる恋人(女性)との幸せな出会いを振り返る若い女性。彼女 が死んだ後の自分を考えられない不安な思いを、少女のようにみずみずしく見せる。最後はエイミー・ブレネマンとキャメロン・ディアス主演の「キャシーを待つ恋」。刑事のキャシーは、盲目の妹の世話をし、デートのため出掛ける妹のドレスアップからメイクまで面倒をみて送り出す。そんなキャシーにもやっと恋のチャンスが?というもの。キャメロンが演じるのは盲目の妹の方。多感で繊細な妹が姉の思いを映し出す。
99年アメリカ
グレン・クローズ、ホリー・ハンター、キャメロン・ディアス他出演ロドリゴ・ガルシア監督
五人の女性の日常からそれぞれの思いを拾い上げたオムニバス・ストーリー
☆この五つの話は全く別物というわけではなく、脇役として登場する人物が他の作品ともリンクしている。ここが非常にうまい。目の前にいるその人は、自分のよく知ってる誰かが片想いしてる相手かも知れないし世話になってる人かも知れない・・ケヴィン・ベーコンゲームじゃないけど(笑)知り合いの知り合いの・・と辿っていくと何人もの人が自分とつながってるのかも知れない。そう思うと、知らない人であってもどうでもいい人ではなくなってくるような・・ そんな不思議な気分になる。いい作品だ。
カバーガール ☆私はMGMミュージカルのファンなので、コロンビアながらこの作品の空気も好き。オーバチュアからときめいてしまう。
43年アメリカ
リタ・ヘイワース、ジーン・ケリー主演
ブルックリンのダンサーが雑誌のカバーガールに選ばれて成功への階段を上っていく
☆そしてジーン・ケリーが大好きなので、彼の笑顔とダンスにうっとり。若いですね〜ショー場面の随所に見られるポーズも美しく、心の両面を表すツインズ・ダンシングも独創的。
☆しょっぱなから抜群の脚線美が競い合うような(でも揃わない)ラインダンスがあったり、男じゃないけどポーッ。スターが本当にスターだった時代。リタ・ヘイワースもさすがの美しさです。
★ストーリーがわかりやすすぎるのと、「雨に唄えば」と比べたくなる構成で 音楽的にも内容的にも劣る分、作品の質がうすめられてしまうのが難。
神に選ばれし無敵の男 INVINCIBLE ☆まず実話を元にした物語だとことわりがはいる。千里眼として一世を風靡したハヌッセンも ステージで怪力を披露して観客を沸かせたジシェも実在の人物。だが二人の生き様や関わりは映画として作られているもので実話そのものではない。ジシェを演じたヨウコ・アホラはストロングマン・コンテストの優勝者だし、ハヌッセンの劇場のピアニストを演じたアンナ・ゴウラリはコンサート・ピアニストで共に本業は俳優ではない。 しかし本物の能力を持つ二人だから、重量挙げのシーンもベートーヴェンのコンチェルトを演奏するシーン(これが大変素晴らしい。魂が浄化されるような美しさ)も本物ゆえの圧倒的な凄みにあふれている。一方自らの素性を隠し、まやかしと言われる千里眼ハヌッセンを演じるティム・ロスは本物の俳優だ。実にうまく魅惑的にハヌッセンを"演じる"。この作品の中で"どんな姿をしてどのように振る舞ったとしても その本質は 決して変わりはしない"というようなことが 自分を雄鶏と思い込んだ王子の寓話として語られるが、この作品そのものがそうなのだ。本物の俳優でなくとも本物の能力を持つ二人と、本物の千里眼でなくとも本物の俳優であるティムと。キャスティングもそうだし、ユダヤ人であることを偽りステージに立つことに疑問を覚えるジシェにしても 生きるため力を手にするために自分を偽ってきたハヌッセンにしても、彼らの本質は変わることなく 全てが運命づけられてきたかのようなラストを迎えるストーリーもそうだ。更に実話とは違う形で描かれているこの作品も 本質的な部分は歪められてはいないということかも知れない。
