

| 作品一覧 せ 正義のゆくえ、世界中がアイラヴユー、セックスと嘘とビデオテープ、セッション9、絶体X絶命、セブン→こちら、セブン・イヤーズ・イン・チベット、戦火の勇気、戦場のピアニスト、戦争のはじめかた、センチメンタル・アドベンチャー、千と千尋の神隠し、セントラル・ステーション、1408号室、戦略大作戦 そ 相続人、ソードフィッシュ、卒業、ゾディアック |




☆ハリソン・フォード演ずるマックスは、不法滞在移民を取り締まるI.C.E.捜査官で、突入捜査した施設にいた若いメキシコ女性から幼い息子がいると嘆願されて振り切ったばかり。そのメキシコ女性の家族の話で始まり、市民権を欲しがるユダヤ人の若者やグリーンカードが欲しいオーストラリアの女優の卵、ずっと施設に入れられたまま里親が見つからないアフリカ難民の少女、テロ実行犯を人間扱いするべきだというスピーチをして危険分子扱いされるイスラムの少女、マックスの同僚で市民権を得ているイラン人とその家族、 近く市民権を得られる韓国人の少年とさまざまな移民の話が出てくる。それらはバラバラに語られているようでいて、微妙にリンクしてくるし、話が終焉に近づくにつれきちんとある方向へとまとまりを見せていく。そこには影もあれば光もある。もともと移民国家であるアメリカ、そしてその国はもうかつてほど成功を約束してくれる力は持っていないと思われるのだけど・・見ていて複雑な思いにさせられる作品だった。不法入国者を取り締まる必要があるのは勿論だが、その対応が時に非人間的な結果を招くこともあること、 そして何より格差というものの痛ましさを強く感じ、よそごとではないという気にさせられた・・。
世界中がアイラヴユー EVERYONE SAYS I LOVE YOU ☆絵が綺麗だなぁ・・とうっとり見ていたらいきなりエドワード・ノートンが歌い出すので吃驚した。ノートンのみならず、ウディ・アレンもティム・ロスもアステアみたいに歌い出しちゃうのである。女性陣も負けちゃいない。ドリュー・バリモアやジュリア・ロバーツ、ゴールディ・ホーンもミュージカルの恋するヒロインみたく歌っちゃうのである。 とにかく彼らが自分で歌ったというのが凄い。ほほえましくて凄い・・ということで歌唱力のことはおいておきましょう。ノートンのダンス(というか足さばき?)なんて「なんでこんなことやってんのよ〜」と笑ってしまう。なんかかわいくて。うまさじゃなくて、気分はミュージカルってやつです。ミュージカル全盛期はジェームズ・スチュワートだって リズ・テーラーだってやらされたんだ。そんな感じ。
96年アメリカ
ゴールディ・ホーン、ジュリア・ロバーツ他出演ウディ・アレン監督出演
夫婦と子供達、妻の元夫と恋人の一年間をミュージカルタッチで描く
☆ストーリーは悲喜こもごもをさらっと描いてる感じで、ドラマティックでは全然ない。アレンの辛辣さも感じられない。ラストの金色に輝くセットとゴールディのフライングはとても綺麗でした。みんな中流より上って感じの幸せそうな顔と雰囲気の中に、一人めちゃくちゃ異色な顔して飛び込んできたティム・ロスの存在感が目立つかな。
セックスと嘘とビデオテープ SEX, LIES AND VIDEOTAPE ☆凄いわ、この脚本。ソダーバーグはまさに天才肌。百発百中でなくても当たると凄い威力。ゴミが減らない話、鍵は一つでいい話、深遠なる性の話、姉妹の間の赤裸々な競争心(彼女達が母親のプレゼントについて言い合いする会話は秀逸)、相手が自分にとって大事であるほど見せたくないような、ふれたくないような心の奥深い正直な部分をふっと見せるような脚本。暗い心の襞をそっと広げて、でも光を当てるんじゃなくて、直接手探りで確かめていくような・・そんな感触にゾクッとする。 それが一回じゃないから ゾクゾクゾク・・・。スペイダーは性体験などについて語る女性をビデオに収めるのが趣味で、マクダウェルが彼にビデオを撮らせるシーンがあるのだが、その時間的な流れ・ストーリー上の流れ・ビデオ映像の使い方が素晴らしい。本当にうまい。スリリングな程の昂揚感を感じさせ、ラストは癒しのような心地よさ。いいなぁ・・。
