
| 日記 2004年8月 |
| [酔わない] 2004年8月31日(火) ![]() 台風接近。警報発令。大雨。 夫は徹夜で仕事があるとのことなので本日妻ひとり。普段ならば夫不在の夜を悲しみつつ「じゃあ晩ごはんは『御座候』にしよう」とか「カール(うすあじ)も素敵だ」とか不健康かつ勝手気ままをそれなりに楽しむのだけれど。こんな日はちょっとせつない。買い物にも行けないので「御座候」どころじゃない。おまけに猛烈な風によりマンションがゆらんゆらん揺れている。縦に持って震わせた「練りようかん」みたいに揺れている。さらに例えて言うならば「ものすごく運転の上手な観光バス」に乗っているかんじ。最初のうちは面白がってマンションの揺れに合わせてじぶんも揺れたりそれに逆らったりしてひとり遊び。しかし朝から晩まで揺れているのでいいかげん車酔いのような状態になってしまい、かといってどこにも逃げられず、じっとしていると揺れがわかるので困り果てた妻は動物園のお猿のように用事もないのに家中をうろうろとさまよい歩いて過ごした。実にむなしかった。実に無意義だった。 |
| [四国旅日記(猫日記)] 2004年8月23日(月)〜25日(水) ![]() 恒例の、「ひとり暮らしの祖母のごきげんうかがい」に母と共に四国まで参ります。 しかし今回はいつもと違うのだ。祖母はなんと子猫を飼い始めたそうなのだ。あいかわらず突然の思いつきでなんでもやってしまう祖母だ。 それにしても子猫。 妻は犬と暮らしたことはあるけれども猫を飼っていたことは無く、知り合いに猫と暮らしていたひともいなかったので正直「なめんなよ」の猫くらいしか馴染みが無い。気まぐれで媚びないイメージしか無い。 |
妻はなぜか猫からは人気がなく、あまり好いてもらえないたちなので思案。旅に出る前に夫に相談すると夫は「食べ物で釣ると良いよ」と言ってたくさんの猫缶やおもちゃやブラシなどを買ってくれた。夫のアドバイスに素直に従いそれらを持参。きっと世の中は「ごはん」があればたいていのことはうまく行くのだ。妻は祖母の家に居る子猫と仲良くなりたいのだ。妻は今、小さくてやわらかくてあたたかい毛だらけのものに飢えている。 |
車を5時間ぶんぶんぶんと走らせて(安全運転)祖母の家に到着するや否や、祖父の仏壇にあいさつするのも忘れ「ばあちゃん猫はっ?」と言うと祖母はあたりを見回し、「さっきまで居たのにどっか行ったぜ」と言った。思えば。知らない大人がふたりでっかい荷物を持ってどやどやとやって来てくちぐちに「ねこねこ!」と叫んでいたらいくらなんでも逃げ出す。そんなの妻だって逃げる。 ちょっと反省しておとなしくしていると祖母のベッドの下から顔だけ出してこちらを見ている子猫と目が合った。わあ。べっぴんさん。妻はひとめでめろめろになる。 そこで妻はじぶんの中にある善意という善意をかきあつめ、それらを惜しみなく大放出して無害であることを主張しつつ、笑顔でかばんから持参した「猫じゃらし」を取り出すとそれを見た母がきらりと笑い、「じゃらすのね」と言った。ええ。じゃらします。 |
「猫じゃらし」をこちらの様子を伺っている子猫に振ってみせると子猫はしばらくじっと見ていたが警戒しながらもてくてくとやって来た。レッツふれあい!と思ったのもつかの間。子猫は2本持ってきた「猫じゃらし」のうちの妻が手に持っていないほうの「猫じゃらし」に駆け寄り、ひとりで遊び始めた。ノットふれあい…。あのう…。遊んでくれませんか妻と。その後も妻が振りまくる「猫じゃらし」に興味は示すもののあまり触らせてはくれず。なんだろう。なにに似ているんだろうと思ったら「片思い」に似ているのだった。この気持ち。 せつなく就寝。 |