01年ドイツ、イギリス
ティム・ロス、ヨウコ・アホラ主演アンナ・ゴウラリ出演ヴェルナー・ヘルツォーク監督
ユダヤ人のジシェは自分の怪力の理由を知るためにナチ台頭間近のベルリンに赴き、ハヌッセンに雇われる
☆さすがはジャーマンシネマと思ったのがカニの映像。これは凄い。本当にシュール。こういう映像というのはジャーマンシネマでないとお目にかかれない気がする。強烈でシュールで美しくて素晴らしくて息をのむ。そしてお目当てティム・ロスは、「ロブ・ロイ」のアーチーと同じく悲しき悪人がよく似合ってセクシーで魅力的なのだけど、ハヌッセンのカリスマ性がまやかしとして消え失せてしまうような設定が実はちょっと悲しい。 彼の本質がまやかしのユダヤ人であったために、無残に殺害されたとは思いたくない。ヘルツォークが彼を神秘の人のままでいさせてくれてたら・・あぁぁ。
仮面の男 ☆タイタニックで大ブレイク直後のディカプリオがさすがの華と 器用な演技でルイ14世と双子の弟フィリップとを微妙な表情を使い分けて演じている。母君はあの「ニキータ」のアンヌ・パリロー、綺麗です。しかしこれは、よくぞ揃えたと言いたくなる四人の銃士達でしょう。好色なポルトスに名優ジェラール・ドパルデュー。彼、なんとなくボケ的 役回りでちょっと惜しくないですか?司祭アラミスにジェレミー・アイアンズ、熱い司祭ぶりが魅力。息子を王の奸計で奪われるアトスにマルコヴィッチ。フィリップを王らしく仕込むあたりがおいしくていいですね。 銃士長ダルタニアンにガブリエル・バーン。配役をきいた時はちょっと地味でない?とか思ったものだけど、いや〜かっこいいし、いい役だわ。四人揃って黒地に銀の十字が縫い込まれた衣装をまとられちゃ、かっこよくって文句なし。オジサマ達、素敵よぉ〜〜。
98年アメリカ
レオナルド・ディカプリオ主演ガブリエル・バーン、ジョン・マルコヴィッチ他出演
ルイ14世の暴君ぶりが目に余った元・銃士達が仮面をつけて幽閉されている弟とすりかえることを考える
☆作品としてはとてもオーソドックスな作りというか、特にひねった部分もなし。絵的には少しつまらなくもあったような・・。
花様年華 IN THE MOOD FOR LOVE ☆舞台は60年代の香港。決して広いとはいえない家の中で部屋を貸して 幾つもの世帯が生活しているその雑多な感じが中国で、流れる音楽や雰囲気にアメリカの匂いがし、レトロな香りは日本的なものが感じられる・・とにかく凄く不思議な雰囲気のある美しい作品。絵がボワ〜ッとしていて赤と緑がとても印象的に配色されてる。目に染みるような深い赤と緑。 まずマギー・チャン演ずるチャン夫人のチャイナドレス姿がおそろしく素敵。そのスレンダーな肢体といい、目が釘づけになる。メチャクチャ色っぽい。彼女は社長秘書で、社長の浮気のカモフラージュから若い愛人のための贈り物まで取り計らってる。そんな大人の嘘をよく知っている彼女だけど、夫が隣人の妻と浮気していることを知る。一方隣人チャウも妻の浮気に気づく。 二人がネクタイとハンドバッグでその事実を知るというのがなんとも・・ゾクゾクッとくる。互いの伴侶の嘘に向き合おうとするうち、二人は大人の秘めたる恋の関係になっていき・・。中国語のセリフって早いのかな、字幕を追うのに結構忙しかったけど、ふっとセリフがなくなった時に何度も流れるチェロのメロディがとても美しい。そしてナット・キング・コールの甘い 歌声に酔う。「花様年華」ってどういう意味なのかと思っていたけど、なるほどね〜・・。