89年アメリカ
ジェームズ・スペイダー、アンディ・マクダウェル主演ピーター・ギャラガー出演スティーヴン・ソダーバーグ監督
美人の妻の妹と関係している弁護士の 昔の友人が突然泊りに来る
☆揺れる女心(そういうとなんか安っぽいけど)を微妙に演じたマクダウェルもうまいけど、なんてったってジェームズ・スペイダー、この人最高にいいじゃない。さすがカンヌでグランプリとるだけのことはある、たまらない魅力に溢れてる。
セッション9 ☆風邪薬飲んで観に行くんじゃなかった〜、前半何度か意識が朦朧とする破目に・・なのに暗く青味がかった映像や登場人物達の話し声が意識下に働きかけてくるのです。お陰で、上映中 映画館の通路を歩いてるゴキブリさんまで見つけちゃったよ〜夢かうつつかその狭間を行ったり来たりで これも結構怖い体験でした(笑)。それでも大体の流れはわかってるつもりだけど、ビデオ出たらもう一度見直します。きっとチョコチョコ見落としてるに違いないもの。
01年アメリカ
デビッド・カルーソー、ピーター・ミュラン出演ブラッド・アンダーソン監督
廃墟となっているダンバーズ精神病院のアスベクト撤去作業についた作業員達が 病院の過去に精神的影響を受けていく
☆一週間で終わらせる契約のアスベクト除去作業のために毎日、今は廃墟となっているダンバーズ精神病院を訪れる五人の作業員達。かつてさまざまな恐ろしい治療が行われたその痕跡をあちこちに残し、そこにいるだけで、そこの空気を吸うだけで、彼らの内面に沁み込んでくるかのような異常性と恐怖。一緒になって目をこらしていると、なんか余計なものが見えちゃいそうで怖い。いやね、実際ハンクの頭の近くをヒョイヒョイ動く小さな光を見たのだけど、 アレは何なの?(心霊スポット番組見過ぎか^^;) 衝撃的な瞬間にブツッと切れる映像と音声、電力が落ちて (以下ネタバレ。反転させてどうぞ)地下通路の端から電灯が消え始め、暗闇に呑み込まれそうになりながら逃げて走るシーンが特に印象に残っている。アレは怖い。しかし何より怖い気がしたのは、精神の異常性というものが ある特別な人間のみが持ち合わせるものではなく、異常な環境・異常な事象などにふれることにより まるで共鳴するかのように 一見正常な人間の中から引き出されてくるということ。 隠されていた別の人格のように、平素はただ意識下に眠っているだけかも知れないということ。かつて精神病院では、患者のみならず医師やスタッフもが 本人の知らない別の人格に支配されていたのかも知れない・・。
絶体X絶命 ☆マイケル・キートンはバットマンより悪役の方が似合うと思う。刑事の息子の骨髄移植に協力すると見せかけて、逃亡計画を練り、親指の関節はずしちゃうところなんか良かったんだけど、さて まんまと逃げ出してからどうするつもりなのかがなんだかよくわからなくて、(何やるつもりなの、このオジサン)て感じなのがかなり興ざめ。アンディ・ガルシアは ラスト近くの橋の上での対決シーンはかっこよかったんだけど、ちょっとこの刑事、あまりに勝手過ぎないか?息子助けるためには 重罪犯に死なれちゃ困るってんで、追う警察から彼を守ろうとして、逆にどんどん死傷者出しちゃうし。子を愛する父の信念はいいっすよ、確かに。でもこの人刑事なんだよ?このままで済むと思うなよ〜という感じなんですが、 そこのところはなぁなぁで終わっちゃうし、どうも腑に落ちない話だった。
98年アメリカ
マイケル・キートン、アンディ・ガルシア主演
刑事の息子の命を救える骨髄移植の唯一のドナーは 服役中の重罪犯だった