しかし翌日に状況は一変する。朝目覚めると顔の横に子猫が立っていて、妻がむっくり起き上がると子猫は妻の布団にとことこと上がってきてのっしと腰を下ろした。妻がここに居ることに慣れてくれたのだ。嬉しくなって持ってきた猫のカリカリごはん(魚のかたちをしている)を手渡しであげてみると子猫は受け取ってかりかりと食べた。ふれあい! そのあと子猫の横で携帯電話でもって夫に朝のあいさつのメールを送っていると子猫は妻の携帯電話にぶらさがっている「くま」のストラップに柔道チョップをお見舞いしたのだった。 そんなふうにして妻と子猫は仲良しになった。 |
午前。祖母と母を車に乗せ、母の小学校時代の同級生が営んでいるという梨園に梨を買いに行く。大きな梨が鈴なり。夢のよう。 写真を撮ると喜ぶ祖母なので、梨園のまんなかに祖母を立たせて写真撮影。おおきな梨と笑う祖母。良い構図。「ばあちゃん撮るよ」と言ったら祖母は「いいぜー」と満面の笑みを浮かべながら腕を上げて両手でピースサインを作ったのであった。きっとこの祖母は100歳まで生きる。 |
梨園からの帰り。細い山道を慎重に走っていると、曲がったところに黒いかたまりが。「わ!」と叫んで急停車。運転席から首を伸ばして見てみるとそれは大きな亀だった。「ばあちゃん。あんなところにかめが」と言うと祖母は「かめ・・・」とつぶやいてもじもじしはじめた。まさか。「…かめ欲しいの?」と助手席の母が言い、祖母は後部座席でこくりとうなずいた。ノー!あんな大きい亀を。どうやって持って帰るのか。祖母の家には猫もいるのに。うさぎもいるのに。ばあちゃんまさか。「うさぎとかめ」を地でやるつもりなのか。そしてなにかの教訓を得たいのか。 その後も祖母があまりにも「かめかめ」と言うので母が見かねて「ちょっと捕獲してくる」と言って車から出たので妻もいっしょに降りてみたが、不穏な空気を察したかしこい亀は、亀らしからぬ速さでサササと走って横の川にどぼんと身を投げて見えなくなった。母と妻はちょっとほっとしながら「ばあちゃん。かめ、逃げたよ」と言うと祖母は「残念じゃのう…」と心からがっかりしていた。そんなに欲しかったの…。妻は祖母がわりとわからない。 |
午後。妻生理痛。 おなかが痛くて困ってしまったので近くの薬局に行く。痛み止めを買って帰って紙袋を開けてみると、買った鎮痛剤とまったく同じ鎮痛剤の試供品がころりと出てきたのでたまげた。ええー。試供品には「お試しください」と書いてあるのだけれども現品購入後に果たして試す意味があるのか。ないのか。なんだかわけがわからなくなってきたので「…増量中なのだな」と思うにとどめる。 |
鎮痛剤が切れてふたたびおなかが痛い真夜中。うーんと寝返りをうったら背中にふさふさしたものがあったので触ってみると猫だった。ああ。仲良し。猫は熟睡しているらしく、なんだかものすごい格好で眠っていた。妻はおなかの痛いのも忘れてこちらに向けられた「にくきゅう」をやわらかくにぎって遊ぶ。あたたかくて毛だらけで小さきものの居る生活は素敵。 |
翌朝。「海が見たいぜ」と、意味もなくむやみやたらと格好良く祖母が言うので海に連れて行く。空は青い。海は青い。妻の顔も青い(生理痛)。外は暑い。祖母は若い。 |
祖母が少女時代を過ごしたという浜辺に到着。小さな丸い石がじゃりじゃりとして歩きにくい。「きれいだねえ」と3人で突っ立っていると祖母がおもむろに靴を脱ぎ、靴下も脱ぎ、さくさくと歩いて海にひざまでつかって「ホー!」と叫んで笑った。きっとこの祖母は120歳までも生きる。 |
家に戻って帰る支度。母が非常食として持ってきた「インスタントやきそば」の作り方(ここからお湯を捨てるのよ。3分よ。そしてこのソース)を細かく説明しているが祖母は一向に解せない様子だったのでじゃあお昼ごはんにひとつ実演して食べてみましょうということに。 お湯を祖母に見えるようにこれみよがしにジョバーと捨てたあと、ソースを混ぜて祖母に渡すと祖母はしばらくもぐもぐと食べていたが「お汁があった方が良いのう」と言ってお湯を足そうとしたので必死で止める。今お湯を捨てた意味がないよばあちゃん。だいたいこれ「やきそば」よ。お汁は無いものなのよ。そう言うと祖母はちょっと傷ついたような顔をして、「でもそもそも焼いてないぜ。このそば」と言ったのだった。 まったくその通りだった。 |