00年香港
トニー・レオン、マギー・チャン主演ウォン・カーウァイ監督
貸家の隣同士になった男女が 互いの伴侶の浮気に気づき、心を通わせるようになる
☆どこかぎごちないようで一途な情熱を感じさせるチャウを演じたトニー・レオンも大人のかほり。狂おしいほどの切ない恋の情熱は、男の場合、女にまっすぐ想いが向けられた時に燃え上がり、女の場合は 抑えて自分の中にしまいこんだ時に激しく燃え上がるのですね。互いにとても大人なのに、いや大人だからこそ熱く焦がれる恋をするものなのでしょうか・・一夜の夢 のような 浪漫あふれる作品でした。あぁ、黒胡麻汁粉が食べたいな〜それにこの映画、食べてるシーンが妙にセクシーなんだわぁ(浪漫ぶち壊し?・笑)
から騒ぎ MUCH ADO ABOUT NOTHING ☆シェイクスピアらしい幾つもの企みと 幾組もの男女の恋模様を一つの器に盛り込んで、エスプリのきいたセリフの数々で楽しませ、最後は全てがおさまるところにきっちりおさまる作り。脚本も作ったケネス・ブラナーはうまく品のいい味付けで大らかにまとめている。
93年アメリカ
ケネス・ブラナー主演・監督エマ・トンプソン、デンゼル・ワシントン他出演
イタリア、メッシーナの知事邸を訪れた騎士達と娘達の恋のいきちがい
☆大公をデンゼル・ワシントンがやっていて、白い歯と清潔感漂う人柄が印象的だけど、役としてちょっと見せ場少なくて損だよね。悪党の異母弟がキアヌ・リーブスで、鉄面皮の表情のなさがいいのか悪いのか・・と思って見ていたのだけど、悪巧みがうまくいった時の笑顔と走り去る姿が良かったので、やっぱりもうちょっと 表情欲しかったなぁ。道化をやってるマイケル・キートンは、こういう妙ちきりんな役が非常にハマッててうまい。ケイト・ベッキンセールは可憐、エマ・トンプソンは大輪の花のようで、この二人の対比も見事。そして共に頭が切れて毒舌なため 喧嘩ばかりの二人の恋模様を演じたエマ・トンプソンとケネス・ブラナーのコンビは、息もピッタリですごくいい感じ。 豪華キャストだけど、作品のポイントをトンプソン&ブラナーコンビに絞ったのが成功していると思われ、また別の意味で惜しくもある。
硝子の塔 ☆「氷の微笑」で大ブレイクしたシャロン・ストーンのための作品だが、R指定だけあってエロティック。隠しカメラでの覗き見と殺人事件でサスペンスも盛り込まれているが、やっぱりエロいのが主体だろう。
93年アメリカ
シャロン・ストーン主演ウィリアム・ボールドウィン出演
至る所隠しカメラの仕掛けられた硝子ばりの高級マンションに美女が引っ越してくる
★シャロンはとても美しく魅力的な時と そうでもない時とあって、あのルックスで 結婚に失敗したため男に対して臆病な女の役というのは無理がある。「ウソツケ〜」って感じ。
カラマリ・ユニオン CALAMARI UNION ☆不思議かっこいい。不思議面白い。なんだなんだ?どうするつもりなの?と思いつつクスクス笑わせられながら、ついつい引き込まれてしまった。妙に好きだわ、どの人がどの人なのか解説書が欲しい。DVD買おうかな。男達がわんさか出てくる。総勢15人とのこと。それで名前は一つだけ。フランク。あ、違った、ラヒカイネン(同じくカウリスマキ作品「罪と罰」の主役マルック・トイッカ)だけペッカとか 呼ばれてた。なんで彼だけ違うの?そうそう、彼ヘンな英語だったし。それでフランク達はわずかな金を与えられて、理想郷エイラへと向かうことを命ぜられる。その殆どがサングラスで煙草プカプカ。いつまでも悪ガキの味を捨てられない、弱音を吐きたがらない、少年をとうに過ぎた男達のロードムービーで寓話とも呼べそうな作品だ。エイラへの道は苦難の道、落伍者がまた一人さらに一人。幸運の女神は突然気分を変えて、運命の悪戯をしでかす。