セブン・イヤーズ・イン・チベット ☆この映画は好きだ。子供の誕生から逃げるようにしてヒマラヤに挑んだ登山家が、イギリス軍の捕虜になり、逃げ出した苦難の道中の末、チベットの聖都ラサに着く。そこで異国に強い関心を持つ若きダライ・ラマの教育係となり、チベットでの生活が彼の奢った性格を変えていく。世界で最も高地にあるため 神の国に近いとされるチベットの地は 、本当に神の懐に抱かれているような神々しい程の美しさだ。ダライ・ラマ少年が愛したオルゴールから流れる「月の光」や エンディングのヨー・ヨー・マのチェロも素晴らしい。音楽はジョン・ウィリアムズ。中国の拒否に会うのも納得の内容で、スカッとするものではないが とても深みと趣があると思う。
97年アメリカ
ブラッド・ピット主演デビッド・シューリス出演ジャン・ジャック・アノー監督
第二次世界大戦中のオーストリアの登山家ハインリヒ・ハラーとダライ・ラマとの交流を描く
☆ブラピが硬軟自在の演技で とても好感が持てる。ダライ・ラマの年齢別に三人の少年が演じているが、どの子も大変愛らしい。なんか目がいいんですよね。あとマコ岩松も出演してます。個人的には ダライ・ラマとの交流より登山仲間ペーター(デビッド・シューリス)との友情が好き。互いに強情でかわいげのない二人がすごく好きです。
戦火の勇気 COURAGE UNDER FIRE ☆デンゼル・ワシントンの重厚な演技、ラブコメの女王が「こんな役も出来るのよ」とばかり 砂埃にまみれて熱演、驚いたのはマット・デイモン。従軍時の顔と帰還後の顔が全然違う。酷い事実を黙認するしかなかった心の傷のために 痩せて上辺の明るさを装った役作りだとしたら・・大した演技派である。部下を砲撃してしまった件を 軍がもみ消した 真実を探る新聞記者にスコット・グレン。その渋さ、名脇役としての存在感。役者達の演技が光る。
96年アメリカ
デンゼル・ワシントン、メグ・ライアン主演エドワード・ズウィック監督
叙勲候補の殉死女性士官の真実を 誤認で部下を砲撃死させた士官が追う
☆女性士官の死の真実を探るところは サスペンス仕立てだが、余計なものを削ぎ落とし手堅くまとめられた作品。娘役の女の子の顔の特徴がメグ・ライアンによく似ていて、じわっと感動させられる。
戦場のピアニスト THE PIANIST ☆初めの、シュピルマンが演奏中に爆撃を受けて脅えながらも演奏をやめないシーンでもう涙で画面が滲んだため、どうなることかと心配したか、最後までしっかり観られた。実在のピアニストの回想録を自らもゲットーで過ごした経験を持つポランスキーが映画化。最初はユダヤ人である印の腕章をつけて歩いている老人がドイツ兵に酷い扱いを受けているシーンで心が痛んだが、事態はどんどん酷くなる。ユダヤ人居住区ゲットーに住まわされ、路上で人が倒れているのを何も出来ずに見守るシュピルマン。いつしか人はそんな状態に慣れていき、 やがてシュピルマンは倒れている子供(もう死んでいるのだろうか)の上をまたいでいく。誇張されたシーンなど全くなくて、全てただ目撃している気分だ。作為的な"泣かせ"など必要ない、きっとシュピルマンやポランスキーが見てきたものそのものを見せたかったのではないだろうか。撃たれて崩おれる人間の体。そして二度と動かないその体。見てももう涙も出ない。一家は沢山のユダヤ人と共に強制収容所へ送還されることになる。仕事も家も人間らしい生活も奪われ、すぐ目の前に迫る死の気配と飢え。そんな状況になった時、最後まで大事にしたいものは何だろうか・・と 考えさせられた。人間としての尊厳を捨てて、命を惜しむ者もあれば食べ物を奪う者もいる。金を得ようとする少年もいれば罪の意識に苛まれる女もいるし、家族と一緒にいることを選ぶ者もいる。中でもひどく悲しかったのは、空の鳥かごを提げて泣いている女の子。人間がこんなに飢えているんだもの、鳥はもう死んじゃったに違いない。でもこの子がゲットーを出る時には大事に選んだものだったのだ。シュピルマンは収容所送りを免れる。ポーランド人に助けられて隠れて暮らすようになり、音を立てられないので目の前のピアノを弾くまねする。 この時のショパンが明るい曲調だったのは、とりあえず助かったと思ったシュピルマンの心の高鳴りだろうか。