そんなこんなでいつにも増して冴えている祖母と、祖母の足元にたたずんでいる子猫に別れを告げて母と妻は車に乗って帰る。実家で母を降ろしたあと、重い梨とトランクをぶらさげて我が家の玄関を開けると中から夫がどたどたと駆けてきて「猫はっ。どこに隠してるの?」と言った。九分九厘「きっと妻は猫を持って帰ってくるだろうな」と思っていた模様。 おわり。 |
| [知らない] 2004年8月18日(水) ![]() テレビをぽちりとつけると「オリンピック」の体操をやってる。解説のひとがあまりにも「着地が重要」というようなことを言うのでいっそのこと「着地」という名前の競技にすればどうか。とか言いながら夫と楽しく鑑賞。 しばらくしてから夫に「今は体操以外の競技はやってないのかしらん」と言うと夫はそのへんにあった新聞のテレビ欄を見、「ええと。フットボール…」と言った。妻はそれを聞いてはて「オリンピック」の競技に「フットボール」はあったかしらんと思いつつチャンネルをかえてよく見ると「フットボール」と名のつく芸人さんが出ている番組だったということがわかった。あまりテレビを見ないで世間から離れるとこういうことになる。 |
| [あなどれない] 2004年8月17日(火) ![]() 寝る準備。 電気を消して洗いたての夏布団にもぐりこんだところ、妻の布団にへばりついている「かめむし」を発見。軽く失神。ノー…。眠る前の満ち足りた気分はだいなしに。 勇敢な夫に「かめむし」をベランダにぽーいと放り投げてもらったものの、奴が残した強烈なにおいは消えず。洗ったばかりの夏布団をふたたび洗濯機に入れたのち、「妻は居間のソファで寝ます」としょんぼり告げると夫は「ぼくはこのままここで寝るよ」とガッツで横になった。しかし「やっぱりちょっとかめむしくさいね」と言うので妻は洗面所から「牛乳せっけん(良いせっけん)」をひとかかえ持ってきて、寝ている夫を囲むようにそれをばらばらとばらまいた。 そして間もなく寝室は良いにおいになり、夫は安眠。妻はもう一度お風呂に入って居間のソファで眠った。「かめむし」1匹でえらいこと疲れた。 |
| [あきらめきれない] 2004年8月15日(日) ![]() ドーナツ屋さんで「子どもセット」かなにかを買うともらえるおもちゃがとても欲しかった妻なので、左手の薬指にぐっさりと指輪をし、「娘のムギ子は今、保育園に行っています」というふうを装い、そそくさと「子どもセット」を買いに行ったら目当てのおもちゃは品切れだった。想像でお子をこしらえまでしたのに。夫の目の前でこれみよがしにがっかりうなだれていると夫は「じゃあぼくは車仲間の会に行ってくるね」と出かけて行った。ああ。無情。 しかしながらあきらめきれない妻はそれからひとりで電車に乗り、隣駅のドーナツ屋まで「子どもセット」を求めに行ったのだった。根性。 まんまと「子どもセット」を手に入れてほがらかな気持ちで持ち帰り、机に飾ってぱちぱちと写真を撮っていると「車仲間の会」に出かけていた夫が「おみやげおみやげ!」と言って件のドーナツ屋の「子どもセット」をふたつも持って帰ってきてくれたのであった。そして我が家にはすごい数のドーナツと「子どもセット」が。 |
| [見てない] 2004年8月11日(水) ![]() 夫が「ようし夢でも見るか」と言って発売最終日に「宝くじ」を買って来たので当選番号発表までの短い間、素直に夢を見ることにする夫婦。 最初は「1億円当たったらどうしましょう」という考えのもと、「両方の親と3等分しよう」とか「ボラボラ島にも行こう」とか言って盛り上がっていたのだけれども、「もし3000万円だったら家のローンを返そう」とか「100万円なら誰にもないしょでふたりで山分けだ」とか、日が経つにつれだんだん夢も小さく小さく。夢くらい盛大に見れば良いものを最終的には「1万円当たったら1回外食して終わり」というささやかな夢に落ちつく。庶民。 そして本日仕事から帰って来た夫が「もう当選番号発表しているね」と言うので昨日の新聞を持ってきて照らし合わせてみると、なんと「5等」が当たっていた。3000円。初めて経験する「宝くじの当たり」に夫と妻は「わあ!」と驚いたが残念ながら「3000円当たったらどうするか」という夢は見ていなかった。 |