85年フィンランド
マッティ・ペロンパー、マルック・トイッカ、サッケ・ヤルヴェンパー他出演アキ・カウリスマキ監督
食堂に集まった15人のフランクは、理想郷エイラへの期日指定なし方法も問わない旅へと出発する
☆気に入ってしまったシーンがいっぱい。フランク達が会合から出発、闊歩するシーンが渋くてかっこいいよ〜。なんかおっとりとしたどこか人をくったような笑いがたまらない。思わずククククと笑い、あ〜あと同情。妙に味のあるオッサンや妙にかっこいい長身細身の若者とかいる。男二人スクーター相乗りの図、男二人バナナを食らう図、男二人小舟で海に漕ぎ出す図、ツボ鷲掴み、思い出す先からまた観たくなってきた(笑)。 音楽もすごく渋かっこいいんですよね、勢揃いでの"悪ガキロケンロール"もイカすし、一人のフランクがギターを手にしていきなりバンドと演奏する「STAND BY ME」が最高でした。本当に少年をとうに過ぎた男にもひどく似合うナンバーだったんだもの。そしてマッティ・ペロンパーは今回もお素敵。顎あたりで切り揃えた長めの髪を耳にかけてジージャンに薄い色の綿パン(モノクロなので色はわからないのさ)。 まるで「キャリー」よろしく手がニョキ〜と出てくるシーンを始め、渋おかしいシーン満載。あぁ、また観たくなってきた。
カリフォルニア ☆ブラピが「誰?」って位 髭を伸ばしきたなげな格好をしている。しかし話す時に片目をつぶったり 鼻を鳴らしたりする癖や 殺戮シーンでの嬉々としたキレた殺しっぷりなど、こういう役を実に楽しんでいるようだ。カリフォルニアへのツアーに同行する 連続殺人犯の本を執筆中のライターの役が 「X-ファイル」のデビッド・ドゥカブニー。 知的だが どこか興味本位で弱っちいキャラにぴったりはまっている。いいのはジュリエット・ルイス。かわいいし、気立てはいいがちょっと頭の弱い女の子を熱演していて、ブラピ演じるアーニーを「天使の目をしている」というセリフがあったが、天使は彼女だという感じ。存在感そのものがすごくキュート。
93年アメリカ
ブラッド・ピット、ジュリエット・ルイス主演
連続殺人犯の本を書いてるカップルと連続殺人犯のカップルがカリフォルニアをめざして旅に出る
☆恋人を「ママ」と呼び、酒も煙草も許さず 自分好みの従順な女に仕立て上げる・・というところに、この連続殺人犯の心理を匂わせているようだ。プロット自体にはさほど魅力はないが、とにかくジュリエット・ルイスにつきる。
カルラの歌 ☆ロバート・カーライル、出会ったのが「トレインスポッティング」のベグビーだったのが間違いだったと思えてきた。その後もキレ役ばかり見て「フル・モンティ」でチャーミングな人だと思った。でも。この作品の彼はとても繊細でとても人間らしい演技を見せ、私は彼が大好きになってしまった。一つ一つの表情が物凄くいいです。彼とカルラの関係が、同情から生まれた綺麗事でもなく、 興味から生まれた人助けでもないことを 切なく哀しく訴えかけてきて、素直に話に入り込めた。
96年イギリス
ロバート・カーライル主演オヤンカ・カベサス、スコット・グレン出演ケン・ローチ監督
グラスゴーのバス運転手が ニカラグア女性に手を差し伸べ好きになり、内戦のニカラグアを共に訪れる