しかしそんな生活も長くは続かず、やがてロシア軍の攻撃のためまわりはすっかり廃墟に。食べ物を求めてはいずりまわる日々、遂にドイツ将校に見つかりピアノを弾かされる。シュピルマンがやっと見つけた缶詰(ズッキーニみたいなの?)を決して離さないあたりには心がやわらいだが、彼の「バラード第一番」は心に沁みた。労働とすさんだ生活ですっかり荒れた手、息が白いほど寒い部屋で触れた鍵盤は凍るほど冷たかった筈だ。何を弾こうか迷いもしただろう。でも情熱が 迸るような彼の演奏には、廃墟の中 すでに敗戦が見えていたであろうドイツ将校の胸にも去来した何かがあっただろうことは想像に難くない。ラストのコンサートホールでの演奏シーンは素晴らしい。ショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」の晴れやかさ、この作品で最も映画らしい 形容し難いんだけど豊かな満足感とでもいおうか、それを十二分に感じたシーンだった。ここでずっと演奏するシュピルマンの手を大写しにしていたのがとても良かった。ピアニストの手、神が与えたこの手が彼を生かし続けた。強制労働には向かず、戦うことも出来ず食べるわけにもいかないこの手が、彼だけに 出来ることをさせた。人間の知的財産や芸術的財産の底力を強く見せてくれたような気がしたラストだった。最後になったけど、ブロディは「ブレッド&ローズ」の時にも感じたどこか飄々としたフットワークの軽さで この役を人間として人間らしく演じているのがとてもいい。自前の大きな手によるピアノ演奏シーンも素晴らしい。
02年フランス、ドイツ、ポーランド、イギリス
エイドリアン・ブロディ主演エミリア・フォックス、トーマス・クレッチマン出演ロマン・ポランスキー監督
ポーランド系ユダヤ人ピアニストがゲットーに住まわされ、強制収容所行きを逃れて生き抜きながら見たワルシャワの姿
戦争のはじめかた BUFFALO SOLDIERS ☆五度も公開延期になったのは、情勢を考えれば無理からぬことだろう。戦う相手がなくて暇を持て余し、目的を失ったエネルギーが別な面にばかり向けられている、平和ボケしてまるで英気を失った軍人達のゆるゆるぶりをブラックに描いているのだから。でもコメディというには真面目だし、それでいて笑える。愉快な笑いというよりは苦笑だけど、それがまた結構面白く見られる作品に仕上がっている。キレる頭と立ち回りのうまさで、物資横流しやヘロイン精製で小金作りに励む若者エルウッドにホアキン・フェニックス、転んでもただでは起きないという感じの面構えがいい。そして実際このエルウッドが 懲りないヤツで。彼の上官バーマン大佐がエド・ハリス。これが驚き、"向かない"軍人の役ですから〜残念!とは言わない(笑)小心なくせに昇進を狙って失敗する傷心の大佐がなかなかお似合いなんです。その妻はエリザベス・マクガバンだった・・がふけました、さすがに(汗)。そして軍のテコ入れにやってきた新任リー曹長がスコット・グレン。彼の登場で話が俄然面白くなった。鬼曹長ににらまれて面白くないエルウッドは、曹長の娘(アンナ・パキン)をデートに誘う。そしてエルウッドと曹長の関係は悪化を辿り・・まぁ、物語自体はあまり大きくはない。個人規模の話が中心だ。しかし、 戦うことを覚えると戦わないことが退屈になるらしいこととか、好戦的な人間や気短かな人間に限らず日和見主義の人間でも、とりあえず戦うことは出来ること、金のため愛のため名誉のため正義のため憎悪のため復讐のため欲望を満足させるためetc...戦う理由はいくらでもあって、いくらでも作れて、だから戦争はなくならない・・そして映画だから笑って見てられるようなことを実際にやってたり考えてる人間がいるとしたら?(日本にも米軍基地はある)そう思うと、このブラックコメディをやはり真面目に見てしまったりするのだ。
01年イギリス、ドイツ
ホアキン・フェニックス主演エド・ハリス、スコット・グレン、アンナ・パキン出演グレゴール・ジョーダン監督