| [無茶しない] 2004年8月10日(火) ![]() 昨日もそもそと晩ごはんを食べていた夫がお味噌汁をぞぞとすすりながら、「ぼくもしかしたらものすごく『お味噌汁』が好きなのかもしれない」とまるですごいことを告白するみたいにつぶやいたので妻はややびっくりした。そうだったのか…。お味噌汁が。そんなにお味噌汁が…。 ともあれ新しい夫の好物を知った妻は「そうかそうか」とうなずき、本日もお味噌汁を作ります。しかし「そんなに好きならば」と勢いづいていつもより大量に作ったお味噌汁を、いつもの椀よりももっと大きな椀にばしゃーんとついで「はいっ」と食卓に出したらそれを見た夫に「いくらなんでも多いです」と言われた。うすうす気がついていたのだけれども、やはり妻はなにごとも極端みたいだった。 |
| [落ちない] 2004年8月8日(日) ![]() 夫と買い物。 暑い暑い中、太陽にちりちり焼かれながらてくてく歩いて夫のシャツや妻のキャミソールやかばんやなんかを購入。「買い物って楽しいねえ」と言って紙袋を抱えて夫婦でフフフと笑い、休憩がてらひと気のない日陰のベンチにどっこいしょーと腰かけ、買ったばかりの口紅を出してキャップを外してみたら勢い余って口紅は手から落ち、妻の真っ白なスカート(いっちょうら)に2回バウンドして転がってスカートに日の丸の模様を描いたのだった。わあ…。夫と顔を見合わせて無言。 それから夫と妻は予定外のスカートを買いに行くはめとなった。 |
| [滅多にない] 2004年8月3日(火) ![]() ベランダにて洗濯物を取り込んでいる最中。ふと顔を上げると空に見事な虹が。 虹は東の山のてっぺんから伸び、大きな大きな弧を描いて南の海に落ちていた。妻はこんなに巨大で完璧なまでの、絵に描いたような「かまぼこの断面」的虹を見たのは初めてだった。 虹は。妻が声もなく立ち尽したあとふいに我に帰ってかかえていた洗濯物を文字通りくしゃくしゃと放り投げながら部屋に駆け込んでカメラを持ってきたり、虹が大きすぎてフレームに全部収まりきらないのでカメラを構えたままとりあえず5メートルほど後ずさってみたもののよくよく考えたらこのカメラの小さなレンズでは収まるわけもないことに気付いたり、「もしや天変地異の前触れではあるまいか」とおののいたり、「ギターペイント」の歌をうたったり(お空のーいろはどんないろー)、「ああ夫と見たいものだった」と嘆いたりしているうちに消えてなくなった。それはとても素敵な夕方だった。 |
| [たしなまない] 2004年8月1日(日) ![]() 近所の夏祭りへ行く。 たしか去年は「踊り大会」という名前だったのに今年の貼り紙には「夏祭り」と簡潔に書かれてあった。さすがに変だと気付いたか。「踊り大会」。 会場のはしっこに腰かけて夫とかき氷などを食べながら浴衣姿の年輩の女性たちの一糸乱れぬ「盆踊り」を見物。彼女たちはいったいどこからやってくるのか。そしてどこで踊りを練習しているのか。 そんなふうにぼんやりと踊りを眺めていた夫が突然「妻も『盆踊り』くらいは覚えておかないといけないよ」と言い出したので妻はびっくりし、「…たしなみですか」と尋ねると夫は「そうとも」とうなずいた。たしなみ…。 とりあえず「『ドラえもん音頭』の時は手をグーにして踊る」ということだけ学んで帰った。 |
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