☆カルラは内戦で危険な状態のニカラグアの舞踏団のメンバーで、支援を求めてイギリスに来ている。何度も自殺を図る彼女をほっとけないジョージ(カーライル)は やがて多くを語らぬ彼女を愛するようになり、消息のわからないカルラの恋人を捜しに一緒にニカラグアへ赴くが、支援に来ているアメリカ人ブラッドリー(スコット・グレン)も他の知人も肝心な話になると口を閉ざす。そしてジョージは カルラとニカラグアの真実を目のあたりにし、大きな衝撃を受けるのだが・・。自由を求めて革命を起こした民衆と反政府の武装軍コントラの戦い、流される血と失われる命の意味、そしてアメリカの軍事的介入の真の目的・・正直このあたりの話は込み入ってて難しい。だが誰もが人間として人間らしく生きる権利を持っていることを考えれば、その痛みに共感することは出来る。悲惨さを強調するような ことをせず、ジョージとカルラの心情をしっかり描いたことで、見る側が重さで潰されない いい映画になったようにも思える。
☆スコット・グレン、ラストにかけてすっごく存在感と魅力にあふれて、彼とカーライルの演技がこの作品の余韻を心地よいものに変えてくれた。本当なら尾をひきそうなつらい映画な気がするんだけど。話の事実はともかく、ケン・ローチもそのようにしたくはなかったのかも。
華麗なる賭け ☆コマ割りで見せるオープニングがオシャレだな〜と思ったら、本編でもコマ割りを使ってきた。画面を五つ六つに分けて 同じ時間の異なる人物の動きを見せたり、ポロのシーンでは画面を三十等分ぐらいにして同一映像を見せちゃったり、すごい遊び心。でも一方で、ミシェル・ルグランの「風のささやき」を哀愁たっぷりに流し、ほんの路地の場面でもとても美しいショットで捉え、雰囲気がある。実は、 ピアース・ブロスナン&レネ・ルッソのリメイク「トーマス・クラウン・アフェアー」を先に観ちゃってるんだけど、元祖のこちらの方が好き。音楽と映像の合わせ方がやはり凄くうまい監督だと思うし、犯罪部分とスマートさという点ではリメイク版の方が上のような記憶があるけど、私は敢えてドラマ部分の濃厚さに軍配あげたいですね。やけにねばってセクシーなチェス場面とか、痛み分けといった感じのラストも好き。 高笑いするマックイーンにセクシーで自信たっぷりのフェイ・ダナウェイ、見応えあります。
68年アメリカ
スティーブ・マックイーン、フェイ・ダナウェイ主演ノーマン・ジュイソン監督
華麗な手口で現金強奪を行った資産家と疑惑を抱いた保険調査員の駆け引き
華麗なるヒコーキ野郎 THE GREAT WALDO PEPPER ☆どうやって撮ったのかと思うような曲芸飛行シーン(特に翼歩きとか)やクライマックスの映画撮影のための飛行シーンなど、目をみはる楽しめる映像が多い。しかし危険がつきものなシーンだけあって、実際ストーリーでも事故が何度も起きるのだが、目を覆いたくなるような事故シーンそのものを見せたりせずに、はっきり事故とわかる 見せ方がかえって悲しみを深めて印象的だ。あっさりした表現の中に感情的なものを見る側に感じ取らせる手法は、「明日に向かって撃て!」もそうだが、監督の趣味の良さとうまさを感じさせる。そういえばレッドフォード自身の監督作品も 描写はわりとあっさりしてるかも。
75年アメリカ
ロバート・レッドフォード主演ジョージ・ロイ・ヒル監督
終戦後、曲芸飛行で生活をたてる腕のいいパイロットの飛行への情熱
☆金髪のレッドフォード演じるパイロットのウォードは、抜群の腕の良さを存分に発揮する場を持てなかった男の やりきれなさとはじけっぷりで確かに華麗である。スーザン・サランドンがキャピキャピと若い娘役で出ており、そこも注目でした。