1989年、シュツットガルド駐留の米陸軍で物資横流しやヘロイン精製に精を出す若者の所へ鬼曹長がやってくる
センチメンタル・アドベンチャー HONKYTONK MAN ☆肺を病んでいるのに酒と煙草をやめられない。サナトリウムに入るべきなのにあんな生活は嫌だと拒否して歌う。不器用に自分勝手にしか生きられなくて、愛する人を沢山傷つけて泣かせて、口にすることも出来ないけれど本当は愛してるよ愛してるよ・・と心の中で痛いくらい呟いてる男・・そんな男の生き様を正面から見せようとした作品。銃に頼らずギターをつまびき歌うイーストウッド。私はピアノを弾く彼の方が好きだけど、何曲も歌を聞かせてくれるというのは極めて貴重。ズタボロになる彼というのは珍しくないが、誰かに痛めつけられるのではなく病に倒れるというのは極めて貴重。伯父に連れ添い、愛いっぱいに その姿を見つめ続ける甥っ子ウィットの役は、実の息子カイルだ。この父子共演が見られるのも極めて貴重。カイルは、スレンダーなところや細面なのはお父さん譲りといえそうだけど、顔立ちはお母さん似のようですね。パパの方がいい男(ごめん・笑)。邦題、アドベンチャーという言葉の響きほどのわくわくさせる広がりはこの作品の世界にはないものの、センチメンタルはいい線。まさにこのセンチメンタルさは、80年代から90年代始めの頃のイーストウッド監督作品に顕著に見られるものだと思うから。うまく言えない親の情とか男の愛を不器用に見せたものが多かった。この作品は、そんな部分が凝縮された異色の一本とも言えそうだ。
82年アメリカ
クリント・イーストウッド主演、監督カイル・イーストウッド出演
体を壊していながらナッシュビルでもう一花咲かせようと甥を連れて旅に出るカントリー歌手の物語
千と千尋の神隠し ☆始まって間もなく「いい感じ。この作品はきっと気に入る」とピンとくる作品がたまにある。転校で別れの花束を握り締め、車から新しい学校に不満気な視線を投げる千尋を見た途端、予感がきた。特にかわいくもなく強くもなく、でも特にトロいわけでもなく性悪でもない「普通」がキーワードのヒロイン。でも充分素直で優しい子だと思う。「働かざる者食うべからず」が信条のような 神々が湯治にくる 湯屋で、豚にされた両親を助けるため、優しくしてくれたハクの危機を救うため、ただ一生懸命な千尋。ラスト、代わり映えのしない両親と現実世界に戻っていく千尋を見ていてもすがすがしい気分にはなれなかったけれど、でも自分の気持ちに素直に 出来ることを一生懸命やる彼女の力にはひきつけられた。
01年日本
宮崎駿監督
引っ越してきた街にあるトンネルを両親と通り抜けた千尋は 不思議な街で千という名で働くことになる
☆前半、釜爺やリンや湯湯婆が千尋に諭す言葉(「手を出すのなら最後までやれ」とか「ボヤッとしてないで礼を言え」とか「ノックもしないのか」とか)は、悪気はないけどぼんやりしてた私も こうるさい大人達から細かく言われて 「わかってるよ」と内心ぶんむくれた記憶を呼び覚ましたけれど、個を尊重する 時代が来て 口うるさく言ってくれる他人が殆どいなくなった今、巷では傍若無人な振る舞いが目につくようになり、(どうしちゃったの、日本人)と思うような信じられない事件もふえた。日本のよき伝承・伝統が忘れられつつある今だけど、そう、思い出せないだけで根底にしっかり根づいている筈なのだと思いたい。
☆両手を差し出して「アー・・」ひっこめて少しのけぞって「エ・・」とやるカオナシごっこを娘とやってるくらいなので(笑)寂しがりで自分がないコミュニケイト下手のカオナシもお気に入りなんだけど、私のイチオシキャラはリン。結構美人でイイ女なのに あの気風のよさと姉御っぷり。いいよね、リンさん(笑)。
