このページの最終更新日2004/03/23
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バイオリンの木
バイオリンを作るための木について簡単にまとめてみました。
1. バイオリンの部材とその材質
(1) 本体を構成している部材
表板: 松の仲間、代表的にはSpruce(えぞ松に似た木),樅の一種Abete Rossoは高級品とされる。
裏板: かえでの仲間、代表的にはMaple
側板: 裏板と同じ木材からとったもの
ネック: かえでの仲間、代表的にはMaple
エンドブロック、コーナーブロック: 松の仲間(Spruce)
バスバー: 松の仲間(Spruce)
ライニング: 松の仲間(Spruce),または柳(Willow)
サドル: 黒檀
(2) 付属品
指板: 黒檀
ナット: 黒檀
ペグ: 黒檀、つげ、その他
駒: かえでの仲間(Maple)
魂柱: 松の仲間(Spruce)
テールピース: 黒檀、つげ、その他
エンドピン: 黒檀、つげ、その他
あご当て(図では省略): 黒檀、つげ、その他
註: 弓についてはフェルナンブーコのページを参照してください。
2. 木材の製材の仕方
(1) 丸太を縦に二つ割にする。
(2) それをさらに2分割して四つ割にする。
(3) 四つ割にした材料をさらに放射状に分割してWedgeと 呼ばれる楔形の木口の木材と側板用板材などを切り出す。 この状態で5、6年以上乾燥させる。楽器製作者向けに出荷する前にさらに 放射状に2分割するための切込みをいれる。

裏板Wedge、側板材、表板Wedge
(4) 楽器製作者はWedgeを切り込みに沿って放射状に二つに分割し、 分厚い側を背中合わせに剥ぎ合わせて山形の木口を もった板にする。これを削って表板や裏板を作る。
このように徹底的に放射状に分割する理由は幾つかあるが、その最大のものは 乾燥による板の反りを防ぐことである。
これは木の成長と老化の過程を知る ことによって理解できる。木は毎年外側が成長して新しい組織を増やして いくが、内側の組織は或る時期から栄養輸送の働きをやめて樹脂を溜め込む ようになる。木材として切り出された後で外側の若い組織は芯材に比べて 乾燥による収縮の度合いが大きい。
もしも丸太を縦に平板状にスライスすると 、中心軸上の板以外は年齢の異なる部分が厚み方向に隣接することになる。 これでは乾燥による収縮の度合いが板の両面で異なり反りの原因になる。
放射状にカットすると厚み方向は同じ年齢の組織で構成されるので、両面の 収縮の度合いが同じために反りを生じない。
3. 虎目について
MapleのWedgeを見ると木目と直交する方向(一般にやや傾斜)に 縞模様が見える。これは木の髄から外に向かって延びた栄養供給のための 組織(Medullary Rays)が、放射状の製材によって顔を現した ものである。これを俗に虎目と呼ぶ。
虎目は楽器の視覚的な美しさに関係しているが、音響的には関係がない。
4. 表板について
表板はSpruceのような軽くて且つ曲げに対する強度のある材料で作るが、これは表板が機械的振動を 空気の振動に変換するエネルギー変換の役を受け持っているので、その変換 効率を高くするためである。スピーカーのコーン紙に似ているとも言える。
コーン紙の場合と違うのは表板はそれ自身の各種の共振現象を発音に積極的 に利用している点である。
そこで重要なのは板のなかの振動波(板の面に垂直な方向の 横波:註参照)の伝達速度が木目の方向と木目に直交する方向とで全く異なること である。(木目の方向のほうが3倍ぐらい速いと言う話もある。) 表板は縦長だが木目が長手方向に走っているので周辺部の各部の振動の位相 は駒からの距離の差ほどには差が無いと言える。
註: 横波というのは波の進行方向に対して直交する方向に振動する波のことである。これに対して、進行方向に平行に振動する波を縦波という。横波の場合は色々な振動方向があり得るのでその方向を言う必要がある。