彼が二度愛したS DECEPTION ☆私にとって最大の見所は、主演男優二人の共演。出だし間もなくの豪華なツーショットには、「あーどっちもじっくり見たい」と目がせわしなく動き贅沢な忙しさ。が。いけてない男のふりが得意なユアン、スマートな男っぷりのよさを発散しまくるヒューの位置関係が、そのまま追い詰められる男と悪役という構図にスライドして、あまりに予定調和というか意表をつく展開というのが全然ないものだから(最後の展開もユアンなら 大いにありうるパターン)両者のファンとしてはちょっと物足りなく思えてくる。キーとなる女性Sに関する部分は都合よく話が作られてる気がするし、サスペンスといっても話が読みやすく細部は結構甘い。でも映像にはいやらしさが全くなくオシャレ。シャーロット・ランプリングは存在だけで作品の格を高めているよう。そこにも伺えるように、俳優のネームバリューと個性に頼っちゃった作品のような、 もっと面白くできたんじゃないかと残念なような思いが残る。
08年アメリカ
ヒュー・ジャックマン、ユアン・マクレガー主演ミシェル・ウィリアムズ出演マーセル・ランゲネッガー監督
孤独な会計士が弁護士と知り合い、秘密クラブと恐ろしい罠にはまる
眼下の敵 ☆潜水艦映画大好きなもんで、これもワクワクで観られる作品。一つ不満なのは、最初から描かれ方の点でも戦闘でも アメリカ駆逐艦の方が優勢なこと。アメリカ映画だからしょうがないけど?Uボートにももっと鮮やかな見せ場が欲しかった。魚雷も爆雷も もっと後になって作られた潜水艦映画の迫力と比べたらやはり規模は小さく感じられるものの、潜航する潜水艦映像や爆雷投下で立つ水柱など 見応えのある映像だ。
57年アメリカ
ロバート・ミッチャム、クルト・ユルゲンス主演ディック・パウエル監督
アメリカ駆逐艦とドイツ潜水艦の艦長同士の共に腕に覚えありの駆け引き
☆戦闘技術だけでなく 人格も立派な艦長二人が、互いの軍人として 人間としての器の大きさを認め合うシーンは感動的だ。二人共に命を奪い合う戦争の無意味さを言わせているのに、知っていても戦わなくてはならない業のようなものさえ感じてしまうラスト。ちょっと複雑な気分だ。だが、全編通して特にクルト・ユルゲンスの眼光鋭い不敵な表情は大変魅力がある。
間諜最後の日 THE SECRET AGENT ☆若いジョン・ギールグッドが見たかったというのが一番の理由。それでヒッチコックの映画で原作がサマセット・モームときたら、ある程度の面白さは保障されたようなもの。とはいえ、ストーリーの流れには、まさかそんなと思うような甘さというかあぶなっかしさ(笑)も感じられるのだけど、それでも最後までしっかりひっぱってくれた。サスペンスでありながらロマンスあり、コメディありと十分楽しませてくれるし、 ギールグッドの相棒の怪しいメキシコ人を演じたピーター・ローレの芸の細かい演技が目をひきつける。そしてそしてギールグッド演じるアシェンデン本名ブロディ。いいですねぇ、長身で身のこなしがエレガントで。本当に情報部員?と心配になるようなおっとりした感じがまたいいんです(笑)はにかんだような笑顔とかね、おじい様になられてからのギールグットしか知らなくて好きだったんだけど、若い頃から素敵ですねぇ。
36年イギリス
ジョン・ギールグッド主演ピーター・ローレ、マデリーン・キャロル、ロバート・ヤング出演アルフレッド・ヒッチコック監督
イギリスの情報部員が敵のスパイを消す指令を受け、スイスに向かう
ガントレット THE GAUNTLET ☆伝説のハチの巣映画ですね。一斉射撃で家一軒壊してしまうし、ラストのバスに撃ち込まれた実弾五千発だったか八千発だったか・・数人の人間を始末するためにこんなに撃つか?というほどの半端でない銃撃こそがポイントになっているでしょう。イーストウッドファンになった頃に、この作品も見まくった。「俺を選んだのが間違いだったと示してやるんだ、自分自身に」というしがない警官の意地がハリー・キャラハンとは違う魅力に なってたんですねぇ・・しがないといってもイーストウッドかっこよかったし。当時の恋人ソンドラ・ロックとの共演作としてもたぶん最初に観たものだったと思う。そのせいもあるだろうが、ソンドラ自身もハスッパながらインテリの娼婦という役どころにはまっており、彼女が一番魅力を発揮している作品だとも思う。