セントラル・ステーション CENTRAL STATION ☆ヒロインのドーラは、元教師であったことから読み書きの出来る独身の中年女性。過去に沢山のつらい思いをしてきたのであろう彼女は、せちがらい世の中で生き抜く知恵を身につけ身を守るために、パサパサに渇いた心の女性になってしまっていた。そんな彼女が9歳の少年ジョズエと出会い、母親を亡くして身寄りのない彼の 何年も会っていない父親の元への旅に付き添う羽目になってしまう。共に口が悪くて素直でない二人はちょっと似た者同士でもある。憎まれ口をたたきながら、互いに相手が気になってしょうがない、離れられない。社会人としての建前の向こうに人間臭さを見せる ドーラと 強気で大人顔負けの勘の鋭さであるもののやっぱり子供のジョズエのやりとりが、クスリとさせて微笑ましい。好きなシーンは、心労で倒れたドーラの頭を膝にのせて優しく髪を撫でるジョズエ。わかるよ、この感じ。9歳の子供って、まだまだ幼くて頼りないと思うから自分がついててやらなきゃと思わせる。ところが自分がヘロヘロな時、その小さな手や細っこくて固い膝小僧の温かさ・力強さにどんなに自分が癒され、力づけられるかに気づかされたりする。小さくたって大きな存在感を持つ立派な一人の人間なんだよね。そのシーンあたりから急速に距離を縮める二人の表情がどんどん素敵になっていく。ラストへ向かっていく フェルナンダ・モンテネグロの演技が素晴らしい。父を想うジョズエのひたむきさと彼の両親の愛の真実が、ドーラを変える。つらい経験が それ以上悲しい思いをすまいとドーラの中で否定的な意味合いを持たせてきた全てのことが再び命を得たように、素敵なワンピースを着て口紅をさしたドーラにみずみずしく蘇るその瞬間が本当に素晴らしい。熱っぽく渇いたブラジルの空気の中で貧しくともたくましく生きている人々の姿と、その純粋な信仰心があるからこそ、さらに魅力が光り輝くよく出来た作品だと思う。
98年ブラジル
フェルナンダ・モンテネグロ主演ヴィニシウス・デ・オリヴィエラ出演ヴァルテル・サレス監督
リオの駅で代筆業を営むドーラは、父親に会いたいと代筆を頼んできた少年の父親探しの旅につきあうことになる
1408号室 1408 ☆原作を先に読んだので、どう映像化したのかと気になっていたのだが・・キング自身の解説もうまく取り入れて、短編を一本の映画にしているから主人公の背景や1408号室で起こることもうんと膨らませてボリュームを出していた。たった一人での密室劇のような熱演、体型もかなり貫禄が出て、神も霊も超常現象も信じないホラールポ作家という役柄にマッチしていたジョン・キューザック。興味半分面白半分で1408号室に宿泊したがる作家をなんとか踏みとどめようとする支配人のサミュエル・L・ジャクソン。二人の駆け引きも見所だったし、1408号室内での現象にも幾つか「おお」と思わせるものがあった。 通りを隔てた向かいのビルの人物とか一時間後に起きたこととか。とはいえキングの小説を映像化するのはやっぱり難しいような・・筋立てが魅力そのものではないことの証といえるのだろうか。
07年アメリカ
ジョン・キューザック主演サミュエル・L・ジャクソン出演ミカエル・ハフストローム監督
怪奇ホテルで一晩過ごした体験を本にしている作家が、自殺者が続出したというドルフィンホテルの1408号室に強引にチェックインする
戦略大作戦 KELLY'S HEROES ☆面白いですよ、これ。捕虜で連れてきたドイツ軍人から大量に隠された金の延べ棒のありかについて聞き知ったケリー(イーストウッド)は、それをこっそり頂戴しようととんでもない作戦を立てる。文字通り金に目が眩んだ兵達が協力を約束し、遂にジョー軍曹(サバラス)率いる一小隊が遂行することになってしまう。成り行きで話を聞きつけたオッドボール(サザーランド)も戦車を提供することに。笑わせるメチャクチャな話なのだが、みんな大真面目にやってるんですね、これが。考証も大変正確にされてるらしい。だから面白いんだな、こんなに。いわゆる常軌を逸脱したとんでもない人間の話というよりは、こんなヤツいそうだなと思わせる登場人物達なのだから。 