77年アメリカ
クリント・イーストウッド主演、監督ソンドラ・ロック、パット・ヒングル出演
裁判の証人である囚人の護送を任された警官が、囚人共々命を狙われる
カンバセーション−盗聴− ☆若きハリソン・フォードを見ようと思ってたら、こんなに面白い作品だとは!もうけもの〜という気分。冒頭の 空撮で群集をとらえ、徐々に絞り込んで動きを追っていく撮り方や、バックに静かなジャズピアノが流れる雰囲気の良さで 好みだな〜と思っていたら、クライマックスのハラハラさせるサスペンス色、どんでん返しの オチ、皮肉なラスト・・と素晴らしい展開で、すごく気に入ってしまった。(コールに仕掛けられた盗聴器は○ッ○スにあったと思うんだけどなぁ。)
74年アメリカ
ジーン・ハックマン主演フランシス・F・コッポラ監督
盗聴のプロが依頼された事件に深く巻き込まれてしまう
☆盗聴のプロ、コールを演じるジーン・ハックマンが42歳という設定で うんと寂しい頭なのは愛敬でしたが、味のある巧みな演技でとてもいい。フレデリック・フォレストも若い。そしてハリソンの若さ!かっこよさ!依頼主のキレ者の助手の役なのだけど、これがすごくクールで主人公を追いつめてく役で 思いきりときめいた。もっと早く 生まれててリアルタイムで見てたら、目つけてただろなぁ〜なんて思うんだけど、今だからそう思うのかも。
歓楽通り RUE DES PLAISIRS ☆第二次世界大戦末期のパリの娼館が舞台。娼館で生まれた男の子プチ=ルイの夢は、大人になって女性のお世話をすること。洗濯やら靴磨きやらかいがいしく娼婦達のお世話をしていたプチ=ルイは、これこそわが求めていた女性と思う新入り娼婦マリオンと出会い、彼女を幸せにするために尽力する。いつか有名になって・・と夢見るマリオンと、そんな彼女のために生きるプチ=ルイの二人三脚の物語でもあるけれど、 私はやはりプチ=ルイの愛の物語だと思いたい。母は娼婦、父は客、父のいない彼のマリオンへの愛は父親の庇護を思わせるような愛。沢山のママン達(娼婦達)にかわいがられ愛されて育った彼は、子供の純粋な心を持ったまま体だけ大人になったかのよう。マリオンへの愛は、小さな少年が美しい大人の女性へ抱く憧れと賛美の情のよう。「自分ではマリオンを笑顔に出来ない」と言うプチ=ルイを見ていると、もし彼が 女性達が胸ときめかすような容姿の持ち主だったらどうなったのだろう?と思わせる。背も低く、ずんぐりとしたおじさん体型の彼は、大人になっても呼び名にプチがついたまま。・・男性ではないのだ。「歌は素敵だけど歌声はそんなに?」と思える程度に感じられたマリオンの歌唱だったので、彼女のとんとん拍子の成功がちょっと納得いかないんだけど、スーパーモデルであるレティシア・カスタは美しい。 娼館の内側から娼婦達の悲喜こもごもを愛をこめて描いたような雰囲気は好きだし、音楽がとてもいい。始まり方と終わり方も好き。まるで寓話のようなプチ=ルイの話としてとらえれば、作品全体もかなり好きだ。そう、ひっかかるのはマリオンの成功だけ・・。
02年フランス
パトリック・ティムシェット、レティシア・カスタ主演パトリス・ルコント監督
パリの娼館で生まれ育った男プチ=ルイが、心から愛した娼婦マリオンを幸せにするために尽くす