機銃が重くて、金払うから持ってくれと頼んだり、隊長は用事のついでにヨット運んで 喜び勇んでパリに出かけてったり、味方に砲撃されて通信で怒鳴り込んだり。個性豊かな兵達も面白いけれど(ハリー・ディーン・スタントンがいた!)メインはケリー、ジョー軍曹、オッドボールの三人かな、やはり。元中尉だけどいわくつきで今は位なしのケリーは、クールな切れ者だが何しろ言い出しっぺはこやつ。海千山千のジョー軍曹や一見調子のいいオッドボールでさえびびるようなことを平気で言い出す。イーストウッドが目を細め眉をひそめるお得意の表情でサラッとこなしてます。ジョー軍曹のテリー・サバラスいいですねぇ。あんな目で見られちゃついていきますって、どこまでも。情のある鬼軍曹だわな。オッドボールのドナルド・サザーランドは とにかくうまい。彼と相棒モリアーティ(いい名前だ・笑)との悲観論談義には笑った。ジョー軍曹とオッドボールがビビリまくったタイガー戦車のぶっ潰し方も見ものでした。
70年アメリカ
クリント・イーストウッド主演テリー・サバラス、ドナルド・サザーランド出演ブライアン・G・ハットン監督
ドイツ軍の金の延べ棒を略奪すべく、休暇利用して勝手に敵地に進軍した連合軍の無謀な野郎どものお話
相続人 THE GINGERBREAD MAN ☆原作はジョン・グリシャム。負け知らずの弁護士(ブラナー)が 雨の中 車を盗まれたパーティーのウェイトレス(ディヴィッツ)を家まで送り、彼女の事情と色気にほだされ救いの手を差し伸べる。彼は法廷で父親の暴力を立証、女性を守ろうとするのだが、強制収容の精神病院から父親が逃走、危険が自分の身にもふりかかってくる・・というものだが・・。しかし見てる側にはもう初めのうちに胡散臭さに気づかされてしまうから、 巻き込まれる弁護士がただ哀れに見えるだけ。情事に目がくらんだとしか思えない。アルトマンの語り口は正直すぎて、観客まで巻き込んではくれなかったようだ。
97年アメリカ
ケネス・ブラナー主演エンベス・ディヴィッツ、ロバート・ダウニーJr.、ロバート・デュバル出演ロバート・アルトマン監督
父親の暴力と監視に悩まされる女性に保護を求められた弁護士が 罠に落ちるように警察から追われる身となる
☆女性の父親を演じたロバート・デュバルが ハゲでロン毛で裸足、ホームレスの親玉といった風格で凄い。酒好き女好きの探偵役ダウニーJr.の持ち味がいい。弁護士の妻がファムケ・ヤンセン、助手はダリル・ハンナと長身スマートな美女二人がイカしてる。洗練された彼女達ゆえ、依頼人のディヴィッツのやや崩れた淫らな雰囲気が引き立ったとも思えるが、どう見てもファムケやダリルの方がイイ女なのよねぇ・・。そこも説得力弱めてるかなぁ。
ソードフィッシュ ☆一目で手がこんでるとわかる凝った映像、意図的にピントをぼかしたり合わせたりして緊迫感を出すなどシャープな雰囲気だけど、意外にも私はカーチェイス銃撃戦や宙づりバスのような わかりやすい見せ場の方が気に入った。最初の爆破シーンや崖を転がり落ちるシーンを凄いとは思うのだけど、見ながら 吹っ飛んだのが人間であること、転がってるのが人間であることをふと忘れたからだ。 その後に続く人間を撮ってるシーンに 自分の感覚がスムーズについてこない。顔を上げるドン・チードルも 服が破れたヒュー・ジャックマンも別な場所の人間みたいに感じられたのだ。この違和感がなんとなく最後まで尾をひいてしまう。映像の罠が張り巡らされてるそうだけど、騙される前に まず違和感ゆえに信じてないというのが私の場合、問題だったかも。
01年アメリカ
ジョン・トラボルタ主演ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー出演ドミニク・セナ監督
前科者の元No.1ハッカーが カリスマ的な悪党から犯罪に加担するハッキングを依頼される
☆しかしこの作品のキャスティングは好き。悪党のトラボルタ、優しい目をしてながら その目の中に「何もなくすむ筈がない」と不安にさせる怖さがある。そして追手を撃ちまくる時の狂気の表情。もうお得意というか余裕で演じてる感じがする。ヒュー・ジャックマン、役者の器としてはトラボルタにまだかなわないけれど、彼に惚れてる私としてはうっとりほれぼれ〜(笑)。露出度も大サービスのハル・ベリーは キュートだし、トラボルタの右腕的存在ヴィニー・ジョーンズは個性の強い悪党面が光り、上院議員サム・シェパードは ふけて驚いたけどシャープなラインは今も素敵。ドン・チードルの使い方がちょっと惜しいかな。
☆随所に同時テロを思い起こさせるシーンやセリフがある。アメリカの自由を守るため、ある程度の犠牲など安いものだと言われると、ちょっと背筋が寒くなる。守るべきは国か自分の生活か。ゲイブリエルとスタンリー、二人の対比は深い。
卒業 ☆昔見た時は、ベンの虚脱感とサイモン&ガーファンクルの音楽、あまりに有名なラストの鮮やかさが強く印象に残ったものだった。年月を重ねて何度も見るうちに、まるで詩のように情況を的確に見せる映像に魅せられた。ロビンソン夫人の必死の抵抗の時の降りしきる雨、エレーンを追って車を飛ばすベンのはためくフード、 どれもが実に鮮やかだ。全裸のロビンソン夫人のサブリミナルのようなカット、プールのきらめく水の色、すべてのカットが素晴らしい。S&Gの音楽も聞き入ってしまう。これはやっぱり名作だ。
67年アメリカ
ダスティン・ホフマン主演アン・バンクロフト、キャサリン・ロス出演マイク・ニコルズ監督
大学を首席で卒業したペンはロビンソン夫人との不倫とその娘エレーンへの愛で虚脱感から脱け出す
☆悪女だと思ったロビンソン夫人が、今見るとその行動にも納得がいく寂しい女に見える。でもセクシーでしたたかなのはただ者じゃないけど。ダスティン・ホフマンはやっぱりいい。ソツがないようでも、自分のしたいことさえわからずいらだつ焦燥感と、愛のために暴走し どぶねずみのような風貌で微笑む純粋さがいい。 そしてキャサリン・ロス。かつてのマイハニーでしたが、母親と寝た男を愛し続けることは苦しくないでしょうか・・。
ゾディアック ZODIAC ☆「ダーティハリー」がとても好きなので、その意味でもはずせない作品だったのだが、トースキー刑事とグレイスミスが劇場で観賞、ハリーのようなわけにはいかないトースキーの途中退場に同情しつつ、あの作品のモデルについていろいろ知ることが出来たのは収穫だった。それはともかく、これはゾディアック事件そのものを描くというよりは、解明に携わって自分の人生をガタガタにされてしまった男達の物語。「セブン」と兄弟関係のような作品だと思った。 「セブン」は、犯罪者の偏執をとことん最後まで見事に描ききって見せた作品。そしてこの「ゾディアック」は、追う側の偏執である。計画的な犯罪者というのも、何か自分にしか出来ないという特別な使命感を持って犯行に及ぶことも多いと思うのだが、解明困難な犯罪者を追う側も、同じように「この犯人を突き止めるのは自分だ」という使命感を抱くものなのかも知れない。担当刑事トースキーは別として、新聞記者エイブリーやイラスト担当のグレイスミスなどは、明らかに 犯人と対峙するにふさわしい自分というものを意識していたのではないかと思われる。刑事の勘が「こいつだ」と思わせるのに、ことごとく鑑定で裏切られる無念さ、状況証拠だけでは起訴に持っていけないというトースキーの歯がゆさは、ハリーとの共通項でもあり興味深かった。ムービーメイカーとしてのフィンチャーの偏執ぶりもたっぷり盛られているし、とにかく意外なほどすごく真面目に作られているのも印象深く思えた。まるで地のような(^^;)ロバート・ダウニーjr.の怪演がよかった。
06年アメリカ
ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニーjr.主演デヴィッド・フィンチャー監督
未解決事件のままであるゾディアック事件解明に携わった三人の男の長い年月を描く
